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≫ウォッチドッグス
■発売元 ユービーアイソフト
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO Z(18歳以上のみ対象) ※過度な暴力、犯罪描写あり
■定価 ディスク版:8400円(税別)、ダウンロード版:7500円(税別)
コンプリートエディション(ディスク版):4980円(税別)
コンプリートエディション(ダウンロード版):4300円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人(オンライン:2〜8人)
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 22GB以上
■その他 Play Station Network対応
■推定クリア時間 20〜25時間(エンディング目的)、40〜90時間(完全攻略目的)
凄腕ハッカーのエイデン・ピアースは、自身が招いた事件によって姪のレナ・ピアースを殺され、己を責めていた。

姪を死に追いやった者達に復讐を果たすべく、エイデンは己が持つ知識を総動員し、シカゴの街全体を自らの武器として利用する形で反撃に出る。
だが、真相に切り込むにつれ、シカゴのインフラシステム『ctOS』の秘密と欺瞞がその全貌をあらわにしていく…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆市民から情報を盗み出したり、ライフラインをコントロールすると言った、プレイヤー自身が街を動かす神になったかのような体験が味わえるハッキングシステム
◆信号機のハッキングで交差点内で衝突事故がするなど、時に生々しい結果も及ぼすハッキング実施後の環境変化
◆電源盤、監視カメラなどの周囲の装置を利用して敵に不意打ちを喰らわすなど、ハッキングならではの反則技を駆使した戦法で楽しませてくれるステルスパート
◆ハッカーという非戦闘員の主人公の設定に沿った、ステルス重視の調整が図られたゲームバランス
◆ダウンタウンからミレニアム・パークなどの名所まで、細部までしっかり再現されたシカゴの街並み
◆ゲームプレイ中に他のプレイヤーが侵入し、そのまま対戦へ突入する作りが画期的なオンラインマルチプレイ
◆本格的なポーカーに架空の兵器を操るアクションゲームまで、豊富に取り揃えられたミニゲーム
◆情報の奪取、要人擁護、施設の破壊など、盛り沢山なメインミッション
◆目的地への進路表示、車の呼び出し機能など、痒い所まで手の届いたサポート機能周り
◆キャラクターのモデリングは低めな分、背景周りを際立たせる作り込みに徹したグラフィック
◆ストーリーだけでも20時間強、全要素の攻略を目指すと倍以上の時間を必要とする盛り沢山なボリューム(更に追加DLCを購入すればアナザーエピソードも遊べる)
◆犯罪を題材にしたストーリーならではの緊迫感溢れるカット割りと独特の演出が光るムービーデモ
◆各キャラクターのイメージにマッチしたボイス(特にTボーン、ダミアンの二人が秀逸)
◆意外と控え目な暴力描写(過激な出血描写はごく一部にしかない)

--- Bad Point ---
◆革新的ではあるが、バリエーションの乏しさが惜しまれるハッキング(遠隔操作に絞り込まれている)
◆一部、ご都合主義過ぎる動きを見せるのが萎えるハッキングによる環境変化(特に信号機の切り替え)
◆カーチェイスパートの異様な高難易度(特に警察の追跡があり得ないほどしつこい。難易度イージーでも全く易しくならないなど、調整不足が際立つ)
◆カーチェイスパートの難しさを際立たせる劣悪な操作性(エイデン自身の操作性は悪くない)
◆中盤から終盤にかけ、ワンパターン化するメインミッション(ただ、ラストミッションは必見)
◆進行させようと考えてるミッションが強制中断される仕様が困りモノのランダムミッション(オンラインでも同様の事が起きるが、オフラインに設定すれば対処できる)
◆何故か決定が×ボタン、キャンセルが○ボタンの逆のアサインが成されたメニュー操作
◆全体的に暗く、因果応報な展開も多めで面白味に欠けるストーリー
◆プレイヤーに強い不快感を抱かせる、理不尽な正義感を持つ主人公エイデン・ピアース(はっきり言って、このキャラクターこそ今作屈指の悪である)
▼Review ≪Last Update : 1/22/2017≫
その男、理不尽な正義の味方につき。

彼の復讐に乗ってはならない。


2012年にアメリカで開催されたゲーム見本市『E3』で初お披露目され、その衝撃的なビジュアルとゲームシステムで世界中のユーザーから注目を浴びた、ハッキング(クラッキング)を題材にした完全新作のオープンワールド型アクションアドベンチャーゲーム。開発は『アサシンクリード』シリーズ、『ファークライ』シリーズと言った、ユービーアイソフト主力タイトルの製作元であるモントリオールスタジオが担当。

ハッキングという題材が生み出した、イタズラ心を煽るステルスアクションの世界。
斬新な遊び心地と新規作ならではの荒っぽさが介在する、ユービーアイソフト屈指の意欲作だ。

ゲーム内容は広大なオープンワールドを舞台に繰り広げられる、アクションアドベンチャーゲーム。主人公のエイデン・ピアースを操作し、自身の姪を死に追いやった犯人に復讐を果たすべく、アメリカ・シカゴの街を舞台に様々な裏の仕事(ミッション)をこなしていくというものである。
本編はシカゴの街中を歩き回りながら、『メインミッション』のシンボルアイコンを探し、その場でミッションを受領して攻略に挑む事の繰り返しで進行。オープンワールド系のアクションゲームでは王道の構成を採用している。
システム周りに関しては、公称ではアクションアドベンチャーを名乗っているが、実際はサードパーソンシューター(TPS)。ピストル、ライフルと言った銃火器を主な武器として使い、敵と戦っていくのが基本スタイルとなる。また、TPS特有の要素である遮蔽物へ身を隠す『カバーアクション』、敵に狙いを付けて撃つ『エイム射撃』も健在。更に敵に気付かれず背後へ接近し、致命的な一撃を加えて気絶させる『ステルステイクダウン』もあるなど、昨今のTPSで御約束の要素はほぼ網羅している。ただ、ゲームバランスは銃撃戦非推奨のステルス寄りの調整。先の『ステルステイクダウン』の存在からも明らかな通り、基本は敵に気付かれず、静かに行動していく事が求められるバランスになっている。それを体現するかのように、エイデン自身の耐久力も低め。敵の銃撃を連続して浴びれば早々にやられてしまう。同じユービーアイのゲームで例えるなら、『スプリンターセル』、『ファークライ』、『アサシンクリード』に準拠した調整。敵に気付かれる事無く行動する緊張感、相手を出し抜いた際の爽快感にフォーカスした設計になっている。
また、この手のオープンワールド系のゲームでお馴染みの『スキル』習得による、プレイヤーキャラクターのアップグレードシステムも完備。更にフィールド上には車、バイクと言った乗り物も配置されており、これに搭乗してシカゴの街中を走行する事も可能。ミッションによっては車に登場した状態で遂行するものもあり、映画さながらのカーチェイスが展開されたりも。そんなお約束なシステムやゲーム展開も今作はほぼ網羅している。
しかし、それら以上に今作が最も特異とするシステムが『ハッキング』である。今作の主人公エイデンは凄腕のハッカーで、特殊なスマートフォンを用い、街中を歩く市民の携帯電話や施設内のパソコン、サーバーから様々な情報を引き出し、自分の物にする荒業を使いこなすことができる。しかも、情報を引き出すだけでなく、シカゴの町全体を管理するライフラインへの干渉も可能。信号機を強制的に切り替えたり、警備システムを誤作動させたり、大掛かりなものでは停電を発生させる事までできてしまうのである。まさに、街をエイデンの思うがままに動かせる。さながら、自身がシカゴの運命を司る神にでもなったかのような行いができてしまうのだ。当然ながら、ライフラインを弄れば、環境も変化。最も分かり易いのは、信号を全方向青に切り替えるハッキング。これを実施すると全方向から車が交差点内へと侵入。そのまま多くの車が衝突事故を引き起こし、酷い時には車が爆発炎上する惨事が発生する。その結果、交差点付近は侵入禁止の状況となり、後続で渋滞が発生。一種のバリケードが作られてしまうのだ。まさに映画で例えるなら『ダイ・ハード4.0』。同作で悪役トーマス・ガブリエルがやっていた悪行を今作では軽々と行えてしまうのである。
そして、ハッキングはミッションの攻略時の戦術としても活躍。多くの敵から車で追跡されている際、信号機を切り替えて事故を発生させ、その行く手を阻んだり、逆に事故に巻き込ませて始末するなど、まさにこの能力ならではの荒業を駆使した戦い方ができるのだ。カーチェイスだけに留まらず、隠密行動時でもクレーンをハッキングし、積み荷を落下させてその下に居る敵兵を葬ったり、時には敵兵が携行している手榴弾にアクセスし、起爆装置を作動させて自滅を狙ったり、電子盤をショートさせて注意を誘ったりなどの形で活躍。また、街中に設置された『監視カメラ』をハッキングすれば、そのカメラが見ている場所を見渡す事も可能。そこから更に遠隔でハッキングを仕掛けることもでき、エイデンを絶対に敵に発見されない場所へと位置につけ、そこからカメラ経由で中の敵を仕掛けを駆使して一掃するという大胆過ぎる戦略も実施できてしまう。さすがにハッキングで起きる対象にも限度があるほか、ご都合主義的な挙動を見せるものもあるのだが、自身の周囲にあるオブジェクトに干渉し、それを使って敵を仕留められる戦術の斬新さは言うまでも無く。プレイヤーのイタズラ心も大いに刺激し、他のステルス要素を取り入れたゲームには無い立ち回りを可能とするなど、総じて見所満載で革新的なシステムに完成されている。また、攻撃面ばかりでなく、お金を手に入れるというモロ犯罪同然な事も可能。そう言ったお前の物は俺の物な事も可能という点でも、システムの新しさが如何に強烈なものかは言うまでもない。
他にも、今作にはプレイヤー自身の行動によって市民の評価が変化するシステムがあり、この評価が悪いと警察への通報がされ易くなるというものも。また、インターネットに接続していると、他のプレイヤーがこちら側のシカゴ市内に潜入し、ハッキング対決が始まるという独自のオンライン対戦モードも実装。普通に街中を歩いている時に発生するという大胆な試みである同時に、ハッキングという題材を扱った今作ならではの独自性の溢れた作りで、ゲーム展開に彩りを与える要素としての存在感を大いに発揮している。加えて街中では『ポーカー』、『ドリンクゲーム』と言ったミニゲームも豊富に用意されているほか、エイデンのスマートフォンからは『デジタル・トリップ』なる架空の世界を舞台にしたゲームも遊べるなど、本編とは絡みの少ない要素も豊富で、遊び込むだけでもいっぱいいっぱいな内容になっている。
オープンワールド系のアクションアドベンチャーゲームとしての作りは王道で、遊び慣れてる人ならすんなりと入って行ける作り。しかし、ステルス重視のゲームバランスにハッキングシステムなどの革新的な要素もあって、独自性は非常に高い。自分で街をコントロールできてしまうという点でも、ある意味、夢のような内容で、子供の頃、そんな願望を持った事のプレイヤーならば下衆な感情を昂ぶらされること必至。まさに他に類を見ないゲーム性とシステムが光る、全く新しい手応えを持つオープンワールド系のアクションアドベンチャーゲームに仕上げられている。

例によって、今作の魅力はハッキングシステムである。特にこのシステム、これまでのステルス要素を取り入れたアクションゲームの常識を覆す戦術を確立させている点で特筆に値する。
その象徴とも言えるのが、『監視カメラ』を使った戦術だ。敵に絶対に発見されない位置に立って監視カメラをハッキングし、その視界から潜入場所を見下ろして周辺の装置などを遠隔操作で誤作動させるなどして脅威を取り除き、あらかた片付いたら目的の場所まで進んで情報を入手し、そのまま退散。まさにハッキングという反則技だからこそ成し得た戦術で、この手のゲームにしては珍しい絶対安全なステルスというものを表現している。基本的にステルスゲームにおける潜入は、相手に悟られないよう隙をついて静かに行動し、時にはサプレッサー(サイレンサー)付きの銃や背後からのテイクダウンを使って敵を始末しながら、目標となる場所を目指すのが王道の戦術である。そして『警報装置』、『監視カメラ』、『赤外線センサー』の三つは、プレイヤーの潜入を阻む装置の三羽烏と言っても過言では無い存在。特に『監視カメラ』は大きな脅威の一つで、これを視界に捉えなかったのが災いして敵に感づかれてしまい、増援部隊との激しい銃撃戦を演じるハメになったり、数に押されててんてこ舞いにされる目に遭ったりしたステルスゲーム経験者は少なくないだろう。そして、脅威を退ける為に監視カメラを銃で射撃して破壊する戦術もそれなりの数をこなしたプレイヤーならば染みついてしまっていると思われる。現実でも、監視カメラを見て、レンズ部分を射撃して破壊したくなる衝動に駆られた事があるかもしれない。いや、さすがにそれは重傷だが。ゲーム中毒過ぎるが。やったら完全に器物損壊罪に処せられるが。
それはともかく、そんな数多くのステルスゲームで脅威とされた『監視カメラ』が障害ではなく、頼もしいサポート役で登場する。しかも、主人公エイデン自身のハッキングスキルによってカメラ側が捉える映像も細工される為、付近を通っても敵に感知される事が無い。それだけでも今作が、ステルスゲームの常識を覆した作りになっているのかが容易に察せるだろう。いつも脅威として登場してた『監視カメラ』が敵側の脅威として登場する!まさに立場逆転、今までの鬱憤晴らしますと言わんばかりの蹂躙し放題の新しいステルスが楽しめてしまうのだ。相手を出し抜ければそれはそれで楽しいのだろうけど、発見された際のリスクが大きいから、怖くて遊ぶ気になれない。ステルスゲームに対し、そのような苦手意識を持ってしまうプレイヤーも少なくはないはずだ。そんな苦手意識を持つプレイヤーも、今作では安全が保障された上でのステルスを楽しめる。安心・安全でやりたい放題なイタズラを堪能できちゃうのだ。
実際にカメラ経由で行うステルスの楽しさは格別で、これでもかと言わんばかりに下衆な感情を昂ぶらせる。特に対象のみならず、その周辺の敵までまとめてハメる事ができた際には思わず声を出して笑ってしまうほどである。相手の手榴弾を誤作動させ、味方を助ける為に周囲の敵兵が数人近寄ってくる。このままでは味方の助力で手榴弾が切り離されてしまう。その近くに配電盤がある!直にそれを遠隔操作でショートさせ、相手側の注意をそちらに向かせる。そしてショートさせた結果、全員がそちらに注目!しまった、爆弾から目を離してしまった!気が付いた時には後の祭り。これはとあるミッションで訪れる場所で可能な戦術なのだが、成功した時は本当に大爆笑必至。安全な位置から何もできない敵兵達を思うがままに混乱させられる。まさにイタズラの極致、バイオレンスなドッキリを仕掛けるその過程には、バラエティ番組でドッキリを仕掛け人が如何に楽しい気分でそれを行っているのか、どれほど楽しい事なのかというものを存分に思い知らされるだろう。
とは言え、どんな場面でもこの戦術が通用する訳でもなく。時には単身での敵地への侵入が求められる場面もある。また、ミッションによってはターゲットの人物を脅し、その人物が戻ってドアを開けた先にあるアジトの内部にあるカメラ探ると言った独特の潜入も展開される。無論、この場面では騒ぎを起こす訳にはいかないので、相手に被害を与えるような戦術は使えない。そして、ターゲットの後もカメラ経由で尾行しなければならない。そう言った常にハッキング無双な展開が繰り広げられる訳でないのも今作の見所。遠隔操作をするにも、アクセス可能な範囲が留められるなどの制約があるので、それを如何にして縮めていくかと言った行動も求められるようになっているのだ。
ミッションもハッキングの題材を突き詰めた相手を出し抜く楽しさ、難しさを演出した仕上がり。特に終盤のミッションは反則技を使って戦う事の代償を描いた展開になっているのが印象的。どんなものかはネタバレになるので伏せるが、見ればハッキングでライフラインを操れる事が如何に人間にとって脅威なのかを思い知らされるだろう。
そう新境地のステルスアクションを描いている今作だが、練り込みが甘い所も多く見受けられる。何と言っても、ハッキング自体のバリエーションが少ない。結局は情報の引き出し、対象オブジェクトの遠隔操作の二つに限られてくる為、ゲームがある程度進むと、パターン化が際立ってくる。それに併せてミッションのバリエーションも後半になると似たり寄ったりな内容のものが増えるなど、アイディアの限界が現れてしまっているのが痛ましい。それに信号機のハッキングなど、実施する事によって決まった動きが実施されるのも素っ気なさが否めない。その辺は表現の限界もあるのだろうが、実際に見た時のご都合主義っぷりはゲームが進めば進むほどに萎えてくる。非常に大胆で革新的な戦術が取れるのに、実は意外と事は単純であり、ご都合主義。本当はもっと大胆な表現を追求したかったのかもしれないが、それらの試みが機能せず、変わった戦術が試せるステルスアクションゲームとしてまとまってしまっている所には若干の寂しさを覚える限りである。やっている事自体は新しいのに細かい表現が理想に追い付いていない。そんな感じなのだ。

ゲームバランスにも難がある。特にカーチェイスの難易度があり得ないほど高い。本編ではミッションごとに警察やギャングとのカーチェイスが繰り広げられるのだが、この相手の追跡が非常にしつこく、ハードモードかと言わんばかりのデッドヒートになるのである。それ故に速度を上げて振り切る戦法が取り難い上、ハッキングで始末しようにも相手が急接近してくる所為でやり難い。挙句の果てに車自体の操作性も劣悪で、重いハンドリングと衝突時の反動の大きさでプレイヤーの意志に反した動きでイライラさせられる。まさにゲーム全体の印象をより悪くするほどに宜しくない調整になってしまっているのだ。明らかに熟練者を参考にして調整されたようなもの。レースゲームが苦手なプレイヤーに配慮されてない仕上がりには呆れるしかない。ハッキングによる仕掛けにハマり易くするなど、やろうと思えば対処できただろうに、結果的に熟練者だけを見て調整したかのような仕上がりには、今作の隙の甘さというものを思い知らされる次第である。操作性自体、エイデンを動かすだけならば概ね悪くないレベルなのに、それが車になると途端に悪化するというのもどうなのか。こればかりは本当、調整を行ったスタッフの唯我独尊ぶりに憤りを覚えるばかりである。
更に今作はハッキングという事で、ストーリーは犯罪を題材にした内容なのだが、これもイマイチ。特に自分がやらかしたハッキングが元で姪が殺されたから、やり返すという理不尽な正義の下に行動する主人公のエイデンの行動はまさに身勝手の極みで、プレイヤーの不快感を大いに煽る。それを現すかのように、本編では自身の勝手な行動で無関係の親族に迷惑をかけたり、そのせいで死者が出る因果応報な展開も多く、正直、見ていて「なんだこのクズ野郎は…」と嫌悪感すら抱くかもしれない。一応、結末が自身の行った事の身勝手さを思い知らされるものになっているのは救いで、一応のカタルシスを得られるが、面白い物語であるかというと否。ハッキングの腕前が凄く、ゲームとしても新しい遊びを演出しているのに肝心の主人公がコレというのはただひたすらに勿体ないの一言に尽きる。題材的に難しいものがあったにせよ、できればもう少し共感できる主人公にして欲しかったところだ。
また、ローカライズは申し分無し、一部、音声が英語のままだったりするが、市民の個人情報、チャットでのやり取りなど、細かい部分に至るまでしっかりと日本語化されている。吹き替えボイスも洋画のベテランが揃えているだけに盤石。海外ドラマ『シャーロック』の主要人物を演じた三名(森川智之、三上哲、村治学)が出演しているのも見所で、同作を知る人ならば声を聞くだけでニヤリとしてしまうかもしれない。

ボリュームも寄り道、やり込み要素共に豊富で、全てを極めるだけでも90時間強は費やす必要があるほど、濃密な内容になっている。特にやり込み要素として用意されたミニゲームはその密度もさることながら、作り込みが凄い。これだけで独立したゲームが作れるだろと言いたくなるほど気合の入ったものになっているので必見だ。
グラフィックもPS4基準で考えると、キャラクターモデルのクオリティがやや低めだが、シカゴの街並みやエフェクト等、背景周りの作り込みは素晴らしく、見る者を圧倒させる仕上がりになっている。その他、音楽も雰囲気重視だが、オプションで用意された豊富な洋楽など、印象深いものも幾つか。効果音も悪くなく、爆発に格闘攻撃、ハッキング時の音など、手応えを大事にした作りにされているのがナイス。リアル志向の作品だと怠りがちな所をしっかり抑えたものに仕上げているところには、実際に他の作品でもその姿勢を貫き通しているユービーアイらしさというものを感じさせられる。
ハッキングを題材としたゲームシステム、それによる革新的なステルスパートとその戦術、作り込まれたシカゴの街並みなど、全体的には大作というに相応しい仕上がりで、ゲームとしても意欲作と言える作りである。ただ、カーチェイスの理不尽スレスレな高難易度、ハッキング自体のバリエーションの乏しさなど、欠点も多く、手放しに褒められないのが惜しまれる。革新的だけど、粗の数々で損をしてしまっている今作。ただ、ここでしか味わえない遊びがあるのは間違いないので、ステルスゲーム好きならば是非、遊んでみて欲しい佳作である。18歳以上のみ対象タイトルなのでプレイヤー層は狭まれるが、監視カメラを使ったステルスは本当に秀逸。安心・安全でやりたい放題なイタズラを堪能してみて欲しい。
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