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≫Pixel Junk Shooter(ピクセルジャンクシューター)
■発売元 キュー・ゲームス
■ジャンル 流体アクションシューティング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 500円(税込)<※旧価格は1200円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 109MB(セーブ容量:141KB)
■その他 PlayStation Network対応、振動機能対応、トロフィー機能対応
■推定クリア時間 7〜8時間(エンディング目的)、22〜28時間(完全攻略目的)
遥か未来、遥か宇宙の彼方。
人類は宇宙に進出して久しいが、その勢いは加速の一途を辿っている。
だが、宇宙と言えども、人類が安全に生息できる領域は少ない。
その上、人類が安定して生活するには膨大なエネルギー資源が必要となる。その為、常に新たな惑星開拓が不可欠であり、巨額を投じた惑星採掘ビジネスが激化するばかりであった。

地下深くに豊富な資源が眠っているとされる、開拓惑星『アポキスプライム』。
物語は、この謎多き惑星より発信されたSOS信号をきっかけに幕を上げる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆遭難者を救助し、出口を目指すというシューティングゲームらしからぬ奇抜なゲームルール
◆物理演算処理による、気持ち悪過ぎるほどに滑らかで迫力満点の流体運動とそのエフェクト
◆温度が一定量に達してしまうと故障する、独特且つ現実味のある設定が面白い自機
◆射撃からアームの発射、更には高速移動に回転攻撃まで、意外に多彩な自機のアクション(特殊スーツを装着すれば、マグマを発射すると言った事までできる)
◆タイトルらしからぬパズル的な要素とギミックが盛り沢山のステージ構成
◆プレイヤーを「アッ」と言わせる衝撃度と基本から応用までの絶妙な活用法が光る、流体(フロイド)を使ったギミックとパズルネタの数々
◆マグマが煮えたぎる洞窟から氷の世界、工場と、多彩で嘘っぽさ満載のステージロケーション
◆緩やかな難易度上昇と常に斬新なネタを用意する、丁寧な作り込みが見事なレベルデザイン
◆シューティングゲーム特有の爽快感と全方位型特有の仕掛けが印象的なボス戦
◆ステージ総数こそ少ないが、密度が濃いのもあって充実感は申し分無しの総計ボリューム
◆隠されたダイヤモンド探しなど、シューティングゲームらしからぬやり込み要素の数々
◆序盤は優しく、後半はガッチリという色分けの明確さと適度な調整具合が秀逸な難易度設定
◆二つのスティックと二つのボタンだけで遊べる、手軽で取っ付き易い操作性
◆明るくてポップなデザインが異彩を放つグラフィック
◆ポップな世界観との(いい意味での)ミスマッチ具合が面白い音楽(ボーカル付きの曲も収録)

--- Bad Point ---
◆露骨なまでに続編前提な形で決着するエンディング(2とのセット購入は必須)
◆悪く言えば、シューティング的な面白さは薄めのレベルデザイン(パズルの方が濃い)
◆ボスステージ解禁に必要なダイヤモンド総数の多さ(少しでも取り漏らししてしまうと、クリア済みのステージを再度やり直すハメに…)
◆密度は濃いが、少し長くし過ぎな感も否めないステージ構成
◆見た目のインパクトは凄いが、再プレイ時においてはストレス要因にすらなる流体演出(溶岩が固まるまで少し待たされたりなど)
◆戦闘は面白いが、数があまりにも少ないボス戦(2とセット購入すれば解決するが…)
▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
遭難者は語る、最深部に気をつけろ。

そして、貴方は続編を買わざるを得なくなる…。


かつてスーパーファミコンの『スターフォックス』にプログラマーとして携わったディラン・カスバート氏が代表を務めるキュー・ゲームスが送るダウンロード配信専用ゲーム、『ピクセルジャンク』シリーズの第四弾としてリリースされた、アクションシューティングゲーム。

素晴らしき流体運動の世界へようこそ。
斬新なアイディアと映像表現の数々で魅せる、新感覚のアクションシューティングゲームだ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型オールレンジシューティングゲーム。自機を操作し、地下世界の洞窟で助けを求める遭難者(サバイバー)達を救助したり、進路を確保しながら出口を目指していくというものだ。
システム周りは世間一般のシューティングゲームとは一味も二味も異なる。まずスクロール方式だが、強制式ではなく、フリースクロール…またの名をオールレンジ式を採用。360度、自由に自機を動かす事ができる作りとなっている。
更に本編の流れと構成も独特。エリア単位で分けられた複数のステージを攻略していく、アクションゲームを髣髴とさせるようなものになっている。より具体的な流れに関して解説すると、各ステージは幾つかのブロック(部屋)で構成されており、そのあちこちに『サバイバー』と呼ばれる助けを求めるキャラクター達がいる。このサバイバー達をプレイヤーは『アーム』と呼ばれる装置を使い、一人ずつ救助していく。サバイバーの救助が一定人数完了すると、ブロック内に設置された『ゲート』が開放。このゲートの先に進むと、次のブロックに移り、再びサバイバー達を一定人数救助していく事になる。そして、再びゲートを開いてはその先へ進み、またサバイバー達の救助をするという事を繰り替えしていく。基本的に本編はこれらを繰り返す形で展開。最終的に最深部のブロックにある出口を開放し、そこに自機を到達させる事ができればステージクリアとなる仕組みとなっている。一体、これの何処がシューティングゲームなのかと言った感じの内容だ。
とは言え、シューティング要素が皆無という訳ではない。各ステージにはプレイヤーの救助作業を妨害する敵が登場するほか、自機にも攻撃機能は備わっている。更に各エリア最後のステージは最深部に待ち構えるボスを倒すのがクリア条件であるなど、お約束とも言える要素はしっかりと抑えられている。だが、基本的には敵との戦闘以上に人の救助に特化した内容なので、その手応えはシューティングのようでシューティングで無い不思議なもの。出口への到達を目指すという流れも、シューティングゲームというよりはアクションゲームも同然な感じだ。まさに何もかもが新感覚。他に無いゲーム性を特徴としたシューティングゲームになっている。
しかも、それらだけが今作を新感覚のシューティングゲームだと言わしめるものではない。他にも今作には、数多くの斬新な要素が盛り込まれている。
例えば自機だが、『アーム』というサバイバーを救助する装置以外に『温度』なる概念がある。今作の舞台となる地下世界の洞窟には、マグマ、水と言った様々な『フルイド(流体)』が登場するのだが、これらの流体、例えばマグマに接近するにつれ、画面下の『温度ゲージ』なるものが上昇していくようになっている。そして、ゲージが最大値にまで達すると自機がオーバーヒート。そのまま制御不能になり、墜落してしまうのだ。逆に温度が上昇した状態で水を浴びるとゲージが低下。オーバーヒートを免れる事ができる。こんな過敏な変化まで、今作の自機は現す仕組みとなっており、高温地帯には長居させないと言った変わった立ち回りが要求されてくるのだ。単に敵の攻撃だけに気をつけるのではなく、環境変化にも気をつけるという辺りは何とも斬新。これもまた、未だかつてない体験をプレイヤーに提供してくれる。
更に温度による変化を表すのは自機だけではない。マグマを始めとする流体も、温度変化を与える事でその形を大きく変えるのだ。それこそが今作最大の特徴、流体運動による謎解きと進路確保。何とマグマは温度の低い水をかけると、現実のマグマと同様、急激に冷えて泥と化す!そして、その泥と化した部分は自機のショット攻撃で破壊可能となり、その下に隠されていた道が通行可能になると言った事ができるようになるのだ。同様に水も強い冷気に曝されると氷となり、逆に氷にマグマをかけると水になる仕組みとなっている。この特性を活かし、水中で待ち構える敵を倒したり、また進路を作り出すと言った応用プレイもできる。
また、マグマや水は全て物理演算処理により、現実と同様の大変気持ち悪い(褒め言葉)流体運動をする。この運動原理を利用し、一定のスペースに水を溜めてそれを溢れさせ、マグマの所まで流し込むなんて事も可能であるなど、物理演算処理を取り入れているからこそのテクニックや遊びも今作では存分に堪能できるようになっている。
そして極め付け、これらの原理を活かした謎解き、進路を確保する展開までもが本編に登場するという始末。もはやここまで来ると、シューティングゲームというのも怪しい感じだ。救助だけでも十分に斬新さがあるのに、そんなジャンル外な要素まで完備。これらもまた、今作の新しいゲーム性を演出する要素として、突出した存在感を放っている。他にもマグマなどを発射する『スーツ』なる装備アイテムなど、革新的な要素は沢山盛り込まれているのだが、一つ一つを解説すると長くなるので割愛。こんな具合に今作は本当にシューティングゲームとしては新感覚で、良い意味で常識外れな内容になっている。一言で今作を言うなら、探索型シューティングと言ったところか。一切の誇張も何も無く、ゲーム性から演出に至るまで斬新としか言い様の無い作品に仕上げられているのだ。

そして、今作の魅力に関しては言わずもがな。この独特極まりないゲーム内容そのものだ。特にマグマ、水と言った流体の温度を変化させたり、その原理を活かして特定の位置まで流し込む等を行い、進路を確保していく遊び(謎解き、探索要素)の新しさは格別。物理演算処理により、実際の流体と全く同じ動きをするのもあり、本当にそれらの流体を自分がコントロールしているかのような不思議な手応えを堪能できる。その流体の動き自体も繰り返しになるが、本当に気持ち悪いぐらいに滑らかで、思わず「うおっ!」と声を挙げてしまうほどの凄味が満載。まるで本当にそれらが生きているかのような動きもまた、プレイヤーに対してかつてない衝撃とワクワク感を与えてくれる。
また、水をかけるとマグマは泥と化すなど、流体の不思議を手軽に学べる学習ゲームっぽい側面を持っているのも実にユニーク。更にこれらの流体などを使った謎解きの難易度もそれほど高くなく、大半は直感的に解けるものというのも大変良心的。シューティングゲーム独特のテンポの良さを過度に損ねないその絶妙な設計には、職人の技と言うものを痛感させられる。そして、それらの流体を始めとする多彩なネタが盛り込まれたステージ。これがまた、職人の技が炸裂した、非常に完成度の高いものに仕上げられている。というのも、あらゆるステージで革新的且つ驚きのネタが飛び出す、使い回し皆無の見所満載の内容になっている。流体などに対するプレイヤーの先入観を良い意味で裏切る作り込みが成されているのだ。中でも応用性の上手さが見事。例えば氷はマグマで溶かして水にするという以外に『アーム』を使って強引に剥ぎ取る手でも取り除く事ができたり、貯水池の中に待機していた時、その水が氷となってしまうと身動きが取れなくなって即死にしてしまうなど、流体というテーマから連想されるネタ、可能性というものが余す事無く注ぎ込まれている。ステージ内に仕掛けられたギミックも、水を吸い取って吐き出す不思議な物体、そして地面に叩きつけられると同時に水やマグマを吐き出す果実など、流体というテーマだからこそ実現し得た摩訶不思議且つ、説得力のあるものが満載で、只でさえ斬新なゲーム本編に更なる刺激を提供する。
単純にアイディアの斬新さだけではなく、シューティングゲームとしての面白さも申し分無しだ。敵などはその能力からバリエーションまで、非常に個性豊かで仕留め甲斐のある面子ばかり。ボス戦もシューティングの王道を行く動きや攻撃の隙を付いて弱点にショットを叩き込む快感に富んだ作りになっており、戦っているだけでも面白い。何より、このボス戦においても、流体をテーマにした斬新なテクニックが求められてくるというのが見事。どの場面であろうと、作品のテーマを徹底するこだわりの作り込みには、斬新なゲームを作ろうとするスタッフの方々の志の高さを実感させられる次第である。
何気に自機のアクションが大胆であるという点も見逃せない部分。基本的なショット攻撃以外のサバイバー救出&氷除去用のアーム、温度の概念などでも十分、個性的であるのだが、それら他にもダッシュ移動、ローリングアタックと言った無茶苦茶な動きまで見せてくれる。しかも、それをちゃんと使わないと攻略は難しいステージ、シチュエーションも用意するなど、ちゃんと存在意義を出している辺りも地味ながら見事。そして、それらのアクションをマスターする事により、よりスピーディ且つ、大胆な格好でステージを駆け抜けられるようになるなど、極める面白さがしっかりしている辺りも特筆に値する部分だ。基本的なルール、流体運動周りの部分だけでかなりの斬新さがあり、そこだけでも結構な面白さを味わえるのだが、あくまでも今作はシューティングゲーム。ステージの作りから自機のアクション周り、そして敵配置と言ったバランスとテンポ周りもしっかりと作り込んでおり、ただネタが新しいだけのゲームで終わってないのはさすがの一言だ。
また、シューティングゲームとしてだけでなく、学習ゲーム的な側面も僅かにあり、特に低年齢層ならば科学に対する興味が一層湧くかのような魅力が込められているのも非常に魅力的だ。新しさも抜群ながら、ゲームとしての基本的な完成度も上々なクオリティ。新しさと楽しさが絶妙なバランスで噛み合ったその内容は、冗談抜きにプレイヤーに対して今までに無い、楽しいゲーム体験を提供してくれる。とにかく何かもが新しくて楽しい。今までに無いゲームとはこういうものだと、存分に実感させてくれる作品に仕上げられているのだ。

ゲーム内容の出来ばかりでなく、操作性も大変良好。左右二つのスティックで自機の方向調整、移動を行うという少し特殊なスタイルだが、使うボタンは二つだけと、その印象とは裏腹に結構シンプル。また、その操作性に自然と慣れ親しんでもらう為にレベルデザインも一工夫されていて、最初のステージは敵がロクに登場しないなど、気軽に練習できる作りになっているのが見事。操作アドバイスもサバイバーから適時入るなど、かなり気を使った作りになっている。難易度も前半は易しく、後半は難しくという絶妙なバランス。緩急のつけ方が非常に上手く、シューティング初心者も気軽に楽しめる調整となっている。リトライ周りもミスしてもそのブロックの始めから再開できるというのが非常に良心的だ。
ボリュームもステージ総数は少なめだが、1つ1つが非常に長いのもあって、充実感とやり応えは抜群。更に隠されたダイアモンドを探すアイテム収集要素、サバイバーの完全救助と言ったやり込みも充実しているので、意外と長く遊べる内容になっている。
また、グラフィックに関しては何と言っても流体全般の動きと描写が凄い。これを見るだけでも今作をプレイする価値は十分にある。また、明るくポップな世界観も独特の味わいがあり、あまり人を選ばない万人向けのものになっているのが実に見事だ。音楽もボーカル付きの曲が状況に応じて流れるなど、なかなかの出来栄え。雰囲気重視系の作りでありながら、なかなか味わい深いものに仕上げられている。

演出周りも流体運動の気持ち悪いほどの滑らかさはさることながら、各エリアの最後に待ち構えるボスも動きが仰々しく、またダメージを与える度に周囲の状況が変化していくド派手な仕掛けが盛り込まれているのもあり、見るだけでも楽しい。
その他、ステージのロケーションも地底世界という事で自然環境が多め…と思いきや、ラストには人工的な要塞と思しきものが登場するなど、結構豊か且つ、ゲームらしい嘘っぽさが炸裂しているのが実にユニーク。
唯一の欠点は、ボスが待ち構えるステージの解禁に必要な『ダイアモンド』の数が少し多く、取り漏らしをすればするほど、苦しいやり直しを知られるところか。また、続編に続く消化不良感満載のエンディングも苦しい。その為、続編とのセット購入は必至だ。そういう残念な所があるのが何とももどかしいが、シューティングゲームとしては間違いなく革新的な作品と言える内容。アイディアや演出の斬新さだけに留まらず、シューティングとしての出来も良く、難易度的に初心者の方でも気楽に楽しめる作りとなっている。映像面からゲーム性に至るまで、唯一無二の体験を提供してくれる今作。
プレイステーション3をお持ちの方なら、続編とセットで是非、プレイしてみて頂きたい傑作だ。物理演算処理がもたらした、流体運動の世界を体験してみよう。大変お薦めの逸品です。
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