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≫ロストレグナム 〜魔窟の皇帝〜
■発売元 アーテイン
■開発元 娯匠
■ジャンル アクションRPG
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力描写あり
■定価 5040円(税込)<廉価版:1995円(税込)>
▼Information
■プレイ人数 1人(※アドホックモード時:2人)
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(使用容量:550 KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、ワイヤレスLAN(アドホックモード)対応
■総説明書ページ数 37ページ
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、70〜95時間以上(完全攻略目的)
帝国歴165年、第14代皇帝ハドリアヌス。
高い知性、優れた決断力、類稀なる慣性。
あらゆる面で、賢帝と呼ぶに相応しい者が居た。

しかし、彼には完全なる皇帝としての壮絶な孤独があった。その孤独は、アンティノスという心美しき者によって救われ、それ故にハドリアヌスはアンティノスを深く愛したという。
そして、アンティノスと余生を過ごす為、ハドリアヌスは辺境の地に『アンティノポリス』という都市を建築した。だが、ある時を境にハドリアヌスは全てを放棄して失踪してしまう。

それから時が経ち、新たな皇帝となった者は、ハドリアヌスが姿をくらまし、今や荒廃都市と化した『アンティノポリス』の謎を調査する命を下す。
そして調査隊が結成され、アンティノポリスへと派遣されたのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ダンジョンに潜り、最深部を目指すという単純ながらも普遍的な面白さに満ちたゲームデザイン
◆潜る度に変化するダンジョン、武器と鎧を強化する合成システムなど、過去のダンジョン探索型、ハック&スラッシュ型RPGの良い所取りで構成された、安定感に秀でたゲームシステム(やや仕様の異なる部分もある)
◆もはやRPGじゃなくてアクションゲームだと思わせる、多彩過ぎるプレイヤーアクションの数々
◆パワー重視、スピード重視、遠距離攻撃タイプなど、操作、アクション、戦術面で色々検証したくなる面白さと見所を兼ね備えた全四人のプレイヤーキャラクター達
◆直接攻撃に限らず、罠を仕掛けて誘き出す、無差別攻撃を仕掛ける敵を誘導して同士討ちを図るなど、豊富な戦術で楽しませてくれる雑魚敵&ボスとの戦闘
◆階層浅めで短いが、密度、リプレイ性共に抜群に高い、やり込み甲斐満点のダンジョン構成
◆ひたすらダンジョンを攻略し続ける潔さと骨太なボリュームが見事な『ダンジョンモード』
◆即座にアイテムを使用できる『ベルトスロット』、体力ゲージ等と同じ形で表示された経験値など、メニュー操作に手間をかかせないという配慮が徹底された画面構成&インターフェース周り
◆驚くほどキビキビと動く、異様なまでのレスポンスの良さが気持ちよい、珠玉の操作性
◆短めながら、豊富なやり込み要素で徹底的に楽しませてくれる、計算された総計ボリューム
◆ほぼ一瞬で終わるロード時間(しかも、メディアインストール機能無し)
◆ライトなプレイヤーからコアなプレイヤーまで、幅広くフォローした良好なゲームバランス
◆古の荒廃した都市という雰囲気作りの上手さが光る、質の高いグラフィック
◆ダンジョン探索が主役と言わんばかりの切り捨てっぷりが潔い、あっさりとしたストーリー(但し、謎に満ちた展開や終盤で判明する思わぬ真相など、あっさりとしてはいるが見所はしっかりある)
◆地味ではあるが、派手な効果音に適度に派手なエフェクトなど、抑える所はしっかり抑えた演出

--- Bad Point ---
◆アクション周りを除けば、ダンジョン探索型アクションRPGとしては真新しさに欠けたシステム
◆タブがイラストだけで表示されている都合上、何を指しているのかがパッと見ではイマイチ分かり難い、アイテムボックスのインターフェース(ボックス容量の小ささも難点)
◆バリエーションに乏しいダンジョンの自動生成パターン(しかも、そんなに派手に変化しない)
◆武器はできる事が多いのに対し、鎧は強化限りと極端な差別化が図られた合成システム(組み合わせによる『パワーゲージ』変動など、仕様面で敷居の高い所が目立つのも難点)
◆トレード方式限定のアイテム購入システム(お金が無い。慣れるまではかなりの違和感を味わう)
◆アッサリしている所為でテンポは良いが、逆に分かり難くなっている点も目立つストーリー
◆地味で盛り上がらない音楽(雰囲気作りに関しては申し分無しなのだが…)
◆何故か鉄パイプが地面に落ちた時の音に近い、強攻撃命中時の効果音(違和感バリバリ)
◆やや融通の利かないカメラ(カメラリセットの微妙な遅さもモヤッとする)
▼Review ≪Last Update : 2/9/2014≫
あ、愛した人ってアンタ…。

衝撃の真相はゲーム本編にて!


相手の部位を攻撃し、適切なダメージを与えていく現実味溢れる戦闘システムと高い難易度で高い評価を得た『グラディエーター』シリーズで知られるデベロッパー、娯匠製作の完全新作のアクションRPG。販売はグラディエーターシリーズに引き続き、アーテインが担当。

真新しさこそ薄いが、携帯機ならではの手軽さとテンポの良さで魅せる、隠れた傑作だ。

ゲーム内容は3D視点で展開する、ダンジョン探索主体のアクションRPG。プレイヤーは神殿都市『アンティノポリス』の調査隊の一員となり、都市のあちこちに点在するダンジョンに潜り、失踪した皇帝ハドリアヌスの真相を追うというものだ。
本編は基本的なゲーム内容からして明らかだが、ダンジョンの攻略を中心に展開。基本的に拠点こと『キャンプ(公共広場)』で装備等を整え、ダンジョンへと潜るの二つを繰り返しながら進めていく。各ダンジョンの最終目的は、最下層へと到達すること。この手のダンジョン探索主体のRPGでは、まさに王道と言えるものになっている。 また、本編開始前には主人公となるプレイヤーキャラクターを選択する事になる。選択可能なキャラクターは総勢4人。両手剣の使い手で高い攻撃力と体力を特色とする『ハイランダー』、二刀流の使い手で素早い攻撃を得意とする『グラディエーター』、呪術と武器による変わった攻撃方法を持ち味とする『ダークサーチャー』、そして唯一の遠距離攻撃で戦う『アマゾネス』を選ぶ事ができる。基本的にどのキャラクターを選ぶかで難易度はそこまで大きく変化しないが、攻撃から戦法スタイルはまるで異なるので、プレイ感覚は大きく変化。豪快にパワーキャラで攻めるか、スピード系のキャラで疾風の如く探索に挑むか、或いは遠距離攻撃でチマチマ進める方向でいくか、どちらで行くかはプレイヤーの好み次第。如何にもな味付けと一粒で二度美味しい魅力に富んだキャラクターに完成されている。ちなみに選択後には名前のほか、服装カラーなども選べる。但し、顔などの細かい所までは変更不可。ゲームスタート時に『クリエイトキャラクター』と表示されるのだが、その名前の割には大したクリエイトはできないので、過度な期待は禁物だ。
そんな具合に4人の中からこれというキャラクターを選び終えると、ようやく本編が始まる。この辺りで、この手のダンジョン探索を主体とするRPGを色々プレイしてきている方は、既視感を覚えるかと思われる。何だか『ディアブロ』や『不思議のダンジョン』を彷彿とさせるゲームだな、と。ぶっちゃけてしまうと、今作はそんな感じのゲームだ。少し意地悪に言ってしまえば、それらのハック&スラッシュ型のアクションRPG、ローグライクのRPGの良い所取りな内容になっている。斬新だとか、そんな風には力説できないゲームなのである。
実際、システム周りは本当にそれらのタイトルでも見覚えのあるものばかり。特に今作の顔とも言えるダンジョンだが、最下層を潜っていくという基本的な流れは勿論のこと、その地形が入る度に変化する自動生成システムを採用、目視で確認できない罠が仕掛けられている、様々なアイコンで状況が記されたフロアマップなど、不思議のダンジョンシリーズそのまんまな感じになっている。最下層を目指すという点自体は、他のダンジョン探索型RPGでも馴染み深いものな為、不思議のダンジョンシリーズに限定したものではないが、それでもその手のゲームを経験した事のある方ならば、これ何処かで見たような…という既視感を覚えるのは必至。まさに寄せ集めな作りになっている。とは言え、自動生成と言っても敵の配置が変化したり、部屋の総数が変化したりする程度なので、そこまで大きく変化する訳ではない。その点に関しては僅かながら差別化が図られている。
また、もう一つの既視感を覚える要素として『合成システム』という、アイテムや使わなくなった武器等を素材にして武器や鎧を強化するシステムもあるのだが、これも『分解』という形で合成用の素材に変換できるのは武器だけで、鎧に関してはキャラクターごとに固定のものが用意されている為、強化しか行えないなど、少し特徴的な作りになっている。更に武器と素材を組み合わせる際には三角形型の『パワーゲージ』が表示され、その変動によって効果が変化すると言った、やや複雑な要素も。キャラクター育成周りのシステムにしても、レベルアップで習得した『アビリティポイント』をステータスに割り振り、強化を行う如何にもなものだが、一度割り振ったポイントは後で振り直す事もできたりなど、割り振ったらそれで固定とならない仕組みになっている。この為、プレイヤーの思うがまま、状況に応じた強化が図れるなど、非常に自由度の高い作りになっているのは大きな見所だ。
だが、幾つか違いがあるとは言え、今作が既存タイトルから寄せ集めた要素で構成された内容という事実は翻せない。正直な所、アクションRPGとしての新鮮味に関しては、あまりない作品だと言っても良いだろう。
ただ唯一、今作の特色とも言える部分もある。それはプレイヤーのアクション周りだ。こう言ったダンジョン探索型、ハック&スラッシュ型のアクションRPGというと、行える事は武器による攻撃、高速移動、スキル技等と言ったシンプルな作りになっていたりするが、今作はそこの物量が一線を画している。というのも、できる事が非常に多い。威力の小さめの弱攻撃と大きめの強攻撃は勿論、Rボタンを素早くタップする事で行う緊急回避こと『ドッジ』、敵の攻撃を防ぐガード、更にはジャンプ、バック宙、側転、ダッシュ、そこからの助走をつけた一撃、蹴り技、体当たりなど、「何処のアクションゲームだ!」と突っ込みを入れたくなるほど、盛り沢山のアクションが用意されているのである。その為、ダンジョン内での敵との戦闘はスピード感十分、それでいて躍動感にも溢れたものになっており、この手のダンジョン探索型アクションRPGしては珍しいほどに派手。更にボタンとの組み合わせによるコマンド技も用意されており、選んだキャラクターごとに全く違った技の妙味を楽しむ事もできる。上手く技を繋げられれば、連続コンボを敵にお見舞いできてしまうなど、もはやそれはアクションRPGというよりは格闘アクションに近い手応え。ダンジョン探索型RPGとしては、ある意味、異質と言っても不思議ではないものになっている。これもこれで、既存の要素と言えるのだが、ダンジョン探索型のゲームでこのような高いアクション性を備えてきたのは、結構珍しいケース。淡々となりがちなこの手のゲームにおいて、キャラクターを動かす事の面白さ、極める奥深さを追求しているのは、チャレンジングな部分と言ってもおかしくは無いだろう。
基本的に細かい部分を掘り下げていくと、今作独自の要素は無いし、先に挙げたタイトル二作の良い所取りと言われても仕方ない所がある。ゲーム内容自体にしてもありきたりだ。しかし、豊富なアクションによって繰り広げられる敵との戦闘など、他のダンジョン探索をテーマとしたゲームとしては一線を画す部分もあり、既視感が強めながらも、変わった手応えに富んだ内容に仕上げられている。まさにアクションRPGとしてのアクションを徹底追及した作品、と言ったところだろうか。ひたすらダンジョンを潜るゲームとは思えないほど、爽快な手応えを味わえる作りになっているのだ。

そんな今作の売りは、非常にテンポの良い本編の構成だ。アクション周りの多彩さと爽快感も今作の特色と言い張れるインパクトがあるのだが、それ以上に今作が優秀なのがテンポ周り。携帯機で出すアクションRPGとしての快適さ、気持ちよさに徹底的にこだわった作り込みが成されているのである。
特にそのこだわりが炸裂しているのがダンジョン構成。ダンジョンへと潜り、最深部を目指すというその基本的な内容からは、誰もが結構な階層が用意されているとイメージするかもしれない。実際、この手のダンジョン探索型RPGとなると、目的地でもある最下層は深めの所に設定されているのが御約束で、そこに到達するまでに結構な時間を要しがちだ。逆に言えば、その深さあってこそのダンジョン探索型RPGでもあるのだが、今作はあえてその深みを追求しない方向でダンジョンを製作。基本的にどのダンジョンも5〜8階程度、一番深い所でも地下10階までと、驚くほど浅い構造になっているのだ。その為、何処のダンジョンも大体、10〜30分以内には最下層に辿り着ける。それでいて、階層ごとのスケールもそんなに大きめでは無いので、サクサクと進めていく事ができる。まさに短時間でサクッと遊べる作りなのである。
しかも、特筆すべきはこの構造のダンジョンが本編後半以降も継続されるということ。後半になると階層が増え、密度が濃くなっていく常套手段を用いていないのだ。無論、その辺りになると瀕死のダメージを与える強敵が登場するなど、難易度が高くなって一筋縄では行かなくなってくる。また、基本的にダンジョン内でやられると、問答無用でキャンプに戻され、最初の階層からやり直し。中間ポイントも無いので、一発勝負が求められてくるようになっている。しかし、ダンジョン自体が5〜8階しかないので、途中でやられたとしてもモチベーションが殺がれない。むしろ、今度こそあの階層の下に辿り着くぞと、やる気が湧いてくるのだ。そして、それを繰り返すようになってしまい、一気に一日の時間を吸い取られる。まさに短めの構成であるが故の圧倒的中毒性。その醍醐味を余す事無く現した作り込みが成されているのである。
ゲームが進む度にダンジョンのボリュームを上げていくのではなく、敵のラインナップと構造で変化を出す。悪戯に量を増やすのではなく、量を一定にしてテンポを保たせた作りは、遊んでいて純粋に気持ちよいし、飽きずにのめり込める。探索という遊び自体、過度に長引かせれば単調で飽き易くなる為、それを気持ちよく、且つ時間を忘れて楽しめるようにした今作のレベルデザインは、後半になればなるほどボリュームが増すというこの手のゲームにおけるアンチテーゼを示した好例と言っても良いだろう。直に始められ、直に止められる手軽さも携帯機のゲームとしての相性の良さが良く現れており、本編の熱中度を底上げしていて見事。単純にダンジョンのボリュームが控え目なだけでなく、『メダリオン』と呼ばれるアイテムを使う事により、好きなタイミングでダンジョンからキャンプまで戻る事ができるなど、探索をサポートするシステム周りも抜かりが無く、手軽さと探索のし易さに一役買っているのも見逃せないところ。細かいところだが、ロード時間にしても今作はほとんど無く、あってもほんの一瞬で終わる辺りもまた、今作が如何にテンポの良さにこだわって作られたか、というのを痛感させられるばかりだ。
また、テンポの良さはストーリーにも現れている。一応、神殿都市を建設した後に何故か失踪した皇帝の行方を追うという興味を抱かせる要素に富んでいるが、本編ではその手のイベントが必要最低限にしか用意されていないのに加え、描写も控えめ。潔いほど、ダンジョン探索こそが今作のストーリーと言い張る作りになっているのだ。ダンジョンをクリアしても、僅かな演出と台詞が出て終わり、何かイベントがあったと思ったらほんの数分で終了。とにかく、潔い。昔の時代のゲームを思わせるバッサリっぷりだ。そうゲームを遊んでいない時間を必要以上に確保し過ぎない工夫が取られているのもあり、進行もサクサク。逆にバッサリ切り捨ててしまった事で、ストーリーの全容が分かり難くなっている所もあるなど、一長一短な所もあるにはあるのだが、今作はダンジョン探索アクションRPGなのだから、そこを重点的に楽しんでと言わんばかりの作りにはむしろ、気持ちよさすら覚えるほど。何がこのゲームにおいて最も重視したい部分なのか、しなくて良い部分なのかをしっかりと切り分けた作り方には、ゲームを作る人間としての意地とこだわりというものを思い知らされる。そんな古き良き時代を思わせる作り方になっているのも、テンポの良さを語るに当たっては外せないところだ。無論、ストーリー自体、描写が控え目だからと言って決して手抜き同然な内容という訳では無く、ダンジョンに落ちている書物を手に入れ、その中身を探る事で思わぬ事実が判明したりなど、謎をテーマとした内容なりのツボはしっかり抑えられている。ただ、パッケージなどを見ればお分かりの通りだが、世界観は濃い目。その点では人を選ぶかもしれない。
その他、戦闘も多彩なアクションとそれによる爽快感の恩恵で地味にならないのに加え、敵を倒す手段が直接攻撃を仕掛けるだけでなく、罠に誘う、無差別攻撃を仕掛ける別の敵をぶつけるなど、戦略面での幅の広さも本編のスピード感を際立たせている。画面表示にしても考えられており、次のレベルまで必要な経験値の量を体力ゲージと並ぶ形で画面上部に出したり、方向キー、Rボタンとの組み合わせで装備したアイテムを即座に使用できる『ベルトスロット』など、手間をかけさせない為の配慮が成されているのも見事だ。
ここまで語ってきた事の真逆を言うなら、今作には独自の要素が少ない。あえて言うなら、プレイヤーのアクション程度である。加えて、その良い所取りしたシステムにも粗が幾つかあり、ダンジョンの生成パターン(特に背景)が少なくて変化に乏しい、『アイテムボックス』のインターフェース、主にタブ周りの使い勝手が悪い、合成システムの防具における幅の狭さなど、もう少し作り込むべきだったのでは、と突っ込みたくなる部分も多い。お金の概念が無く、アイテムの購入が物々交換限定である点もまた、捻り過ぎで使い難いのが気になるところだ。
しかし、携帯機で遊ぶアクションRPGとしての気持ちよさ、お手軽感は傑出したものがあり、それらの粗など些細な問題だと思わせてしまうほどのパワーがある。変に捻り過ぎず、真新しさ以上に遊び易さを重視した内容は、悪く言えば保守的だが、そこから携帯機向けのゲームならではの遊び易さを徹底的に追求した姿勢には素直に好感が持てる。手元でしっかり遊べ、手軽に始められるアクションRPGとして、今作が如何にベストなタイトルなのか。それについては、もはや言うまでもないだろう。若干、新鮮味には欠けはするが、テンポの良いアクションRPGとしての完成度は上質。気持ちよく遊べるゲームに仕上げられているのである。

テンポの良さに関連するが、今作はボリューム面の良い意味での短さも特筆に値する箇所だ。今作、探索する事になるダンジョンの数は結構な量があるのだが、エンディングまでは僅か10〜12時間程度しかかからない。量の割には短めなのだ。だとなると、浅そうと思うかもしれないが、各ダンジョンは自動生成システムの欠点で背景パターンこそ乏しいとは言え、難易度設定から最下層における仕掛けなど、歯応えは十分に感じられる内容になっているのに加え、クリア後にはセーブデータを引き継いで、難易度の上がった二周目に挑戦できる特典もあるので、やり込み甲斐は相当にある。また、クリア後には『ダンジョンモード』と呼ばれるダンジョン攻略に特化したゲームモードが解禁されるようにもなっている。このモードでは難易度ごとに手応えの異なる探索が楽しめるのに加え、ここだけでしか遊べない隠しの専用ダンジョンもあったりなど、非常に遊び応えのある内容になっている。しかも、そのダンジョンの構造というのが、本編の実に6〜7倍のボリュームという凄まじさ。エンディングまでの所要時間こそ短めながら、こんな具合にやり込み要素は盛り沢山。単純にクリアを目指すだけなら一瞬だが、極めるとなると底なし同然と、ライトからコアのあらゆるユーザーに対応した作りになっているのだ。お手軽だけど、中身はギッシリ。如何にも携帯機向けのゲームらしい中身の多さには、ダンジョン攻略も含めて時間を忘れてハマってしまう魅力が盛り沢山だ。
難易度も最初緩やか、後半厳しくと如何にもな調整になっていて、遊び応えがある。ただ、後半において敵が集団で襲い掛かってくる場面が増え、瞬時に攻め込まれ易くなる辺りは少し難あり。集団戦を避けようにも、ダンジョンの構造が短めで上手く行かないなど、若干、詰めの甘さを感じる所があるのはちょっと残念だ。
また、音楽の出来も地味。雰囲気重視という事で、ダンジョン内の怪しい雰囲気を見事に演出してはいるのだが、淡々としているので盛り上がりに欠ける。せめてボス戦ぐらいは感情を揺さぶる曲にするべきだったのではないだろうか。何気に今作、『アクトレイザー』等で古代祐三氏が音楽を手掛けているのだが、氏の持ち味からイメージから大きく逸脱したものになっている。今作の世界観との兼ね合いもあったのかもしれないが、少し自重し過ぎな作りになってしまっているのがいささか残念だ。 反面、グラフィックの出来は上々。人物、背景など、なかなか丁寧に描かれている。ダンジョン内部の雰囲気にしても先の音楽の恩恵もあり、古の時代の遺跡ならではの怪しさがバリバリに出ている辺りは地味に必見だ。

演出面も抑える所はしっかり抑えた、抜かりの無い出来。ただ、敵との戦闘で強力な攻撃を命中した際に鳴る効果音が、まるで鉄パイプが地面に落下したかのような音になっているのは少し違和感を覚える。そもそも、ネズミやゾンビを攻撃した際に何故、そんな鉄パイプみたいな音が流れるのか、この辺に関しては採用を決定した人のセンスを疑うばかりだ。 その他、操作性は極めて良好。まさにアクションゲームならではのボタンを触るだけでも楽しい面白さ、違和感の無い配置が光る仕上がりになっている。特にアクションのレスポンスの良さは随一で、一度触ればアクションゲーム好きなら「間違いない」と確信するほど。そんな洗練された手応えもまた、大きな見所だ。 ダンジョン探索型アクションRPGとしての真新しさがない為、新鮮味はそんなに無いのだが、既に面白さが保障されたシステムをあれこれ取って組み合わせた内容は破たん無くまとまっている。更に携帯機向けのテンポの良さとお手軽さなど、気持ちよさに対する作り込みも素晴らしく、それ故にプレイ中の熱中度も相当なものになっている。やや世界観的に好みを分ける所があるが、アクションの手触り感と気持ちよさにこだわった作り込みが光る今作 アクションRPG、主にハック&スラッシュ系が好きなプレイヤーには迷わずお薦めできる隠れた傑作だ。携帯機で手軽に遊べるアクションRPGを求めている方も是非。但し、手軽であるが故に中毒性も半端無い。プレイ時は時間管理に気を付けましょう。
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