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≫ゴッド・オブ・ウォー 落日の悲愴曲
■発売元 カプコン
■開発元 Ready at Dawn Studios
■ジャンル アクション
■CERO D(17歳以上対象) ※過度の暴力、出血描写等あり
■定価 5240円(税込)<※Best版:2990円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(※使用容量:500KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 5〜7時間(エンディング目的)、20〜30時間以上(完全攻略目的)
『スパルタの亡霊』の異名を持つ戦士『クレイトス』は、かつて蛮族との戦いにて戦神アレスに加護を求め、神々の戦士となった。だが、ある戦いの最中、アレスの策略によって自らの愛する妻子を殺めてしまい、結果として『スパルタの亡霊』と呼ばれるほどの戦士となるが、彼自身はその過去の悪夢に激しく苦悩するようになる。

それ以来、脳裏に焼き付いた悪夢の解放を唯一の望みとし、オリュンポスの神々の指令に従い続けるクレイトス。

これはクレイトスが、そんな神々に従っていた時の出来事の記録である…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆PSPの限界に挑んだ、驚異的な描き込みが目を見張る美麗極まりないグラフィック
◆状況に応じて曲調を変更させる、インタラクティブな仕掛けに富んだ民族風の重厚な音楽
◆シリーズ伝統の大迫力アクションを無駄に映えさせる、仰々しさ満点のカメラワーク
◆国産アクションゲームの良い所取りで構築された、取っ付き易いゲームシステム
◆携帯機でも従来の動かし易さと爽快感に劣り皆無の、迫力満点のプレイヤーアクション
◆的確なボタン配置と思うがままに動かせる気持ちよさに秀でた、抜群の操作性
◆アクション初心者から上級者まで幅広くサポートした、絶妙なゲームバランス
◆主人公クレイトスの父親としての側面に迫った描写が印象深い、見所満載のシナリオ
◆PSP見事に再現された、爽快感満点の『CSアタック』
◆難易度選択機能、操作解説、豊富なリトライポイントなど、相変わらず痒い所にまで手が届いたサポート機能群
◆ほとんど皆無なロード時間(途切れる事が無いので、ゲームテンポも抜群)
◆数は本編より劣るが、難易度の絶妙さは健在のパズルを始めとした謎解き
◆一本道ながら狭さを感じない設計が印象的な、練られたマップ構成
◆相変わらず悪人全開だけど、父親らしい一面は逆に微笑ましい、主人公のクレイトス

--- Bad Point ---
◆物足りない総計ボリューム(正伝の半分と、かなり少ない。できれば同じ量に…)
◆戦闘中心の本編の展開(謎解きパートが本家シリーズより少なく、少し単調になり易い)
◆携帯機の限界に挑戦したが故の無茶の産物、激しい処理落ち(時々、グラフィックが粗くなる事も…)
◆イベント未完了(進行停止)バグの存在(これは致命的…)
◆魅力的とは言え、相変わらず悪人過ぎるところが賛否を分ける主人公のクレイトス
▼Review ≪Last Update : 9/6/2009≫
今度は携帯機で暴れまくる。

スパルタの亡霊、PSPに降臨。


プレイステーション2のハード性能を最大限に活かし切ったグラフィックと演出、高いゲーム性で大好評を博した『ゴッド・オブ・ウォー』の外伝作品。本編シリーズのソニー・コンピュータエンタテイメント・サンタモニカスタジオに代わり、カリフォルニア州のサンタアナのソフトハウス『レディアットドーン(Ready at Dawn Studios)』が開発を担当。

携帯機の常識を覆す無茶の数々が犠牲に?
独特の爽快感は健在だが、全体的なスケールは小さめの外伝作品だ。

基本的な内容は、PS2の本編と何ら変わりはない。謎解き要素を盛り込んだ、3D俯瞰視点で展開するアクションゲームである。プレイヤーであるクレイトスのアクション、『パワーオーブ』の割り振りによる武器のレベルアップ、リズムゲームのようにコマンドを入力していく事で派手なアクションが楽しめる『CSアタック(コンテキスト・センシティブアタック)』等、ゲームシステム周りも本編と同じものを採用。スペック的に劣る携帯機でありながら、本編シリーズと何ら変わらぬ手応えをそのまま再現した、気合いの入った内容に仕上げられている。
ただ、今作はそんな、本編シリーズを携帯機にて再現するコンセプトで作られているのもあり、新要素等は少ない。舞台となるマップ、敵、そしてクレイトスが道中で習得するアクション(初の拳攻撃が可能になった!)、シナリオなどは、今作独自のものに一新されているものの、新たな戦闘シチュエーション(例えば空中戦など)とか、そういうのは皆無。 あくまでも、携帯機で遊ぶ『ゴッド・オブ・ウォー』としての姿勢を貫いた内容なので、続編としてはかなり、変化に乏しい作りになってる。何かしらの新要素(変化)を求めるシリーズファンにとっては、正直な所、肩透かしな内容なのは否めない。
一方で、単に「携帯機で素直に『ゴッド・オブ・ウォー』が遊びたい」というユーザー、シリーズファンに対して考えれば、この上ない内容。冷静に見て、その時点で驚きだが、PS2よりもスペック的に劣るPSPで、本編の売りとも言える、抜群の爽快感と操作性、そして絶妙なバランスを”完全に”再現しているので、十分過ぎるほどその欲求を満たしてくれる。グラフィックや演出周りも、流石にPS2の本編には敵わないが、まさにPSPの限界に挑戦したとも言えるクオリティの高さ。その筋の部分に魅力を感じるファン、新規プレイヤーも、納得の満足感を得られる仕上がりとなっている。
『ゴッド・オブ・ウォー』の醍醐味とも言える、プレイヤーの関心を引き付けて離さぬ、巧の構成術(レベルデザイン)も健在で、今作でも画面を覆い尽くす巨大なモンスターとの戦闘に謎解きと言ったイベント、ギミックは盛り沢山。息付く暇すら与えてくれぬ、それらの要素を活かしたスピーディな展開もそのままなので、没入感もかなりのもの。相変わらず、プレイヤーを引き込む術に秀でたその作りの深さには、ファンならずともつい、魅了されてしまうだろう。 何よりも、これらの売りを再現したのが最初に紹介したように、本編シリーズを手掛けているSCEサンタモニカのスタッフでなく、外注スタッフと言うのだから驚かされる。シリーズの制作に携わった経験のないスタッフが、ここまでPSPで嘘偽りなく『ゴッド・オブ・ウォー』を再現したというのは、全く持って、凄いとしか他に言い様が無い。
何処まで、この作品に対する造詣があるのかと。迫力の演出に軽快な操作性、バランスの絶妙さなど、何処をとっても「らしさ」が活きているのは、職人技と言っても良い。ファンであるならば、その完成度の高さと作品への理解の深さに思わず、唸ってしまうだろう。
新規ユーザーもまた、全面で発揮された高い技術力に圧倒されること、間違いなし。グラフィック然り、演出然り、PSPでも、ここまでやれるんだ!と、新しい発見があるかもしれない。

そんな感じに、高い再現率を誇る今作。携帯機で『ゴッド・オブ・ウォー』が遊びたい!…と思っているファンにも、そしてシリーズに触れた事の無いプレイヤーにも衝撃的な仕上がりであるだが、唯一つ、非常に残念な所がある。PSPで『ゴッド・オブ・ウォー』を再現する無茶振りが祟り、ボリュームが乏しくなってしまっている事だ。シリーズの醍醐味とも言えるものが、幾つか犠牲にされてしまっている。
代表的なのが、道中での謎解き。『ゴッド・オブ・ウォー』と言えば、爽快なアクションの他に、『ICO』や『ゼルダの伝説』を髣髴とさせる、絶妙な謎解きも魅力の一つとして語られるが、今回のPSP版ではその謎解きは全体の3割程度と、ごっそりと削られてしまっている。 どちらかと言うと、今回は敵との戦闘をメインとした構成となっていて、じっくり謎を解く味わいが、本編以上に薄くされてしまっているのである。しかも、辛うじて用意された謎解きも、簡易的なものが中心。パッと見ればすぐ解けるものばかりなので、達成感や手応えも弱い。多分だが、容量的な限界と携帯機のゲームという事で、手軽さを考慮し、このような配分にしたのだろう。特に後者は謎解きを入れ過ぎると、携帯機らしからぬ重い内容になってしまうから、と。この判断自体は、決して悪くはない。現に謎解きを少なめにした事により、全体のテンポが向上し、サクサクと進めていけるようになったのは大きな進化である。更に、戦闘中心になったことで、よりクレイトスの豪快なアクションの面白さが楽しめるようになったのも特筆すべき点。シリーズの売りとも言えるアクションの爽快感をしゃぶり尽くせるというだけでも、この構成への変更は十分、意味のあるものであったと言える。
しかし、こうした事で、全体の展開がより、面白味の無いものになってしまったのは正直、褒められない。シチュエーションの違いこそあれど、常に戦闘が続く構成な為、どうにも単調さが付きまとう。また、流れの点においても、「いきなり謎解き!?」みたいな唐突さが弱まり、予想外の裏切りが少なくなったのも、寂しさが募る。ボス戦では、その唐突さは上手く演出できているが、その他は同一パターンの驚かし方が中心なので、どうも安っぽい。
何より拙いのは、戦闘中心にした故に、全体的なボリュームが薄くなってしまったことだ。元々、そんなクリアまでに長時間かかるゲームでは無いのだが、流石に本編の基本クリアタイム約10時間の半分…、5〜6時間程度でエンディングに到達できてしまうのは、呆気な過ぎる。それに加えて、戦闘中心の構成な為、サクサクと進んでしまうので、「この場所を苦労して抜けた!」という手応えも薄く、一通りクリアしたとしても印象に残るものが少ないのも、ちと致命的だ。短時間で終わる内容だけど、高い満足感が得られる、それが、シリーズ一つの強みでもあるだけに、この弱々しさは正直、評価できたものではない。
テンポ良く進めるのも良いけど、思い出(またはトラウマ)を作らせる仕掛けをセットするのも、大事であるはず。携帯機で『ゴッド・オブ・ウォー』を再現させた、その技術力の高さは流石の一言に尽きる。けど、その影響を受け、本来の魅力を犠牲にする真似をするのは、幾ら容量的な限界があったとは言え、極力避けて頂きたかった。プレイヤーだって、ずっと戦闘が続いていてばかりでは、次第に飽きが来てしまうもの。それを緩和させる為の謎解きなのだから、例え簡単なものであっても、沢山、導入するようにして欲しかったところだ。そうすれば、ボリュームの短さを感じさせない高い満足度を演出できていたと思うだけに、惜しい。
容量の面で無茶が祟ったにしても、そこの工夫が弱いのは、まさに元が大作であるのと、制作側の大作に対する慣れが出てしまっているが故になのか。何処となく、大作主義な世の拙さみたいなのを考えさせられる。

また、戦闘中心の構成の為、難易度がノーマルでもやや、低めに設定されているのも気になるところ。かと言って、戦闘に歯応えが無い訳でなく、きちんと一定の難しさは出しているのだが、どうにも物足りない感じは否めない。やはり、無茶振りの産物だろうか。しかし、マップにおいて、初代『ゴッド・オブ・ウォー』を髣髴とさせる、シビアなトラップ(平均台など)が完全に撤去されたのは嬉しいところ。適度な難しさのトラップに改めた、その姿勢は大きな評価に値する。
その他、『パワーオーブ』の所持数がプレイ中も確認できるようになったり、ボタン連打系の仕掛けで、対応するボタンが連打し易いものに絞られたなど、操作のレスポンス面で改善が図られているのも嬉しい。初代の再現だとは言え、初代の欠点まで引き摺らぬその姿勢は流石だ。
グラフィックも本編ほど鮮明ではないが、アクションのエフェクトなど、きちんと本編の雰囲気を残して仕上げられている。音楽もお馴染みの民族風の重厚なテイストで、戦闘などの各場面を大いに盛り上げる。
シナリオも初代より前の時代を舞台とした内容というだけにファン必見。主人公、クレイトスの描写も相変わらずの上手さで、ただ残虐な男として描かれていないところにセンスが光る。更に今回は、彼の父親としての「らしさ」が描かれるシーンも豊富にあるので、良い意味でそのギャップに驚かされるだろう。逆に新規ユーザーなら、クレイトスのあまりの悪逆非道っぷりに大いに驚かされること、間違いなし(笑)。父親らしい所がストーリー上では色濃く描かれるとは言え、シリーズお馴染みの悪人クレイトスも普通に健在なのでご用心(?)だ。

戦闘中心の構成に乏しいボリュームと、色々と欠点も多い今作だが、PSPで『ゴッド・オブ・ウォー』を見事に再現したその高い技術力に、相変わらずの爽快感満点のアクション、抜群の操作性など、総合的な完成度は高い。
難易度選択システム、隠しコスチュームなどの救済処置、やり込みもきちんとしているなど、新規プレイヤーからファンに対する幅広い処置も万全。まさにPSPの限界を超えた一品と言っても過言でない今作。シリーズファンは勿論のこと、初めてのプレイヤーまで幅広く楽しめる(※17歳以下はダメ!)、傑作アクションだ。特に初めてのプレイヤーには、シリーズ入門編として最適。これを機に『ゴッド・オブ・ウォー』という、素晴らしきゲームの世界に入ってみませんか?
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