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≫スペシャルコンテンツ:『HOSPITAL. 6人の医師』ファンミーティングレポート(ディスカッション編)


2010年6月13日(日曜日)、都内某所のアトラス事業所で開催された『HOSPITAL. 6人の医師』のファンミーティング(先行体験会)に参加した際に行われたディレクター・金田大輔氏とアートディレクター・土居政之氏とのディスカッションのレポート。一部仕様変更の真意や開発中の思い出など、貴重なお話を伺わせていただきました。
■クリエイタープロフィール

◇金田大輔(かなだ だいすけ)
『HOSPITAL. 6人の医師』ディレクター。
『デビルサマナー ソウルハッカーズ』、『ペルソナ2(罪、罰)』、『魔剣X』などのゲームでシナリオ、プランナーとして参加。『カドゥケウスZ 2つの超執刀』からシリーズのディレクターを務めている。

◇土居政之(どい まさゆき)
『HOSPITAL. 6人の医師』アートディレクター&キャラクターデザイナー。
真・女神転生シリーズの背景制作、『ペルソナ2(罪、罰)』のサブキャラクターデザインを経て、『カドゥケウスZ 2つの超執刀』よりシリーズのキャラクターデザイン、アートディレクションを務めている。

※読みやすくする関係で会話の内容は一部加筆及び、修正を加えています。
※このレポートにはゲーム本編のスクリーンショットを掲載していますが、これらの画像に関わる著作権、その他一切の知的財産権は、全て株式会社アトラス様に帰属します。
▼Reports ≪Last Update : 7/12/2020≫ ※実施日:6/13/2010
◇1. ゲームシステム、コンセプトについて
◇2. キャラクター設定、小ネタ、シリーズの今後について
◇3. プレイヤーの方々へメッセージ
◇ゲームシステム、コンセプトについて


---この6つのジャンル(医術)を選んだ狙いは何だったのでしょうか?また、今回入れたかったけど入れられなかった医術はありましたか?

金田さん(以下、金田):
一番あるのは、ユーザーの方でも想像できる医術・医療、関心が持てるものを優先した、というのがありますね。
医療の世界は突き詰めると、もの凄い種類が存在しているんですが、個々のジャンルがどう言った方法で、どういったものを治されるかとイメージできるものは限定されてきてしまうんですね。例えば内科というとよく聞きますけど、内科って具体的にどんな事をするのだろうとか、小児科も子供を診るのは分かるけど、大人とどう違うのかというイメージは意外と難しい。そう言った意味でまずはイメージが出来て分かり易い、そしてWiiリモコンとの相性というか、このゲームはWiiでしかできないと思えたものを優先的に選ばせて頂きました。

入れたかったけど、入れられなかったのは病理研究ですね。ウィルスに対してのワクチンであったり、治療方法を探したりとか、そういうのをやりたいなと最初、イメージの段階でありました。ですが、内容的に他のと被り気味なところが出て来てしまいまして。結構思いつきはしたものの、早い時期で見送りになってしまいましたね。

---6つの医術で一番お気に入りはなんですか?(ストーリー、ゲームシステムごとに)

金田:
僕の立場では全部と言いたいところなんですが(笑)、個人で申し上げますと、僕はお話だと検視が好きですね。個人的に好きな話というか。特に事件が後半に行く度に深みにはまっていく所があってですね、作ってる最中もスタッフから「何故、別のタイトルにしなかったのか!?」と、言われることがありました。検視だけで良いじゃないですか、と。この物語は凄く楽しめる内容なので、気に入ってますね。



システムは自分も絡んでやっていたところがありますので、どれもお薦めになりますね。毛色があれほど違うものですから、それぞれにお薦めの仕方がありますからね。
なので、システムは6種類全部お薦めとさせてください。

---全体のボリュームはどのくらいなのでしょうか?(全パートの平均クリアタイムは?)

金田:
外科、救急、整形外科は短いですね。内視鏡は少し長いかな。基本的にエピソードセレクトの左端から右に行くほどプレイ時間は長くなっていきます。診断だと7~8時間か、それ以上かかるかと思います。悩みだすともっと。検視もそうですね。どちらかと言うと、検視が一番長いかと思います。話数が多いんですね。引っ掛かったりすると、15~20時間もかかる方がいらっしゃるんじゃないかと思います。

---デモシーンですが何故、このようなものを起用したのでしょうか。

土居さん(以下、土居):
金田の無茶振りなんですけどね(笑)。今までと同じやり方は選びたくないという話があってですね。いわゆるそのバストアップ方式、横から会話が出でメッセージウィンドウで会話をしていくやり方というのが、日本のゲームにおいては一般的に使い古されているシステムなんですね。そういうやり方以外でイベントシーンを見せていけないかと、話を金田の方からされまして。それで、色んなやり方を検討しました。それこそ3Dでキャラクターを全部起こしてムービーのようにしてしまうであったり、アニメーションを取り入れて表現していくとか。 ただ、やっぱり何処かで普通っぽさって残ってしまうのではないかとか。見たことあるとか。 斬新というほど、本当に誰も見た事が無いというのは世の中ないと思うので、今回のが一番斬新かというとそうとは言えないんですが、やっぱり自分達もあまり目にした事がなくて、挑戦的なやり方というのを取りたいな、と。それで行き着いたのがああいう手法だったんですね。



---今回難易度の選択の名前がインターン、レジデントとなってますが、名称をイージー、ノーマルから変更したのはどのような意図があったのでしょうか?また、スペシャリストが最初に選べない理由(二周目以降にした理由)もお聞きしたいのですが。

金田:
病院らしさ、医者らしさを取り入れたく、名称を変更しました。「イージー、ノーマル、ハード」というのは意味は分かり易いんですが、印象も色々あるかなと思ったんです。
やはりノーマルというとそれが標準、クリアすべき難易度で、イージーはそれよりも優しく、ハードはそれより難しくと、間違いではないにしても、少し色々意味を持ってしまうんですね。それで今回は難易度に強く差を設けまして。誰もが遊び易いゲームになって欲しいという事で、難易度に対し従来の概念のような印象を持たず、選べる形にしたいというのがあったんです。だから「イージーモードだから」という気持ちでなく、「お話を優先で遊びたいからインターンモード」で行こうとか、レジデントで行こうとか。一周クリアした後にはスペシャリストでもっとやり込んでやろうぜ、とか。
そう言った雰囲気変えと、抵抗無く選び易い言葉にしたいという事で、変えました。

あともう一点、スペシャリストモードの事ですが、やはり新作とは言え、今までカドゥケウスシリーズを遊んでくださった方々に応えたいという思いがあったんですね。それと同時に今回のホスピタルがどう映るのかという不安もありまして。
今までのカドゥケウスシリーズは凄く難しい、言ってみればその歯応えこそが魅力というところもあったと思うんです。

ですから「ただ簡単にしました、以上。」という事では、今まで遊んだ方々の気持ちに応えられない。逆に最初から選べてしまうとやっぱり、他の難易度もそれなりのものにしなきゃというブレーキもかかってしまうんですね。そうすることで、ゲームに慣れている方とそうでない方の差も、もの凄く開いてしまう。そこで今回は、線引きをはっきりさせまして。一周クリアして、なおプレイしようというプレイヤーに向けたものにしようと。誰もが遊び易いものにする前提で、今までのカドゥケウスらしさも残すという意味で、やり込み要素としてそのポジションを変更しました。

---スペシャリストはインターンでクリアした場合だと出てこないのですか?

金田:
いえ、どちらでもスペシャリストは出ます。あと一部で情報が出てますが、『ドクターメダル』というやり込み要素も同じくインターンでクリアしても登場します。エンディングに一度まで行かれた方は、そうした次の遊びが出現するという位置付けですね。やり込みたいという方は是非、やりこんでみて欲しい、と。

---Wiiモーションプラスの対応は考えていたのでしょうか?

金田:
モーションプラスによる感度の向上は勿論、自分達も意識はしていました。ですが、やはり全ての方が持ってる訳ではないというのがまずありまして。「モーションプラスが無いと上手にプレイできない」、って思われたくなかったんですね。
それに自分達が今、作ろうとしているゲームは、モーションプラスが本当に有効に働くゲームなんだろうかと。実はモーションプラスというのはあくまでも持ってるセンサーの向きが分かるもので、感度が上がるものではないんですね。

なので、対応させたところでそれが活きる場所はほとんど無かったんです。あったとしても、整形外科のハンマーぐらいだったんですよ。ほとんど使える、活かせる場所が無いのにモーションプラスに対応とする事で、モーションプラスを持ってない人が「なきゃ出来ないんじゃないのか?」という不安を抱かせてしまうのはマズいんではないのかと。なので「モーションプラス無しで十分楽しめます」というのを目指そう、ということで今の内容になりました。



---外科ステージで制限時間が無くなったのは何故ですか?他のパートとの差別化を図る目的があったのでしょうか?
(※外科専門のカドゥケウスシリーズでは、全ステージに制限時間が設定されていた)


金田:
制限時間が無くなったのも、大きな意味では今回、超執刀やギルスが出てこない事と実はほとんど同じぐらいの気持ちでして。やはりカドゥケウスは「手術」というのをベースに持ちながら、ゲームに特化したものという色も合わせて持っていたと思うんです。なのでカドゥケウスはカドゥケウスとして、その方向を突き詰めていこうと。

ただ、今回はホスピタルとタイトルを変える事で、もっと医療というものを幅広く、より多くの方に楽しんで頂けるものにしたい狙いがありまして。それを考えた時に、制限時間というのはどちらかというとゲーム寄りのルールなのかなと思ったんです。 それよりはまあ、最初にドラマがあって、その中の一部として手術がプレイできる部分があり、そのまま終わりのドラマに繋がっていくのが今回のシステムでは一番似合っているかと。ならドラマ上必要であれば入れるけど、ドラマ上、制限時間が全く働かない部分があれば無くすべきと思いまして、今回は基本システムから外しました。
でも一応、制限時間のあるステージもお話次第で用意しています。

---ギルス、超執刀とカドゥケウスの単語が出てきましたが今回、ギルスや超執刀を撤廃した事で、各ステージの設計とかで苦労はありましたか?

金田:
もの凄い苦労しました(笑)。
良くも悪くもギルス達に頼っていた所がありましたからね。
カドゥケウスシリーズは元々外科一本だったんですね。もう、一つのジャンルが40ステージという数が続くと。で、その数の中で遊び方もルールも基本的には同じなのにそれで40、遊びの幅を持たせようと彼らに頑張ってもらって。



今回はその代わりではないんですが、何しろ6種類の医療ジャンルが入っている。それ自体がもの凄い、今までとは違う幅を描いてくれている。で、ここにもしもギルスたちがいると情報がパンクしてしまうかというのもありまして(笑)。
今回はむしろ苦労したというのは、ギルス達がいないから補う為に苦労とかでなく、単純に6種類を作るので大変だったというのがありますね。遊びの幅としては逆にもの凄く広がったものですから。
ギルス達がいなくても、あまり寂しい気持ちにはならずにいけました。

---今回、患部のグラフィックが凄くキラキラしていますが……?

土居:
光沢系は今回の表現として増やしています。
絵的な見せ方の一環でもあるのですが、過去作でも言い続けてるのが臓器はパッと見、気持ち悪いと言う印象に持って行かないというのを作風にしているんですよ。
今回はより色んな方に遊んで頂きたいという事から、今までの作品以上に臓器の気持ち悪さを取っていきたいなと。それでスタッフにも意見を募った結果、より綺麗に見せていく方法というのが今回、目指す方向として決まりました。
それで心臓であったり、他の臓器もそうなのですが、基本的には海の中のような、キラキラしていて綺麗に見せるデザインを心掛けまして、ああいう形になったんですね。

---整形外科の話になるのですが、あのパートでは処置を成功する度に曲が盛り上がっていくという演出がありました。あの演出は整形外科専用なのですか?

金田:
あれは整形外科専用になります。
僕はゲームの音楽は昔のゲームの音楽が大好きなんですね。ゲームの音というのはゲームのための音であって、遊んでいる時に一緒に流れてくれるから気持ちが良い音が僕は一番、素敵だと思っていまして。

最近のゲームの音楽って、ゲーム機の仕組みが変わって結構、垂れ流しというタイプのものが多くなってしまったんですね。そうすると、遊んでる状況に関わらず一個の曲が流れ続ける。それはそれで良いのですけど、ちょっと昔のタイムアップギリギリになると曲が速くなったりとか、危険な時に鳴ると違う曲が流れるというのが元々、僕は好きなんですね。



それでサウンドスタッフに無理を言いまして、大体どのステージにも複数の音楽が流れるようにしました。
外科でも大体二曲以上が流れるようになってますし、整形外科は逆にそれのもうちょっと進んだ形として、曲がどんどんどん盛り上がっていくという形を取り入れて。失敗するとまた曲が盛り下がっちゃうんですね(笑)。そこで凄く、自分自身盛り上がるんだけど緊張もするし、その中でも操作をするというのも楽しんで頂きたいと思いまして。
それで、ああいうシステムを取り入れています。

---実際にプレイしていて凄いテンションが上がってきて、気持ち良かったです(笑)。

一同:
爆笑

金田:
ですから、整形外科は自分自身が敵ですね(笑)。

---検視に関しては、『カドゥケウスNEW BLOOD』の時から構想があったようですが?

金田:
はい。その時から既に海外から「検視もの」というリクエストがありました。
僕自身もそういう科学捜査系のドラマとか好きな所がありましたから、その時に土居とプログラマーの池田(※池田高明氏)とその三人で「こんな新作をやってみたい」と話していまして。土居も池田も面白そうだからやってみたらどうかと応援してくれて、これは是非、やりたいという気持ちがずっとありました。僕はゆったり作るつもりだったんですけど(笑)。
ホスピタルの話になったのはその後ですね。
で、「これはピッタリじゃないのか?」という事で今の形になりました。

---このホスピタルを始め、カドゥケウスシリーズは海外での人気が高いですが、そちらのマーケットを意識する際に当たってはどのような苦労がありましたか?

金田:
これはどちらかというと僕より土居の方が苦労しているんですが、キャラクターですね。
色んな国の人間をキャラクターとして取り入れるのはNBから意識して初めているんですが、僕達が海外にあくまでも仕事としていった時も、最初は白人さんと黒人さんがいらっしゃるのかなと思ったのですが、全然そうではない。いろんな国の方がいる。それが海外の状況でもあるんですね。
なので、向こうで出すゲームとしては、そこを継承すべきではないかと。
そういう事で、かなりキャラクターの国籍を色々取り入れています。そうした色んな国籍のキャラクターをデザインするという部分は、海外を意識しての苦労と言えると思いますね。

---キャラクターを作る上で難しかったのは?

土居:
6人に分ける事が大変でしたね。主人公6人がいて、全員主人公に見えなきゃいけないとか、らしさを一人一人に設定しなければいけないという所が大変でした。

---キャラクターごとにイメージカラーがありますが、あれはどう言った意図で選んだのでしょうか?

土居:
基本的にそのキャラクターの持っている雰囲気であったりとか、性格であったりとか、それらから現すカラーリングを優先して割り振っています。

---海外の方では日本と同じ『HOSPITAL』ではなく『Trauma Team』……トラウマセンターシリーズの名を冠していますが、これは何故でしょうか?

金田:
自分にしてもスタッフにしても、今回のホスピタルというのはタイトルを変えてるぐらい、良い意味でカドゥケウスとは違う道を行こうというのがあり、そういう内容にまとめているんですが、海外ではやっぱり、トラウマセンターが人気なんですね。医療系のゲームというのは、海外でもそう多い訳じゃないのもあって。ですから日本はホスピタルという名前だけど、海外はトラウマセンター、トラウマシリーズという形として売っていきたいと。
どちらかというと、戦略的な意味合いですね。それであのような名前にしています。



また日本では結構ストーリーメインですが、海外では手術シーンでアピールしていくという差もあります。自分達としてはインタビューとかでも、今回は新しい可能性を模索する意味も含めて幅を広げましたと言っているんですけどね。
あくまでもタイトルがそうだというだけであって、向こうのユーザーさんも今回のは今までとは全然違うシステムであったり、あまりゲーム化されてないものを取り入れている凄く挑戦的なタイトルだという評価も頂いてます。タイトルこそシリーズの名を冠していますが、海外も国内と同様、新しいスタイルのゲームであるという事は変えていません。

---問診で女性の下着が映ったり、一部のデモに至っては女性キャラクターの入浴シーンなどがあったりしましたが、CEROレーティング的に危ないと思いませんでしたか?

金田:
思いました(きっぱり)
。でも、Bには済ませたいというのが最初からありました。Aはもう無理なんですね。血が出てしまうんで。でも医療をテーマにして血を出さないというのはあり得ないので、そこは割り切りました。ただCとかDとかにすると、意味合いが変わってきてしまうんですね。なので、Bで抑えたいと。
それで結構、絵が上がる度に細かくCEROにチェックしてもらいました。CEROの審査って、間で部分部分、確認を取る事ができまして、ちょっと危険かなと思った絵は優先的にチェックしてもらいました。それで、「危ないよ」と言われたところは抑えるといった感じで。それで結果としてBに済ませることができました。



---意味合いが変わるとは?

金田:
悪ふざけのように思われるのは嫌だと思ったのです。医療行為の延長線上という形は崩したくないというのがあったものですから。ただ、正直言えば魅力として使いたい所が無かった訳ではないです。でも医療行為というのが大前提ですので、そこを崩れないようにしたいと思い、導入は控えました。

---開発中に楽しかったこととかはありますか?

金田:
結構、チームの雰囲気が良かったですね。これぐらい量があるタイトルって修羅場になってしまうことが多いんですけれど、結構、スタッフのモチベーションが本当に高いチームでして。
僕が言わなくても「こうした方が、ああした方が良い」という言ってきてくれるし、僕は「じゃあ、やっちゃおう」と、どんどん膨らんでいくんです。なんですけど、マンパワーで何とかするというのをやり遂げたというのがありまして。何処か一部をつまむ事無く、僕は全体を通してこのゲームは作っていて楽しかったですね。

土居:
一応、ディレクターの元で働いてる身としてはですね(笑)、かなりの無茶振りをする男なんですけど、ゲームって開発中に楽しい事以外に苦しいことの方が目に付きやすいんですよ、凄く。時間との戦いでもありますし。開発員は一人一人がより良いゲームを造りたいと思いながら作っていきますよね。そうすると、当初予定されているもの以上のキャパシティになってしまって、そうするともう自分との戦いで、それこそ無理しなければいけない時もあればというのが出て来てしまうんですけど、結構それって苦しい思いですよね。
ただ、このラインに関して言うと、その苦しい思いを抱えつつも、最後まで結構みんな楽しいと思いながら作っていたんじゃないのかな、と。特に僕以外のスタッフも含めて良く聞いている意見ですと、「苦しかったですけど、楽しかったです!」と凄く言ってもらえるラインに最終的になったんじゃないかな、と思ってるんですよね。

金田:
スタッフからも「早くパッケージが来ないのか!?」や「手元にソフトは来ないのか!?」と言われたりもしていて(笑)。本当にお薦めしたいゲームだと、スタッフ一人一人言ってくれるのが嬉しくて。「人に薦めます!」と言われる終わり方ができたので、本当に作ってる側にとっても楽しいゲームだったと思います。


◇キャラクター設定、小ネタ、シリーズの今後について


---検視は最初からミラ・キミシマが主人公を務める予定だったのでしょうか?

金田:
いや、キミシマになったのは後ですね。最初は死神みたいな博士で、怖い人で行こうかというのがありました。
で、キャラクターを決めていく中で土居の方からキミシマの方がいいじゃないのかと言われたんですね。その時、僕は相当ゴネた思い出があるんですが(笑)。
その後、こういう話でこういうデザインでいけるんじゃないのかとなって行って。今日はここに来ていませんが、シナリオの小林(※小林鉄兵氏)と一緒を詰めていくと、何とも魅力的なキャラになっていきましてね。
今回、6人の医者ってみんなどこか未熟な所があるんです。何かが未熟なんですね。キミシマはその中では凄く達観していて頭も良い女性なのですが、ある物がやはり足りないんですね。そこというものをこのお話の中で彼女自身が目覚めていくという中で、検視というポジションは凄くカッチリはまりまして、今にして思えばベストの選択だったなと思います。

---キミシマに欠けているものというのは、Zの時点から決めてたものなのですか?

金田:
いえ、そこまでガッチリ決めてはいませんでした。Zの時はもう一人の医師の、月森とは対照的な医師の姿として描きたいが為に入ったのが彼女だったんです。その時は月森とは間逆のビジネスとして医療に携わるけれども決して悪ではない、そこを描くのが精一杯であり、それが目的でもあったんです。
けど、ホスピタルとして検視として携わる中で、キミシマの中で欠けている要素とは何だろうか、改めて見つめ直す良い機会だったんですね。どちらかというとホスピタルを形作っていく中で生まれて行った設定ですね。

---キミシマの助手のネイヴルですが、彼はZの時からおとり捜査官だったんですか?

土居:
そこは自分の方から。キャラクターをあそこまで立たして行く事は今回も含めて 前作から、キミシマ先生と一緒に行動する人という風に自分の声を捉えながら描いて行ったのですが、あの人はおとり捜査官かもしれないし、デルフォイの組織の人でキミシマ先生に惹かれて彼女の脱出に手を貸したのかもしれないし、そこは確実に位置付けないでいるんですね。だから、一応そういう風には言わせて頂いて、ひょっとしたらこちらの方でもう少し込み入った設定はある状態かもしれないですが、決定してしまうと今後の彼女とネイヴルの間柄というのを凄くつまらないものになってしまうと思うんです。
なので、ユーザーの方はユーザーの方で想像して頂ける余地を残しつつ、我々は我々でそう言ったところも含めつつ、次回でまた何かを描く時により魅力的に見せれる方向に持っていける余地を残している状態になってます。

---できればラブラブな関係にはしないでください(笑)。(※この質問はキミシマファンの御方が行いました。。

土居:
(爆笑)。そうですね(笑)。

金田:
スタッフ間でもそういう声はあるんですよね、「あの二人はどうなるんだ?」と(笑)。
結構、Zの時もエージェント(ネイヴル)はキミシマに虐められてる感じがありましたけど、今回はああいう付き合いなので、その様子はないと僕は思うんですけどね。

土居:
そう?(笑)

---キミシマの髪型が『カドゥケウスZ』の時とは違っていますが、あれは病によってああなってしまったのでしょうか?

土居:
そんなことはないです(笑)(きっぱり)。彼女なりのオシャレだと思ってください。



---ボイスの収録に関する質問です。声優さんの演技で感動した事ってありましたか?

金田:
いっぱいありますね。今回は36名の声優さんが参加されてまして、総収録数が『ペルソナ4(PS2)』を超えているんですね。なので、もの凄く大人数の中でやっていただいて、キャラクターの声が乗っかってくる事によって、自分達に「このキャラはこういう人だったんだ」と見えてくるのがあって、どれも刺激的でしたね。

僕個人はネイヴル(東地宏樹さん)が凄く好きです。結構、キミシマからするとあんな良い大人がリトルボーイ、リトルボーイとか言われてるんですよ(笑)。結構、虐められてる風なんですけど、東地さんの声だと虐められてる感じがしないんですよね。何か、東地さんの声自体が凄く懐のある男性像を持ってるものですから。それによって、二人の関係が見ていて凄く心地良い形になったのには感動しましたね。



土居:
声優さんってスイッチが入った瞬間が凄いですね。普段会話を聞いてたりとか、世間話とかをしているテンションといざ収録です、と台本をもらってキューが入った瞬間の変わりっぷりというのが本当、プロだなと思いますね。

金田:
DVD(※初回特典)見たらビックリしますよ(笑)。
土居くん的には誰かが凄かったとかありますか?今回のキャストの中で。

土居:
特に声優さんの誰が好きという訳では無いのですが、マリア……生天目さんですね。スイッチ入った時の変わりが凄いですね。普段、もうちょっと静かな方なのですが……。

金田:
収録の時の様子では違うんですけど、マリアとしては凄かったですね。

---そう言えば……マリアとトモエの声優さんの選択というのは、意図的に狙ったものだったのでしょうか?(※マリア役の生天目仁美さん、トモエ役の伊藤静さんはユニットを組んでで活動している仲である為、筆者自ら聞いてみました。。

金田:
いや、でもそういう狙いは一切なかったです。
あくまでもキャラクターに合う声、お芝居の雰囲気を優先で選んだ上で起きた奇跡です。



---カドゥケウスシリーズのゲームオーバーというと『超失踪』がファンの間で定番ですが、今回は特定の失敗をする事で分岐すると言った要素はあったりするのでしょうか?

金田:
あまりネタは仕込んでないです。特にこのゲームの場合、ゲームオーバーって本当の意味で良くないものと描かないといけないと思いますので、今までとは違った表現をしています。プレイヤーのやり方次第で色んなものが見えたりというのは、良い成績を治めた時に分岐するようにしていますね。
失敗のバリエーションよりは成功のバリエーションを楽しんでもらいたいですね。

---サウンドトラックの発売とかは考えられているんでしょうか?

金田:
ああ~……こういう場がある度にその質問を僕もいただきまして……(笑)。あの……これがですね、ディレクターの僕で分からない話になってしまうものですから……ただ、(小声で)(スタッフ)さんどうなんでしょう?

スタッフさん(以下、スタッフ):
あの……発表をお待ちください(笑)。凄く人気があるんで、とても良いと評判を頂いてますんで、多分、可能性は非常に高いと思います。正式発表をお待ちいただければと。

---カドゥケウスシリーズ(初代、Z、NB、2)全部がまとまったサウンドトラックが出る可能性はありますか?(笑)

金田:
え!!?全部まとまった?!
ああ~……(スタッフ)さん、いかがでしょうか?

スタッフ:
(苦笑)

金田:
でも、良い機会だと思います。今日の場で次回にそのお話を伺った上でこれ伝えるべき所に伝えてですね、こういう声聞きましたよ、と伝えさせて頂きます。この場ではお約束は出来ないんですが…(力強い声で)分かりました!

---アンケートの要望が多かったりすれば、その可能性は高くなりますか?

金田:
そうですね。やっぱりユーザーの皆様の声に企業は敏感であるべきですし、そう言った声を聞いて、行けるものなら行こうという判断もアリだと思いますので。お約束はできませんが、もし、気持ちがあれば、Twitterでも何でも構いませんので是非、頂ければ僕がすぐに伝えに行きますので。宜しくお願いします(笑)。

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※補足
後にZを除く、シリーズ全作のサウンドトラックが個別に発売。
2012年にはiTunesで一部シリーズの配信も始まった。(※2020年現在も配信中)


≫超執刀カドゥケウス サウンドトラック(iTunes)
≫ATLUS MUSIC 救急救命カドゥケウス2 サウンドトラック(iTunes)
≫HOSPITAL. 6人の医師 サウンドセレクション Vol.1 / Vol.2 / Vol.3(iTunes)
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---今後の展開に関してですが、また一旦カドゥケウスに戻るのでしょうか?それともホスピタルとして、新しいシリーズを続けていくのでしょうか?

金田:
僕の個人の思いだったら良いんですか?(笑)

一同:
爆笑

金田:
会社的には何も答えられない感じになってしまうんですが(笑)、あくまでも僕個人としては、両方やって行きたいですね。やっぱりカドゥケウスは好きです、大好きです。だからもっと、カドゥケウスでとんがって行きたいです。
ホスピタルも凄く愛しています。こんなに頑張ったゲーム久しぶりだというぐらいに苦労もしましたし。だからこのゲームはこのゲームで伸びて行って欲しいですし、ホスピタルの幅というのが新しいシリーズのスタートになってくると良いなとも思っています。もしもその、救急、検視、診断と言ったものがそれだけでも面白いと評価されれば、それで違う方向に伸びていけますし。それが自分の希望でもあり、目標ですね。

---最後に、発売直前PVで月森先生らしき人物が映りましたが、前作キャラクターは他にも出てくるのでしょうか?

金田:
それは秘密にさせてください(笑)。プレイしてからのお楽しみです!


◇プレイヤーの方々へメッセージ


金田:
ホスピタル、発売目前ですね。本当に挑戦的なタイトル、ただ奇をてらっただけではなく、ゲームは本来、やった事が無い事が体験できる、それが魅力であったはずだと、そう言ったところに立ち返って、より良い形で仕上げたつもりです。
是非、楽しんで頂きたいですし、より多くの方にこのゲームはどうだったと、伝えて頂ければ嬉しいなと思います。本日はありがとうございました!

スタッフ:
じゃあ次に土居さん。

土居:
……。結構、言う事ないんですよね……(笑)。

一同:
爆笑

土居:
こんだけ語られたらもう……(笑)。
もう、ディレクターがいいお言葉を言ってくださって、僕の方から言う事はないんですけど(笑)。
あえて言うならば、そうですね。ゲームとして我々、思いを色々込めて作って行ったのですが、今日、体験されて凄く面白いと感じてくださった方は是非、引き続きまたご自宅でもプレイして頂ければなと思ってます。

その際にテーマじゃないんですが、こちらから意図して考えていた部分というのが一つありまして。全部を描ききってないんですね。どういうことかというと、想像してもらいたいというか、ユーザーの方それぞれがこうなんじゃないかとか、考える余地というのを重要でないところに残して行ったつもりなんですよ。なんで、それぞれの方がみんなここはこうなんじゃないのか、今ここで描かれている部分は本編では描かれてないけど裏ではこういう事が起きてるんじゃないのかとか、面白味をそれぞれの方が見つけてもらえればなと。それが隠されたテーマとして自分的にはあります。そう言ったところも含めて、全てのユーザーの皆さんに遊んでいただければなと思ってます。
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