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  4. スライ・クーパーコレクション
≫スライ・クーパーコレクション
■発売元 ソニー・コンピュータ・エンタテインメント
■開発元 サンザルゲームズ、サッカー・パンチ
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO B(12歳以上対象) ※犯罪描写あり
■定価 5980円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 HDDの残り容量によって変化
■必要HDD容量 1500KB以上
■その他 モーションセンサー機能対応、振動機能対応、3D立体視対応、トロフィー機能対応、PlayStation Move対応
■総説明書ページ数 31ページ
■推定クリア時間 8〜12時間(スライ1)、18〜23時間(スライ2)、15〜20時間(スライ3)、80〜120時間(全作品完全攻略目的)
「狙うは悪党のみ、決して善人からは盗まない」。

そんな厳格な掟を下に行動する、誇り高きアライグマの義賊『クーパー一族』。
これは、その末裔『スライ・クーパー』の冒険の軌跡である。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆潜入したり、時に逃げたりしながらステージを攻略していく、王道の面白さを突き詰めたスライ1のゲームデザイン
◆小さな箱庭を舞台に数々のミッションを攻略していく、怪盗らしさ溢れるスライ2、スライ3のゲームデザイン
◆三作全てを攻略するだけでも35時間以上は裕に超過する、盛り沢山にも程があるボリューム
◆忍び足、物陰へ即座に隠れるなど、華麗で怪盗らしさに富んだ主人公スライのアクション(スライ2以降になると、ステルスアタック等、より多彩なアクションが楽しめる)
◆ジャングル、雪山、要塞など個性豊かで仕掛けに富んだスライ1の40以上ものルート(ステージ)
◆盗撮、潜入、変装してのイベント参加など、『ルパン三世』等の怪盗アニメを髣髴とさせるものが盛り沢山のスライ2とスライ3のミッションバリエーション
◆潜入特化型、戦闘特化型など、それぞれの活躍の場が露骨に強調された設定と差別化が上手い、スライ2以降のスライ以外のプレイヤーキャラクター達
◆シビアさと力でカバーできる部分が上手く両立した、絶妙でやり応え十分の難易度設定
◆アクションゲーム特有の動かす面白さと手触りの良さに秀でた、良好な操作性
◆忍び足の愉快な効果音など、随所で炸裂した怪盗っぽさを引き立てるユニークな演出
◆「1対1」の真剣勝負で終わらぬ、多彩でアイディア盛り沢山のボス戦(全作共通)
◆カートゥーンっぽさ全開で、センスに富んだエフェクトが光る、個性的で美麗なグラフィック
◆雰囲気作りの上手さと怪盗らしい、お洒落でちょっぴりアダルトなノリに富んだ音楽
◆怪盗をテーマにした作品らしいネタの数々、意表を突く展開で大いに魅せてくれるストーリー
◆設定と性格付けの濃さが傑出した悪役キャラクター達(特に3で登場する悪役達の濃さは必見)

--- Bad Point ---
◆オリジナル版のファンには強く賛否が分かれる新規のローカライズ(主に声優、台詞周り)
◆一度、遊びたい作品を選んでしまうと選択画面に戻れなくなる、気が利いていないインターフェース周り
◆慣れるまでは苦痛なスライ1のシューティングルートの操作(右スティックで発射はきつい)
◆必然性の無いイベントが多く、全体的に水増し感が酷いスライ2の総計ボリューム
◆上下だけリバース操作に設定できないなど、色々と残念な作りのスライ2のオプション周り
◆解説が長く、カットも利かないなど、冗長に作り過ぎている感が否めないチュートリアル
◆怪盗と言うよりは、悪者退治の勧善懲悪モノという印象が強過ぎるスライ1のストーリー
◆R3ボタンを押すという、違和感バリバリなスライ2以降の目的地ガイド表示の操作
◆スライ2と3におけるミニマップ機能非搭載(あれば探索が格段にし易くなっていた)
▼Review ≪Last Update : 3/2/2014≫
先祖に泥を塗るか、その名に恥じぬ義賊になれるか。

三本分の試練を乗り越えろ。


2003年にプレイステーション2向けソフトとして発売され、カートゥーン風の世界観と軽快なアクションなどで好評を博した『怪盗スライ・クーパー』シリーズ三作をHD画質にリマスターしたコレクション作品。開発はオリジナル版のサッカー・パンチから代わり、『ニンジャリフレックス』を手掛けたカリフォルニア州のデベロッパー、サンザルゲームズが担当。

国内未発売に終わったシリーズ三作目も楽しめる、見所満載のコレクション作品だ。

ゲーム内容は収録作ごとに異なるので、分類して紹介。

■怪盗スライ・クーパー(≫PS2版のレビューはこちら
シリーズ第一作。オリジナル版は2003年に発売。
基本的なゲーム内容は3D視点で展開する、ステージクリア型のアクションゲーム。主人公の怪盗でアライグマのスライ・クーパーを操作し、全5ワールド40以上ものルート(ステージ)を攻略していくというものである。 怪盗アクションを呼称しているが、中身は至って普通のアクション。基本的に舞台となるルートの奥にあるゴール、新たなルートを解禁する為の『カギ』が置かれた場所を目指すという、至って王道の内容になっている。
とは言え、敵の攻撃を一発でも受ければ問答無用でミス(特定のアイテムを会得する事で一回、防ぐことはできる)、敵との戦闘は控え目、ステージによっては隠密行動が求められるなど、怪盗っぽさを出す工夫は図られている。

■怪盗スライ・クーパー2
シリーズ第二作。オリジナル版は2004年に発売。
ゲーム内容は前作から大幅に刷新。小さな箱庭フィールドを舞台にした、ミッションクリア型の3Dアクションゲームになった。それに伴い、本編の流れも大きく変更され、エピソードごとに用意された箱庭フィールドで数々のミッションを攻略しながら、目標とする宝物を手に入れるというものに改められている。
システム周りも大きく変更され、ダメージ制が採用されたり、アクションも敵に気付かれぬよう近付く忍び足、背後からアイテムを奪い取る技など、より多彩且つ、怪盗らしいものが増強。また、スライ以外に仲間のベントレー、マーレーを操作するパートも追加され、前作ではサポートに徹してたキャラクター達にもスポットライトが当てられている。
ミッションも現場の調査、ターゲットの盗撮と言った如何にもなものが満載。前作のような普通のステージクリア型アクションではなくなり、ようやく怪盗アクションとしての本領が発揮されたかのようなゲームデザインが成されている。

■怪盗スライ・クーパー3
シリーズ第三作にして完結編。オリジナル版は2005年に発売。しかし、海外のみで日本では未発売に終わった。一応、発売自体は予定されていたのだが、最終的に立ち消えとなっている。今回のコレクションにて、日本初登場となる。
ゲーム内容は前作、2を踏襲、発展させた正統進化系。大きな変更点としては操作キャラクターの更なる増強と一部キャラクターの仕様変更、ミッション内容のバリエーション強化と言ったものに落ち着いている。

以上、三作品とPlayStation Moveで遊べる(通常コントローラにも対応)ボーナスコンテンツ『スライ・クーパー ミニゲーム』の合計四作が収録されている。

■今作『コレクション』の特徴
全三作に共通するが、グラフィックは全てHDリマスターが施されたものになっている。
対応映像出力はNTSC、480p、720pまで。更に3D立体視にも対応している。
但し、ムービーの解像度に関してはオリジナル版と同様、標準解像度(SD)。
その為、該当のシーンになると、途端に解像度が低くなる。
また、トロフィー機能が追加されており、やり込みの幅が広がっている。
更なる特徴として、『怪盗スライ・クーパー』、『怪盗スライ・クーパー2』のローカライズは新規に行われている。この二作は日本でも発売されたが、今作に収録されているのはそのバージョンではなく、今作の発売に伴って新たにローカライズされた新バージョン。その為、以前の日本版では日本語にアレンジされていた部分がオリジナルのままになっていたり(平たく言えばアレンジ削除)、日本語吹き替えを担当している声優陣が全て変更されている。この影響により、一部のキャラクターは性格まで変わってしまっている。
最も分かり易い例がマーレーで、以前のバージョンでは気は優しくて力持ちなキャラクターだったのが、今作では勇敢な力持ちなキャラクターになってしまっている。ベントレーも最たる例の一つで、以前は敬語交じりの話し方をしていたのがタメ口に。スライも以前のルパン三世っぽい気取った所が控え目になっている。
また、シリーズ第一作『怪盗スライ・クーパー』ではテーマ曲を東京スカパラダイスオーケストラが担当、キャラクターの一人、カルマリータ役に女優の真琴つばさを起用すると言ったコラボレーションが話題を呼んだが(※カルマリータに関しては2でも担当)、これも軒並み削除。曲の差し替え、声優の変更が行われている。

■収録作品それぞれの売りと見所
シリーズ第一作『怪盗スライ・クーパー』に関してはPS2版のレビューを参照されたし。
ローカライズが違うのを除けば、基本はオリジナル版なので、その魅力は変わらない。

第二作『怪盗スライ・クーパー2』は何と言っても、怪盗アクションとしての本領が発揮されたゲームデザイン、本編の構成に集約される。怪盗を題材にしている内容なのに、ほとんどおまけに等しい存在感だった前作から打って変わり、盗撮あり、潜入あり、時には別人に変装してちょっとしたイベントも乗り越えなければならなかったりと、これぞまさしく怪盗、例えるならルパン三世っぽいシチュエーションの数々を堪能できる内容へと進化、発展を遂げている。
ボリューム、やり応えも強化。1つのエピソードで数十ものミッションが用意されているので、クリアまでが長い。また、ゲームバランス、難易度設定のカラーも前作から大きく変わり、少しでも敵に気付かれるようなミスを犯してしまったら、問答無用でミスになるなど、怪盗ならではの緊張感、シビアさを堪能できる調整が施されている。ダメージ制の追加に伴い、雑魚敵も全体的に強化。一発の攻撃で仕留められなくなった。おまけに見つかると増援を呼ばれ、最悪、集団でボコられてやられてしまうなんて事に陥ったりする事も。何故、敵の本拠地に不届き者が潜入していながら、敵が本気で攻めてこようとしないのか。前作ではそこが強烈な違和感を醸し出していたが、それも今作の刷新に伴い、大幅に改善された感じだ。
細かい所でも、舞台となる箱庭フィールドの絶妙な広さ、徹底した作り込みにも驚かされる。何処のエピソードにしても広過ぎず、狭過ぎずのバランスを保った設計が成されているだけでなく、差別化も申し分なく、探索と潜入のし甲斐がある。本編の構成、レベルデザイン全般も良質で、新たに追加されたキャラクターセレクトのシステムを活かした展開など、今作を構成する要素の持てる限りの可能性を追求した出来に仕上がっている。
ただ、少し1つのエピソードにミッションを入れ込み過ぎなのが厳しい。特に後半のエピソードに行くにつれ、どんどんそれらを一つずつこなしていくのが面倒且つ、億劫になってくる。「こんなのやる必要、あるの?」という疑問を抱くミッションも結構あり、露骨なまでに水増しを図った点が見受けられるのも残念だ。加えて、今作は難易度も高めに設定されているので、モチベーションも殺がれ易い。エピソードによっては前作みたいなスタンダードなアクションゲーム主体の構成にしたり、単発型のものも用意して良かったと思うのだが、全体的に内容の充実化という狙いで作られ、それが最悪な形で発揮されてしまっているのが何とももどかしい限りである。せめて、難易度が低めであれば、ボリューム満点な内容もアリと言えたのかもしれないが、その辺の考慮ができてない点からして、調整が不十分だったのは否めない。
また、地味な所だが操作性も劣化しており、特にカメラ操作で上下のリバース操作が用意されてないのは気が利いていないのにも程がある。上下がないのに、左右だけはあるのも不可解で、こうした所からも今作、そんなに作り込めなかったのかと疑ってしまう。そんな明らかに残念としか言い様がない点もあるが、怪盗アクションというにはあまりにも説得力が弱かった(しかし、アクションとしての出来は悪くなかった)前作から、ここまで変更させたのはお見事。至らない所は幾つかあるが、何の為の怪盗かと、その意味を突き詰めた内容は見所満載。遊ぶ価値は十分にある作品だ。
そして、日本初登場となるシリーズ第三作『怪盗スライ・クーパー3』は、そんな前作の問題点の数々を解消した、怪盗アクションの完成形とも言える出来になっている。特に見事なのは、洗練されたエピソードごとのレベルデザイン。酷い水増しが目立った前作とは打って変わり、ミッション一つ一つのテンポが良くなり、気持ちよく遊べる作りへと進化を遂げている。そして、ミッション自体のバリエーションも大幅に増えただけに留まらず、プレイヤーキャラクターの更なる増加により、アクション周りでも多彩且つ、ユニークな手応えを堪能できるようになっている。中でも特定の敵などを洗脳し、それで暴れ回るプレイは今作における大きな見所の一つと言えるだろう。
但し、前作にあったミニゲーム絡みのイベントがやや増えてしまい、肝心の怪盗アクションが存在感を失っている所も。仲間キャラクターが増えたのに伴い、ややアクションが複雑になっているのも賛否が分かれる。だが、シリーズ1作目に近いテンポが復活を遂げ、無駄な部分が程好く削ぎ落とされたその内容は、まさに2のリベンジを果たしたと言ってもいい出来栄え。ようやく今回で怪盗アクションとしての真価が発揮された、個性の強いゲームに完成されている。
また、今作はシリーズに一つの区切りが付くストーリー、やたらと濃い登場キャラクター達も見所の一つ。このシリーズの悪役キャラクター達は毎回、異様に濃い性格付けが成されているのが特徴だが、この三作目は吹き替え担当の声優陣も含めてやりたい放題。とりあえず、今回のターゲットこと悪役を演じる声優に山路和弘氏、若本規夫氏、大塚芳忠氏が居るというだけでも、どういう具合に濃いのかは察することができるかもしれない。

■新規のローカライズは一長一短あり
基本的にオリジナル版をそのままHDリマスターしたタイトルで、各シリーズごとの出来、魅力に関しては元から何ら変わったところはない。だが、新規のローカライズ、主に吹き替え周りの全面的な変更に関しては、日本語版の初代と2を知るプレイヤー、ファンからしてみれば、非常に賛否の分かれるところだ。さすがに初代の東京スカパラダイスオーケストラのテーマ曲、カルマリータ役の声優が変更されてしまうのは致し方がないものがある。それ以前に、カルマリータの声優変更に関しては逆にそれが功を奏している点があるのも事実だ。(かと言って、断じてオリジナル版で彼女を演じた真琴氏が酷かったという訳ではない。むしろ、何かと非難の的にされ易い女優、タレント起用の例では上手くやっていた方である。)また、シリーズを再度、世に出すに当たって、色々と改めて再起動を図るという狙いも分からなくはない。
だが、以前の吹き替えが強く印象に残っていたプレイヤー、ファンからして見れば、例えそんな背景があろうが、これは改悪と言われても仕方がないだろう。ましてや、性格にまでメスが入れられてしまっている始末。これをすんなり受け入れられるオリジナル版のファンは正直、片手で数える程度しか居ないのではないだろうか。筆者はオリジナル版は初代のみ経験した身だが、あの吹き替えは手掛けたスタッフのセンスが現れていたし、ムービーデモでも本来、英語で表記されている部分をわざわざ日本語に手直しするなど、手間をかけてやっている所に強いこだわりを感じた。
残念ながら、今作にはそのようなこだわりは無いし、本当にオリジナル版を日本語向けに手直しただけ。全体的にローカライズの質は低いと言わざるを得ない。むしろ、それだけオリジナル版のローカライズが凄かったのもかもしれないが。せめて一部キャラクターの性格付けや設定はオリジナル版のままにするなど、できなかったのだろうか。他ハードのゲームだが、声優は変更しても台詞、キャラクターの性格は変えない手法を取った例もあるだけに、そういう手も打てたはず。結果的にオリジナル版経験者に対し、強い違和感を与える方向に舵を取ってしまったのは、残念なところではある。

■幻の3をプレイしたいなら迷わず行くべき一本
そんなローカライズの刷新という賛否の分かれる箇所、一度、各シリーズを起動させると選択画面へ戻れなくなる欠点もあるが、アクションゲームとしての出来栄えは上々。何よりも、3本のボリューム満点のゲームがこれ一本で遊べてしまうのは、あまりにもお得。日本未発売の3が収録されているという事で、只のリマスタータイトルに終わってないのも強力な売りだ。おまけで収録されているミニゲームもシンプルながら、つい夢中になってプレイしてしまうものばかりな上、最大四人までのマルチプレイにも対応しているので、接待ゲームとしても活躍してくれる。
初代こそ、悪者退治でらしさは薄いが、義賊の怪盗として様々な困難、陰謀に立ち向かう子供心をくすぐる設定など、個性的な魅力盛り沢山の今作。アクションゲーム好きは勿論のこと、怪盗ヒーローに憧れを抱くプレイヤーなら要プレイの傑作だ。オリジナル版経験者には賛否が分かれる部分も多いが、日本未発売の3をプレイしたいのであれば迷わずゴーだ。獣キャラクターを愛して止まぬ御方にもお薦めですよ。
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