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  4. 戦場のヴァルキュリア
≫戦場のヴァルキュリア
■発売元 セガ
■ジャンル アクティブ・シミュレーションRPG
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、恋愛描写、問題言語表現等あり
■定価 7980円(税込)<Best版:3990円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 HDDの残り容量によって変化
■必要HDD容量 22MB以上
■その他 DUALSHOCK3対応、ダウンロードコンテンツ対応
■総説明書ページ数 33ページ
■推定クリア時間 40〜50時間(エンディング目的)、120〜150時間以上(完全攻略目的)
征暦1930年代のヨーロッパ。
大陸は強大な軍事力を誇る『帝国』と『連邦』にほぼ二分されていた。
覇権を争う両国は、遂に開戦。
ヨーロッパ全土を巻き込む『第二次ヨーロッパ大戦』が勃発した。

そんな帝国と連邦に挟まれた小国・ガリア公国。
中立を掲げるこの国にも、戦争の魔の手が迫りつつあった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆タクティクスタイプにTPS(サード・パーソン・シューティング)の要素を取り入れた、斬新な試みと新鮮な触り心地が光る戦闘システム『BLiTZ(ブリッツ)』
◆本を読み進める独特の雰囲気に満ちた、『ブックモード』を主軸に展開するゲーム本編
◆TPSの要素がもたらした、3Dのゲーム性(ヘッドショットを狙うなど、2DのシミュレーションRPGでは絶対に実現不可能な遊びと戦術的要素を実装)
◆目的地の制圧、巨大兵器の破壊など、バリエーション豊かなミッション(クリア条件)
◆敵配置からトラップまで、入念な調整と個性付けが成された戦闘マップ
◆メインマップ、サブマップ含めて25以上と、やり応え抜群の充実した総計ボリューム
◆勲章集め、志願兵の個別エンディング制覇など、盛り沢山にも程があるやり込み要素
◆経験値稼ぎ向けのフリーマップ、ユニットロストの回避措置などの豊富な救済処置
◆常に慎重な進軍が求められる、スリル満点・歯応え満点のゲームバランス
◆偵察兵、突撃兵、狙撃兵など、多彩で個性付けもしっかり成された各ユニット(兵科)
◆無駄に個性豊かな志願兵キャラクター達(彼らを交えてどう部隊を編成するかも楽しい)
◆水彩画のアニメイラストをそのまま3DCGで表現した、独特の雰囲気に満ちたグラフィック
◆水彩画調のグラフィックで描かれる、手描き風味の斬新なエフェクト演出(グラフィック)
◆主張は弱いが、世界観の雰囲気にマッチしたオーケストラ調の音楽
◆TPS要素があれど、少ないボタンで気持ちよく動かせる秀逸な操作性

--- Bad Point ---
◆1体1体のユニットを細かく動かすシステムの所為で、どうしても長期戦となる戦闘(途中セーブできるのが救い)
◆イベントスキップ機能非搭載(二周目から解放されるが、一周目から付けて欲しかった)
◆設定は魅力的なのにご都合主義が多過ぎて、イマイチ面白味に欠けるストーリー
◆スキップできない上、地味に冗長なオーダー時のデモ
◆インストールしても結構長いロード時間(特に戦闘マップに入った後)
◆次の台詞を読むまでのテンポの悪さが如何ともし難い会話デモ
◆決定前に微妙な遅延が生じるなど、あまり良好とは言い難いキーレスポンス
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
戦場は完全な3Dへと進化を遂げた。

もう2Dの宿命から逃げられないだなんて言わせない。


今なお根強いファンを持つ、『サクラ大戦』シリーズを手掛けた旧オーバーワークス(セガの子会社)のスタッフが制作した、完全新作のシミュレーションRPG。

シミュレーションRPGに一大的な革命をもたらした、衝撃の傑作だ。

基本的な内容はシナリオキャンペーン方式(マップクリア方式)で展開する、ターン制のシミュレーションRPG。ユニットを動かしてマップ上の敵を撃破し、プレイヤー側と敵のターン(行動順)を繰り返しながら勝利条件達成を目指していくというものだ。本編は『本章』と幾つかの『断章』によって構成。それぞれの章で『エピソード』と呼ばれるイベントを進め、その中で登場する『ミッション(戦闘)』に挑戦し、それを攻略すると次のエピソード、及び次の章へと進む事ができる。このエピソードの閲覧、及びミッションへの挑戦は全て『ブックモード』と呼ばれる画面によって管理。今作ではこの『ブックモード』を軸にゲームが展開する、特徴的な仕組みとなっている。またこのブックモードは、ある人物が記した伝記という設定があり、それが大小に分けられたエピソードや一つ一つを閲覧していく過程などに活かされている。その為、本当に本を読んでいるかのような感じでゲームが楽しめる。更に一度見たエピソードは何度でも閲覧可能。なので再確認も容易と、長期間放置したプレイヤーに対する配慮が成されてるのも大きな強みだ。その他、モード内には『タグメニュー』と呼ばれる編成画面もあり、そこから『遊撃戦闘(フリーマップへの挑戦)』、武器の購入、自軍ユニットの強化、編成などが行える『訓練開発』などへ移行できる。移行は選択画面でならいつでもOK。ミッションが全然進まないから自軍を強化したい、という場合は『遊撃戦闘』に移っても良いし、武器強化を行いたければ『訓練開発』へと動くなど、基本的に自由。あまり極端な縛りはないので、比較的大らかな気持ちで進めていける作りとなっている。この辺にもまた、本を軸に本編が進むという特徴が反映されている。一見、何の変哲も無い選択画面ではある。だが、細かい部分にまでブック(本)としての説得力を出す配慮が徹底されており、意外と侮れない設計。地味ではあるが、他に無い特徴を持った選択画面として、独創性を発揮している。ある意味、今作の特異さを象徴する部分と言っても良いだろう。
だが、今作の特異さを最も象徴するのは『ミッション(戦闘)』だ。ここの戦闘システムが大変斬新なものとなっている。何と、サードパーソンシューティング(TPS)方式。3Dフィールドを行動し、敵をライフルなどの銃火器で射撃して倒しながら、マップ攻略を進めていくのだ。その名も『BLiTZ(ブリッツ)』。
具体的な流れを解説すると、戦闘はマップ全体を見渡したり動かすユニットを選択・決定する『コマンドモード』、ユニットで3Dフィールド上を行動する『アクションモード』の二つを交互に介しながら展開する。ユニットの行動時などには『CP(コマンドポイント)』となるものを消費。この『CP』はターンの始めに予め数が設定されており、全てが尽きてしまうと1ターン終了となる。CPの消費量はユニット(兵科)の種類によって変化。歩兵系だと1CP、戦車系だと2CP消費される。また、これとは別に部隊全体に攻撃力UPなどの効果をもたらす特殊技『オーダー』を使う際にもCPを消費。なので、下手に消費したりすると、行動させようと思ってたユニットが動かせなかった、なんて事も。結構、配分に神経を配る必要のある、個性的な設計となっている。ちなみにCPは1ターンで全部消費する必要は無く、任意の時点でターンを終了させる事もできる。この際、残ったCPは次のターンへと持ち越され、より多くの行動が行えるようになる。「最初は少しずつ、後から攻めに転ずる」と言った具合に工夫次第では多彩な戦術が試せる。そんな幅の広さも兼ね備えてるのも大きな特徴だ。また『アクションモード』でのユニットの行動時には『AP(アクションポイント)』と呼ばれるゲージを消費する。いわゆる行動制限。そのゲージが尽きるとそれ以上の行動は不可能となり、終了コマンドを選択してコマンドモードへと戻る事になる。なお、ユニットは一度きりでなく、CPが残っていれば何度でも動かせる仕様となっている。しかし、2回目以降からはAPの最大値が減少。何度も動かすと、たったの一歩しか動かせないなんて事もあるので注意が必要だ。更に敵への攻撃(射撃)は基本、1行動につき1回だけ。そこもまた、よく考えた上での判断が求められてくる作りとなっている。攻撃の仕様も独特で、R1を押し、『ターゲットモード』へと移行した後に行う。攻撃が行えるのは武器の射程範囲に入った時だけ。射程範囲から大きく外れてる時は攻撃が行えない。また、特殊な仕様として敵の射程範囲に入ると、リアルタイムで銃撃を受ける(味方の場合も同じで、射程範囲に入った敵には自動射撃が行われる)。もたもたしてると、あっという間に体力が空になって戦闘不能、と悲劇を味わうハメに。
やや駆け足で解説したが、これが『BLiTZ(ブリッツ)』の概要となる。他にも射撃の際には頭部を狙うと大ダメージが与えられる、TPSやFPSでお馴染みの『ヘッドショット』があったり、レベルはユニット単位で管理、戦闘不能になったユニットは他のユニットで衛生兵を派遣させれば助けられる(敵に回収されたり、規定ターンが経つと死亡)など、特徴的な要素が豊富に詰め込まれている。だが、何よりもファンタジーが定番のシミュレーションRPGで、銃火器や戦車などの現代兵器が中心という設定が新鮮。また、遠距離攻撃主体の戦闘もユニークで、他にない斬新な体験を提供してくれる。まさにこれぞ最新型。シミュレーションRPGとしても革命的な試みがたっぷりの内容に仕上げられているのだ。

そして、今作最大の魅力はもはや語るまでもなく、『BLiTZ(ブリッツ)』そのものである。シミュレーションRPGにTPSの要素を取り入れた、その試みだけでもシステムの斬新さとインパクトは計り知れないものがある。しかも、CPやAPと言った細かなルール設定の恩恵で、一見水と油の関係にしか見えない両者が全く喧嘩し合う事無く溶け込んでいるのにも驚きだ。よくここまで違和感の無いものに仕上げたなと、その設計の上手さにはプロの本気というものを痛感させられる。
しかし、このシステム真の見所にして、シミュレーションRPGのジャンルにおいて最も革命的と言えるのは、3Dの遊びとハード性能の強みがゲーム性に活かされてる事だろう。そもそも、シミュレーションRPGというのは2Dの遊びであり、どうしてもその制約から抜け出せぬ宿命を背負ったジャンルでもあった。高低差、射程距離などの3Dならではのアイディアも実は2Dで表現できてしまう。かの歴史的名作『タクティクスオウガ』はその現実を実際に見せつけ、シミュレーションRPGが2Dの宿命から永遠に逃れ得ない現実を固めてしまった。シリーズ初の3Dグラフィックへと作風を変えた『ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡』、『ファイアーエムブレム 暁の女神』の二つにおいても結局、3Dというのは絵的な表現の域でしかないと、発展の限界がある事を暗に語っていた。3Dにしても結局は卓上の遊びであるから、その本質は変わらない。そこを壊すのなら、リアルタイムストラテジーなど、別ジャンルへの衣替えするしかない。選択は限られていたのである。そんな宿命に今作は抗った。シミュレーションRPGに3Dの遊びは取り込める一つの可能性を提示したのである。更に加えて、ハードの性能に頼らずともシステム重視のゲームなのだから面白いものは作れるという事まで破壊した。それが『BLiTZ(ブリッツ)』の大元たる、TPS要素であったという事だ。
実際、この要素を取り入れた事で、今作ではそれまでのシミュレーションRPGには無かった、多数の新たな戦術、そして表現がある。部位攻撃(ヘッドショット)のテクニック、壁や地形を盾に敵の銃撃を回避して反撃を行うカバーアクション、そして射程範囲とそこに入った際に行われるリアルタイムの攻撃と。全てが3Dという細かく、奥行きのある描写が可能な技術がもたらした賜物だ。2Dの技術ではとても表現できたものではない。更にこのゲーム性を表現するに当たっては、ハード性能も重要なキーとなる。特に大量の敵の表示が厳しい性能では、このようなものを実現させる事自体、無理に等しい。余程の処理能力が必要となる。そこに関しても今作は、PS3という強力極まりない性能を擁したハードを選び、一連のゲーム性の実現を成し遂げている。ただの話題性優先ではない。システムが実現可能な能力をハード自体が持っている、そんな確かな理由を元に選んでいるのだ。そして、その恩恵を持ってして新たな道を切り開いた。同時にシミュレーションRPGの宿命をぶち壊してしまったのである。
どんなに3Dの要素を入れたって、絵的な表現で終わる。そして、無理矢理3Dを用いなくても、2Dで出来てしまう。更にシステム重視だから、ハード性能なんて使うだけ無意味。そんな宿命全てを否定し、3Dの遊びはハード性能を持ってしてシミュレーションRPGに組み込められると今作は証明した。これを革命という以外に何と言うのだろうか?宿命に縛られず、新しい道を切り開こうと努力し、結果としてそれを作り上げた今作が行った試みは、ジャンルの歴史に名を刻む偉業だったと言っても過言ではないだろう。これが評価されないだなんてとんでもない話である。新たな試みを行っただけに至らない所も正直、色々とある。1人1人動かしていく設計上、マップ攻略にかなり時間がかかる、そのせいもあって全体のテンポが悪いなど。特にテンポに関しては、もう少し気を使うべきだった。だが、それを含んでも今作の革命をもたらしたという評価は揺るがない。部位攻撃、カバーアクションと言った戦術はまさに3Dだからこその楽しさ、感動があり、斬新な体験を提供してくれる。「所詮、シミュレーションRPGなんて2Dの遊びから抜け出せない」、そんな考えを持つ方ほど、今作は是非プレイしてみて欲しい。きっと、3Dの遊びで固められたゲーム性にビックリするはずだ。

3Dの遊びを取り入れたゲーム性、システムだけでなく、マップ全体を彩るグラフィックも必見。水彩画のアニメイラストをそのまま3DCGにした斬新極まりない作りは、見る者を大いに驚かせる。3DCGはリアルだけでなく、こんな方向にも発展できると示したこの新しいグラフィックもまた、今作最大の魅力の一つと言える。
その他、操作性やゲームバランスも練られている。バランスに関しては結構歯応えのある調整で、迂闊な行動を取ると一気にピンチになるほど、一筋縄ではいかないものになっている。しかし、フリーマップでの経験値稼ぎと言った救済処置が充実しているので、意外と遊びの幅は広い。マゾなプレイを楽しみたければ使わない、余裕を持って進みたいなら使うなど、好みのやり方で楽しめるのは結構な強みである。そういう意味ではなかなか絶妙な設計となっている。ミッションもバラエティー豊か。おとり作戦、巨大兵器との戦いなど、3Dの遊びを取り入れたものが盛り沢山で、プレイヤーに新鮮な驚きと体験を提供する。マップデザインも敵配置などがよく考えられており、作り込みの深さがうかがえる。
全体のボリュームもメインストーリーは大体、エンディングまで40〜50時間ほどとなかなかのボリューム。サブシナリオこと断章の攻略など、寄り道要素にやり込み要素も相当な量が用意されているほか、特別なシナリオが楽しめる有料ダウンロードコンテンツもあったりと、至れり尽くせり。コアユーザーも納得の満足感が得られること、間違いなしだ。

ただ、一部システムの配慮の甘さは残念。イベントスキップ機能が搭載されてなかったり、会話シーンのテンポが悪かったりと、一考の余地のある部分は結構散見される。特にイベントスキップは標準装備して頂きたかった。
シナリオも正直、褒められた出来ではない。戦争系ではありながら会話のノリが非常に軽く、ご都合主義で強引過ぎる展開が多いのが如何ともし難い。設定自体は悪くなく、作り方次第では魅力的な内容にできたと思うのだが、完全に漫画のノリに走ってしまっているのが残念でならない。もう少し、戦争の闇の部分をクローズアップするなど、設定面の説得力があり、見応えもそれなりにある内容に仕上げて欲しかったところだ。非常に勿体無い。
そんな具合に残念な所も多いが、システムの完成度は桁外れに高く、それだけでも傑作と言える出来である。2Dの宿命に縛られてたシミュレーションRPGに新たな可能性を提示したこの『戦場のヴァルキュリア』。
シミュレーションRPGならば要プレイの一本だ。PS3本体を持っている方もプレイしておくべし。この革命的なゲーム性は、何が何でも体験しておく価値がある。お薦めです。
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