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≫マルディタカスティーラ-ドン・ラミロと呪われた大地-


■発売元:フライハイワークス /
■開発:Locomalito、Gryzor87、Abylight Studios / ■ジャンル:魔界アクション /
■CERO:B(12歳以上対象)※暴力・出血表現あり / ■定価:1,222円(税別)

◆公式サイト / ストアページ
≫『マルディタカスティーラ-ドン・ラミロと呪われた大地-』(フライハイワークス公式サイト)
≫『マルディタカスティーラ-ドン・ラミロと呪われた大地-』(PlayStation Store)
≫『マルディタカスティーラ-ドン・ラミロと呪われた大地-』(My Nintendo Store) ※Nintendo Switch版

◆スペシャルコンテンツ
≫『マルディタカスティーラ ドン・ラミロと呪われた大地』:攻略メモ

© ABYLIGHT STUDIOS SA 2016 LICENSED BY © LOCOMALITO AND GRYZOR87
2016 JAPAN REGION PUBLISHED BY FLYHIGH WORKS
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:1つ /
■推定クリア時間:1~3時間(エンディング目的)、12~18時間(完全攻略目的)
西暦1081年。終わりなき争いにより、この世には多くの苦しみが生まれた。

戦禍によって恋人を失い、深い悲しみの中に陥った少女「モーラ」。
彼女は古代の悪魔に惑わされ、その涙を魔界へと繋がるゲートの鍵に変える。
やがてゲートは開かれ、悪魔の軍勢が「カスティーラ王国」へと襲来。
国は突然の襲撃になすすべもなく、そのまま滅亡へと追いやられた。



そして同じく、悪魔の軍勢が迫りつつある状況の「トロメラ王国」。
国王「アルフォンス4世」は、騎士「ドン・ラミロ」とその部下たちに悪魔の討伐を命じる。
王命を受けた彼らは、悪魔たちに支配されたカスティーラ王国へと向かい、その根城「魔界」を目指す。
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆”魔界のアレ”を思わせつつ、バランスに操作感に至るまで徹底的に差別化されたゲームデザイン
◆ランダム要素を排除しつつ、パターン化による攻略の余地を色濃く表現した統一感のある難易度
◆ある程度の硬さはあれど、ジャンプ後の微調整が効くのを始めとする動かしやすさを重視した操作感
◆多彩で容赦のない展開、ネタ密度の濃さで強烈な印象を残す全8つのステージ
◆ステージのあちこちに散りばめられた名作ゲームのパロディ(なんとマ●オシリーズのネタも……)
◆全体的に使い勝手がよいものがほとんどで、極端な”ハズレ”が存在しないメイン武器
◆特殊アクションの実現、緊急防御など、ステージやボス戦の攻略に変化を与える補助アイテム
◆1980年代のアーケードゲームらしさを忠実かつ、徹底的に再現しきったグラフィック
◆当時のFM音源チップを疑似再現した上で作曲した、こだわりの塊にも等しい音楽
◆攻撃の確かな手応えを引き立てる、質感のある効果音(音そのものもなかなかに痛快)
◆クリアするだけなら2~3時間ほどだが、完全クリアを目指すと一気に膨れ上がるいい意味で極端なボリューム
◆周回はなく、アイテム収集とプレイヤーの実力次第での分岐で一貫したエンディング条件
◆専用の文字フォントを作ってメッセージを翻訳するなど、並々ならぬこだわりが光る日本語ローカライズ

--- Bad Point ---
◆周回なしとは言え、厳しすぎる印象は否めないエンディング分岐条件(グッド以上はかなりきつい)
◆一部、無慈悲がすぎる「モーラのなみだ」の隠し場所および入手条件(特に4個目はやり過ぎ)
◆雑魚敵の増援で難易度を上げるという、やや雑な調整が見受けられるボス戦
◆不必要に難易度を底上げする要素になっている印象が否めない99秒の時間制限
◆ほぼノーヒントで非常に見つけにくいトロフィー絡みの隠しアイテム(一部、ヒントもあるが)
◆最終ボス前座「レッドガーディアンズ」のアウト気味なデザイン(著作権的に大丈夫……?)
▼Game Overview
トロメラのため、このアクムを終わらせよ!



◇個人開発者のLocomalito、Gryzor87両氏が2012年にWindows PC用フリーゲームとして公開したアクションゲーム『Maldita Castilla』に多数の追加要素を加えたパワーアップ版。Abylight Studios、YoYo Games協力を得て開発され、『Cursed Castilla(Maldita Castilla EX)』の名で2016年、Windows PC版がSteamで発売。その後、PlayStation 4、Xbox Oneに移植された。日本語版のローカライズと販売はフライハイワークスが担当。
ちなみに2017年にはニンテンドー3DS版(※2023年現在販売終了)、2019年にはNintendo Switch版も発売されている。Nintendo Switch版の販売はフライハイワークスではなく、Abylight Studiosが担当している。

◇ステージクリア型の横スクロールアクションゲーム。主人公の騎士ドン・ラミロを操作し、「ソード」を始めとする投てき型の武器で行く手を阻む魔物たちを倒しながらステージを進む。ステージ終盤はボス戦となっていて、倒せればステージクリアになる。投てき型の武器(ショット攻撃)で魔物を倒しながら進む、主人公が騎士、しかも立派な髭を生やしているその特徴から、1980~90年代のゲームに慣れ親しんだ世代なら、嫌でも”魔界のアレ”を連想してしまうこと必至。
実際のところ、アクションゲームとしての作りや雰囲気は完全に”魔界のアレ”である。そもそもストーリーの最終目的が魔界を目指すことから、ほとんど隠す気がない。グラフィックと音楽も1980年代を強く意識しているため、”魔界のアレ”に影響を受けたゲームではないと否定すること自体が難しすぎる。というか、できんがな。

◇ただ、システム面は”魔界のアレ”と大きく差別化されている。まず主人公の挙動に癖がない。ある程度、プレイヤー側でジャンプ中の微修正が効く仕様になっているほか、攻撃のレスポンスも軽快で、そこそこ気持ちよく動かせる。次にダメージ制。これ自体は”魔界のアレ”と同じだが、3回までの攻撃に耐えられるのと、ライフゲージで残り体力が表示される時点でだいぶ異なる。ライフゲージ自体は”極”な魔界にもあったものだが。なお、ダメージを受けても鎧が砕け散って、パンツ一丁になったりすることもない。そもそも、鎧という概念自体がない。逆に1回だけ攻撃を防いでくれる「盾」はある。そんな盾こと、補助装備を持てるというシステムも差別化されている部分のひとつ。メイン武器とは別のスロットがあり、道中で手に入れることでダメージを特別に1回防げるようになったり、補助攻撃が可能になるといった恩恵にあずかれる。

◇そして、最も大きく差別化されているのがゲームバランス。突然、地面から魔物が現れるといったランダム性が排除されている。そのため、道中の敵は決まった場所に現れ、パターンに沿った行動を取る。一部、敵が無限に湧き出て襲いかかってくる場面もあるが、それも動きや出現場所はほぼ決まっている仕組み。なので、プレイヤー側もそれに沿った行動を取ればノーダメージクリアが狙える調整になっている。また、魔界のアレと言えば周回要素だが、本作にはない。代わりに一部のステージに隠された「モーラのなみだ」なるアイテムを全回収しないと最終ステージに突入できず、バッドエンドを迎えるという要素がある。また、ゲームオーバー時のコンティニュー回数も記録され、それによって「モーラのなみだ」全回収後のエンディングにも変化が現れるようになっている。なので、最良の形でゲームクリアを目指そうとなれば、”魔界のアレ”よりも難しいかもしれない。

◇他にシステム絡みでは”魔界のアレ”と同じく制限時間もあるが、全ステージが99秒で固定、補充用のアイテムを回収して時間の伸ばす攻略が試される点で若干異なる。また一部を除き、大半のステージ中盤に中ボス戦が用意されている。これはどちらかというと”魔界のアレ”というよりも”悪魔城のアレ”である。こういったシステム、バランス面での違いがあることから、全体的には似て非なるアクションゲームに完成されている。見た目はまんま”魔界のアレ”だが、遊んでみると全然違うという、いい意味でギャップの激しい作り。安易なオマージュとして終わっていない、手の込んだ作品に仕上げられている。
▼Review ≪Latest Update :5/7/2023 | First Publication Date:5/7/2023≫
”魔界のアレ”と言われても仕方がないレベルの見た目。
だが、実際は独自の魅力を持つアクションゲームとして完成された、意外性抜群の良作。
とりわけ、「”魔界のアレ”だ」「ソックリさんだ」との先入観を持った上で本作を遊べば、非常にいい意味で裏切られる。
特にそれを実感させるのがゲームバランスの調整方針。敵の出現位置、トラップの動きがほぼパターン化されているので、不意打ちを喰らうことが少ない。時々、敵が複数体で襲いかかってきて、無茶な立ち回りを求めてくることもあるが、対処の余地を与えないことは滅多にない。ほぼ必ず、プレイヤーの取った行動が以後の結果に結びつくよう調整されている。

そのため最初は苦戦しても、何度か挑むと安定して対処できるようになるという、腕前の上達が実感しやすい。どんなに上達しても、突発的に敵が現れたり、攻撃が仕掛けられる都合、完全に安定しないという”魔界のアレ”とは一線を画した調整で、この部分だけでも本作が単なるオマージュではないことを思い知らされること請け合いだ。

もちろん、かと言って全編が易しい難易度という訳でもない。パターン化されているとは言え、少しでも動きがズレればそのままダメージに直結するなど、割と際どい立ち回りが求められる。その事実を伝えてくるのがプレイヤーが操作するドン・ラミロ。前述にて、”魔界のアレ”とは違って挙動に癖がなく、ジャンプ中の着地位置の微調整も効くと書いたが、あくまでも”そこそこ”なレベル。”悪魔城のアレ”……厳密にはステージクリア型ではない、探索型みたいな自由自在な動きはできない。若干の”硬さ”はある。なので、よくタイミングを見計らって動かねば、それがダメージへと繋がってしまうのだ。
それもあって、一挙一動とその後の結果に想像をめぐらす必要が都度生じる。逆に言えば、きちんと動きが合えば驚くほどスムーズに進む。また、常にガチガチなパターン化が必要となる訳ではなく、若干の”あそび”は残されているため、間違った行動を取れば即ダメージ確定みたいなこともない。その意味では極めて高度な調整が図られている。元の手ごわさを残しつつ、行き過ぎた部分は正す感じのまとめ方で、主にアクションゲームが好きな人ほど、そのさじ加減の上手さに唸らされるかもしれない。

そんなドン・ラミロを動かしながら挑むステージも一筋縄ではいかない作りで、やり応え抜群。そもそも、序盤からして容赦がない。荷馬車に乗った状態で周囲から現れる敵の大群と中ボスを迎え撃ったり、浮き沈みを繰り返す亀の甲羅の上を飛び渡っていくなど、文字通り手に汗握る展開が続く。中盤以降になれば、暗闇に覆われた洞窟、ルートによっては分岐が繰り返される森といった特殊な土地も登場し、探索型アクションゲームのような展開にもなる。
数にして8つと、いかにも昔ながらのアクションゲームらしい少なさなのだが、個々の密度が濃いため、物足りなさはほとんど感じさせない。しかも、どのステージにも中ボスとボスとの戦闘があるのだ。嫌でも長く感じてしまいやすい。同時に当時のアクションゲームの特徴を見事に再現していて、オマージュとしては合格点以上の出来となっている。一部、行き過ぎではと感じる部分もあるが、その凝った作り込みとやり応えにもまた、アクションゲーム好きならば良くも悪くも面喰ってしまうだろう。

また、どのステージも上達が結果に表れやすい設計をしているのも見所だ。特に終盤には明らかに「無茶が過ぎないか?」と思ってしまう場面があるのだが、前述のように本作のあらゆる場面はパターン化されている。なので、適切な動きを取れば、驚くほど自然に攻略できる。そもそも、ベストエンディングの条件のひとつにノーコンティニュー&ノーミスクリアが用意されている(&可能となっている)時点で、絶対に不可能が存在しないことは明らかだ。かなりの集中力と根気が試されはするが。そんなやり込めばやり込むほどに作りの深さが見えてくるので、もし、最後まで進んで「あの時はああ動けばよかったんじゃ?」との未練が残ったら、再チャレンジしてみて欲しい。きっと新たな一面と秘めたるこだわりが見えてくるはずである。

こうしたゲームバランス周りでの差別化、動かしやすいようで少しコツもいるプレイヤーキャラクター、ステージの込み具合もあって、似て非なる魅力が描かれている。一番実感しやすいのはゲームバランスで、誇張抜きにプレイすれば「これは”魔界のアレ”のようで違う!」との感想を持つはずである。「そうは言っても見た目が……」となるかもしれないが、言えることはただひとつだ。そのように思ったら、騙されたと思って遊んでみるべし。
そもそも、先入観を持った時点で本作のプレイ資格を持ったようなものである。さすれば、本作が『マルディタカスティーラ』という、独自の魔界アクションゲームである確信を得られるはず。それほどの意外性が本作にあるのだ。
こだわりに関しては、グラフィックと音楽もその象徴。前者に関してはブラウン管の走査線まで、あの当時のアーケードゲームの雰囲気を忠実に描写する作り込み具合が圧巻。背景、キャラクターのドット絵も色数を制限して描かれていて、制作者の「あの当時のアクションゲームを蘇らせる」という確固たる信念とこだわりを感じさせられるだろう。
音楽も全曲がFM音源仕様。それも実際に1980年代当時のアーケードゲームで用いられたFM音源チップ、「Yamaha YM2203」をエミュレーションして作曲しているのだから驚かされる。

同じようなこだわりは、ゲーム起動時の演出にも表れている。アーケードゲームの筐体を稼働させたかのように「RAM OK」、「ROM OK」のシステムメッセージが表示され、そこからわずかな間を挟んでから、オープニングのストーリー紹介が始まるのだ。もう、ただひたすらに「そこまでやるか!」である。そして、当時のアーケードゲームを知る世代ほど、その作り込みには感動すら覚えること確実。あの当時のアクションゲームを蘇らせるという思いは伊達じゃないことも思い知るかもしれない。

他に日本語版だけのこだわりとして、ローカライズがある。台詞やシステムメッセージの日本語翻訳だけに終わらず、文字フォントまで本作独自のものを作った上で実施しているのだ。それもあって、グラフィック的に浮いた所もなく、ちゃんとした日本語版に仕上げられている。そもそも、台詞もメッセージもそんなに多くないゲームなのだが、1980年代のアーケードゲームを現代に蘇らせるとの元のコンセプトを日本語版でもきちんと残して伝えるという、フライハイワークスの志の高さには感銘を受けるしかない。地味な部分ではあるが、そんな本気のローカライズというものもゲーム本編とのセットでじっくり確かめて欲しいところだ。

総じて”魔界のアレ”のオマージュに見えつつも、全く違った魅力と面白さ、手ごわさを持つ良作に完成された本作。ただ、真のエンディングを目指すに当たってコンティニュー回数に制限があること、中断セーブでもその回数がカウントされるという厳しさは賛否が分かれるかもしれない。また、純粋にゲーム部分でも99秒に固定された時間制限のシステムは不要感が否めず、一部のボス戦を無駄に難しくしてしまっている。単純にボス戦ではカウントしない仕様でもよかったのではないだろうか。
また、ボス戦に関しては増援の雑魚敵を呼び出し、連携を図ってくる面子が多く、難易度の上げ方がいささか乱暴なのも気になるところだ。ラスボスですらこれで、そこまでやる必要はあったかどうか疑問である。他にも「モーラのなみだ」の一部にノーミスクリアを強要し、失敗時に大きな巻き戻しを強いるものがあるのもやり過ぎの一言だ。

そのような苛烈さは人によっては極端に不快に感じるかもしれない。ただ、ゲームとしての出来栄えは盤石だ。特に手ごわいアクションゲーム、1980年代から1990年代初期のシビアな体験が忘れられない世代ほど、刺さること請け合いの作品だ。”魔界のアレ”のようでいて、実際は違うが、アクションゲームとしては間違いなく古き良き時代と魔界の厳しさを持った内容となっている。興味があればぜひ、この懐かしくも手ごわい世界に挑戦してみよう。なお、このタイトル名は覚えにくい、何かよい通称とかはないのかと思ったら、『丸太とカステーラ』と呼ぼう。なんとビックリ、フライハイワークス公認の略称です。
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