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≫勇者のくせになまいきだ。
■発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
■開発元 アクワイア、ライドオン・インコーポレッド(プログラム)
ノイジークローク(音楽)
■ジャンル ダンジョンマネージメント
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)<Best版:2079円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(使用容量:128KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、UMDPassport対応タイトル
■総説明書ページ数 34ページ
■推定クリア時間 1〜2時間(エンディング目的)、25〜30時間以上(完全攻略目的)
破壊神様、おはようございます。
初めまして。
私は世界征服を目論む魔王でございます。
突然ですが、我等魔王軍の拠点となるダンジョンに、
憎き勇者どもが攻めてくるとの情報が入りました。
お目覚めしたばかりで大変恐縮なのですが、
破壊神様には早速、つるはしを持って頂き、
ダンジョンを掘り進めながら魔物を作り出してもらいますぞ。
そして、正義ぶった勇者どもを撃退し、世界征服を果たすのです。

そう、私のために!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆土を掘ってダンジョンを作り、魔物で魔王軍を編成して勇者を撃退する、逆転の構図を描いた独創的なゲームシステム
◆PSPの液晶の広さを最大限に活かした工夫が光る、独自の画面構成
◆悪戯に穴を掘って魔王軍を編成してもそう簡単には勝てない、戦略の重要性をきちんと表現したゲームバランス
◆独自の能力(技)のみならず、自然界の食物連鎖の惨さを体現する「生き方」までも披露する、個性豊かな魔物達
◆タイトルの「生意気さ」が見事に表現された、手強くて個性的な勇者達
◆昔のゲームを髣髴とさせる連戦形式で展開する、歯応え満点の『ストーリー』モード
◆詰め将棋的な楽しさに富んだ『チャレンジ』(課題も30以上とやり甲斐満点)
◆某大作ゲームの台詞が使われたり、著名な人物が出て来たりと、スレスレなネタ満載で展開する爆笑必至のシナリオ
◆テキストがネタだらけの『いきもの図鑑』(単に読むだけでも笑える)
◆十字キーと1ボタンしかメインでは使わない、シンプル且つ快適な操作性
◆丁寧な上にネタだらけのテキストで展開する、笑えるチュートリアル(退屈さ皆無!)
◆昔懐かしのゲームを髣髴とさせる、ドット絵全開の暖かみのあるグラフィック
◆リコーダーによるほのぼのとした旋律が癒しを与える、独特の音楽
◆隠し難易度制覇から高ランクチャレンジまで、なかなか充実しているやり込み要素
◆驚愕のエンディング(>『ストーリー』モード)

--- Bad Point ---
◆独創的だが、精密な戦略が試される故に多少、癖もあるゲームシステム
◆物足りなさも際立つ、『ストーリー』の総計ボリューム(エンディングまでは短い)
◆歯応えはあるが、シビア過ぎる感も否めない『ストーリー』のゲームバランス
◆非搭載の中断セーブ機能(ストーリーモード用に実装すべきだった)
◆「ニジリゴケ地獄」なる最強戦術の存在(これをやると難易度がガクッと下がる…)
▼Review ≪Last Update : 12/20/2009≫
僕にこの手を汚せというのですか…。

ええ、…土でね。


ソニーコンピュータエンタテインメント主催による、新たな才能を持ったクリエイター発掘プロジェクト『ゲームやろうぜ!Digital Meister』に寄せられた企画がきっかけとなって誕生した、ダンジョンマネージメントなる新作ゲーム。開発は『天誅』シリーズで知られるアクワイア、プログラム部分をライドオン・インコーポレッド、音楽を『龍が如く』シリーズや『ポケモン不思議のダンジョン』などで知られるノイジークロークが担当。

高い戦略性と中毒性を秘めた、意外過ぎる傑作だ。

ゲーム内容は極めて特殊。広大な地底フィールドの土を掘って魔物を誕生させ、ダンジョンを創造し、そこに攻めて来る勇者を撃退する、ダンジョンマネージメントなるゲームである。もの凄く簡潔に言ってしまうと、迎撃シミュレーションゲーム。魔王を守る為、ダンジョンを作って勇者を迎え撃つ、というものだ。
ゲームは基本的に地底の土を掘ってダンジョンを作るパート、侵入してきた勇者を迎撃するパートの二つを軸に展開する。最終的にダンジョンに侵入してきた勇者を撃退できれば勝利。逆に将棋で言う『王将』に当たる魔王が勇者に捕まり、そのままダンジョンから逃げられてしまうと敗北となる。ダンジョンを作るパートは基本的に土を掘り、モンスターの誕生の二つの行為を繰り返していく。土掘りは至って単純で、□ボタンを押して掘っていけば良いだけ。ただ自由に土を掘るのはできず、『掘パワー』なる数値の範囲内でしか行えない。その為、無駄の無い操作が求められてくる。
もう一つの魔物の誕生もシンプル。『養分』の溜まった土を掘れば良い。これだけで魔物が生まれる。でも、単に『養分』の溜まった土を掘っても、生まれるのは最弱の『ニジリゴケ』。より強い魔物を生み出したい場合は、養分の溜まった土に更に養分を送り、土を強化する必要がある。それもやり方は単純で、養分を吸い取り別の所に散布する習性を持つニジリゴケを指定の位置で巡らせるだけ。こうする事で、土に養分が溜まっていき、上位の魔物を誕生させられるようになっていく。なお、魔物は移動にも習性があり、ニジリゴケなら壁にぶつかるまで真っ直ぐ動く。これを活かして大量のニジリゴケを生み、一定の範囲内で巡らせれば強力な魔物が生み出せるなど、やり方次第で上位系の魔物誕生を早める事もできる。他にも、魔物は食物連鎖によって増殖でき、意図的に弱い魔物を誕生させ、それを食べさせると言った具合に生態系をコントロールする事もできる。仕組みは単純だが、強力な軍を編成するには生物学的(?)なテクが試されるなど、意外にその中身は奇抜。自分で生態系を作る、これだけでもこのゲームの特殊さは少し伝わるだろうと思う。
そしてその作成パートから一定時間経過した後に始まる、勇者の迎撃パートはリアルタイムで展開。開始前に王将こと『魔王』を安全な所に配置し、勇者がそこに行き付くまでの間、魔物たちで勇者に攻撃を行っていく。基本的にその模様を眺めるだけだが、魔物を生み出す事は可能。数を増やして時間稼ぎをしたり、強力な魔物を新たに誕生させたりなど、様々な応用ができるようになっている。上手い編成ができていれば、それをする必要も減るが、基本的には単に眺めてるだけでは上手くはいかない調整。リアルタイムらしい醍醐味と緊張感に秀でたパートに仕上げられている。
以上、ザッとだがその二つを介しながらゲームは展開。一応、内容的には迎撃シミュレーションだが、随所において斬新な工夫が凝らされており、他に類を見ない手応えが満載。なかなか新鮮味溢れる内容に仕上げられている。
また、今作には全三種類のゲームモードが用意されており、全8ステージを連戦で戦う『ストーリー』、特殊な状況下を元にしたステージ攻略に挑む『トレーニング(チャレンジ)』、対戦プレイこと『VS』と様々な遊びを楽しむことができる。特にメインの『ストーリー』は、今時珍しいほどアーケードライクな作りとなっていて、ゲームオーバーになれば最初のステージ1からやり直しになるなど、歯応えが尋常でない。途中セーブとかその辺の親切な機能も無く、頼れるのは己の頭と腕だけと徹底していて、その潔さが逆に古きよき時代のゲームの魅力を引き立てているのも見逃せないところである。
システムは新しい、だけども遊びの面では古さが炸裂している。その辺のギャップもまた、システムと同様にプレイヤーに他に類の無い手応えを与えてくれるだろう。

でもやはり、今作最大の魅力は、魔王軍を編成するシステム全般だ。自ら食物連鎖による生態系を確立させ、魔物達を繁殖していくその斬新な過程は、一回遊んだだけでは物足りないほどの奥深さを秘めている。
何より、魔物を配置するのに自ら環境を作り上げるというのが面白い。既に存在するユニットをマップに配置するのとは違う作る楽しみ、それが簡単に誕生しないジレンマが絶妙な中毒性を醸し出しており、一喜一憂する魅力に秀でている。効率良く魔物を誕生させる為、巡回経路を何処に作るかなど、考える楽しみもしっかりしており、単にそれを脳内でイメージするだけでワクワクしてしまうのも秀逸だ。はまり過ぎれば返って、寝るに寝れなくなったりするほど。その感覚はかの『テトリス』で4列消しの手順を脳内で考える楽しさを髣髴とさせる。ジャンルはまるで違うが、そのテトリスに匹敵する中毒性の高さがあるだけでも、このシステムが如何に完成度の高いものかは想像に難くないだろう。
また、魔物を誕生させる仕組み、そして強力な魔物を誕生させる仕組みのどれもが、簡単なルールでまとめられているのも特筆に値するところ。説明書を読むまでもなく、すぐ理解できる敷居の低さは素晴らしいとしか他に言い様が無い。且つ、「養分を送る」という、他に類を見ない要素まで導入し、新しさまで演出しているのもさすがである。誰にでも分かり易い新しいシステムとして、これほど高い完成度でまとめられたものも他に無い。何かと複雑になりがちな、最近のゲームの「新システム」の中で、今作のものは突出していると言っても過言では無いだろう。バランスも、ダンジョンの形と魔物のラインナップが結果を左右する、システムを最大限に活かした良調整。如何に上手いダンジョンと軍の編成ができるかが試されてくるので、自然と戦略を考える深みにはまっていく。そして、止め時が作れなくなる。
全体としては難しめなのだが、その難しさが逆にプレイヤーをのめり込ませる。こんな恐ろしい調整が成されているのもまた、今作最大の売りにして問題点と言っても良いかもしれない。
単にシステムやバランスが優れてるだけでなく、全体のゲームデザインも見事だ。主に広大な地底にダンジョンを創造する基本コンセプト、画面構成は、液晶が横に広いPSPだからこそ出来たオリジナリティに富んでいる。液晶が横に広いからこそ、隅から隅まで見渡す事ができ、快適なゲームプレイが楽しめる。縦横共に広さの統一されたニンテンドーDSでは、まさに真似できない所業。ハードの特性を実によく活かした設計だと言える。
スペックの高さを活かした大量のキャラクター表示も、PSPだからこそ出来たオリジナリティがある。処理落ちも無く、数百もの魔物達がゴチャゴチャと動き回るその様は、まさにこのハード無くして表現できないものと言っても良いだろう。
PSPは高性能の携帯ゲーム機ではあるが、DSとは違って見た目や性能以外のところで劣る所がワリとある。それでも最大限、PSPだからこその売りを全面に出し、これでないと出来ない芸当を行った今作。ある意味、今作ほどPSP以外では真似できぬゲームというのも無いと言っても、何らおかしくは無いだろう。
システムで新しさを出し、敷居の低さまで演出する。そして更に、PSPだからこその強みまで発揮させる。本当、全てにおいてレベルが高い。確かにタイトルはちょっとギャグが入っているが、そのタイトルを思わせないほどの本気とゲーム性、中毒性の高さが、今作には凝縮されているのだ。大げさな物言いだが、PSPの奇跡というに相応しい一本かもしれない。それほどまでに完成度が高いのである。

更に今作最大の魅力は他にもある。それは意外にもシナリオ。というのも、これがネタのオンパレード。主にゲーム好きやアニメ好きならば、吹いてしまうようなネタが随所に仕込まれているのである。
例えば、『ストーリー』最初のステージ1の題名が「ぼくにこのてをよごせというのか」だったり、チャレンジの問題の名前が「ドラゴンクエスチョン」であるなど。また、敵の勇者にも凄いゴールキーパーやポ●モン三人衆がいたり、某有名ゲームデザイナーがいたりと、メンツがぶっ飛んでいる。おまけで用意されている『いきもの図鑑』も、テキストがネタだらけで、単に読むだけでも時間が潰せてしまうほどだ。
その辺の知識が無い方だと楽しめない一面もあるが、元のテキストの出来が秀逸なので、単純に独立したものとして見ても結構、笑える仕上がりとなっている。シナリオとしても最後の結末が凄かったり、見所がたっぷりなので大いに楽しめるはずだ。これは今作をプレイするなら、絶対に見逃してはならない箇所。要チェックだ。
その他、操作性も基本的に十字キーと1ボタンしか使わない故、大変良好。単に触るだけで直に慣れてしまうという、驚くべき敷居の低さを演出している。ボリュームもメインのストーリーが全8ステージだけだが、隠しステージやチャレンジなど、おまけが充実しているのでやり応えはバッチリ。
グラフィックもファミコンのゲームのドット絵を模した、独自の作りとなっていて印象的。音楽もリコーダー調のほのぼのとした曲が多く、聴いていて癒される。そこもグラフィックと同様、ファミコンのゲームっぽい味があって、往年のユーザーならノスタルジーに浸る楽しみが堪能できるのも地味ながら魅力的だ。勿論、メインテーマなど名曲も充実している。

キャラクターも魅力的で、主役に当たる魔王はその喋り方(ボイス?)、性格共に無駄に濃い。敵である勇者達も先に紹介した通り、とんでもない奴がいたりと、色々魅せてくれるので単に見るだけでも楽しい。文字通り、彼らが「なまいき」な強さとなっている(それを基準としたバランス調整が成されている)のも、まさに職人技の域である。
難易度が高く、システムにも少し癖があるので、やや好みが分かれるところもある。ボリュームもエンディングまでは短いので、賛否が分かれるかもしれない。
しかし、全体的な完成度は折り紙付きだ。敷居が低くて新しいシステムにPSPの特性を最大限に活かしたゲームデザインなど、見所満載。そしてネタもたっぷりで爆笑必至。
某ド●えもんのス●夫より拝借したふざけたタイトルを思わせない、本気(マジ)ッぷりが面白い、この『勇者のくせになまいきだ。』。PSPを持ってるユーザーなら要プレイの傑作だ。これは超お薦め!これを遊ばずとしてPSPは語れないと言っても良い、至高の逸品である。今ならベスト版でお求め易くなっているので、未体験の方は是非。
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