≫Transistor(トランジスター)
|
■発売・開発元:Supergiant Games /
■ジャンル:アクションRPG /
■CERO:B(12歳以上対象)※暴力・問題言語表現あり /
■定価:2,222円(税別)
◆公式サイト / ストアページ
≫『Transistor』(PlayStation Store)
≫『Transistor』(Steam) ※Steam版
≫『Transistor』(My Nintendo Store) ※Nintendo Switch版
|
▼Information
|
■プレイ人数:1人 /
■セーブデータ数:5つ /
■必要容量:2.6GB以上 /
■推定クリア時間:5~6時間(エンディング目的)、30~40時間(完全攻略目的)
|
人々を襲う謎の存在「プロセス」によって危機に瀕した巨大都市「クラウドバンク」。
この都市で人気上昇中の歌手・レッドはある日、コンサート会場で何者かの襲撃を受けた。
気を失ったレッドが目覚めると、そこには男の死体とそこに刺さった喋る剣「トランジスター」があった。
更にレッドは襲撃の反動で、声を失ってしまっていた。
剣より聞こえる声に導かれるがまま、死体からトランジスターを引き抜くレッド。
それは彼女とプロセス達との戦い、自らを襲った者達を探し出す追跡の始まりを告げるものだった。
|
▼Points Check
|
--- Good Point ---
◆時を止め、未来の行動を決めて敵への攻撃などを実施する、アクションとシミュレーションが融合した戦闘システム
◆フィールドマップの移動と戦闘にフォーカスした分かりやすさと、それゆえの趣向を凝らした作りが光る本編構成
◆バリエーションの豊富さと、発動にプレイヤー自身の体力が関係してくる仕様が特徴的な「ファンクション」
◆組み合わせの膨大さと、それによる難易度の一変といった1度のプレイでは全容を把握しきれない深みを持ち合わせた「ファンクション」のカスタマイズおよびアップグレードシステム
◆カスタマイズ次第によって難しくなったり、簡単にもなる柔軟性を持ち合わせた難易度
◆カスタマイズの組み合わせ、ファンクションの種類によって演出される戦闘シーンにおける戦術および戦略性の高さ
◆敵の全滅メインながら、個々の配置と地形の違いによって戦術・戦略を練る楽しさを表現した各種戦闘シーン
◆芸術性のあるビジュアルと緻密な設定、SF的な要素の数々が異彩を放つ世界観とストーリー
◆世界観との親和性の高さ、オシャレなデザインが印象的なインターフェースデザイン
◆移動と戦闘メインの内容に伴う単調さを防ぐ措置として機能した、適度な物量のボリューム
◆思わずウットリしてしまう背景の美しさと、キャラクターたちの滑らかな動きの数々が光るグラフィック
◆世界観とストーリーにマッチした、ジャズ風味の完成度の高い音楽(ボーカル曲も豊富)
--- Bad Point ---
◆チュートリアルを始めとするサポート機能の少なさ(特に「ファンクション」周りは致命的に説明不足)
◆一部、最適解とも言える凶悪な「ファンクション」の組み合わせの存在(一例として「ボイド」+「スパーク」)
◆演出の地味さもあって、いつ実施されたのかがイマイチ分かりにくいオートセーブ
◆ボリュームは抑えられているとはいえ、単調さは払しょくできていない移動と戦闘に終始する本編構成
◆積極的に世界観などの情報を集めていかなければ、全容把握が困難なストーリー
◆総じて良好ではあるものの、若干、余計な部分も日本語化されていたりするローカライズ
◆肩透かし気味の2周目(冒頭にストーリーの変化があると示唆されるが……?)
|
▼Game Overview
|
剣に導かれるがまま歌姫は戦い、巨大都市は終焉を迎える。
◇Xbox LIVEアーケード、Steamで配信され、高評価を獲得したアクションRPG『Bastion(バスティオン)』を製作したアメリカのインディーデベロッパー「Supergiant Games」開発の新作アクションRPG。声を失った歌手のレッドを操作し、喋る剣「トランジスター」に導かれながら、巨大都市「クラウドバンク」を襲う謎の存在「プロセス」と、自らを襲撃した謎の敵との戦いに身を投じていくという内容。敵「プロセス」との戦闘、クラウドバンクの移動を繰り返す形で進めていく。広いマップ、ダンジョン探索と言った要素は皆無。基本的にストーリーの流れに沿っていく一本道構成で、探索自由度は低めの作りになっている。
◇敵「プロセス」との戦闘もフィールド上で発生し、リアルタイムで展開とアクションRPGらしいもの。ただ、特定の地点に足を踏み入れた際に発生するという、ポイント固定型のエンカウント形式になっている。戦闘開始と共に専用のフィールドが展開され、プロセスたちを全滅させない限り、外へ出られなくなる。いわゆるベルトスクロール型、カプコンの『ファイナルファイト』シリーズみたいなものと言えば、ゲームに詳しいプレイヤーならばピンとくるかもしれない。
それにならってか、一度勝利した戦闘をあとから再プレイは不可能。システム周りの話になるが、本作にもプレイヤーレベル、経験値の概念はあり、戦闘に勝利すると後者が手に入る。だが、有限なので稼ぎプレイはほとんどできず、徹底的にプレイヤーを強くして力で押すという攻略は実践しにくくされている。ただ、戦闘には一部、回避可能なものもあるほか、正規ルートから外れたところにはる戦闘への挑戦は任意。それに挑むか否かで正規ルート中心で進めた時との強化との差が出るといったことはある。結局のところ、進め方次第ということで、ある程度の自由度は担保されている。
◇戦闘に関してはシステムもだいぶ変わっている。アクションRPGということで任天堂の『ゼルダの伝説』、スクウェア・エニックスの『聖剣伝説』などを連想するかもしれないが、実際はターン制シミュレーションの要素を持ち合わせた特殊タイプ。トランジスターの特技「Turn()」を発動させてプロセスたちの動きをとめ、「ファンクション」と称されたスキルによる攻撃を「行動ゲージ」なる制限下で決定。そのまま「Turn()」を解除すると、プレイヤーことレッドが「Turn()」発動中に選んだ「ファンクション」による攻撃や行動を高速で実施するというものになっている。いわゆる『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』(3部)などに登場するスタンド「ザ・ワールド」的な行動で戦っていく感じである。ただ、発動後には行動ゲージのクールタイムが発生する都合、一定の間「Turn()」が発動できなくなる。なので、最後の行動を終えるタイミングで敵の密集地帯に止まってしまうと、集中砲火を浴びる羽目になる。そのため、安全な所で技が終わるように動きを想定することも重要。こんなシミュレーションゲーム的な戦略も必要とされるなど、非常に革新性の高いシステムに完成されている。
◇「ファンクション」は本編が進むにつれ、さまざまなタイプのものが手に入る。ただ、セットできるのは4つまで。技も威力は小さいが「Turn()」時の行動ゲージ消費量が最小、複数の敵を巻き込めるが行動ゲージの消費量は最大など、それぞれ長所と短所がハッキリしており、どれをセットするか否かで戦闘の難易度が変わってくる。また、ファンクションには「スロット」なるスペースも設けられ、ここに別のファンクションをセットすることも可能。それによって主要攻撃に当たる「アクティブスキル」が変容したり、時には存外な攻撃技が可能になって大胆な戦術で攻め込めるようにもなる。こうしたこともあって、カスタマイズ性が非常に高い。
また、少し面白い特徴で、プレイヤーのライフゲージはファンクションに依存。ダメージを受け続けて空になってしまうとそのファンクションが壊れ、使用不能になるペナルティを課せられる。完全に使用不能になる訳ではなく、一定期間経つと復活して使えるようになる。だが、使用不能になることでそれまでの戦術が使えなくなるなど、弊害も大きいので気軽に扱っていると返ってピンチになることも。そんなプレイヤー側の戦術・戦略をかき乱す仕掛けもあって、戦闘の独自性と緊張感を演出している。
◇アクションRPGとしては自由度が低く、進行ルートもほぼ固定された一本道。やることも移動と戦闘に特化していて、単調さすらある。しかし、そこを独自の戦闘システムと豊富なファンクションによる戦術性で補っており、アクションRPGのようで戦略シミュレーションでもある、独特のゲーム性と手触り感を演出している。
|
▼Review
≪Latest Update :8/20/2023 | First Publication Date:3/26/2017≫
|
革新的で深みのある戦闘システムと入り組んだ世界観で魅せる、遊び応え・見応え共に抜群の良作。アクションRPGであり、戦略シミュレーションでもあるその不思議な作りには、他に類を見ない面白さが凝縮されている。
|
特に「Turn()」は自分が優位に立つ中、あの手この手を敵に繰り出して叩き潰す征服感、イタズラ心を刺激する楽しさに富んでいるのが秀逸。まんま『ジョジョの奇妙な冒険』の「ザ・ワールド」そのものであると同時に、コント番組でお馴染みのイタズラネタでもあり、それを主要な戦術の一つに落とし込んでいる時点で既に面白い。
それでいて、「行動ゲージ」による制限でプレイヤーの欲求を絶妙に満たさない設計にしているのが絶妙。そもそも、制限を設けるのは技の万能ぶりからして当然の措置。ただ、それを戦略シミュレーションの遊びへと昇華させてしまっているのには目から鱗の一言に尽きる。「時間を止める」という動詞から「静的な遊び」としてシミュレーションを持ち出し、「行動を決定する」という「動的な遊び」からアクションを持ち出し、双方を組み合わせる。安易に融合すれば複雑なシステムを持つゲームになりかねない事から、水と油の関係に等しい戦略シミュレーションとアクションゲームの2ジャンル。それらを「時間を止める」というアイディアを使って繋ぎ合わせ、双方のゲームとしての魅力を宿すシステムに昇華させているのには、「その方法があったか……」と感心させられるものがある。まさに「複数の問題を一度に解決する」という、アイディアの本質を思い知らされる仕上がりになっている。
システムの説得力と独自の戦術性、戦略性を演出する為の工夫も万全。執拗な攻撃で攻め込んでくるプロセス、移動と行動とで消費量が大きく変化する行動ゲージ、レッドの機動力といった設定にそれが現れている。
また、時間を止めている最中に決定した行動が解除後、必ずしも思った通りの結果に繋がる訳ではないのもいいスパイスになっている。解除後、急な回避行動を敵が取ってその場から離脱し、結果が乱されて逆にプレイヤー自身が危機に陥る事も起こり得るのだ。さらに敵によっては1度、攻撃を受けた後に防御姿勢を取るタイプもいて、攻めたはずが逆にカウンターを喰らう結果に繋がってしまうこともある。事前に立てた戦術・戦略が思い通りの結果を呼ぶ訳ではないのは、戦略シミュレーションで最もスリリングな部分であり、様々なドラマを生む要素でもある。本作には確率の要素はないため、基本的に攻撃はほぼ的中するが、そんな不意な行動を取るというアクションゲームの要素により、想定外が生じるように作られている。実質、確率の要素が無縁も同然なシステム上で、別ジャンルの要素を活用する形で似たようなスリルを作り出しているのもまた、目から鱗の一言。アクションとシミュレーション、その二つを如何にして違和感なく組み合わせるか。この計算されたバランスと仕様には、開発スタッフがその課題にどれほど真摯に取り組んだのかという凄みを思い知らされるだろう。
そして、戦略シミュレーションに限らず、シミュレーションRPGにおいて最も面白い部分が選択肢の多さ。本作は「ファンクション」がそれを演出。プレイヤーそれぞれ異なる戦闘スタイルを編み出しては、実戦で試すという懐の深い環境を作り出している。
ファンクション自体のバリエーションも豊富で、どの技を気に入るかで難易度まで変化する。技をセットするのが四ヶ所(○×△□ボタン)に限られているのも戦術・戦略を練る楽しさを際立たせているのに加え、技それぞれがレッドのライフとしても扱われる都合、安易な力押しは返って危険を招くようにされているのも面白い。個々の技を自らの命として大事に扱わなければならないのもシミュレーション的な面白さに満ち溢れており、こう言った所でも同ジャンルの面白さを表現しようとした作り込みを感じさせられる。ファンクションのスロットに別のファンクションをセットし、効果を変容させるカスタマイズも組み合わせによっては、アクションゲームみたいな戦い方ができてしまったりするのもインパクト十分。その組み合わせを検証・実践するにも戦闘が有限で限界があることも、2周目以降のやり込みを誘う要素として機能しているのにも唸らされるところだ。
単純に作りが面白いだけでなく、実際の遊び心地も斬新かつ、変わったものに仕上がっている点でも本当に作り込み具合は申し分なし。まさに唯一無二の魅力というものが表現されている。
それもあって、アクションRPGにせよ、スタンダードなRPGでもシステムの面白さを求める人には極めて心に刺さりやすい。もし、この仕組みと特徴にキュンとするものを感じたのなら、すぐでにも体験いただきたい限りだ。
|
また、本作はグラフィックの美しさも特筆に値する。とりわけクラウドバンクの街並みはもはや芸術の域。見ているだけでもウットリしてしまう仕上がりとなっている。キャラクターのアニメーションも非常に滑らかで見応え十分。全体的な作風にも1990年代のスクウェア(現:スクウェア・エニックス)作品、具体的には初期の『ファイナルファンタジー』シリーズで知られる天野義孝氏への影響が滲み出ている。それもあってか、その頃の作品に親しんだプレイヤーほど琴線を刺激させられるかもしれない。
音楽も素晴らしい出来。未来都市であるクラウドバンクの雰囲気に見事にマッチしている。楽曲の数も豊富で、特に序盤のボス「シビル」戦の楽曲「In Circles」は要チェック。「これがボス戦の曲……!?」と驚くこと請け合いだ。
ストーリーと世界観、設定周りの作り込みも深い。語られる内容が断片的な都合、フィールドマップの至る場所にあるオブジェクトなどから情報を集めていかないと全容を掴めないのだが、相応に深い所まで追究していきたくなる面白さがある。トランジスターなる剣の正体、プロセスとの関連など、興味をそそる要素も満載。特にエンディングは演出も相まって印象的なものになっている。細かい情報を理解してみれば、より興味深い結末となるので、ぜひ細かく調べた上でご覧いただきたい限りだ。
台詞を始め、日本語翻訳も違和感がなく、機械的な感じが一切ないところも評価できる。若干、言い回しがクドかったり、翻訳する必要のないところまで翻訳してしまっている部分もあるが、仕上がりは申し分なく、売りであるストーリーと世界観を存分に味わえるのが嬉しいところだ。
とはいえ、メニュー操作が×で決定、○でキャンセルと海外仕様になっているのはちょっと惜しい。
また、本編も戦闘と移動に終始するため、悪く言えばワンパターン。一応、特殊なルールでの戦闘を始め、変化をつける工夫はされているが完全な解消には至っていないため、中盤以降でダレやすくなっている。
また、チュートリアル周りが不足気味。特にファンクションのアップグレード絡みは最低限、説明が欲しかったところである。本作のシステムの中でも際立って光るものだというのに、なぜ説明を入れなかったのか。遊び方を乱される懸念があったからにしても、人によっては気付かずにエンディングに辿りつけるようにしてしまったのはさすがに悪手だったと言わざるを得ない。せめてもの救いは、1周に要する時間が5~6時間程度に収まっていることか。
そんな惜しい部分もあるのだが、アクションRPGとしては特にシステム周りの革新性が光り、ストーリーや世界観が作り込まれていることもあってプレイヤーの心に深く刻み込まれること必至な内容に完成されている。どこか90年代初期の著名なアクションRPG作品に対する敬意も感じさせられるなど、侮りがたい魅力が詰まった本作。PS4をお持ちのプレイヤーで、アクションRPGや戦略シミュレーションに抵抗感がないプレイヤーなら遊んでみていただきたい良作だ。
PS4本体をお持ちでないプレイヤーでも、本作はオリジナルに当たるPC(Windows、Mac、SteamOS+Linux)版のほか、2018年からはNintendo Switch版が配信されている。どちらも日本語にバッチリ対応しているので、興味があればぜひ。
|
≫トップに戻る≪
|