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≫Ever17 the out of infinity(エバーセブンティーン ジ・アウト・オブ・インフィニティ)
■発売元 サイバーフロント
■開発元 レジスタ、5pb.(音楽)
■ジャンル ミステリアスアドベンチャー
■CERO C(15歳以上対象) ※犯罪、恋愛、セクシャル、出血、暴力描写あり
■定価 5040円(税込)<※Best版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(※使用容量:608KB以上)
100個(※クイックセーブ)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応
■総説明書ページ数 17ページ
■推定クリア時間 7〜8時間(エンディング目的)、32〜45時間(真エンド、完全攻略目的)
水深51メートルの海中に浮かぶ、近未来の海洋テーマパーク『LeMU(レミュウ)』。
ここに何の前触れも無く、7人の男女が閉じ込められた。
徐々に失っていく食料、水、酸素。
そして、深海に生息する未知のウィルスによる新たな脅威。
更に苛烈な水圧に晒されたLeMUの隔壁は119時間以内に崩壊するという。
この閉ざされた空間と限られた時間の中、7人は脱出への道を探し始める…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆極限状態からの脱出という表向きの設定を大きく覆す、驚愕の仕掛けが施されたシナリオ(アドベンチャーゲームの歴史に名を残す、衝撃的な内容)
◆Never7から継承された、無駄に充実した(し過ぎの)オプション機能
◆同じくNever7より継承された、全ルートの攻略を目指す際のショートカット機能として大きな手助けとなるクイックセーブ(保存領域はこちらも100個)
◆全5ルート、真のエンディングまで大体30時間強を要する適度な総計ボリューム
◆選択肢の総当りの力技で最終パートまで攻略可能な控え目の難易度
◆選択肢の完全制覇、エンディング、音楽集めなど豊富に取り揃ったやり込み要素
◆大きな作画の乱れも無く、女性プレイヤーでも受け入れ易い作風で仕上げられたキャラクターデザイン
◆何処となく哀愁漂う旋律が強烈な印象を残す、名曲揃いの音楽
◆サクサク進む良好なゲームテンポ(ロードも短め、スキップも速い)
◆途中でムービーが流れるなど、派手にまとめられた演出全般
◆熱く、勢いのある曲調と歌声が印象的なオープニング主題歌『It's Fine Day』(特定の条件を達成すると、オリジナル版のオープニング主題歌も聴けるようになる豪華仕様)

--- Bad Point ---
◆極限状態からの脱出という設定にそぐわぬ、緊張感に欠けたシナリオ展開
◆最大の売りである最終シナリオに至るまでの過程の長さ(緊張感に欠けてるので、到達までにダレ易い)
◆複雑な言葉の解説だけでなく、重大なネタバレまで記されてしまっている致命的な用語解説機能(これを見るのは必ずクリア後に!
◆最終ルートの主役となるヒロインの凄まじい電波っぷり(かなりアレな性格)
◆一部、強引な展開の存在(最終ルートに散見される)
▼Review ≪Last Update : 12/19/2010≫
一生に一度の忘れられない衝撃。

これを体験せずしてアドベンチャーゲームは語れない。


2002年8月29日にKIDよりドリームキャストで発売。某ゲーム誌で低評価を下されながら、発売後に高評価へ覆るという異例の事態を巻き起こしたアドベンチャーゲーム『Ever17 the out of infinity(エバーセブンティーン ジ・アウト・オブ・インフィニティ)』のPSP移植版。開発は前作に当たる『Never7』に引き続きレジスタ。音楽も5pb.が担当している。

異論は認めない。
これぞアドベンチャーゲームの歴史に名を残す、伝説級の名作だ。

ゲーム内容は前作に当たる『Never7 -the end of ininity-』と同タイプのシステムを継承した、テキストアドベンチャーゲーム。登場人物の会話を追いつつ、その途中で頻繁に登場する『選択肢』を選び、物語を進めていくというものだ。
今作のストーリーはいわゆる脱出系。近未来の海洋テーマパーク『LeMu(レミュウ)』に閉じ込められた男女7人が地上への脱出を試みるという、パニック系の内容である。主人公は二人。大学生の倉成武、事故の衝撃で記憶喪失となった本名不明の『少年』と呼ばれる男の子が務める。ゲーム開始時はこの二人の視点から見たストーリーが展開。しかし、途中でどちらの視点でストーリーを進めていくかの選択肢が登場し、プレイヤーは二人のいずれかを選び、その後のストーリーを追って行くことになる。最終目的はストーリーの内容からして明らかだが、『LeMu(レミュウ)』からの脱出だ。他の閉じ込められた仲間と共にトラブルを解決しながら、目的達成を目指して話を進めていく。
とは言え、プレイヤーがやる事は『Never7』とそんなに変わらない。基本的にストーリーの様々な場面で入る選択肢を選ぶ程度だ。そんな複雑な謎解き、判断が求められる内容にはなってない。しかし、選んだ選択肢によって、その後の展開するストーリーは大きく変化。また、『Never7』と同様に5名のヒロインが登場するのだが、彼女達との関係も選んだ選択肢によって変わってくる。そして、あまり宜しくない選択を選び続けた末には脱出失敗(挙句の果てには全滅)という悲惨な結末(バッドエンド)を迎えるハメとなる。やる事はシンプル、そして女性と関係を持つ魅力的な展開もあるが、脱出が目的というのもあってか、全体の雰囲気としてはシビアな感じとなっている。ジャケットのイメージでは、如何にも女性との関係を描く事に重点を置いてる感じで、実際、それは正解でもある。しかし、極限状態下が舞台なだけに、普通の日常とは結構違う味わいが秘められている。この辺の普通じゃない状況を舞台にした作風は、『Never7』そのまま。ストーリーの途中で関係を持ったヒロインごとに異なる結末が用意されている事、関係以上に謎に焦点を当ててる辺りもそれ。設定こそ大きな違いはあるが、基本的にはその前作のノリを継承した作りとなっている。
ただ、今回は主人公が二人いるのが最大の違い。二人ごとに用意されたシナリオも全くの別物で、目的は共通してるものの、違った展開が目の前で繰り広げられていく。更に選んだ主人公の側にしか登場しないヒロインなんてのも存在。何故かどちらかの主人公を選ぶと片方はそのシナリオに姿を現さないのである。序盤の共通パートでは、二人が一緒に登場するのにも関わらずだ。どうしてそのヒロインは消えてしまうのか?そう言った主人公を二人にしたからこそできた表現も新たに盛り込まれており、ストーリーに不気味な影を落としている。勿論、それ以外にも脱出の目的を忘れさせる謎が盛り沢山。『Never7』にもあったプレイヤーに寄り道させる強烈な魅力を秘めたミステリー要素は今作でも健在だ。
ストーリーの明確な最終目的、ヒロインとの関係などは前作に当たる『Never7』を踏襲。それを抑えた上で主人公を二人にし、全く違う角度でのストーリーを描いた表現を導入するなどの新たな試みを導入。元々、システム面は『Never7』をベースにしている故、ゲームとしての手応えはほとんど同じなのだが、中身は実質、新作も同然で続編というのは際どい。しかし、一筋縄では行かぬストーリーの作風や謎など、見た目の印象とのギャップの激しいと言った部分はそのまま。結構な鬼っぷりが炸裂した、前作に負けず劣らずの魅力を秘めたアドベンチャーゲームに仕上げられている。

そんな今作最大の魅力は、シナリオである。
しかし、その内容はただ単純に「凄い」の一言で片付けられるほどのものではない。
単刀直入に言おう。今作のシナリオはアドベンチャーゲームの歴史に名を刻むと言っても良い、衝撃的な内容だ。極限状態下からの脱出を描いたストーリーが歴史に名を残すほどのものとか、何の冗談かと思うかもしれないが、断じて冗談ではない。本気でそう言っても不思議でないほどのインパクトが詰まったシナリオなのである。厳密には4人のヒロインのエンディングを見た後に解禁される、5人目のヒロインのシナリオが歴史に名を残すほどの凄まじさ。このシナリオでは、それまでの4人のシナリオで思わせぶりに残された謎、伏線が回収されるラストステージみたいなものなのだが、とにかくこの明かされていく謎というのが想像を絶する凄まじさ。思わず大声を挙げてしまうほどのインパクトなのである。
それが一体、どんなものなのかについては一切語る事はできない。衝撃の度合いが桁違いである故、少しでも語ったら魅力が半減してしまうからだ。申し訳ないが、これ以上先の事は実際に今作をプレイして確認してみて欲しい。そんな「衝撃的だ」とか言われても、全然プレイする意欲など湧かないと思うが、騙されたと思ってプレイしてみて欲しい。やれば分かる。こんな内容なら、話せないのも仕方がない、と。
ただ、その最後のシナリオは桁外れに凄いのに対し、その前の4人のヒロインごとに展開されるシナリオの内容は正直、粗のある出来だ。設定では極限状態下での脱出がテーマというだけに、登場人物が生の感情を剥き出しにするのかと、少しイメージすると思うが、実際にそういう場面は皆無で、意外なほどのんびり。食糧の問題とか、予備が大量に備蓄されてる設定が語られるので危機的な展開にはならないし、その余裕を持って登場人物達が遊び出したりなど、とても極限状態であると思えない展開が多く、魅力に乏しい。一応、ピンチになる展開もあるし、バッドエンドはかなり惨たらしいなど、シビアさはあるのだが、どうにも食料の設定が尾を引いてるのもあってか、ピリピリとした所が足りないのが気になる。しかも、最後のシナリオに至るまで、こののんびりとした話を全て攻略しなければならないのもはっきり言って苦痛。耐性の無い方なら、途中でギブアップしてしまうだろう。
それだけ、最後のシナリオのインパクトが凄い故、その前の内容が見劣りしてしまう。随所に謎を散りばめたり、ヒロインにまつわる闇が語られたりなど、工夫は成されてるのだが、どうせならば折角の極限状態という設定を最大限に活かしたピンチシーンをもっと入れて欲しかったところ。折角、使い方次第では凄く魅力的になる設定であるのに、活かし方の間違いで宝の持ち腐れとなってしまっているのは残念としか言い様がない。
でも、そんなのんびりとしたシナリオと設定があるからこそ、最後のシナリオをより衝撃的なものへ引き立てているのも事実なので、一概にダメとも言い切れず。ある意味、プレイヤーの予想を盛大に壊す上で、確信犯でやった可能性もあり得るので、難しいところだ。そして、最後のシナリオがこのゲーム最大の魅力であるというのに、それについて少しも語る事ができないのも、筆者としてはもどかしい。まさに何処も彼処もその一言の一点張り。でも、これもまた中身を考慮すれば、そうなってしまうのも仕方がないという有様。レビューとか感想を書く身にしてみれば、これほどまで書くネタが制限されて「酷い」と言いたくなる作品も正直、他に無いと言っても良い。それほどまでして語りたくても語れない衝撃が今作にはあるのだ。話そうとも話せない圧倒的なものが。話せないからこそ、その魅力は全然伝わらないだろうが、どうか騙されたと思ってやって欲しい。開いた口が塞がらなくなる事をお約束しよう。

シナリオの凄さのほか、優秀なシステム環境も今作の大きな魅力の一つ。『Never7』譲りの無駄なほど痒い所まで行き届いたサポート機能の数々は、プレイヤーにストレスのスの字すら見せない。ロード時間や操作のレスポンスにしても、気持ち良いほど早く、純粋にストーリー本編に浸れる仕上がりになっているのもお見事。一応、この環境自体は『Never7』からの使い回しなのだが、別に改良する必要も無いほど優秀な出来栄えだったので、それに関しては文句の付け所無し。むしろ、よく使い回してくれたと称賛したいぐらいである。何かと悪く見られ易い使い回しの行いが、ここまで良いものとして映るのも何だか珍しい光景だ。優れたシステムさまさまと言ったところか。
また、全体のボリュームもヒロイン一人当たりのシナリオのエンディングは5〜8時間ほどと手頃な反面、最終シナリオのエンディングを目指すと30〜35時間ほどと、なかなか充実した構成になってるのも魅力的。一枚絵CG集めや選択肢完全制覇などのやり込みも充実しており、クリア後も末永く遊べるのも同じく魅力的である。
グラフィック全般も背景、キャラクターの作画共にクオリティが高い。特に作画全般は『Never7』の欠点でもあった乱れが皆無であり、デザインの統一性が保たれてるのがグッド。キャラクターデザイン自体もそんなに癖が無く、女性プレイヤーでも受け入れられ易いものに仕上がっているのも好印象である。
音楽もタイトルのテーマ曲『Karma』など、名曲が満載でこれまたクオリティが高い。声優の今井麻美が歌うオープニングテーマ曲も非常に熱いものになっていてなかなか聴き応えがある。『Never7』と同様、ゲームを一通り進めるとオリジナル版の主題歌とオープニングテーマ曲も聴けるようになるなどのファンサービスが凝らされているのも見事だ。制作スタッフの気合いの入れっぷりが伝わって来る。

演出周りも特定のイベントではムービーが導入されるなど、かなり派手な方向に進化。しかし、それ以上に派手と言えるのは最後のシナリオ全般だったりするのだが、例によってネタバレになる為、語れない。あしからず。
最後のシナリオに至るまでの冗長且つ面白味にかけるシナリオ、設定に反した緊張感の無さなどの欠点もあるが、それすらもぶっ飛ばすほどのインパクトを持つアドベンチャーゲームであるのは揺ぎ無い事実。「語れない事」こそが最大の魅力と言っても良い衝撃的なシナリオは、ゲームを愛する人ならば絶対に一度は体験しておくべき価値がある。ジャケットの見た目がいわゆるギャルゲーチックではあるが、そんな事で食わず嫌いするのはもはや重罪に値すると言っても良いほど。大袈裟な物言いだが、そう熱くなって言いたくなるほどの魅力が込められたこの『Ever17 - the out of infinity -』。
冗談とか無しにアドベンチャーの歴史に名を残す名作である。PSPを持ってる人なら食わず嫌いせずプレイすべし。かなりオススメ。但し、ネタバレは絶対に見ないように。
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