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≫クウォンタム コナンドラム 超次元量子学の問題とその解法
■発売元 スクウェア・エニックス
■開発元 Airtight Games
■ジャンル アクションパズル
■CERO A(全年齢対象)
■定価 1175円(税別)
■公式サイト ≫こちら / ≫PlayStation Store:商品&購入ページ
※購入に当たっては体験版のダウンロードと使用キーの購入が必要となります。
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 体験版:1701MB、解除キー:100KB(セーブ容量:138KB以上)
■その他 振動機能対応、トロフィー機能対応、追加コンテンツ対応
■推定クリア時間 6〜8時間(エンディング目的)、30〜45時間(完全攻略目的)
母親が家を空ける都合で、週末を発明家で億万長者、そして変人のおじさん『プロフェッサーQ』こと、フィッツ・クウォドラングルの研究所で過ごす事になった主人公。
ところが、研究所に着いた途端、原因不明の大事故が発生し、おじさんは行方不明に。どうやら何かの実験中、次元の狭間に閉じ込められてしまったらしい。

今、彼を助けられるのは主人公だけ。
この巨大でヘンテコな研究所を捜索し、おじさんを見つけ出そう!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆次元を切り替えて物理法則を変化させ、様々な仕掛けとパズルを解き明かしていく、革新的なアイディアと最新鋭の技術が炸裂した唯一無二のゲームデザイン
◆それぞれオブジェクトの動作、見た目の面でプレイヤーに驚きと笑いを提供してくれる全四種類の次元(特に『ふわふわ』と『のろのろ』の二つがインパクト抜群)
◆物体の性質変化という題材を徹底追求したアイディアが光る、ステージ構成及びそのギミック群
◆無茶苦茶ながらも高い説得力に満ち溢れた、各次元の応用テクニック(特に『さかさま』が強烈)
◆段階的に次元を解禁していき、基本的な使い方から応用に至るまで、丁寧にその魅力をプレイヤーに提供していく、職人芸の作り込みが成された本編構成(レベルデザイン)
◆研究所というよりは武装要塞も同然なぶっ飛んだ舞台設定(突っ込み所満載の地形が盛り沢山)
◆スリリングなジャンプアクションを堪能できる、強制方式の次元切り替えステージとその作り
◆ジャンプと物を持ち上げるのみと、取っ付き易さを最重視した少なめのプレイヤーアクション
◆一切もたつく事も無く、スムーズにキャラクターを動かせる良好で手触り感の良い操作性
◆ステージ総数80以上、詰め将棋的な特殊ステージも完備する等、なかなか盛り沢山なボリューム(更に有料追加コンテンツを購入する事で、更にやり込み甲斐がパワーアップ)
◆アメコミ調のモデリングと特徴的な色使いが異彩を放つ、独特のグラフィック
◆怪しげな屋敷の設定にマッチした、明るくも怪しげな雰囲気に満ちた音楽
◆難解なサブタイトルとは裏腹のユーモアたっぷり、おかしな展開盛り沢山のストーリー
◆一癖も二癖もある個性を持ち合わせた登場キャラクター達(中でも案内役のプロフェッサーQ)

--- Bad Point ---
◆パズル主体の本編における良いアクセントになっているが、難易度的にシビアに設定し過ぎている感が否めないジャンプアクション主体のステージ(ワリとギリギリな動作を要求される)
◆そのステージの存在もあって、全体的に荒っぽさが否めないゲームバランス
◆レスポンスは良好だが、ジャンプアクションのステージではそれがアダとなってしまっている操作性(あまりにも快適過ぎる所為で、ズレによるミスに至り易い)
◆フレームレートが高め(60fps)故の3D酔い発症率の高さ(苦手な人なら開始数分でバタンQとなってしまいかねない)
◆ネットスラングの乱用など、全体的にセンスの悪さが目立つローカライズ(翻訳全般)
◆色々と残念なオチに至るストーリー(詳細は見てのお楽しみだが…非常に賛否が分かれる)
▼Review ≪Last Update : 10/30/2016≫
何やらよく分からない装置で、何やらよく分からない謎を解明せよ。

理屈を求めてはいけない。この研究所、何やらよく分からないものだらけなのだから。


ファーストパーソンシューター(FPS)のゲームシステムを斬新な方向に応用した、革新的なアクションパズルゲームとして賞賛された『ポータル』の生みの親にしてゲームデザイナー、キム・スウィフト氏が手掛けた完全新作のアクションパズルゲーム。開発はアメリカ・ワシントン州レドモンドに拠点を置くAirtight Gamesが担当。

物理法則に着目した斬新過ぎるアイディアとトリックで魅せる、珠玉の傑作だ。

ゲーム内容は3Dの一人称(主観)視点で展開する、アクションパズルゲーム。主人公の少年を操作し、実験中の事故に巻き込まれて次元の隙間に閉じ込められた叔父のプロフェッサーQを救出すべく、彼の指示に従いながら『IDSデバイス』なる装置を駆使して仕掛けだらけの屋敷を駆け巡り、救出への手がかりを探し出すというものである。主観視点で展開するゲームという事で、ファースト・パーソン・シューター(FPS)そのまんまな見た目だが、シューティング要素は皆無。プレイヤーが行うアクションにも射撃は無く(そもそも銃を所持してない)、物を掴む、投げる、ジャンプすると言った事が主流になるので、精密な操作はほとんど要求されない。勿論、本編で敵との戦闘が発生する事も無し。一方でトラップは登場するので、ミスの概念はあるのだが、全体的にはFPS未経験者にも取っ付き易く、気軽に楽しめる設計となっている。
本編の流れもシンプル。舞台となるプロフェッサーQの屋敷内にある部屋を探索し、次の部屋に繋がる出口を開放し、最深部を目指して進んでいくステージクリア方式となっている。但し、出口に到達したらそのまま中継点の道を進み、そのまま次の部屋に入って再び探索を行うという地続き構成。既に通過した中継点に戻る展開もある為、アクションアドベンチャーに近いものになっている。ただ、クリア済みの部屋を兼ねた謎解きと言った複雑な展開はほとんど無い。基本的には一つの部屋(ステージ)で完結する構成なので、それほど腰を据えずに気楽に楽しめる作りとなっている。その辺の手軽さは2D時代のアクションパズルのノリを踏襲。見た目こそ、FPSスタイルで今風だが、プレイスタイルは古き良き時代の香り漂うものになっている。
反面、システム周りは現代の技術と斬新なアイディアが炸裂。基本的に部屋ことステージでは、周辺に配置されたテーブル、ソファ、金庫、段ボール箱と言ったものを持ち運んで行く手を阻む仕掛けを乗り越えたり、時にはそれらで道を作ったりしながら次の部屋に繋がる出口への到達を目指す。しかし、段ボールはまだしも、テーブルやソファ、金庫と言ったものは少年の主人公がそう軽々と持ち運べるものではない。金庫なんて、数人がかりで担がないと運べない事は現実的に明らかだ。そんな少年が持ち運べそうにない重量級の物をどうやって使うのか。そこで登場するのが『IDSデバイス』である。IDSとは『インターディメンショナルシフト』、日本語に訳せば次元切り替えの略語で、文字通り、現在居る部屋の次元を違うものへと切り替える事ができる装置となっている。切り替えられる次元の種類は四種類。物が柔らかく軽くなる『ふわふわ』、物がより重く硬くなる『おもおも』、時間の流れが遅くなる『のろのろ』、重力の上下が逆転する『さかさま』が用意されている。これらの物理法則の異なる4つの次元を状況に応じて切り替え、部屋の中にある物を持ち運んだりしていくのだ。なので、金庫を持ち運びたい場合は次元を『ふわふわ』に切り替えれば、金庫が軽いものへと様変わり。段ボール箱の要領で手軽に持ち運べるのみならず、投げて遠くに飛ばす事までできるようになる。また軽くなると、風の抵抗も受け易い状態に。部屋には一部、巨大扇風機(ファン)が配置されている所があり、その風を利用して物を遠くに飛ばす事が求められてきたりするのだが、この際に『ふわふわ』の状態で軽くした金庫を投げたりすれば、風が吹いている方向に流されるかのように金庫が飛んでいくのだ。当然ながら、その途中で次元を戻して本来の重さにすれば、風の抵抗を受けない状態になってその場に落下。タイミングを合わせれば、意図した場所に落下させて設置、なんて事もできてしまう。まさに物理法則の特色を最大限に活かしたとも言える、斬新なパズルとゲーム性を演出する装置となっているのだ。
なお、ゲーム開始の時点から四つの切り替えが使える訳では無く、本編の流れに沿って『ふわふわ』から順番に解禁されていく仕組み。また、四つ全ての切り替えができるようになったとしても、任意に切り替えられるようになる訳では無い。基本的に次元切り替えに当たっては、IDSデバイス本体に部屋内で手に入るバッテリーを装着する必要があり、ここに装着していないバッテリーの切り替えは行う事ができないのだ。また、部屋によっては切り替えられる次元に制限がかけられていたり、一定のタイミングで自動的に次元の切り替えを実施される特殊パターンもある。特に後者はタイミングに応じた素早い行動が求められたりと、アクションゲーム寄りな展開へと一変。触れたら速攻でミスになるレーザーを回避したり、次元の変化で足場となった場所をジャンプで渡っていくなど、パズルゲームは何処へ行ったと言いたくなるような場面の連続となる。そんなパズルゲームとしての活用だけに留めていないのもこのシステムの特色。油断すると痛い目に遭う側面も併せ持っている。
更に応用テクニックは物質の変化を活かしたもののみならず、他の次元との組み合わせを要求してくるパターンもある。金庫で例えるなら進路を塞ぐ分厚いガラスを壊す為、『ふわふわ』で軽くして投げた後、『おもおも』に切り替えてガラスに直撃させたり、同じように『ふわふわ』で軽くして投げ、『のろのろ』に切り替えて時間の流れを遅くし、その瞬間に投げた金庫の上に乗り、離れた足場までジャンプするなどなど。それぞれの特徴を活かした、合わせ技を用いて突破する場面も沢山登場するのだ。そのどれもが、プレイヤーに驚きを提供させつつ、確かにそんなことできるよねと納得させられるものになっているばかり。3次元空間だからこそできたその解法には、言葉に表し難い衝撃を覚える…かもしれない。
このようにゲームルール自体は単純だが、物理演算を活用した次元切り替えシステムにより、プレイヤーにそれまでにない発想を要求するアクションパズルゲームに仕上げられている。主観視点のアクションパズルゲームという事で、『ポータル』に近い作風ではあるが、今作は物理法則というものにより特化したパズルとアクションを構築する事に特化。同じ製作者が携わっている故のらしさはあれど、肝心の中身は方向性の大きく異なる内容になっている。

そんな今作の売りは物理法則、主に物体の性質変化に着目した斬新過ぎるアイディアと珠玉のレベルデザインである。次元を切り替えて物の性質を変え、仕掛けを解いていく基本ルールの時点で斬新なものがあるが、そのアイディアをゲームとして落とし込む為の作り込みが傑出している。このアイディアだからこそのネタを徹底的に検証し、ステージへと反映させた、製作スタッフのこだわりと突き抜けたセンスが炸裂した仕上がりになっているのだ。
特に応用テクニック全般にその作風が現れており、どれも一見からして無茶苦茶な行為ながら、プレイヤーを納得させるものになっているのは凄いの一言。『ふわふわ』と『のろのろ』を活用した長距離ジャンプは良い例で、明らかにおかしな事をしているのにそうなって当然だと確信してしまう謎の説得力に満ちているのが面白い。同じく『ふわふわ』、『のろのろ』、『さかさま』を活用して空を飛ぶ(!)のもまた然りで、プレイしている内に人間は次元を操る能力を持つ事で万能の神になれるのではないのかと変な確信すら抱くほど。さすがに神云々は誇張表現だが、そんな具合にゲームへの落とし込み方が絶妙で、プレイヤーに何ら違和感を与えないものにまとめ上げているのである。その見事な仕上がりは、物理演算処理という特徴的なプログラムに対する理解があってこそ。リアリティを追求しつつも、ゲームらしい無茶苦茶さも表現するバランス感覚の優れた仕上がりと面白さを最優先したとも言えるまとめ方には、同プログラムを極め尽したという製作スタッフの確かな自信に満ち溢れている。併せて、物理演算を用いているからこそのアクションパズルを突き詰めているのも秀逸。何かと演出の為に使われがちな物理演算処理をゲームとして活かす事に力を注いだのもこのテクニック全般からは感じられ、ゲームを作る者としての意地を実感させられるところだ。
そして、肝心のステージこと部屋の構成(レベルデザイン)にしても、独自のシステムを最大限に活かした作りになっていて素晴らしい。ネタの使い回しがあっても、部屋の環境と仕掛け、謎を解く過程などでしっかりと差別化を図る、アクションのテクニックが求められてくる場面を挟むなど、プレイヤーを飽きさせず、ダレさせずを厳守したものに完成されている。特にジャンプアクションが求められる場面は、パズルに特化した本編にアクセントを付けていて見事。その解法も次元切り替え技と絶妙にリンクしており、投げた金庫でレーザーを遮り、その動きに合わせて行動していくなど、今作特有の遊びを凝らしたものに仕上げられている。中にはバスケットボール感覚で飛んでくる物をジャンプしてキャッチし、そのままパスするかのように乗せたい場所目掛けて投げる、スポーツ的なテクニックが求められてきたりする事も。仮にもパズルなのにスポーツの要素まで取り入れるそのネタの活用法には、各部屋の構成を考えたデザイナーのセンスの高さとプレイヤーに驚きを提供する事へのこだわりを感じさせられるだろう。ゲーム性の部分のみならず、製作的な部分でも応用術を活用する辺り、本当に突き抜けたセンスを持つクリエイターが製作しているという事が滲み出ている。
部屋ごとのロケーションとぶっ飛びっぷりも秀逸。大きな屋敷が舞台とだけあって、基本的に室内中心のビジュアルになっているのだが、そこは天才(&変態)科学者が住まう屋敷。人に危害を与えるレーザー砲台やら、工場同然の物質生成装置があったり、人が通る事すら不可能な大きな穴があるなど、何処も彼処もツッコミ所しかない酷い(※褒め言葉)ものになっている。何でこんな武装要塞に等しい所に人が住んでいるのか、そもそも、何でこんな危なげな物を作ってしまったのかと、その異様な光景の数々には主にして、救出すべき人物であるプロフェッサーQの異常性というものを感じてしまうこと間違いなし。また、その滅茶苦茶なロケーションに80年代のゲームを髣髴とさせるゲームらしい嘘が炸裂しているのも見所。人が住む屋敷なのに、右を向いても左を向いても危険物と異様な機械だらけ、住めるような所じゃない構造には最深部が一体、どんな事になっているのかと興味を抱かせる魅力に秀でている。その先の地形見たさにゲームを進めていく感覚も、その当時のゲームっぽさに溢れており、当時のゲームを沢山遊んだプレイヤーならば少し懐かしさを感じること必至。それが物理演算処理なる最新の技術を用いた現代的なゲームで表現されているというのも面白いところだ。最新技術を駆使したゲームに80年代のゲームが持っていた非現実的な世界観を織り交ぜる事をコンセプトとしたのか、その意図は製作者のみぞ知るところであるが、新しさと懐かしさが相反する事無く混ぜ合わさった仕上がりは素敵の一言。本編をプレイすると、どうしてもパズルの方に関心が行ってしまうが、ロケーション周りに関しても今作はゲームっぽさを大事にした仕上がりになっているので、パズルの解法が分からずに詰まったりした時は周りを眺めて見て欲しい。かつてのゲームが持ち味としていた、何でもありなノリというものを隅々から感じさせられるはずだ。
ただ、ややバランス調整の加減を誤った所も。特にジャンプアクションが求められてくる場面は全体的にギリギリな操作が求められてくる上、主観視点で展開するという作りもあって足場の位置が分かり難く、FPSに不慣れなプレイヤーほど苦戦必至な難易度になってしまっている。しかも、今作はフレームレートも秒間60と高めでヌルヌルと動き、移動速度も早めなので、余計にその加減が見極め難い。速度に慣れてない序盤ならオーバーランする事も当たり前で、プレイしながらその加減をプレイヤー自身で見極めていかなければならない。挙句の果てにフレームレートが高いだけあって、3D酔いも生じ易い上、その酔いの度合いも高くてプレイヤーによっては最悪、リバースしてしまいかねないほど。FPS問わず、3D系のアクションが苦手な人なら絶対に遊んではいけない危険性を持った内容になってしまっているのだ。
普通なら快適な挙動ほどプラスに働くものだが、今作はマイナスに働いてしまっている。ジャンプアクションも金庫の上を飛び乗っていく場面など、難易度を高くしようとする安易な意図が現れていて良い印象を持てない。パズルだけでは退屈だから、という狙いで入れたのは分からなくないのだが、もう少し不慣れなプレイヤーにも優しくできなかったのか。また、フレームレートを落とすオプションとかも実装できなかったのか。そう言った配慮が甘いのは正直、作り込みの甘さを感じてしまう。折角、面白いアイディアを活かしているのに、コアなプレイヤー前提とは勿体ない限りである。しかし、それを含めても今作が放つ独自性の高さは突き抜けている。物理演算処理をゲームとして落とし込む事でどう言った表現と遊びが生まれるのか。その答えを示した今作の表現の数々には、他では味わえない衝撃と感動を覚えるだろう。プレイヤーを選ぶ作りとは言え、センスの高さに陰り無し。天才的という表現がこの上なく似合う作品になっているのだ。

ボリュームに関しても、ステージ総数は80以上と盛り沢山。更に少ない次元切り替えで部屋を攻略する詰め将棋的なやり込み要素も盛り込まれているほか、有料の追加ダウンロードコンテンツにも対応しており、やり込もうとすると非常に長く楽しめる内容になっている。特に詰め将棋的なやり込み要素は、今作の部屋ごとの作り込みの深さを実感させられる仕上がりになっているので、腕に自信があれば挑戦してみて欲しい。その奥の深さと計算し尽された仕掛けの数々に、それまでの印象がガラリと変わるはずだ。
また、3D酔いを発症させ易い難点はあるが、操作性自体は悪くなく、一切もたつく事無くスムーズにキャラクターを動かせるのは秀逸。基本的に物を持ったり、ジャンプしたりと言ったアクションがほとんどなので変に分かり難い所も無く、アクションゲームとほぼ変わらぬ直感的な手応えを持ち味としたものに仕上げられているのも評価できるところ。特に3D耐性の強いプレイヤーなら、その怖いぐらいまでに快適な手応えにはちょっとした衝撃を覚えるかもしれない。
グラフィックも次元切り替えシステムと相まって独特のビジュアルを描いているのが印象的。中でも次元の切り替えと同時に、背景から物に至るまでロードを挟まず、シームレスに色が変わる表現には少し驚かされるものがある。個々のモデリングにしても、アメコミ調全開で、中でも行く先々でプレイヤーをサポートしたり、時には邪魔してきたりする謎の生き物『アイク』は非常に可愛らしいデザインになっているので必見だ。音楽も怪しげな屋敷という設定にマッチした、明るくて怪しい作風の楽曲が良い雰囲気を作り上げている。また、エンディングやゲーム起動前のホーム画面で聴ける主題歌も印象的。その独特の歌声と陽気なノリには癖になる快感を覚えるかもしれない。

演出周りも先の次元切り替えと同時に行われる背景の変化を始め、インパクトは十分。ストーリーも難解そうなサブタイトルとは裏腹のユーモアたっぷり、愉快な展開満載の内容になっている。ただ、ローカライズ…翻訳が全体的に下品で、ネットスラングの乱用が鼻に付く。特に日本語のおかしい所は無く、無難にまとまっているのだが、嫌いな人ならとことん応えるネタを仕込んでしまっているのは残念極まりない。正直、ストーリー的にもネットスラングを用いる必然性が皆無なのに何故、入れてしまったのか。仮にウケ狙いなのだとしたら、センスが最悪としか言い様がない。好みの分かれる要素だし、筆者としても好きじゃないので、できればそういうのとは違うネタで勝負して欲しかったところである。また、肝心のストーリーも最後の展開が色々と残念な事になっている。これもまた、人によっては相当な不快感を覚えるかもしれない。
FPS未経験者には応えること必至なアクション周りの難易度の高さなど、他にも褒められない所があるが、アクションパズルゲームとしての革新性と完成度の高さは折り紙付きで、製作スタッフの柔軟な発想と素晴らしい作り込みの数々が光る作品に仕上げられている。極端に好みを分ける所はあるが、他では味わえない魅力がたっぷり詰まった今作。
主観視点のゲーム、3Dアクションが苦手という方にはお薦めできないが、それ以外のプレイヤーならば是非、遊んでみて頂きたい斬新な傑作だ。同じ製作スタッフが手掛けた『ポータル』が好きなプレイヤーなら要プレイ。物質の変化という題材でどんな具合に変わったアクションパズルゲームが作れるのか。その答えが顕著に現れた仕上がりになっているので是非。また、今作はPS3以外にXbox360(LIVEアーケード)、Steamでも配信されている。PS3を持ってなく、今作に興味があるというプレイヤーはそちらにてお試しの程を。
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