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≫WILD ARMS XF(ワイルドアームズ クロスファイア)
■発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
■開発元 メディアビジョン
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)≪※Best版:2079円(税込)≫
ダウンロード版:2200円(税込)
■公式サイト ≫こちら / ≫こちら?
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(※使用容量:225KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、『WILD ARMS 5th Van Guard』との連動あり(※USBケーブル対応)
■総説明書ページ数 59ページ
■推定クリア時間 45〜55時間(エンディング目的)、70〜90時間以上(完全攻略目的)
惑星規模で緩慢な崩壊が進行している世界、ファルガイア。世界の各地では滅びの世界に僅かに残された資産、食料、土地、財産を巡り、いつ終わるとも知れぬ争いが繰り広げられている。

そんな中、広大な領土と高い国力を有するエレシウス王国は、混乱にあえぐ他の国家と比べ、平和な環境を保っていた。
1年ほど前、第一王女『アレクシア・リム・エレシウス』が事故死を遂げるまでは。
そして王女の死と機を前後し、病に伏せていた国王ラスニールに変わり、国政を取り仕切る事となった『元老院』は過去の姿勢を一転して圧政を敷き始め、民を苦しませていた。

元老院に対する決起も起き、事実上の混乱状態となったエレシウス王国。そんなこの国に一人の渡り鳥の少女と護衛の男が、母の仇である賞金首を追って降り立つ…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シンプル且つ、取っ付き易さに秀でたシミュレーションRPGとしての基本システム
◆全滅、制圧の他に脱出援護、敵の全滅回避など、多彩なミッションで楽しませてくれる60以上もの戦闘マップ
◆シミュレーションRPGとしてはあまりに奇抜な、謎解き&潜入ミッションマップ
◆能力差だけでなく、ユニットのクラスとマップとの相性も攻略のカギになる、独特の手強さを演出した戦闘バランス
◆マップの攻略に密接に絡むバランス調整が面白い、ユニットのクラスチェンジシステム
◆物理・魔術攻撃を得意とする者、投げ攻撃などの特殊攻撃を得意とする者まで、個性を露骨に現す調整が図られた、全19種ものユニットクラス
◆やり込み要素は乏しいが、本編は充実しまくりの全体ボリューム(普通にクリアするだけでも40〜50時間強はかかる)
◆自分好みのユニットにカスタマイズできる楽しさに秀でた『スキルスロット』
◆ロード時間もなく、直に最初からやり直せるのが快適なマップのリトライ機能
◆システム解説、マップ別の戦略指南など、初心者には心強いサポート機能の数々
◆PSPではワリと珍しい、ドット絵全開の懐かしい香り漂うグラフィック
◆各種イベントや戦闘を大いに盛り上げる、熱過ぎる音楽(名曲も盛り沢山)
◆臭い台詞全開のワイルドアームズらしい、熱いシナリオ
◆熱いシナリオを大いに盛り上げる、無駄に個性の強いキャラクター達(特に敵側)
◆淡白だが、熱い音楽との相乗効果で、それを思わせない程に盛り上がるイベント演出

--- Bad Point ---
◆基本システムのオリジナリティの乏しさ(思いっきりタクティクスオウガの二番煎じ…)
◆決まって装備している武器等が外されるクラスチェンジシステムの仕様
◆操作周りにやや癖のある、戦闘マップでのリング方式で構成されたコマンドメニュー
◆非搭載の中断セーブ機能
◆中断セーブ機能が無い為、ぶっ続けで戦わねばならない仕様の連戦マップ
◆後半における、連戦マップの多さ(先のセーブ機能が無いのも考えて、これは鬼。)
◆高難易度のマップを用意し過ぎな感が否めないAct1(第一章)
◆ロード時間の遅さ(特に戦闘マップ開始時のロードが遅い。)
◆シナリオにおける、難読漢字の過剰過ぎる乱用(しかもルビが振られてない…)
◆声優陣の演技力の乏しさが際立つキャラクターボイス(オプションでボイスはOFFにできる)
▼Review ≪Last Update : 2/7/2010≫
ゲームよりサウンドトラックの方が割高とは、これ如何に。

参加してる作曲家の数の影響なのか。。


王道を貫いたゲームシステム、臭い台詞全開の独特のシナリオで根強いファンを獲得した傑作RPG『ワイルドアームズ』シリーズの外伝作品。開発は過去のシリーズも手掛けたメディア・ビジョンエンタテインメントが担当。

システムは平凡だが、独特の「熱さ」が光る秀作シミュレーションRPGだ。

先に大っぴらにしておく。今作はワイルドアームズの姿をしたタクティクスオウガである。内容自体は至って平凡なシミュレーションRPG。ユニットをカーソルで動かし、敵を倒して与えられた勝利条件を達成していくというものだ。
しかし、今作全体を構成するシステムの大半は、先ほども言ったようにタクティクスオウガのそれ。ユニットの素早さ単位で行動順が決定されるターンの仕組み、マップの高低差、クラスチェンジによる特殊能力の獲得と、あからさまにそれを模したとしか思えない要素で成り立っている。戦闘システムにしても基本、マップ上で展開される仕組みとこれまたタクティクスオウガ。更に深いところまで行くと、相手の属性との相性による攻撃力補正まであるという徹底振り。ここまで何処かで見た事のある要素で構成されたシステムを前にすれば、未経験者はまだしも、経験者なら「何処かでやったような…」と感じてしまうのも必至である。本当、何処から何処を取っても「そっくり」な作りの内容となってるのである。
とは言え、さすがに全てが物真似という訳ではなく、バックアタック(ユニットの後方を狙う攻撃)による命中率補正、天候変化によるマップの変化とかは今作には無い。また、マップのマス目もスクエア(四角形)でなく、『フォースデトネイター』と『フィフスヴァンガード』の戦闘システムを彷彿とさせる、ヘックス(六角形)と差別化が図られている。
本編も基本的に一本道。「僕にその手を汚せというのか」な選択肢を求められてくる事もなければ、最後のエンディングが異なる分岐も無く、マップ攻略に集中できるので気軽に楽しめる。ただ、一本道にしても全体マップ上を移動していく流れはタクティクスオウガのそれ。そこに限って言えば、オウガを知るユーザーなら既視感を覚えるかもしれない。
また、マップデザインにしても独自の味付けが凝らされている。
主に勝利条件全般だが、単に敵ユニットを倒す以外に目的地への到達、民間人の脱出援護、敵ユニットの全滅回避など、バリエーションが多彩且つ新鮮で、他のシミュレーションRPGにはあまり無かったタイプの戦闘が楽しめる作りとなっている。マップ自体にも敵ユニットが一体も登場せず、スイッチの解除作業に集中するという、シミュレーションRPGなのに謎解きを求められるものがあったりと、これまた奇抜。更に敵ユニットに見つからずに移動し、牢獄に囚われた民間人を解放していく、某メタルギアを思わせるようなマップまであったりする。勿論、そのマップに限り、敵と戦闘すれば即敗北。
ここまで来ると、もはやシミュレーションRPGと形容して良いのかどうか分からなくなってしまうほど。そんなあまりにユニークな戦闘(?)が今作では味わえてしまうのである。
そんなマップのみならず、オーソドックスな敵の全滅を狙うマップにしても、連戦構成だったり、一騎打ちがあったりと、実に様々。ボスだけが勇ましく突撃してくるなど、何処と無くワイルドアームズらしいシチュエーションがあったりするのもまた、ちょっとした魅力である。
システム自体は正直、オリジナリティに乏しいと言わざるを得ない。ただ、マップデザインには斬新な試みが盛り沢山で、あまりこの手のジャンルでは見受けられないタイプの戦いが楽しめる。ある意味、マップで遊ばせる事に集中したシミュレーションRPGと言うべきか。オウガでありながら、そこに重きを置いた作りとなっている。
安易な二番煎じと思いきや、意外にそうでもないのである。

例によって、今作最大の魅力はそのマップデザイン全般だ。シミュレーションRPGのジャンルでは、あまり見受けられない類の個性的な戦いの数々。スイッチ解除の謎解きから某メタルギアな潜入ミッションまで、いずれもシミュレーションRPG未経験者、経験者に対し、これまで味わった事の無い手応えを提供してくれる。
主に経験者なら、相当な衝撃を受けるに違いないだろう。何しろ、シミュレーションRPGで謎解きだ。アクションアドベンチャーやRPGでお馴染みの遊びをこんなゲームでやるのだから、また驚きである。ショックを覚えないのがおかしいと言っても良い。肝心の謎解きのネタ…スイッチ解除も、きちんとした順番を追っていかないと詰むなど、濃い目のパズル色が醸し出されているのが印象深い。スイッチ解除以外に他のユニットにボタンを踏ませ、足場を確保して目的地に到達するなど、如何にもアクションアドベンチャーなネタがあったりするのも面白い。元々、謎解きには定評のあるワイルドアームズシリーズなだけあって、こんな要素を入れるのもシリーズとしての意地と言ったところだろうか。シミュレーションRPGというジャンルであっても、その魅力を表現しようとするこだわりには、感服する限りである。
マップのアイディアのみならず、本編全体の構成もかなり上手い。敵全滅が条件のマップにしても先のような連戦、一騎打ちを入れたりし、きちんとした差別化を図っている。類似マップの使い回しも多いが、敵の種類と配置を変えるなど、それまでと違う展開を演出しているのも見事。マップ自体の多様性と奥の深さが丁寧に表現されている。一回の使い捨てにせず、最大限に活かしきろうとする工夫の徹底振りには、これまた感服する限りだ。そして、バランス周りの調整も見事。個々のユニットを最大限に活かして戦う、如何にもシミュレーションRPGらしい絶妙なバランスを維持している。
でも、それ以上に秀逸なのは、クラスチェンジのクラスごとの性能が左右される調整が図られていること。用意された大半のマップには、決まって「相性の良いクラス」が設定されており、そのクラスで戦うことで優位な展開に持ち運べたりするのができるのだ。逆に相性の悪いクラスだと、不利な展開ばかりで厳しい戦いを強いられたりと、その結果が露骨に表れる。そんな解法を探り当てるかのような、パズル的味わいが今作のバランスには付け加えられているのだ。どのクラスなら有利な展開が作れるか、それを調べる為に試行錯誤する過程は中毒性高し。少し変わった戦略を練る面白さに満ちているのが新鮮だ。また、「相性の良いクラス」が必ずしも良い結果を生む訳で無いとされてるのも面白い。絶対でなく、あくまでも答えの一つとして設定したに過ぎないそれは、自由に考えて楽しんで欲しいというシミュレーションRPGらしい考える醍醐味、意外性が活きていて秀逸だ。これで仮に答えが絶対だとしたら、さぞかしつまらないゲームになっていたに違いない。それを防ぐ為、自由度を残したのはさすがと言ったところである。
また、各種クラスは経験を積む事で進化し、様々なスキルを習得する。この習得したスキルは別のクラスに装備する事もでき、二つのクラス分のスキルを持ったユニットが作れる、カスタマイズ的な楽しみがあるのも魅力的。これを活かして、不利なクラスを有利なクラスに仕立てあげるなど、やり方次第では、圧倒的な強さを得たユニットを作り上げられることも。こんなユニットに独自の味付けが行えるのもまた、今作ならではの売りである。
ただ、そんな感じにスキルを大量習得する事により、中盤以降から少し無双的な展開が生まれてしまう辺りはさすがに調整不足。幸いにして、一人だけの単騎で戦うと瀕死に追い込まれるなど、一定の調整は図られているが。でも、さすがに強くなり過ぎてやや一方的になるのは問題。願わくば、装備できるスキルを減らすなど、強くなり過ぎない工夫を凝らして欲しかったところだ。
とは言え、そこを除けば全体的には概ね綺麗にまとまっている。個性豊かなマップ、そしてパズル的な戦闘バランスと、いずれも今作が独立したシミュレーションRPGとしての存在感を発揮する要素としては、申し分ないものと言っても良いだろう。システムは二番煎じながら、明確な違いを出したその姿勢は実に見事だ。

しかしその他、操作性は多少難あり。戦闘のコマンドウィンドウだが、いわゆるリング方式で、選択時の操作感に少し癖がある。レスポンスは申し分無いのだが、できれば選択のし易さを踏まえて、縦一列に並べる形式を取って欲しかった。
また、快適性の面でもいささか不親切な点が目立つ。クラスチェンジをすると決まって装備品が全解除されたり、中断セーブ機能が無いなど。
特に後者、中断セーブは連戦マップがある内容にして未搭載は酷い。これは何が何でも入れるべきだった。或いは連戦マップを少なめにするなど、何らかの処置を取って頂きたかったところだ。さすがに携帯ゲーム機でプレイするゲームにして、この仕様は酷すぎだ。ちゃんとハードの仕様を考えた処置を取ってほしい。
逆にボリュームはそこそこ。アイテム収集や隠しボス等のやり込み要素は乏しいのだが、メインが40時間以上とかなりある。その内容量を考えれば、妥当な線と言って良いだろう。
グラフィックもそこそこ。音楽の方は相変わらずの質の高さだ。戦闘曲、イベント曲、全てが各場面にマッチしていて大いに盛り上がる。名曲も素晴らしいほど多く、特にヴァイスハイト戦やルパート戦の曲は要チェックだ。

シナリオもワイルドアームズらしい臭い台詞全開の熱い内容。少し好みは分かれるが、シリーズファンなら大満足の出来栄えと言えるだろう。しかし、演出面は難あり。主にボイス周りだが、声優陣のレベルが壊滅的に低く、聴くだけで萎える。しかも大半の声優陣は、ヴァイスハイトの比嘉久美子氏を除き無名の新人ばかり。その為、演技力にも乏しい。一応、このボイスはオプションで消せるとは言え、これはキャスティングに問題あり過ぎだ。予算の都合にしても、もう少し良い人を選べなかったのか。唯一のベテラン、比嘉久美子氏は無難な演技をしているだけに、もっとそれにあったキャスティングをして欲しかったところだ。 そんな感じに欠点もワリとある今作。ゲームとしても正直、タクティクスオウガの二番煎じなので、オリジナリティは皆無に等しいと言っても良い。
しかし、出来は上々。マップデザインからバランス調整面まで、独自の工夫が光っていて、他のシミュレーションRPGに無い面白さが引き立っている。ある意味、未体験の遊びが詰まってると言っても良い今作、『WILD ARMS XF(ワイルドアームズ クロスファイア)』。シミュレーションRPG好きなら是非、プレイしてみて欲しい二番煎じの傑作である。PSPを持ってるユーザーも音楽目的でプレイしてみる価値はある。それだけでも元は取れます。
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