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  4. マリシアス MALICIOUS
≫マリシアス MALICIOUS
■発売元 アルヴィオン
■ジャンル アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力描写あり
■定価 800円 (税別)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 515MB(セーブ容量:140KB)
■その他 PlayStation Network対応(※オンラインランキングのみ)、振動機能対応、トロフィー機能対応
■推定クリア時間 2〜7時間(エンディング目的)、35〜45時間(完全攻略目的)
『預言者』により、『討伐者』として呼び出された貴方は間もなく訪れるという災厄『マリシアス』の討伐を依頼される。

『預言者』から与えられた力を我が物にし続ける『狂王』とその臣下達。
彼らを倒し、『マリシアス』を倒す為の力を習得するのだ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ボス戦だけに特化した、取っ付き易さと大胆な作り込みが光るゲームデザイン
◆ボス戦特化ならではの、ボス一体一体のこだわり抜いた攻撃パターン&バリエーション周り
◆数は少ないが、岩の巨人に空中戦艦、人型までと非常に豊かなボスのバリエーション
◆攻撃に割く、回復に当てると言った管理の面白さともどかしさで楽しませてくれるオーラシステム
◆キャラクターの四肢の状態で耐久力を示すという、刺激的過ぎる体力表示の手法
◆青空が美しい遺跡、大量の雑魚敵と陸上兵器が登場する戦場、荘厳な雰囲気の城内と、個性豊かで見た目でも楽しませてくれる各ステージのフィールド(特に戦場は必見)
◆少なめながら、ステージ一つ一つの密度の濃さで脅威的な充実感を演出するボリューム周り(スコアアタック、タイムアタックと言ったやり込み要素も充実)
◆『灰の外套』と呼ばれるマントを武器に変化させて攻撃するという奇抜な設定と多彩なバリエーションで魅せる、プレイヤーの攻撃アクション全般
◆ゲームテンポを阻害しない程度に抑え込まれた、良い意味で突き放し気味のサポート機能周り(しかし、難易度選択機能や操作解説などのフォローは十分)
◆苛烈ながらも、極めれば極めるほどに突破口が見えてくるアクションゲームの上達の快感を突き詰めた、やり応え抜群で奥深さに満ちたゲームバランス
◆水彩画調の幻想的な雰囲気と独特のモデリングが光る、美しいグラフィック
◆絵具をぶちまけるかのようなインパクト溢れる描写が成されたエフェクト系演出全般
◆グラフィックから醸し出される幻想的な雰囲気と戦闘の緊迫感を引き立てる、印象深い音楽
◆必要最低限ながらも、意外とエグい設定が隠れたストーリー

--- Bad Point ---
◆癖があるに加え、一部腑に落ちない設定が成された操作性(特にダッシュ操作が酷い)
◆あまりにも変なアングルになりがちで、適切とは言い難い回り方をするカメラワーク
◆強化のされ方が過剰過ぎるボスの一体『狂王』(なので、攻略を後回しにするとクリア困難になる事も)
◆狂王の強さの問題もあり、やや定石化されてしまっている感も否めない攻略ルート
◆ゲームルールの単純さと世界観の雰囲気と悪い意味で裏腹なゲームバランス(雰囲気に釣られてプレイすると、心を圧し折られるのでアクションゲームが苦手な人は要注意!)
◆やや作業的な構成になってしまっている感が否めないマリシアスとの決戦
▼Review ≪Last Update : 5/24/2015≫
その肩書きに偽り無し。

後回しにすると本気で地獄を見ます。


『サーカディア(PS)』、『チェインダイブ(PS2)』と言った作品を輩出してきたアルヴィオンが放つ、完全新作の3Dアクションゲーム。

コンパクトで安価なイメージを払拭する骨太なゲーム性で魅せる、力作アクションゲームだ。

ゲーム内容はステージクリア型3Dアクションゲーム。討伐者こと『魂の器』と呼ばれるキャラクターを操作し、舞台となる国の各地で暴れる5体の『力の保持者』を倒して特殊能力を会得しつつ、来たる災厄『マリシアス』の打倒を目指すというものである。本編はステージセレクトシステムによる、自由選択方式によって展開。ゲームを始めると5つのステージが選択でき、その内の好きな所から本編を始める事ができる。そして、全てのステージをクリアすると、最終目的たる『マリシアス』との決戦が解禁されるという仕組みだ。
各ステージはいずれも広大な3Dの箱庭空間で構築されている。但し、一般的なアクションゲームと異なり、今作には道中が存在しない。何と、ステージのクライマックスとも言える、ボス戦しか存在しない大胆過ぎる構成になっているのだ。その為、各ステージを始めるといきなりボス戦から開始。心の準備をする暇も無く、真剣勝負に挑む事になる。
しかしながら、どのタイミングでボスに攻撃を仕掛けるかはプレイヤーの自由。また、ボスはステージ開始当初から容易にダメージを与えられるほど脆くない。それどころか、下手に突っ込むと強烈なしっぺ返しを喰らうほど強めに設定されている。そうも強力なボスをどう倒すのかというと、攻撃力の上昇やダメージからの回復と言った補助効果を与える『オーラ』と呼ばれる力を溜め込んでいき、それが一定量溜まった瞬間に『解放』を行い、効果が発動している最中に攻撃を展開していけば良い。各ステージはいきなりボス戦から始まると紹介したが、ステージ内に居るのはボスだけではなく、併せて雑魚敵も登場するようになっている。この雑魚敵を倒したり、或いは敵の攻撃をタイミング良くガードする事によって『オーラ』が溜まっていくのである。なので、ステージが始まったら周囲の雑魚敵を倒したりしながら『オーラ』を溜め込む事に徹し、一定量溜まったらボスへの攻撃に移り、その最中にオーラが尽きたら、再度雑魚敵を倒して溜め込む…を繰り返していくのが基本戦術となる。少し回りくどいが、このようなスタイルでプレイヤーはボスとの戦いを演じていくのだ。
そして、激しい攻防の末、ボスを倒すとステージクリア。それと同時にプレイヤーに新しいアクションが加わり、戦術の幅が広がっていく。しかし一方で、残るクリアしていないステージの難易度が上昇する(厳密にはボスが強化される)ようにもなっており、クリアすればするほど、後半のステージが難しくなっていく。しかもその強化パターンはボスによって差があり、攻略する順番によっては全ステージの攻略が困難になったりも。その為、どのボスから倒すか、またどのボスが強化されると最も厄介か、と言った情報を探っていく事も求められてくる。ボスの数が5体、すなわちステージは全部で5つ、決戦を含めても6つしか無い今作だが、そんなスケールの小ささに反して、その中身は容易にエンディングまで突っ走れるほど温くあらず。腰を据えた上で攻略していかなければならない、骨太な内容に仕上げられているのである。
その仕組みから、ゲームに詳しい方ならば容易に察せる通り、今作のゲームデザインはカプコンの看板アクションゲーム『ロックマン』そのもの。ボスを倒す事で新たな能力を会得する点など、それに準じたものになっている。しかし、新たな力を手に入れれば残るボスの撃破が簡単になる訳では無く、あくまでも先述の幅が広がる程度と、ゲームバランスの味付けに関しては大分異なる。また、ステージをクリアする事で、残るステージの難易度が上がる点に関しては、日本一ソフトウェアのプリニーシリーズと共通している。そういう意味では、今作はステージセレクト方式を採用したアクションゲームの集大成的な内容と言えなくもない。
とは言え、その中身は非常に独自色が強く、それはボス戦に特化したステージ構成からして明らか。また、プレイヤーキャラクター『魂の器』のアクション全般に関しても個性的。特に『灰の外套』と呼ばれる、武器に変化するマントを使った攻撃は実にユニーク。変化する武器が「魔弾」、「拳」、「槍」、「剣」、「盾」、「翼」の六種類と非常に多彩であり、元がマントという設定を意識させない、派手でダイナミックなアクションを満喫できるようになっている。ただ、これらの内、魔弾と拳以外の4つは全てボスを倒さないと習得できない。なので、いきなり全てのアクションが楽しめる訳では無い。その辺は如何にもロックマン的なゲームデザインを起用した作品ならでは、と言ったところだ。しかし、マントを使って戦うというイメージだけでもインパクトは十分。また、各武器の個性付けに関しても上手く、拳は連続攻撃が可能、剣はリーチが長く、多くの敵をまとめて倒す事ができるなど、それぞれの状況に応じた使い分けが必要とされるバランスになっている。極端に強い武器も存在せず、多彩な武器を用意したゲームならではの個性を活かす配慮が成されているのも秀逸なところだ。
更にプレイヤーキャラクターに関しては、身体的な脆さも一つの特色。『魂の器』という名前が表わす通り、その耐久力は低めに設定されており、戦闘においては常に慎重な立ち回りが要求されるようになっている。また、ユニークな点として、今作には体力ゲージが存在しない。代わりとして、プレイヤー自身の身体の状態で現在の体力を現す手法を採用している。その体力の表現に関してもかなり刺激的で、何とダメージを受けるとプレイヤー自身の四肢がもげる。最初は腕から始まり、次第に足へ…と言った具合にダメージを受ければ受けるほど、無くなっていくのだ。そして、最終的に全ての四肢が無くなるとゲームオーバー。実に情け容赦の無い設定となっている。とは言え、主人公は人間では無いので、別に出血描写、切断部の表現等は特に無し。なので、設定の割にはそこまで刺激的では無い。だが、腕や足が無くなっていくだけあって、ビジュアル面の痛々しさは結構なもの。ましてや、主人公の容姿は少年と少女なので、プレイヤーによっては無傷で守り通すという使命感を煽られること請け合いだ。体力ゲージを表示せず、キャラクターの容姿でダメージを表現する手法自体はそんなに珍しいものではないが、今作の場合はそこがあまりにも痛々しいだけあって、インパクトは抜群。脆さもあって立ち回りにしても慎重にならないといけないなど、あらゆる面において容赦の無い仕様になっている。ただ、念の為、失った四肢は復活させる事はできる。だが、それに当たっては先に紹介した『オーラ』を消費しなければならない。しかも、回復の度に消費オーラが高くなっていくのに加え、回復は戦闘中のタイミングを見計らって行わなければならないだけあって、使いどころもよく考えなければならないおまけ付きである。そんな回復周りにしても、今作はなかなかにシビア。ハードなゲームである事を嫌でも思い知らせる作り込みが成されている。
他にも『オーラ』に関しては解放の際、レベルの設定が三段階まで可能で、その三段階目であればより強力な攻撃ができるようになる反面、解放中のオーラ消費が激しくなるデメリットがあったり、オーラを稼ぐに当たっては『チェイン』と呼ばれる武器にオーラの効果を足した上で敵を連続して倒すテクニックが求められてくる独自の仕様、システムが盛り込まれていたりと、癖のある要素は多数。ゲームルールこそ、昔ながらのアクションゲームの香りが漂うものになっているが、それに倣ってなのか、システム周りと難易度は骨太。ファンタジー系の世界観で、一見、ライトユーザーも気軽に楽しめそうに見えるが、その実はビックリするほどハードコア。さすがはアクションゲーム最大の盛り上がり所たる、ボス戦に特化しただけある、強烈な歯応えと高いアクション性の双方が際立つ、良くも悪くもプレイヤーに威圧感を与えるゲームに仕上げられている。の皮を被った狼というにも無理のない内容だ。

そんな今作の魅力は、まさにその取っ付き易さとは裏腹の骨太過ぎる難易度設定とコストパフォーマンスの高さ。全体で見たらコンパクトなのに、その中身は何十時間もかかる恐れがあるぐらいに濃い目。少なさを逆手に取る調整の妙が炸裂したゲームに仕上げられている。
特にボス全般の強さは、さすがはそこがゲームの核というだけあって、徹底した作り込みが成されている。とにかく、強い。まず初見での撃破は不可能と思え、と前提しておく必要があるほどに強い。攻撃が多彩なのに加え、オーラをまとった攻撃で無ければまともにダメージすら与えられないので、常に攻め際と引き際を考えながらの戦法が求められてくる。しかも、そのように戦っていかなければならないのだから、必然的に戦闘は長期戦になる。極め付けと言わんばかりに、ボスは固い。オーラをまとった攻撃で無ければロクなダメージは与えられないし、そのオーラをまとった攻撃でも実はそんな一気にゴリッと減らせる訳でも無い。幾ら最大レベルのオーラを解放した攻撃であっても、減るのは体力ゲージの数ミリ程度。結局、辛抱強く攻撃を当てていくしか手段は無いのだ。そうも固いだけあって、ゲーム開始時の操作やゲームルール等に慣れていない頃なら、一体のボスを倒すのに15分近く要してしまうのがザラ。酷い場合なら、その2倍はかかってしまう事もあり、もはやテクニック以上に持久戦とも言えるぐらいにしんどい展開になる。特に初プレイ時から少し慣れてきた際でも、その固さと攻撃の派手さもあって、条件反射で距離を取った戦法で挑んでしまうだけあって、どうしても10分を超過してしまう。なので、「絶対に倒す」という思いの元で辛抱強く攻撃を展開していかないと、心が折れかねない。某魔界の村にあやかって100万時間かかっても諦めない気持ち無くして討伐不可能…はさすがに大袈裟だが、実際にそういう強い意識を持った上で挑まなければ倒すのも難しい、見た目的にも精神的にも容赦しないスタイルが推し出されたスパルタ過ぎるバランス調整でまとめられている。強さに比例する、情け容赦の無い作り込みが成されているのだ。
だが、慣れれば5分以内の決着も可能だったりと、決して長期戦前提の調整になってはいないのがミソ。確かに初っ端からボスは苛烈な攻撃を仕掛けてくるが、オーラを然るべきタイミングで解放して攻撃力を強化させたり、他のボスを討伐した際に手に入れた武器を含めた連続攻撃を仕掛けてみると、意外と早い段階で倒せてしまったりする。また、戦闘開始前にはオーラを溜め込む展開になるが、ここも『チェイン』を使いこなす事で短時間で大量のオーラを獲得できるので、上手く行けば開始1分以内にボスとの直接対決へと移る事も可能。そして、オーラ解放時はオーラが消費されていくが、この時にボスの攻撃を行いつつ、雑魚敵への攻撃も並行して行えばオーラを維持する事もできるので、やりようによっては、ほぼ永久に解放状態をキープするなんて荒業もできてしまう。無論、それなりにゲームに慣れてからでないと行うのは至難の業ではあるが。ただ、そう上達の成果がしっかり結果として現れるだけでも、今作のバランスが長期戦前提で調整されていないのは明らか。普通にプレイすると長期戦だけど、工夫次第で短期決戦に持ち込めるなど、実は結構、初見で把握しきれないぐらいに奥が深く、それでいてスルメな味わいに富んだバランスになっているのだ。そこに至るまでの時間こそ長いが、短期決着の術を理解して実践できるようになれば、ゲームスピードも一変。ボスとの張合いも初見時とは違ったものになるなど、遊べば遊ぶほどに違った世界が切り開いていく、実にニクらしいものに完成されている。実際にその快感に目覚めたプレイヤーに対し、タイムアタックのやり込みを別途で用意すると言った抜かりの無さもまた秀逸。こういう遊びが設けられているだけでも、今作のバランスがイタズラに固い設定にしている訳では無い事を思い知らされるだろう。3分以内にボスを倒す事が可能な事にしてもまた然りだ。
そのボス達のバリエーション、戦闘の舞台となるフィールドの構成に関しても非常に凝った仕上がり。格闘攻撃を得意とする岩の巨人との戦いが繰り広げられるフィールドでは、青空が美しい開放感のある遺跡が舞台であったり、重装備兵がボスとして登場するステージでは巨大な戦艦が舞台という事で、狭くも色んなルートが用意されていたり、巨大な空飛ぶ船(戦艦?)がボスのステージはまさに戦場と言わんばかりに大量の雑魚敵が登場するのみならず、陸上兵器に体格の大きなパワータイプまで出てくるなどと大騒ぎ。それぞれ、全く違った舞台でその雰囲気に沿った戦闘が楽しめるよう工夫されているのも、ボス戦に特化したゲームとしてのこだわりを感じさせられるものになっている。単に雑魚敵とボスキャラクターを目立たせれば良いだけで終わらせず、背景を彩る城壁に装飾品と言った小物に至るまでしっかりとデザインされているという徹底振り。全てにおいて妥協なく作り込んでいるのが嫌でも伝わってくる仕上がりになっているのも圧巻の一言である。加えて、ボスも見た目からして威圧感と幻想的な雰囲気に富んだ印象深いデザインになっているほか、大きいだけのボスのみならず、主人公とサイズの変わらない相手が居るなど、ワンパターンな描写で終わらせていないのも地味な見所。しかも、そのボスに限ってやたら強いなど、理に適った調整になっているのだから面白い。
普通に物量単位で見れば、今作の全体的なボリュームは少なめ。6つのステージを攻略すればエンディングなのだから、ノーミスで行ければあっという間だ。だが、そこまでの道のりを誰もが簡単に到達できるものにさせないとするシビアさを全面に推し出した難易度設定、そのバランスによって生み出される驚異的な緊張感と言った工夫が凝らされているのもあり、物足りなさは微塵も感じさせない。何よりも、気の抜けない戦いが連続するので、6ステージでも多いと感じてしまうぐらいである。それでいて、一つ一つのステージも背景周りまで手を抜かずに作り込まれているという隙の無さ。加減さえ誤れば、ボリュームの無いゲームとして言われかねない作りでありながら、難易度で密度を生み出し、それでいて何度も遊べる奥の深いゲームへと仕上げているその作りは本当に見事。低価格なゲームだからと言って妥協もせず、背景からキャラクターに至るまで、しっかり作り込んでいる辺りにも、プレイヤーに強烈な印象を与えるゲームにするという製作者の確かな熱意を感じさせられる。
「価格が異様に安い=薄い」。ダウンロード配信専用タイトルにおいては、そんな先入観を持つユーザーも少なからずいるだろう。今作も今作で、表面上で見れば値段相応のボリュームだ。だが、その中身はフルプライスのパッケージタイトルにも勝るとも劣らぬ濃い体験が味わえる、イメージとは真逆の内容となっている。サラッと遊べるだろうと思い込んだプレイヤーを絶望のどん底に叩き落とすかの如き、骨太過ぎるゲームなのだ。ここまでの紹介を見ても、「またこんな低価格タイトルで大袈裟な…」と思うかもしれない。そう思った方こそ、是非とも製品版をお試し頂きたい。そして、1ステージの攻略に挑んでみて欲しい。そこできっと思い知らされるだろう。羊の皮を被った狼の意味というものを。

ただ、そうも気合の入った仕上がりながら、粗削り過ぎる点が多いのも否めない。特にカメラワーク、操作性の二箇所に関しては褒めるのが難しい。前者に関しては言葉で説明するのが難しいのだが、とにかく視点が安定しない。ボスに狙いを合わせたいのに、ズレてしまったりなど、プレイヤーの意図に反する動きを繰り返す。一応、ボスをロックオンする機能こそあるが、それでも癖のある動きをするので、厄介極まりない。大きなボスと戦闘し、雑魚敵とも戦うその作り故、悩んだ結果なのかもしれないが、できる事ならばゲームシステムとの兼ね合いから、3D版ゼルダの伝説や無双シリーズのような視点で設定して欲しかったところだ。後者も指定方向にアナログスティックを倒しながらR2ボタンを同時押しして発動するダッシュ操作が酷い。キーコンフィングで設定を変更しても、スティック+別のボタンというスタイルに変わりは無い等、これは素直にワンボタンに設定するべきだった。このせいで高速アクションの爽快感が薄れてしまっている。コントローラ上の全てのボタンを使いこなす意図があったのかもしれないが、さすがにこれは設定ミス。今作における最も致命的な欠点と言っても過言ではないだろう。
それ以外の箇所に関しては概ね良好。ボリュームに関してはその少なさに反した濃さもさることながら、やり込み要素も充実。先に紹介したタイムアタック以外に高ランクチャレンジ、トロフィーなど、色々と揃えているので、結構遊び込める。おまけ要素も豊富で、特に本編に登場するとあるボスに関して描かれたバックストーリーは必見。このストーリーを見てしまうと、そのボスに対する印象がガラリと変わってしまう。このバックストーリーは公式サイトでも公開されているので、今作に多少、興味をお持ちの方はチェックして欲しい。そのドロドロとした内容には結構な衝撃を覚えるだろう。
グラフィックも水彩画調で描かれたCGモデルが異彩を放つ仕上がり。主にエフェクト周りの完成度が高く、まるで絵具をぶちまけるかのような独特の表現になっている。特にボスに対してカウンターアタックを仕掛けた際のデモシーンは、その魅力が炸裂しているので必見だ。音楽も印象深い楽曲が盛り沢山。正直、これだけでも元が取れると言っても良いぐらいだ。特に『王宮最上層部』のステージ曲はインパクト抜群。また、最後のマリシアスとの決戦で流れる曲も非常に盛り上がるものになっているので要チェックである。

ストーリーも必要最低限にしか語らないなど、ゲーム本編を最重要視するスタンスが取られた作りになっているのが好印象。かと言って、ストーリーが全くない訳では無く、先に紹介したバックストーリーと併せるとなかなかにエグい世界観が見えてくる。そのシンプルな勧善懲悪で終わらせない内容は、嫌でも記憶に深く刻み込まれるかもしれない。
その他、チュートリアルは無く、ぶっつけ本番の仕様となっているが、ステージセレクトのフィールドで基礎知識が学べるほか、難易度選択機能も搭載しているなど、一見、突き放しているようで最低限の配慮が施されているのも地味な見所。但し、難易度選択機能に関しては、アップデートを反映させないと簡単な難易度で遊べないので、注意が必要だ。
とにかく、昨今のゲームにしては珍しいシンプルな遊びを突き詰めたゲームデザインが光るが、高い難易度、癖のある操作性とカメラワークなど、アクションゲームが不得意な人には相当に応える箇所もある為、万人向けとは口が裂けても言えないゲームではある。しかし、少なくも密度十分のボリュームにシンプル且つ、侮り難い難しさに秀でたボスバトル、美しくも何処となくエグさが垣間見えるグラフィックにストーリーと、随所において尖った魅力が炸裂しており、遊んだ者の記憶に深く刻み込まれる強烈な内容に完成されている。低価格なダウンロード配信専用タイトルの限界に挑戦したとも言うべき今作。猛烈に人を選びはするが、アクションゲーム好きならばチャレンジする価値大いにアリの力作アクションゲームだ。そう簡単に勝てないボスの存在感と威圧感、低価格に割り合わぬ密度の濃さには、その手のゲームが好きならば圧倒されること間違いなし。その意外性をとくとご堪能あれ。
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