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≫WipEout HD(ワイプアウトHD)
■発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
■開発元 SCE Studio Liverpool
■ジャンル 反重力レーシング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 1800円 (税別)<※追加DLC『フューリー』:900円(税別)>
■公式サイト ≫こちら / ≫シリーズポータルサイトはこちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人(オフラインプレイ時)、1〜8人(オンラインプレイ時)
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 1042MB(追加DLC:738MB)
■その他 PlayStation Network対応、振動機能対応、3D立体視対応、トロフィー機能対応、追加コンテンツ対応、カスタムサンドトラック対応
■推定クリア時間 25〜27時間(エンディング目的)、90〜120時間(完全攻略目的)
究極の反重力レースゲームがプレイステーション3に登場。
フルHDによる圧倒的なグラフィックと海外のアーティスト達が提供した極上の音楽による、アドレナリン炸裂の高速バトルが今、ここに開幕する…!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆道幅の狭いコースを超高速マシンで正確なテクニックを駆使して走行していく、癖強めながら、極めれば極めるほどに奥深さが増していくストイックさ全開のゲームデザイン
◆極める度に増していく疾走感と奥深さ、中毒性が炸裂した、突き詰められたゲームバランス
◆ハイスピードレースゲームの名に偽り無しの抜群のスピード感(しかも、1080p×60fps!)
◆独特の浮遊感と少なめながらも極め甲斐のあるアクションが光る、多種多様な自機『クラフト』
◆正統派のレースから持久戦的なものまで、バリエーション豊かで遊び応え十分のレースバリエーション(特にスリル抜群で中毒性満点の『ゾーン』は必見)
◆短時間で遊べる手軽さと歯応え抜群の難易度、脅威のボリュームで魅せる、レースゲームとしては珍しいレベルデザインが成されたシングルプレイモード『キャンペーン』
◆数は少なめながら、ギミックの配置と絶妙なカーブポイントが光る全8つのコース
◆挙動に癖はあれど、レースゲームの王道を順守した適切なボタン配置が見事な操作性
◆ダウンロード配信専用タイトルとしては規格外の一言に尽きる総計ボリューム(キャンペーンの内容のみならず、メダル集めにトロフィー、オンライン対戦と盛り沢山)
◆更なるボリューム増強のみならず、より奇抜なレースが楽しめるようになる魅力的な内容でまとめられた追加ダウンロードコンテンツ『フューリー』(値段もお手頃!)
◆シャープな美しさとカッコよさを突き詰めた、個性的且つ美麗なグラフィック
◆走行中の高揚感と爽快感を大いに刺激する、海外アーティスト提供による珠玉の音楽
◆好きな曲を流してゲームが楽しめる、カスタムサウンドトラック機能への対応(特にゾーンのレースイベントでこの機能を使うと非常に効果的)
◆独特のグラフィックの美しさとレースの迫力を大いに際立たせる、芸術的な演出

--- Bad Point ---
◆簡素なチュートリアルなど、全体的に突き放し気味な新規プレイヤーへの配慮周り(難易度選択機能、ゲーム内マニュアル等は実装されているが、実質、初っ端から本番同然の勝負が試される)
◆やり込む度に味が増していくとは言え、そこに行くまでの敷居が高すぎる感も否めないゲームバランス(バレルロールを使いこなせるか否かでその印象が大きく左右してくる)
◆イージーが事実上のノーマルであるなど、実表示と偽りアリな感が否めない各種難易度
◆鬼畜めいたトロフィーの難易度(特にゴールド系トロフィー全般が鬼門)
◆ボタン配置こそ適切ながら、独特の浮遊感とアクションに対する慣れが求められる操作周り
◆手軽さとボリュームは秀逸だが、全体的に淡々としている感も否めないキャンペーンの構成
◆追加DLCで実装されるレース『ゾーンバトル』のルールの分かり難さ(マニュアル上の解説でも、どういうレースなのかが想像し難い。専用のチュートリアルがあっても良かったような)
◆文字が小さい所為で非常に見難いランキング画面
▼Review ≪Last Update : 3/29/2015≫
何故に日本語なのか。

何故に「精力!!」…なのか…。


1996年にプレイステーション、セガサターン、パソコン向けに発売され、その圧倒的なスピード感と独特のシステム、海外アーティストによって制作された楽曲による演出でコアなファンを獲得したレースゲーム『ワイプアウト』の新作にして、前作に当たる『wipEout purE(ワイプアウトピュア)』、『wipEout PULSE(ワイプアウトパルス:※日本未発売)』のHDリメイク作。開発は過去のシリーズと同様にPsygnosis改め、SCE Studio Liverpoolが担当。

突き抜けたストイックさで魅せる、やり応え抜群のハイスピードレースゲームだ。

※注:筆者は今作がシリーズ初プレイだった為、それを前提としたレビューになります。

ゲーム内容は過去のワイプアウトシリーズを踏襲。『クラフト』と呼ばれる高速走行するマシンを操縦し、多種多様なレースイベントに挑戦していくハイスピードレースゲームである。レースゲームとしての基本的なゲームデザイン周りも過去作を踏襲。一言且つ、極端に言ってしまえば、『F-ZERO』+『スーパーマリオカート』。時速300キロで走行するマシンを操縦するゲームならではの驚異的な高速スクロール、アイテムによる攻撃・妨害と言ったアクション要素、シールドによるダメージ制等、それら二作のプレイ経験を持つプレイヤーには既視感を覚える作りとなっている。しかし、レースゲームとしての基本設計、収録ゲームモード、自機の仕様等、その詳細な内容に関しては独自の特徴を持つ。
まず第一に基本設計だが、「コースの幅が狭い」というのがある。これはシリーズ全体の特徴でもあり、ほとんどのコースが道幅の狭い道に多数のギミックを配置した作りにされている。幅が広めのコースもあるにはあるが、ごく僅か。そのような少しでもカーブのタイミング等を誤れば衝突しかねないコースを反重力で走行する超高速マシンで駆け抜けなければならないのだ。それ故、ゲームバランスもミスなく操縦していく事が重視される為、ややアクションゲームライクな調整が成されているのも特徴の一つ。実際にクラフトを上手に使いこなせるようになれば、ミスを最小限に抑えられるようになり、且つスピード感を持続させた爽快なプレイが楽しめるなど、上達に併せて高い爽快感、達成感を得られる。そんなミス無くクラフトを動かす難しさ、癖のある自機を思うがままに操る面白さは何処となくアクションゲームチック。加えて、道中でパネルを踏む事で手に入る『アイテム』を的確な場所で使いこなす事も求められてくるほか、そのアイテムの中には『マシンガン』や『ミサイル』と言った物騒なものまで存在するので、余計にその印象を強くする。まさにレースゲームの姿をしたバトルアクション。見た目と異なるものを遊んでいるかのような錯覚を覚える作り込みが成されている。
また、それに倣うかのようにクラフトにも特徴的且つ、レースの勝敗を左右するアクションを実装。指定の方向へスライド移動する『サイドシフト』、クラフトが宙に高く浮いた時にアナログスティック、パッドのどちらかで←→←、または→←→を素早く入力する事で自機が回転し、その後の着地と同時に加速する『バレルロール』と、数こそ少ないが、それを使うか否かでカーブの攻略、レース全体の勝敗が左右されるほどの代物。特に『バレルロール』は使いこなせるようになる前と後で世界がガラリと変化するほどの重要アクションであり、これこそが今作という以上に、ワイプアウト最大のキモと言っても良いものになっている。冗談抜きに、これが使えなければ上位キープは困難と言っても良いぐらいだ。
この他にも、道幅の狭いコースを駆け抜けて行くが故に『パイロットアシスト』なる、コースアウトや壁に接触しそうになると一時的に自動操縦に切り替わるシステムが実装されていたりなど、アクションゲーム寄りな調整を象徴しているかのようなシステムも組み込まれている。反重力で走行するマシンを操縦するレースゲームという点で、強い既視感を覚えるのは事実だが、その内容はひたすらにストイック。まさにマシンの操縦に重きが置かれた相応しいレースゲームになっている。簡単に言えば、漢仕様。硬派なゲームというのを嫌でも察することができるだろう。そんなゲームなのである。
更にこれだけでなく、ゲームモードとレースのバリエーションも今作の独自色を象徴する箇所だ。今作には『キャンペーン』、『レースボックス』、『オンライン』の三種類のモードが収録されている。各モードに関して簡単に解説すると『キャンペーン』はシングル専用モード、『レースボックス』は用意されたコースで好きなレース、難易度、周回で遊べるフリーモード兼対戦モード、『オンライン』は文字通りにネットワーク対戦モードだ。
この内、メインとなるのは『キャンペーン』。これがまた、レースゲームとしては非常に奇抜で、各イベントごとに用意されたレースを攻略していく構成になっている。いわゆる、レースゲームでお馴染みのトーナメント方式では無い。各イベント…アクションゲームでの表現に改めるならワールドごとに用意された、セルことステージを攻略していく文字通りのキャンペーン方式、ステージクリア式の構成となっているのだ。その為、一般的なレースゲームと違い、一プレイ当たりの拘束時間が短め。空いた時間にサクッと遊べる、レースゲームとしては珍しいレベルデザインが敷かれた作りになっている。何かと、一般的なレースゲームのシングルプレイはトーナメント方式の連戦となる為、一プレイ当たりの拘束時間がやや長くなる傾向にあるが、今作はそんな王道のスタイルに真っ向から反逆。まさにシングルならではの面白さを突き詰めたモードに仕上げられている。そして、その中身も実に侮り難し。一プレイ当たりの時間が短いとは言え、どのレースも真剣勝負の連続。加えて、レースを攻略すると金銀銅のメダルが手に入り、それが一定数に達すると新たなセルやイベントが解禁されていくアンロック式のシステムも実装されているので、完全攻略もまた一筋縄では行かぬ手強さ。そんなコンパクトで骨太な内容で構成されているのだ。どちらかというと対戦が本編…なイメージが強くあるレースゲームだが、今作は別。シングルでもしっかり遊び込める、濃密な内容に仕上げられている。
肝心のレースのバリエーションにしても、クラシックな順位争いにトーナメント、時間との勝負が繰り広げられるタイムアタックばかりにあらず。最速ラップタイムを競い合う『スピードラップ』、自動的に加速していくクラフトを操縦して限界まで挑む『ゾーン』と言った奇抜なものが用意されている。更に今作には追加有料コンテンツが配信されており、これを加えるとライバルのクラフトを破壊してその合計ポイントを争う『エリミネーター』、マシンガンで進路上に散らばるターゲットを撃破していく『デトネイター』と言った「それはレースゲームなのか…?」と思わず突っ込みたくなるものまで参上するというハチャメチャさ。シングルの構成だけでもインパクト十分だが、こう言ったレース本編においても今作は徹底した差別化が図られており、まさに唯一無二、そしてぶっ飛びまくりの刺激的な競争が満喫できるようになっている。
他にシリーズ経験者向けの要素として、収録されているコースはPSPで発売された前作『ピュア』と日本未発売の『パルス』のものをHDでリメイクしたものであるなど、懐かしさと技術の進歩の双方を堪能できるフィーチャーが用意されているのも見所。海外アーティストの楽曲がランダム方式で流れる特徴的なサウンドトラック、そのサウンドトラックをプレイヤー好みにカスタマイズできるカスタムサウンドトラックへの対応などもまた、地味ながら見逃せないところだ。
ストイックさを突き詰めたゲームデザインにレースゲームの範疇を程好く外れたシングルプレイの作り。ゲーム自体はパッと見、『F-ZERO』+『マリオカート』と言われても仕方が無い箇所がある。だが、その中身はもはや、レースゲームというよりはバトルアクション的な何か。その見た目からは想像も付かない刺激的な遊びと興奮が詰まったゲームになっている。

そんな今作の魅力は欠点と言える所だが、ストイックさを突き詰めたゲームバランスだ。単刀直入に言って難しい。道幅の狭いコースを超高速マシンで駆け抜けていく為、悪戯に自機を動かせば直にフェンスと衝突。そのまま順位がガクッと落ちるという、カーブを綺麗に曲がれない者はレースに参加するなと、容赦なく切り捨てる調整になっている。
一応、難易度選択機能も実装しているが、最も簡単な『イージー』ですら結構な難しさ。おまけに今作にチュートリアル的な要素はほとんど解説テキストだけで済まされるアッサリっぷりなので、初っ端からほとんどぶっつけ本番。レースゲーム初心者が挑んだら、火傷どころかそれ以上の重傷を追いかけない作りなのである。
そんな訳で、今作は相当なまでに人を選ぶ。先ずは軽く勝利し、超高速マシンでコースを駆け抜ける楽しさを味わいたい…なんて軽い気持ちで挑む事自体がほとんど自殺行為同然。初っ端から本番同然のレースを体験させる為、まさについてこられる奴だけついて来いと言わんばかりのスパルタっぷりを全面に出した作りになってしまっている。
逆に言うと、この環境下でのレースを極めようとすると、止め時を失うぐらいにハマってしまう中毒性がある。しかも、今作はシングルプレイがキャンペーン方式。単独で建てられた目標を達成していくスタイルなので、仮にレースで敗北しても気軽に再挑戦ができてしまう。トーナメント方式みたく、途中で大敗を喫してそれまでの努力が水の泡…となる事がない。一部、そのスタイルのレースが展開されるイベントは例外ではあるが、そのような単独構成になっているのもあり、リトライ時のストレスは他のレースゲームとは一線を画すほどに軽い。シビアなバランスではあるが、その負担をプレイヤーに長く縛り付けない為の工夫が成されているのだ。なので、諦めようとしないプレイヤーに対する処置は万全。先の通り、取っ付きは本当、宜しくない感じだが、そのような極める為の環境は今作、しっかりと整備されており、シビアなバランスならではのもどかしさと面白さ、苦難を乗り越えた後の快感を味わい易くする為のゲームデザインが成されている。単に難しいだけで終わらせず、難しいなりの面白さとプレイヤーへ過剰なストレスを与えない為の配慮を敷くその作りは秀逸の一言。入念に考えて作り込んでいるのを実感させられる仕上がりになっている。
そうして極めた後の世界の変わりっぷりも強烈。超高速で道幅の狭い道をノーダメージで切り抜けられた時の快感たるや、思わず「ゾワッ」と鳥肌が立つほどのものになっている。バックで流れる音楽もその高揚感を大いに刺激するのみならず、プレイヤーお気に入りの音楽が流れている際に完璧なプレイを決められた時の快感と来たら、言葉で言い表すのも難しいほど。そして、その快感をまた味わいたいが為に同じコースで似たシチュエーションを経験する為に再プレイしてしまう…なんて事もしばしば。
それでも、玄人向け調整な事実に変わりは無く、それ特有の取っ付き難さがあるのは否定できない。だが、そのようにしたなりの面白さもあり、今作がイタズラな思いでバランス調整をしていない事を痛感させられる。やたら正確な動きで勝負してくるライバル達にしても、『バレルロール』の加速を活用する事でその差を一気に縮められるようになっていたり、実は独走状態にならぬようにプレイヤーの腕前に併せて相手のスピードが調整されているなんて細かな配慮も図られていたりなど、突き詰めれば突き詰めるほど、その丁寧な仕事ぶりが浮かび上がってくる。そこに至るまでが茨の道であるのがタマにキズだが、その極めた者にしか分からぬ面白さを掴んだ時の充足感たるや、思わず顔がニヤけること必至だ。
この調整に納得が行かず、投げ出すプレイヤーも少なからず出て来ると思う。というか、まず相当な数のプレイヤーが投げ出すだろう。しかし、例え最初のレースで敗北しても、先ずは勝つ事ではなく、カーブを上手く曲がること、一時的にクラフトを加速させる『ダッシュパッド』を途切れなく踏む事に徹してみて欲しい。本当にこのバランスは雑に調整されたものなのか?その深層が次第に見えてくるだろう。そして、気が付けば時間を忘れて、或いは定期的に今作を遊びたくなってしまうだろう。そんな恐ろしさが今作にはあるのだ。まさに真っ正直にストイックという事を突き詰めた作り。好みは分かれるが、そんな独自の味わいと良い意味での開き直りっぷりが際立つゲームに完成されている。とは言え、最初は大人しく難易度をイージーにして挑む事をお薦めしたい。初期設定ではノーマルになっており、これで行くとライバル機の正確過ぎる動きに心が折れかねないので注意が必要だ。
また、レースバリエーションの多彩さも今作のバランス周りに次ぐ見所の一つ。特に『ゾーン』はは自動的に加速していくクラフトを上手く操縦し、何処まで走り切れるかを競うというその単純明快なルールと徐々に恐ろしい速さになって行く自機の速度が醸し出すスリルがたまらない。同じコースをひたすら走り続けるだけの内容ながら、スピードの変化に伴って最初は綺麗に曲がれていたカーブがどんどん曲がり難くなっていくという難しさが露呈していく辺りも秀逸。その難しさをテクニックで捻じ伏せる事ができた際の達成感も結構なもので、思わず中毒になってしまうこと請け合いのレースになっている。更に追加DLCで増える三種のレースイベントも必見。特にレース+シューティングゲームと言わんばかりの『デトネイター』は演出的にもインパクト絶大であり、このレースの為に追加DLCに手を伸ばす価値があっても良いぐらいだ。
その他、コースの作りも、大半は過去のシリーズからのリメイクが大半だが、狭い中であらゆるテクニックを駆使して勝利を掴むというゲームコンセプトが反映された作りで、遊び応え十分。地味ながらミラーオプションまで搭載されていて、一つのコースで二度も楽しめる奥深さが秘められているのも注目に値する箇所ではある。
こんな具合に単に玄人向けだからと言って、安易に切り捨ててはいけない見所も今作には盛り沢山。単にそれらのモードを遊ぶだけでも、他のレースでは味わえない体験が堪能できるので、それ目的だけでも今作をプレイする価値は大いにある。突き詰めたストイックさとレースゲームとしての新しさ。ある意味、水と油の関係で成り立っている所も否めないが、それぞれの良さがきちんと存在感を示した作りも実に見事。新しいレースゲームとしてもしっかり作り込まれたその出来栄えもまた、今作の侮り難さを象徴する部分と言えるだろう。

操作性に関しても、レースゲームとしては比較的王道のボタン配置で、レースゲームに慣れているプレイヤーなら、直にしっくり来るものになっている。とは言え、クラフトを自在に操るにはそれなりの練習が必要となってくるなど、多少ながら癖のある部分もある。特にバレルロールはシチュエーションも含め、かなり特徴的な操作を求められるので、これに馴染めるか否かで、今作の印象は大きく変わってくるだろう。ある意味、人を選ぶゲームなりの仕上がりだ。
ボリュームは膨大。ダウンロード配信専用タイトルとしては規格外で、特にシングルプレイ(キャンペーン)のボリュームは全キャンペーンのミッションをクリアするだけでも15時間は平気で超える。しかも追加DLCの『フューリー』を加えると、その物量は二倍強に拡大。加えてゴールドメダル獲得、トロフィー等のやり込み要素も充実しているほか、全てを遊び尽した後も人間同士のガチな戦いが楽しめるオンライン対戦という底なしの世界が待っている凄まじさだ。なので、人によっては半永久的に遊べてしまったりもする。それ、お手軽さが売りとされるダウンロード配信専用タイトルなのか!?…と思ってしまうかもしれないが、本当である。その凄まじさは是非、自分の目で確かめてみて頂きたい。その規格外な量には間違いなく、圧倒されるだろう。
ストレートな美しさと無機質故のクールさを突き詰めたグラフィックの完成度も圧巻。クラフトのデザインにしても、細かい部分まで丁寧に描かれていて見事。一部、「精力!」と謎の日本語が描かれたクラフトも必見…というか、突っ込み所満載で人によっては吹いてしまうかもしれない。
音楽もクラフトを上手く操縦できた際の高揚感を刺激する楽曲が充実。更に先述の通り、今作はカスタムサウンドトラック機能にも対応しており、MP3データをPS3本体に保存する事で、好きな曲を流してゲームが楽しめるというのも見逃せないフィーチャーだ。過去のワイプアウトシリーズの曲を流すも良し、あえてアニソンやボカロの曲を流して楽しむのも良しと、楽しみ方は無限大。特にゾーンモードで使用すると非常に効果的なので、要チェックだ。

演出全般にしても、グラフィックの美しさを引き立てる芸術的でクールなエフェクトが光る。随所にて挿入される英語音声のナレーションも素晴らしく、シャープな世界観をより魅力的にする存在感を放っているので必見である。
その他、ロード周りも長過ぎず、短過ぎずの及第点の域。ローカライズも総じて上質で、テキストなどは違和感なく翻訳されているが、追加DLCにて実装される『ゾーンバトル』の解説がイマイチ分かり難いのは気になるところ。これは元のレース自体にも問題があるのだが、これに限っては専用のチュートリアルを設け、説明を入れるべきだったように思う。
そのチュートリアルにしても、総じてテキストによる必要最低限な説明に徹しているのは、プレイヤーによっては手抜きと見なされかねないのがタマにキズ。玄人仕様の作り故、この辺のアッサリさは狙ってやっているのかもしれないが、それでも『ゾーンバトル』など、癖のあるルールに対しては最低限の説明と練習を設けて欲しかったところだ。
そんな具合に欠点や癖のある部分も目立つが、一度虜になってしまうと抜け出せなくなる強烈な中毒性を秘めた今作。人を強烈に選びはするが、その出来は圧巻で、単品のレースゲームとしても非常に熱く、刺激的な体験が楽しめる内容に仕上げられている。万人向けではないが、素直に力作と断言できる。そんな作品である。少し変わったレースゲームを遊んでみたいプレイヤー、シングルプレイの充実したレースゲームを遊びたいプレイヤーなら手を伸ばす価値大いにアリ。ダウンロード配信専用タイトルとしては規格外過ぎる質とボリュームを是非、体感してみて欲しい。但し、繰り返しになるが玄人向けなので、初っ端から厳しい洗礼を浴びる。手を出すのなら、その覚悟を挑んで突撃しましょう。
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