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≫HOSPITAL.(ホスピタル) 6人の医師


■販売元:アトラス / ■ジャンル:医療ドラマ /
■CERO:B(12歳以上対象) ※出血、殺傷、性、薬物描写等あり /
■定価:パッケージ版:6,980円(税込)、ダウンロード版:2,750円(税込)

◆公式サイト / ストアページリンク(ダウンロード版)
≫HOSPITAL. ホスピタル 6人の医師 | Wii U(商品&購入ページ)

◆スペシャル
≫『HOSPITAL. 6人の医師』ファンミーティングレポート(ディスカッション編)
▼Information
■プレイ人数:1~2人 / ■セーブデータ数:4つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可) /
■必要容量:3MB以上(セーブ)、3496MB以上(ダウンロード版) /
■その他:ヌンチャク必須 /
■推定クリア時間:28~35時間(エンディング目的)、120~150時間(完全攻略目的)
メリーランド州カンバーランド。
今日も多くの人々が、様々な車が、行き交い過ぎる。

そしてそこにそびえ立つ救急病院『リザルガム・ファーストケア』。
休む事を知らぬ医の砦として、人々の命を救い続けるその病院には個性的な名物医師達が居た。個々の事情を抱えながらも、耐える事の無い病魔との戦いを続ける毎日。
彼らにとってそれは、変わらぬ日常の1ページであった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆6つの医療ゲームを介しながら進行する、オムニバス方式の起伏に富んだゲーム展開
◆Wiiリモコンとヌンチャクの特性を最大限に使いきった、動かす楽しさ満点の操作性
◆制限時間制などのシビアな要素が撤廃され、より遊び易いものに進化した『外科パート』
◆操作の楽しさと緊張感抜群のゲーム展開が光る『救命救急パート』
◆『電流イライラ棒』を髣髴とさせる単純さ、独自の演出が魅力的な『整形外科パート』
◆絵に描いたような「お医者さんごっこ」が楽しめる『診断パート』
◆優し過ぎず、かと言って難し過ぎずの丁度良い塩梅で調整されたゲームバランス(難易度選択機能も完備しているほか、簡単な難易度はとにかく簡単なバランスでまとめられている)
◆会話シーンまでカット可能なまでに進化したスキップ機能(テンポも大幅に向上)
◆手術器具の割り振り、交代方式など、連係プレイの楽しさが強化された二人同時プレイ
◆初心者向けへの配慮として、豊富に仕込まれた操作ガイド・アドバイス機能
◆瞬時の判断が要されるゲーム性にマッチしたフルボイス演出(声優陣も豪華)
◆エンディングまで30時間、やり込みを含めると100時間は超過する圧倒的なボリューム
◆カドゥケウスシリーズ伝統の気持ち悪さ皆無のグラフィック(主に臓器系)
◆如何にも海外ドラマっぽい、大人っぽい作風が印象的な音楽
◆『病気』というテーマに焦点を当てた、熱くて見所満載のシナリオ
◆『動く漫画』とも言える個性的な演出技法が光るデモシーン

--- Bad Point ---
◆シナリオ、ボリューム的に浮き過ぎの『検視パート』
◆リモコンを前方に突き出す、癖の強い操作と慣れが求められる『内視鏡パート』
◆時系列順の並びとは言え、全体俯瞰機能が無いのが残念なエピソードセレクト画面
◆中断方式でない為、ぶっ通しでプレイしなければならないスタイルがやや厳しい『診断』と『検視』のセーブシステム
◆力加減の判定の曖昧さがタマにキズな『整形外科パート』のマレット操作
◆シナリオにおける消化不良な描写の存在(特にCR-S01は描写不足過ぎる気が)
◆棒読み演技の『診断パート』最初の患者、ニコル・サマーズ(賛否が分かれる…)
▼Review ≪Posted date : 12/26/2010 / Last Update : 4/21/2021≫
「病魔よ、永遠に眠れ。」

そして、奇跡を起こせ。



手術アクションゲームという新ジャンルを確立し、国内外を問わずに高い評価を得た傑作『カドゥケウス』シリーズのスタッフが送る、新作医療ゲーム。

全6つの斬新な医療ゲームとWiiならではの独自の操作感が堪能できる、ボリューム満点・やり応え満点の傑作だ。

ジャンル名で『医療ドラマ』と名乗っているが、その詳細な内容はアクションとアドベンチャーの二つのジャンルを収録した、オムニバス型のゲーム。プレイヤーは全部で6つの医療ゲームに挑戦し、各パートで展開されるストーリーを進めていくというのが基本となる。
本編はステージクリア方式で進行。基本的には今作の前身に当たる、カドゥケウスシリーズの系譜に連なるシステムを起用している。但し、ゲーム自体はカドゥケウスと似て非なるもの。カドゥケウスは外科一本に特化した医療アクションゲームだったが、今作は先も話した通り、6つの医療ゲームを収録した内容。一本だけに特化した、ストレートなゲームでは無い。アクションあり、アドベンチャーありの『ごった煮』という表現がよく似合う、盛り沢山なゲームとなっている。
そんな今作に収録されている6つの医療ゲームは以下の通り。
なお、各パートはそれぞれ、主人公も異なる。

◆外科(主人公:CR-S01)
外科手術アクション。お馴染みのカドゥケウスである。基本システムやヌンチャクとリモコンによる操作体系は過去、Wiiでリリースされた『カドゥケウスZ 二つの超執刀』、『カドゥケウスNEW BLOOD』で完成されたものを踏襲。シリーズ経験者ならば、全6種類の中で最も抵抗無く入っていけるパートとなっている。
但し、カドゥケウス最大の特徴たる必殺技『超執刀(画面全体の時間の流れを遅くする技)』は無し。更にこれは他のパートもそうだが、制限時間制が省かれるなど(一部のオペでは制限時間がある)、ゲーム的な要素は大分削られている。
また、一つのオペにかかる時間も長めに。しかしその分、焦らず集中してプレイできるようにもなったので、難易度はカドゥケウスよりも低下。非常に遊び易い、誰もが遊べる外科手術アクションという新たな形にまとめられている。

◆救命救急(主人公:マリア・トレス)
文字通りの救命救急アクション。怪我を負った患者に応急処置を施し、搬送していくというのが主な流れ。救命救急なだけに一度に複数の患者を診るのが基本で、非常に忙しい内容となっている。
システム、ルール周りも特殊。治療器具をヌンチャクのスティックで選択し、リモコンで使用すると言った所は外科を踏襲しているが、選べる器具の種類は4つ。更に状況に応じ、右側に特別な器具、アクションがセットされる方式となっている。一部アクションにはリモコンを振る、傾けると言ったモーションセンサーを使ったものも用意されており、外科とは異なる操作感の妙が味わえる。ゲームオーバー条件も、画面左上の『LIMIT』に記された数の患者の救助に失敗するという、救命救急の設定を活かしたものになっている。
また、一度に複数の患者を診るという内容という事で、患者を切り替えるシステムも実装。切り替えは画面右上の『トリアージタグ』という患者のアイコンをリモコンでポイントし、Aボタンを押すだけの簡単操作となっている。
なお、『トリアージタグ』は患者のバイタル(体力)も示しており、基本的にこれが黒になってしまうと救助失敗を意味する。タグの状況を見て、どの患者を最優先に処置すべきか、そう言ったプレイヤー自身の判断力が求められてくるのもこのパートの特徴の一つである。
総じて「忙しい」という動詞がよく似合うアクションゲーム。外科とは異なる、緊張感満点のプレイが味わえるパートだ。

◆整形外科(主人公:ハンク・フリーバード)
矯正アクション。またの名を『電流イライラ棒』、医療バージョン。ガイドラインに沿ってメスで切り続けたり、指定位置まで固定器具を当てはめたりなど、慎重な操作が求められる内容となっている。
外科、救急救命、後述の内視鏡のパートと異なり、器具選択が無く、処置する患部に応じ、器具が自動的に選択される仕組みとなっている。その為、ヌンチャクを使う機会は非常に少ない。但し、器具によってはヌンチャクを使わなければならないものも存在するので、全く使わないという訳ではない。
システム周りもそれに倣うが如く単純で、次々と課せられる患部の処置を淡々と行っていくだけ。ゲームオーバー条件も、『LIMIT』で記された回数を超えるミスをしてしまった場合と、分かり易いものとなっている。
ただ、単純故に一つの患部の処置に必要とされる時間が非常に長く、相当な集中力が必要となる。また器具の中には『ドリル』、『マレット(ハンマー)』、『ノコギリ』など特殊なものも存在。リモコンでポイントして引っ張り、所定の位置で止めたり、思いっきり振って叩いたりと、神経がすり減らされるかのような慎重なプレイも求められて来たりと、息付く暇も無い。
取っ付き易さは全6つの中でも群を抜いているが、手強さも群を抜いている。
ある意味、油断大敵なパートである。更にこのパートはストーリーも必見だ。

◆内視鏡(主人公:トモエ・タチバナ)
内視鏡手術アクション。唯一の3D視点で展開されるパート。内視鏡を押し込みながら食道などの器官を探索。患部を見つけ、器具を使って処置していく。
操作体系が非常に個性的で、基本となる押し込みは実際の内視鏡のようにリモコンを画面奥に突き出しながら行うという、独特のものとなっている。更に器具を扱う操作も独特。Cボタンで器具パレットを開き、スティックで選択、Zボタンを押して使用するという、かなり癖の強い仕組みだ。その為、全6つのパートの中で最も操作の慣れが求められる作り。特に器具操作は、外科や救急と仕様がまるで異なる為、使い慣れるまでに相当な時間を要する。「絶対に習得してやる!」というやる気を持ってプレイしないと、恐らく挫折は必至。敷居の高さでは群を抜いてるパートと言える。
ただ敷居が高い分、慣れた後は面白さが急上昇。特に最初は10分以上も要していたオペが、1分ぐらいで攻略できた際に味わえる上達の快感は格別だ。やり込めばやり込むほど、攻略時間が短縮できる為、タイムアタックのやり込みもなかなかの熱さ。スルメな中毒性がある。患部の処置も外科、整形外科とは違った操作が求められるので、結構新鮮。焼いたり、切り取ったりなど、ここでしか味わえないアクションも満載だ。
敷居の高さがタマにキズだが、その分、やり込むと面白さが増していく作り。取っ付き難いけど侮れないパートである。

◆診断(主人公:ガブリエル・カニンガム)
アドベンチャーゲーム。患者の話を聞いて異常を突き止め、CTスキャンなどの様々なデータと刷り合わせながら、病名を特定するという内容。世間一般で最も有名な「お医者さん」の気分が味わえる、魅力満点のパートだ。
本編では画面左のコマンドを選びながら患者の診断を行い、怪しいと思われる場所(台詞)をリモコンでポイントし、Aボタンで決定。それが症状だと判定されると、データが手に入る。このデータを可能な限り集め、自室にある診断機で照合を行い、病気の正体を突き止めていくというのが主な流れだ。なお、症状でないものを間違って判定するとミスになり、『LIMIT』の値が減少。ゼロになってしまうと、ゲームオーバーになる。なので、迂闊な操作は禁物。冷静な分析力と観察眼が求められる、如何にもお医者さんらしいゲームデザイン、バランス調整が図られた内容に仕上げられている。診断で行うものも、話を聞く『問診』、聴診器を腹部に当てて異常が無いかを調べる『聴診』など、如何にもなものが満載。CTスキャンなどの画像比較検証もあったりと、なかなか本格的な作りとなっている。
ストーリーも捻られており、主人公と相棒のAIである『RONI(ロニ)』とのやり取りは、静かな本編の流れに華を添える。本編も意外な展開が幾つかあり、クリアまでは長いものの、ダレることなく遊べるのも結構な強みである。
まさに、色んな意味でありそうで無かったと言える内容。医者の気分を味わうのなら持ってこいのパートである。

◆検視(主人公:ミラ・キミシマ)
アドベンチャーゲームその2。遺体や遺留品などを調べて異常を突き止め、事件の真相を探っていくという内容。全6つの中で最も医療らしさに欠けるパートであり、最大のボリュームを誇るパートでもある。
本編は遺体を調べて異常な部分を突き止め、『証拠カード』と呼ばれる事件解明のカギとなるものを回収。自室にセットされたパソコンで集めたカードを整理。他の証拠カードと刷り合わせ、推理・検証しながら『証拠』を完成させていく、というのが主な流れとなる。最終的に十分な量の証拠が完成すれば事件が解明され、ステージクリアとなる。
怪しい部分をチェックするなど、やる事は診断とほぼ同じ。ただこちらは間違ったものを指摘してもペナルティはない。ペナルティがあるのは推理・検証を行ってる際に挟まれる4択クイズの時のみ。ここで間違った答えを選択してしまうとLIMIT値が減少。ゼロになると、ゲームオーバーとなる。その辺のシステム(ルール)は診断のものを踏襲している。
全体的に「医療じゃない感」が強く、別のゲームをプレイしているかのような錯覚に陥る作りだ。特に事件現場の検証を行う場面では、自分は一体、何のゲームをプレイしているのか、と自問自答したくなる。更に遺体の調べるとは言いながら司法解剖の要素も無いので、ますます医療ゲームらしくない。
しかし白骨死体の復元、傷の検証、病気に焦点を当てたストーリーなど、それっぽさは辛うじて残されている。純粋にゲームとしてもよく出来ており、これ一本でも一つのゲームが成り立つと言っても良いほどだ。また、このパートの主人公は『カドゥケウスZ 二つの超執刀』で登場したミラ・キミシマで、それ故にカドゥケウスとの関連を匂わせる展開も多い。
そういう点ではカドゥケウスファンなら要プレイのパートとも言える。

以上、6つのパートをプレイし、ストーリーを追っていく。
全6つのパートは自由な順番でスタート可能。外科からやりたければ外科からと言った感じに、気ままに楽しめる設計となっている。但し、全パートのストーリーは一つの時系列に従って展開。内容は各々別物だが、その順番に沿ってプレイすると、他のパートの詳細な繋がりが分かったりなど、様々な発見がある。時系列の順番は、セレクト画面に描かれた『軸』の位置で確認が可能。時系列に沿ってプレイするか否かは自由なので、無理に従う必要も無いが、ストーリーを楽しみたい方ならば、そのようにプレイする価値は大いにある。
バラエティー豊かな全6つの医療ゲーム、ストーリー重視のシステムなど、全体を通して外科一本に特化したカドゥケウス以上にボリューム満点、且つやり応え満点の内容。更にWiiらしい操作の魅力も余す事無く反映させているなど、本気度も全開だ。さすがはWii独自のゲームを作るのにはこなれた、カドゥケウスシリーズの開発チームと言ったところか。その持ち味が存分に発揮された出来栄えとなっている。

そして、今作の魅力は例によってその6つの医療ゲームである。それぞれが独自のシステムとゲーム性を持ち、且つ面白くてやり応えのある内容にまとめられているのには素直に驚かされる。その差別化の上手さは、もはや芸術の域と言っても過言でないほどのレベルに達している。
6つのパートはいずれも素晴らしく面白いが、中でも救急救命と診断は将来的な発展の可能性を秘めたパートと言える。前者、救急救命は複数の患者を同時に処置するライブ感に富んだ雰囲気、そしてスピードが求められる高いアクション性、Wiiリモコンの魅力を余す事無く反映させた独自の操作感が実に魅力的。中でもアクション性の高さは群を抜いており、ステージのバリエーションや唐突な展開を増やしたりすれば、より魅力的な内容に化ける可能性を秘めている。純粋にアクションゲームとしても楽しく、リモコンを振って心臓マッサージをするなど、Wiiだからこそ出来た医療ゲームだと言い切れる、動かす楽しさは格別だ。Wiiならではという意味では、内視鏡もそうだと言えるが、敷居の低さで見ればこちらが上だ。直感的に楽しめ、尚且つ操作を始めとする新鮮な体験が楽しめる。これほどWiiならではの味が発揮された医療ゲームも他に無いと言っても良いだろう。それほどの魅力と可能性が満ちた内容となっている。
後者、診断も世間一般の「お医者さん」が体験できる、それだけでも魅力的。また、素人目では簡単そうに見えながら、裏では結構大変な事が行われているという、診断医の実態が知れるのも非常に興味深い。フィクションも混じっているものの、診断医になりたいと思う若い方は、今作をプレイすると勉強のヒントが掴めるかもしれない。個性的な内容だけでなく、このパートが今作の『HOSPITAL.』という名を体現してるのも面白いところ。ここで診た患者が別のパートで登場する展開にワクワクするのも、このパートの存在感あってこそのものだろう。そういう意味では、独立させたゲームにするには無理がある作りとも言える。しかし、医療ゲームとしてのらしさを強調させるものとしては、これほど適したものもない。今後、どんな形で使われるかが楽しみなパートと言えるだろう。
ゲームとしての遊び易さも今作は群を抜いている。難易度選択機能の実装と全体の難易度の引き下げ、ゲーム的な要素の撤廃など、カドゥケウスの魅力でもあり欠点でもあったシビアさを徹底して削り、本当に人を選ばぬ作りに化けている。中でも、初心者向け難易度『インターン』だけに実装された、途中再開機能は大変便利。ゲームが苦手な方でも安心して今作の醍醐味に浸れる、懐の広さを演出している。更にチュートリアルも今回は専用ウィンドウを表示して詳細に解説するなど、丁寧な作りになり、医療ゲームに対するプレイヤーの抵抗を緩和してくれるのが実に印象的だ。人間に手を入れるという未体験の事を行うゲームだからこそ、丁寧に解説しなければプレイヤーの不安感を煽る。そして、制限時間制などの不安感を煽る要素も基本から外す。そんな気を使った配慮も今回は多く、如何にスタッフがより多くの人に遊んでもらいたいかを意識しているのが伝わって来る。そしてそれらは実際に機能しており、人を遊ばない遊び易さが見事に表現されている。結果がきちんと出てる辺りにこのゲームが如何に本気で作られたのかを思い知らされるばかりだ。
しかし、至らぬ所もある。特にパートごとのボリュームバランスの悪さは手放しに褒められない。特にアドベンチャー、主に検視は医療からやや離れた内容も含め、もう少し抑えられなかったのか突っ込みを入れたい所だ。本編の大半が検視が締めてるというのは不健全。せめて診断ぐらいのボリュームに抑えて欲しかったものである。
ただ、そのボリュームもストーリーでカバーするなど、全てがダメというほどの出来になってないのだから凄い。更にシステムも含め、単品でも十分に勝負できるほどの濃い内容であるなど、本気全開だ。丁寧な差別化に秘められた可能性、そして高い水準でまとめられたゲーム性に遊び易さへの配慮と、総合的に見てとにかく作り込みのレベルは桁違い。そしてゲームとしても贅沢で、斬新な体験が味わえるという魅力満点の内容。こんなにも誰もが楽しめる新しいゲームも、Wiiでは稀と言っても良いのでは無いだろうか。本当、新しくて遊び易い凄いゲームなのである。前身に当たるカドゥケウスも稀なゲーム性を表現していたが、今作はその上。まさにサードパーティ製ゲームでは、トップクラスの本気度だ。

救急以外のパートの操作性も快適。外科はカドゥケウスの操作体系を継承してるだけに触り心地が良く、整形外科やアドベンチャー全般は直感的且つ手軽に触れるなど、高い水準でまとめられている。内視鏡だけ、癖は強いが、それも慣れれば快適と調整は十分。さすがはWiiのゲームには手馴れたスタッフが作っているだけにある、磐石の仕上がりだ。
ゲームバランスも今回、シビアさが緩和されたので優し過ぎず、難し過ぎずの丁度良い歯応えに。無論、従来の鬼畜な所もクリア後のおまけとして残されているので、物足りない方向けのサポートも万全だ。ボリュームも内容からして明らかだがたっぷり。エンディングを目指すだけでも30時間を要するなど、確かな満足感が得られる量となっている。やり込み要素も豊富で、コンプリートを目指すと100時間は超過する。
グラフィックもカドゥケウスシリーズ伝統の臓器や血の気持ち悪さ、生々しさを徹底的に廃した作風を継承。十分見耐えうる素晴らしい作りとなっている。音楽も魅力的な楽曲が満載。更に整形外科では、ミス無く患部の処置を続けると曲がどんどん盛り上がっていくなど、個性的な仕掛けが仕込まれてるのも面白い。効果音もグラフィックと対象的に生々しく、手術の緊張感を引き立てているのが印象的だ。

ストーリーも面白い。特に後半、6つのパートを全てクリアした後に開かれる共通パートで展開されるストーリーは実に熱い。キャラクターも魅力的で、特に診断の相棒キャラである『RONI(ロニ)』、整形外科の主人公ハンク、検視の相棒ネイヴルはいずれも必見だ。
また、ストーリーが展開するデモシーンは『動く漫画』とも言える個性的な描写となっているのが面白い。更に『カドゥケウスNEW BLOOD』に倣い、フルボイスであり、ゲームプレイの快適化と臨場感のアップに一躍買ってるのも見事だ。声優陣も実力派ばかり。中でも救命救急の主人公、マリア・トレス演じる生天目仁美の鬼気迫る早口の演技は圧巻の一言。只でさえ熱い救急の展開を大いに盛り上げてくれる。
その他、ロード時間は皆無、セーブはフルオートなど快適性へのこだわりも随所にて炸裂。オペ中のイベントを全部カットする強化されたスキップ機能も見逃せない。
総合的にも見て、まさにWiiを代表する一本というに相応しい完成度を誇る今作。検視の浮きっぷりや内視鏡の操作など、惜しい所も散見されるが、それを捻り潰すほどのパワーが各パートのゲーム性に溢れている。
断言しよう。これはWiiを持っている全てのユーザーが遊ぶべき至高の傑作だ。Wiiでしか味わえない面白さと興奮が今作にはある。これを体験せずしてWiiは語れない。是非ともプレイするべし。お薦めです。カドゥケウスファンも要プレイだ。
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