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≫THE EYE OF JUDGEMENT(アイ・オブ・ジャッジメント) 神託のウィザード
■発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
■ジャンル 3Dカードバトル
■CERO A(全年齢対象)
■定価 パッケージ版:4743円(税別)、ダウンロード版:3723円(税別)
■公式サイト ≫ソフトウェアカタログ
▼Information
■プレイ人数 1人(対戦プレイ時:2人)
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(使用容量:128KB以上)
■その他 ワイヤレスLAN(アドホックモード、インフラストラクチャーモード)対応、メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、追加コンテンツ対応
■総説明書ページ数 35ページ+バトルフィールド解説カード1枚
■推定クリア時間 10〜15時間(エンディング目的)、90〜150時間(完全攻略目的)
遥か昔、偉大なる魔導師にして科学者シオンは自ら思考する戦争兵器『機巧(きこう)』を創り出す。思い上がったシオンは、機巧の軍隊を率い、世界の支配を目論んだが、神の怒りに触れ、その息子であるジュノーによって葬り去られた。

時は流れ、機巧の軍隊が永き眠りから目覚め、世界に再び混乱が訪れた。休む事を知らぬ鋼の兵士達は瞬く間に四つの国を蹂躙。都市は破壊され、軍も全滅した。

教示者ウィザックは預言する。
神託を受けたウィザードが訪れ、世界の全てを変え、人々を破滅から救うであろう…と。

かくして、裁きの刻が遂に訪れた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆『マルバツ』こと『三目並べ』をベースとした、カードゲームとは異質の分かり易さ、伝え易さを特色とするゲームルール
◆属性相関、方向等の多様な要素が演出する、簡単ながらも底の深い戦術・戦略性
◆基本一回勝負、持ち札のカードが尽きたら問答無用で敗北、デッキシャッフル無しの長期戦防止策の数々(最長でも一試合15分程度しかかからないので、抜群にテンポが良い)
◆総計300種類以上、効果も多種多様と差別化も見事に成されたカードラインナップ
◆多種多様な要素が破綻なくまとめられた事によって実現した、絶妙なゲームバランス
◆設定された属性が分かり易いマス目のデザイン、それによる戦略の練り易さが秀逸な三×三、計九つのマス目で構成されたバトルフィールド
◆向かい合った同士で自動的に行われ、結果も属性の相性によって左右されるシンプル且つ、深い戦略性を要したクリーチャー同士の戦闘システム
◆特徴的な環境下で戦う本編の『ストーリー』、様々な相手と自由に対戦できる『バトルアリーナ』と、少なめながらも適度に差別化されたゲームモード
◆対人戦ならではの緊迫感と時間を忘れてハマってしまう中毒性が光る対戦モード
◆ストーリーだけなら程々、やり込めば膨大な時間を要する事になるメリハリのあるボリューム
◆軽快なキーレスポンスと適切なアサインが光る操作性
◆重厚ながら、日本のアニメっぽさも交えた独特のキャラクターデザインと背景グラフィック
◆雰囲気重視の作風ながら、独特のグラフィックと絶妙にマッチした音楽
◆アメリカンコミック調のカット割りと独特なエフェクト描写が光る、イベントデモとその演出
◆恐ろしく緻密に作り込まれた世界観設定及びストーリー(しかし、それ故の難点も…)
◆前作のPS3版とは異なる、リアルマネー不要仕様(カードが全部デジタルカードなので、単体の課金は一切発生せず)

--- Bad Point ---
◆テンポの良さとは裏腹のロード時間の長さと頻度の多さ(UMD版で遊んだ時に限った話。ダウンロード版であれば、この問題は全て解消される
◆相手側に過剰なハンデを設定し、不利な状況での戦いを強要するストレスフルなレベルデザインが成されたストーリーモード(序盤はまだしも、終盤のバトルが酷い)
◆マス目配置のバリエーションが一種類しかないバトルフィールド(そのおかげで戦略が練り易くもあるのだが、せめてもう二パターンぐらいあっても…)
◆設定が緻密過ぎる所為で、置いてきぼりにされ易いストーリー(特に中盤以降は複雑の極み)
◆『バトルアリーナ』での作業プレイを強要されるカードコンプリートのやり込み
◆何故か『能力』に絞り込んで探し出す事ができない、不便なカード検索機能
◆占領合戦になり易いバランスであるが故の演出面の鬱陶しさ(特にナレーションボイス)
▼Review ≪Last Update : 9/25/2016≫
偽りの神との非情なる戦いに挑み、勝利せよ。

※プレイヤーに対する意味も含む。


AR(拡張現実)を本格的に取り入れたカードゲームとして2007年に発売され、話題を呼んだプレイステーション3専用ソフト『THE EYE OF JUDGMENT(アイ・オブ・ジャッジメント)』の続編にして、携帯ゲーム機用に製作された新作。

直感的且つ奥深いゲームルールと抜群の中毒性で魅せる、PSP屈指の隠れた傑作だ。

ゲーム内容は3Dカードバトルゲーム。縦横三×三の九マスで構成されたフィールド上にクリーチャーをカードを用いて召喚し、多様な戦術を駆使しながら、全五マスの占領地確保を目指すというものである。簡単に言うと、陣取りゲーム。「マルバツ」、或いは「三目並べ」とも言えば、どんなゲームなのかが容易に想像付くだろう。その伝統的な遊びにクリーチャー同士の戦闘、属性相関、デッキ等の要素を取り入れ、カードバトルゲームにした感じの作りになっている。
より具体的に解説していくと、基本的には世間一般のカードゲーム同様、今作も『デッキ』に組み込んだ30枚のカードを用い、相手との一対一の勝負を演じていく事になる。カードには『クリーチャー』、『スペル』の二種類が存在。前者はその名の通りにクリーチャー、魔物を召喚するカードで、主に陣地(マス目)の占領を行う際に用いる。後者は特殊効果を発動させるカード。『マナ』、『エレメント』、『大魔導』、『コモン』の四つに細かく分類されており、主に守りを固めたり、召喚したクリーチャーに特殊効果を与える際に用いる事になる。これら二種類のカードから30枚を選んで『デッキ』を構築し、プレイヤーは相手とのバトル(デュエル)に臨んでいく格好となる。なお、例によって『デッキ』の構築には制約があり、同じカードを複数枚入れると言った偏りの強いものを作る事は不可能。そんなカードゲームの御約束もちゃんとカバーしている。
『デッキ』の構築が完了したら、次はいよいよデュエルだが、まず始まると同時に両プレイヤーとも山札からカードを5枚一辺に引き、最初の手札を決める。手札が納得いかない際は一度だけ、手札の引き直しを実施する事ができ、この行為を今作では『マリガン』と呼ぶ。そうして手札の五枚を確定させたら、デュエル本番のスタートとなる。
デュエルはプレイヤー側、相手側の交互で手を打っていくターン制で展開。先行と後攻の順番はゲームモードによって異なり、本編に当たる『ストーリー』はシナリオごとの固定式、フリーバトルモードに当たる『バトルアリーナ』はじゃんけんで決める仕組みになっている。
それらの決まりに基づいて確定した先行側のプレイヤーからカードを引き、ターンを展開していく形となる。ターンは『ターン開始⇒アクションフェイズ(1)⇒アクションフェイズ(2)⇒ターン終了』に沿う形で進む。『ターン開始』では、山札からカードを1枚引く事を行う。このカードを引く前、番が回ってきたプレイヤーには『マナ』と呼ばれるものが2つ溜まる。『マナ』とは、いわばコストポイント。主にクリーチャーの召喚、スペルの使役等、カード使用や後述の『アクションフェイズ』での行動の際に用いられる。基本的にカードごとに必要なマナの数は異なっており、手持ちマナを上回るものは使用不可。故にその時点での手持ちマナで使えそうなカードを5枚の中から選び、行動を取っていく事になる。
そうしてマナの獲得が完了し、手札5枚が表示されると『アクションフェイズ(1)』へ。このフェイズではスペルカードの使用、召喚済みクリーチャーの再行動、クリーチャーの入れ替え召喚の三つの行動を順不同で行う事ができる。スペルカードについては先述で解説した通りなので省略するとして、再行動はクリーチャーの方向転換と攻撃の実施、入れ替え召喚は文字通り、既にクリーチャーを召喚しているマス目に別のクリーチャーを召喚する行為の事を言う。いずれも行う際にはマナを消費するほか、再行動は1回だけ、入れ替え召喚は実施すると後述の通常召喚とは異なり、攻撃行動が行われないという制約がある。これらの行動が現時点でのマナでは行えない場合は、並行して『アクションフェイズ(2)』、新しいクリーチャーの召喚、ターンの終了を選ぶかになる。新たなクリーチャーの召喚は、手持ちのマナが条件を満たしていれば実施可能。該当のカードを選択し、召喚したいマス目を選んで決定すれば、そこにクリーチャーが召喚され、1マス占領した事になる。また、召喚に当たってはクリーチャーが向く上下左右の方向を決める事にもなる。そして、召喚するマス目でクリーチャーが向いた方向に相手側クリーチャーが居ると、自動的に戦闘が発生。対象に攻撃を行う。この時、相手側のクリーチャーの体力が0になるとそのマス目から消滅、0にならずに残り、対象が反撃技を持っていれば反撃行動が実施される。そうして消滅か、持ち堪えるかの結果が出るとターンが終了。相手側のターンに移行し、一連の行為が実施され、終了すると再び自分のターンになり、以降はこれまで紹介した事の繰り返しになるのだ。
以上が今作のバトルルールのあらまし。長々と語った為に少し複雑そうに見えてしまうが、やる事自体は陣取り、五マスの占領が目的なので単純明快。細かいルールを知らずとも、直感的に遊べる作りとなっている。
ただ、五マスの占領は簡単そうに見えて難しい。先の通り、今作には属性の概念があり、クリーチャーもそれに準じた設定が成されているので、その相性をよく考えた戦術を取っていかなければならない。更に舞台となるフィールド、マス目においても属性が設定されているので、例えば火のクリーチャーを水のフィールドに召喚してしまうと、ステータスにペナルティが入るどころか、ダメージも受けてあっという間に消滅、なんて事も。攻撃の種類も広範囲に及ぶタイプのほか、召喚にも『制限』と『アンロック』なるものがあり、フィールド上に相手側も含め、四体以上のクリーチャーが居ないと三体目以降の召喚が行えないと言ったものまである。そう言った様々なルールが課せられた中、戦術を展開していかなければならないので、どんなデュエルにおいても、激しい領地の奪い合いが展開。まさに単純だけど容易には勝てない、侮り難き奥深さと戦術性を秘めたルールに完成されているのだ。
また、最初の概略の通り、今作はプレイステーション3(PS3)で発売された『THE EYE OF JUDGMENT BIOLITH REBELLION 〜機神の叛乱〜』の続編で、前作はAR(拡張現実)機能を搭載した本物のカードを用いてバトルを行う事を特色としていたが、今作で扱うカードは全てゲーム内に組み込まれたデジタルカード。別途、カードを購入する必要もなく、ゲーム単体で遊べる内容になっており、PS3版よりも敷居が低くなっているのも特色の一つだ。裏を返せば、普通のコンシューマゲーム機向けのカードゲームへとなってしまった感も否めないが、そこに突っ込むのは野暮という事で。
そんな具合に『三目並べ』をベースにしたルールを兼ね備えつつ、意欲的な要素を豊富に取り揃えた内容。そして、他に類を見ない分かり易さ、激しい頭脳合戦が繰り広げられる、やり応えのあるカードバトルゲームとなっている。

実質、前作の売りとも被るのだが、今作の魅力はバトルルールの分かり易さ。カードゲームというと、数多くのデータ的な要素を組み込んで構築されたゲームという印象が強く、幾ら面白かろうが遊んだ事のないプレイヤーに対してその魅力、具体的に「どんな遊びなのか?」と語るのが難しい。むしろ、そのまま遊ばせるのが効果的だったりするほどだ。
今作も正直、カードゲームとしては複雑な部類に属する。属性相関、召喚制限、アンロック、アクションフェイズ、マリガン。多くの要素と特徴的な制約が組み込まれている為、如何にもカードゲームらしいゲームデザインとなっている。
だが、今作はどんな遊びかと問われた場合、「陣取りだ」と即答できるのは極めて大きな強み。色んな要素が組み込まれているとは言え、プレイヤーが目指すべき目標が五つのマス目を占拠する事と明確であるのに加え、その遊び自体が日本では明治時代から子供達の遊びとして親しまれているマルバツこと『三目並べ』だから、どんなゲームなのか即座に説明できてしまうのだ。仮に『三目並べ』を知らなかったとしても、三×三のマスで五マス、クリーチャーで占領するだけと、やる事自体が単純なので、直感的に理解する事ができる。なので、すんなりとゲームに入って行けてしまう。全部の要素を理解しなくても良い、残りは遊びながら覚えていくだけで十分と、カードゲームを遊んだ事の無い人も瞬時に理解できてしまうほど、恐ろしく敷居の低い作りになっているのだ。
一言で説明するのが難しいカードゲームというジャンルにおいて、今作の理解のし易さ、魅力の伝え易さは特筆に値する。勿論、単にそのルールさえ分かっていれば、どんな相手とも真っ当に戦える訳では無く、クリーチャーと属性相関、ターンごとの流れなどは最低限、理解しなければならない。だが、これから繰り広げられる遊びというものがハッキリとしているのに加え、取るべき戦術も頭の中で簡単に構築できるので、取っ付き難さはほとんど感じさせない。それでいて、カードゲームとしての手応えも斬新。方向、属性の関係を考えながらの場所の取り合いという独自の戦略性と駆け引きの面白さを表現しており、様々なカードゲームを遊んできた熟練者をも唸らせ、新鮮な体験を提供する作りになっている。
マルバツこと『三目並べ』という伝統的な遊びを主軸とし、そこに属性や方向と言った要素を盛り込み、カードゲームとして作り上げる。その発想の着眼点が非常に面白く、そこから誰もが遊びをイメージし易いカードゲームのルールを構築したのには素直に驚かされる。同時に、ゲームデザイン担当スタッフのずば抜けたセンスというものを痛感させられるばかりだ。遊びの根本が分かるまでに長い時間と経験を要するカードゲームにおいて、今作の理解に至る時間の短さはまさに革新的。左下からにこやかなビーバーが飛び出す勢いで感動してしまうほど、、直感的なゲームルールを実現しているのである。特にカードゲーム初心者ほど、この分かり易さには衝撃を覚えること請け合いだ。最低限のルールを覚える必要こそあるが、マス目を占領する事に集中するだけで遊べる作りには、カードゲームというジャンルに対する様々な価値観がちゃぶ台返しの勢いで引っくり返るだろう。
無論、チュートリアルも完備。本編に当たる『ストーリー』では、ゲームを進めながら細かなルールを順序立て覚えていける構成でまとめられているので、説明書を読まずともすんなりと独自のカートバトルの世界へと入っていける。遊びが簡単だからと言って、ルール説明を放棄するなんて事も今作は一切せず。そんな作り込みに関しても今作は万全だ。
また、システム周りの作り込み具合も素晴らしい。クリーチャーとマス目の属性を併せる事による能力アップとダウン、方向を意識しながら展開される戦闘、スペルカードによる多種多様な逆転要素の数々等、どの要素も破綻なく組み込まれており、占領し易そうでし難い絶妙なゲームバランスを実現している。
更にゲームテンポに対する徹底したこだわりも見逃せない。自動で行われる戦闘とターンの切り替え、ターン内の行動制限と、スピード感を出す為の工夫が凝らされており、短時間で遊べ、奥深い戦略もしっかり堪能できるという濃密なゲームプレイを作り上げている。中でも『デッキシャッフル』が無いところが秀逸。どんなカードゲームでもデッキ内の持ち札を使い切ったら、『デッキシャッフル』と称して再び持ち札のシャッフルが行われ、再度、カードが使えるようになるというシステムがあるが、今作にはそれが無く、何と持ち札が無くなったらその時点で負けになってしまうのである。その為、長期戦へと持ち込む戦略は一切通用しない。そして、それがプレイ時間の間延びを防ぐ役割も果たしており、デュエルのテンポの良さを引き立てているのである。更に今作は基本的にどの勝負も一回勝負なので、二回戦や三回戦が行われる事も無い。一戦一戦が真剣勝負となるのだ。
こうした工夫により、どんなに戦っても最大15分しかかからないというのが秀逸。短時間で終わるので、空き時間にサックリ遊べるし、早く決着するからこそ戦略の練り直しもし易い。何かとカードゲームというと長期戦になるのが御約束のようになっているが、そこも今作は独自の方向性を貫き、手軽に遊べる事を優先とした作りとしている。遊びが分かり易いのに加え、戦い自体も短い。カードゲームはその長期戦になる所もプレイを躊躇う要因の一つだったりするが、その難点も今作は持ち合わせておらず、気持ちよく遊べる設計になっているのである。こうした所でも、色んな人がすんなりと遊べて入って来れる事を意識した作り込みを徹底。加えて、短時間故の中毒性の高さも演出していて、ちゃんとハマった際の怖さも演出している。短期決着型じゃ、ハマるにしても厳しいのではと思うかもしれないが、実際に遊べばその考えは覆されること必至。その作り込まれた奥深さとシステムの親和性には、カードゲーム上級者も大いに唸るだろう。
しかし、そうテンポが優れていながら、細かいロードが挟まる仕様になってしまっているのが残念。ロードの時間も長めで、デュエル開始までに10秒ほど待たされるのがタマにキズだ。折角、基本設計が良いだけに、こう言う所でしくじってしまっているのは勿体ない。また、『ストーリー』も難易度の上げ方に問題があり、後半になると相手優勢のハンデ戦ばかりになるのは雑と言わざるを得ない。マス目の属性を偏らせるとか、他にやり方は色々あっただろうに何故、そうもプレイヤー側にストレスを与えるレベルデザインを実施したのか。そこにしても、折角のシステム周りの出来の良さに泥を塗る要素になってしまっているのが残念だ。
だが、それを含めてもこの遊びの根本を伝え易い作りは特筆に値する。カードゲーム入門編としての作りも素晴らしく、ルールの分かり易さとチュートリアルの恩恵による、脅威とも言える敷居の低さは圧巻だ。粗削りな所はあるが、カードゲームとしての作りは実に革新的。触れば瞬時に分かるカードゲームという表現が、これほど似合うものも無いというほどの出来なのだ。まさに「取っ付き易い」を地で行く作り。強烈な特色を持ったカードゲームになっているのである。

操作性とインターフェース周りも良好。先のロードの問題もあり、レスポンス周りには反応が若干、遅れる難点があったりするが、気持ちよくカーソルを動かせる仕上がりになっている。
ボリュームも『ストーリー』はエンディングまでなら大体10〜15時間程度と程々。しかし、『バトルアリーナ』とカードのコンプリートを狙ったやり込みと完全攻略を目指すとなると、その物量は実に10倍近くにまで膨れ上がる。特にカードは全部で340枚以上と、集まるだけでも相当な苦労を要する物量。更に『ライブラリ』と呼ばれるカードごとの設定やストーリーを紹介する項目も追加されるなど、特典も満載なので極め甲斐も抜群だ。そんなカードゲーム御約束の部分にしてもバッチリ。ヘタすれば一生モノになってしまうぐらいにやり込める内容だ。
グラフィックに関しては全体的に平均的。だが、キャラクターや背景のデザインが素晴らしく、重厚な雰囲気を醸し出している。少し海外製ゲームっぽさもあるが、ヒロインのロミリのようなアニメっぽいデザインのキャラクターも居る為、あまり灰汁は強くない。これと言って抵抗を覚える事無く受け入れられる仕上がりになっている。
音楽もその重厚な雰囲気を意識した楽曲が取り揃っている。曲自体は雰囲気を重視した作りになっている為、印象には残り難いのだが、緊迫感溢れる曲調とグラフィックとの絶妙な融合具合は秀逸。これに併せて展開されるナレーションも素晴らしく、その引き立て役として活躍しているのも見事。丁寧な作り込みを実感させられる。

他に演出周りでも『ストーリー』におけるアメコミチックなムービーデモが印象的。フルボイスでは無いのだが、漫画風味である事を強く意識したカット割りと構成、エフェクトの使い方で魅せに魅せる仕上がりになっている。ただ、肝心のストーリーは非常に難解。目的こそ明確に設定されているのだが、人物相関の設定が異様に入り組んでいる為、初見では理解し難い。これをサポートする意図で『ライブラリ』にキャラクターや世界観についての解説も乗るのだが、その物量というのが丸一日か、二日かけないと把握できないぐらいの物量。正直、プレイヤーに理解させるのを放棄させてるだろと言わんばかりに突っ切ってしまっているのだ。だが、物量がそれほどであるが故に作り込みは相当なもの。読むだけの価値は十分にある内容になっているので、是非、腰を据えて確認してみて欲しい。
これ以外にもローカル、インターネット共に対応した対戦プレイモードなど、見所は満載。ただ、インターネット対戦に関しては2012年8月31日を持って終了してしまっている。2016年現在はローカルのみでしか対戦が行えないので要注意だ。
ストーリーモードのバランスやロードなど、一部、欠点も散見されるが、全体的なカードゲームとしての完成度は非常に高い。何より、ゲームデザインが素晴らしく、この手のジャンルとしては屈指の分かり易さと敷居の低さを強みとしている。それでいて、手軽に遊べてやり込めるなど、携帯機との親和性も抜群と、素晴らしい仕上がりになっている今作。
プレイステーションポータブルを持っているのなら是非、遊んでみて欲しい珠玉の傑作だ。なお、今作はダウンロード版も配信中。こちらだと、ロード時間の難点が解消される強みがあるので、仮に今作を遊ぶとなった際は是非、ダウンロード版をどうぞ。手元に残したいのならUMD版を。どっちにしてもお薦めです!メッチャ良いゲームですぜ!
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