Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. PlayStation 3>
  4. 風ノ旅ビト
≫風ノ旅ビト
■発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)
■開発元 thatgamecompany
■ジャンル アドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 1143円(税別)
■公式サイト ≫こちら / ≫PlayStation Store:商品&購入ページ
※購入に当たっては体験版のダウンロードと使用キーの購入が必要となります。
▼Information
■プレイ人数 1人(オンラインプレイ時:1〜2人)
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 体験版:597MB、解除キー:102KB(セーブ容量:73KB以上)
■その他 PlayStation Network対応、振動機能対応、モーションセンサー対応、トロフィー機能対応
■推定クリア時間 2時間(エンディング目的)、5〜8時間(完全攻略目的)


どこまでも広がる、砂の世界。
かつての文明を感じさせる遺跡群。

言葉の無い世界で、あなたは旅に出る。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆砂漠を歩き、山の頂上を目指して歩いていく事に徹するだけの、潔さ全開のゲームルール
◆探索から怪物襲撃と言ったイベントまで、緩急の付け方が見事なレベルデザイン
◆広大な砂漠という設定とは裏腹の多彩なロケーション(謎の遺跡、洞窟など、設定からは想像もつかないほどバラエティーに富んだ舞台が用意されている)
◆難しくし過ぎず、優しくし過ぎずのホドホドの手応えを感じられるよう絶妙に調整された難易度
◆制限されたコミュニケーション手段、旅をしている最中に偶発的に巡り逢う独特の仕組みが面白いオンライン協力プレイ(巡り逢ったプレイヤーが誰かが分かるのがエンディング後というのも面白い)
◆90分〜2時間以内で完結するよう、絶妙に計算された本編のボリューム(それでいて、物足りなさは感じさせない)
◆周回プレイとマップ探索の面白さを引き立てる、程々に用意されたやり込み要素(トロフィー)
◆コントロールスティックと最小限のボタンしか使わない簡略設計とレスポンスの良さで魅せる操作性
◆砂の粒一つまで描き込む驚異のこだわりと独特の作風が炸裂したグラフィック
◆世界への没入感を高める為、徹底的な簡略化が実施されたインターフェース周り
◆容姿のみならず、リアクションも含め、可愛らしい魅力も持ったプレイヤーキャラクターの『旅ビト』
◆砂漠世界での不思議な旅の雰囲気を引き立てる、幻想的な音楽
◆テキス表現を廃し、プレイヤーに様々な問いかけをするカット割りで構成されたムービーデモ&ストーリー

--- Bad Point ---
◆最小限の操作しか教えてくれない、不足気味のチュートリアル(没入感を高める措置が裏目に出ている)
◆蛇足な感が否めないモーションセンサーによるカメラ操作(オプションで従来操作に変更は可能)
◆未実装のオンライン・オフラインの切り替えオプション(オフラインでプレイしたい場合、プレイステーション3本体の設定でネットワーク接続を切らなければならない)
◆コミュニケーション手段が限られてる所為で、獲得できるかがほぼ運に左右されるオンライン絡みのトロフィー(片方のプレイヤーが察してくれるのを祈るしかない…)
◆密度はあれど、人によっては物足りなさも感じかねない本編のボリューム
◆全体的に好みが分かれ易いゲームデザイン(特にアクションゲームとしての手応えやストーリー性を求めるプレイヤーほど、強烈な消化不良を覚えるかもしれない)
▼Review ≪Last Update : 3/5/2017≫
(頼む、一緒に瞑想してくれ…!20秒…頼む…頼む…ッ!)

トロフィー全獲得を目指す人間、心の叫び。


『flOw』、『Flowery』と言ったアーティスティックなゲームを輩出してきたアメリカのインディー系ゲーム開発会社、thatgamecompany製作による新作アドベンチャーゲーム。海外版での題名は『Journey』。

単純且つ短めながら、心に残る旅を堪能できる珠玉のアドベンチャーゲームにして傑作だ。

アドベンチャーと称しているが、実際の内容は3Dの三人称視点で展開する、アクションアドベンチャーゲーム。プレイヤーの分身となる『旅ビト』を操作し、果てしなく続く砂漠を歩き、その先に見える山の頂上を目指すというものである。
本編はほぼ一本道で、プレイ中にハッキリと表示される訳では無いのだが、『チャプター』ごとに決められた目標をクリアしながら進めていく。とは言え、目標自体は仕掛けの解除、最終目的地である山へ連なる進路の確保がほとんどで、プレイヤーを長時間足止めさせるような謎解きは一切登場せず。『チャプター』によっては、巨大な怪物がプレイヤーに襲い掛かってくる場面もあるが、今作にはゲームオーバーの概念が無いので、トライ&エラーを強いられる事も無い。まさに「旅を楽しんでもらう」というコンセプトに則った構成。タイトル名の「旅ビト」に相応しい作りとなっている。
アクション周りもシンプル。基本的に左スティックによる移動、右スティック(或いはモーションセンサー)によるカメラ操作、特定の仕掛けを起動する時などで活用する〇ボタンによる『発光』、旅ビトが装着しているスカーフが光っている際にのみ行える×ボタンによる『飛行』の四つしか、本編において用いることはない。特殊なもので『転倒』、その場で座禅を組む『瞑想』なんてのもあるのだが、いずれも必須となる場面は一切無し。なので、3Dアクションゲームに苦手意識があるプレイヤーにも優しい。加えて、先の通りに複雑な謎解きも無ければ、トライ&エラーが要されるシビアなアクションが求められる場面も無しと徹底されているので、もどかしさも一切感じさせない。さながら、ファミコン時代のゲームを髣髴とさせる簡潔さ。最小限の要素だけでまとめるという、無駄を無くした仕上がりになっている。
同様の試みはシステム周りにも色濃く現れており、これと言ってダメージ制、アイテム収集などによるプレイヤーキャラクターの強化と言ったものも一切無し。純粋に旅だけをプレイヤーに楽しんでもらう、というコンセプトを突き詰めている。唯一、特徴的なものでオンライン機能が搭載されているが、これも他のプレイヤーと一緒に旅を楽しむだけと、シンプルさを徹底している。ただ、その詳細な仕組みは他に類を見ないものになっている。というのも、一緒に旅をするプレイヤーを任意で選ぶ事ができない。フレンド関係になっているプレイヤーを誘い、一緒になって旅を進めるという事ができない。一緒に旅をするプレイヤーは、ランダムマッチングで選ばれるのである。しかも、マッチングした際にプレイヤーの名前が表示される事も無ければ、そのプレイヤーと後々、もう一回旅を楽しむという事も仕様上、不可能に等しい。まさに「世界中の見知らぬ誰か」との一期一会の旅を楽しむ作りになっているのだ。更に極め付けとして、文字と音声を用いたコミュニケーションを図る事も不可能。テキスト&ボイスチャットと言った昨今のオンラインプレイでお馴染みの機能は何一つ実装されていないので、意思疎通は行動で示していく事になるのだ。一応、オンラインでないとクリアできない場面がある訳では無く、遭遇したプレイヤーと一緒に居なければならない縛りも無いので、別に協力せず進んでも何ら問題は無い。ただ、そんな誰だか分からないプレイヤーに行動を元に意思疎通を図る過程には独特の面白さがあり、上手く伝わった際には不思議な高揚感が得られる。同様のことは遭遇時もまた然りで、旅を続けている最中、ふと別のプレイヤーが現れ、旅に同行してくれるようになると何処となく、心がホッコリとする気持ちになる。マッチング機能無し、チャット機能全般無しと、一般的なオンラインの協力プレイとしては非常に思い切った仕様ではある。しかしながら、それ故のもどかしさと嬉しさが描かれており、プレイヤー一人一人に言葉に表現し難い感動を提供するものに仕上げられている。システム的に先のアクション同様、最小限の要素だけでまとめた作りで、直感的に理解できるのも特色の一つ。こんな現代的な要素も無駄を無くした作りになっており、旅を楽しむというコンセプトを厳守する姿勢が強く現れたものになっている。
こんな具合にアクションアドベンチャーとしては本当に最小限の要素だけで構成した作りで、同ジャンルを遊んだ経験が無い、或いは苦手というプレイヤーもすんなりと遊べる内容になっている。3Dアクションが不得意な方もまた然り。フィールドは広大だが、ゆったりとマイペースで進めていける上、進むべき道も最終目的地である『山』が示し続けてくれるので、気楽に楽しめてしまう。そうもゲームデザインからシステム、操作性にオンラインに至るまで、あらゆる部分が昨今のゲームらしくないと言わんばかりに単純明快且つ、革新的。それでいて、古き良き時代のゲームを髣髴とさせる懐かしい手触り感を持つなど、突き抜けた個性と遊び易さが光る作品に仕上げられているのだ。

そんな今作の魅力は、フィールド全体から醸し出される圧倒的な空気感、計算し尽されたレベルデザインの二つである。これらがまた、非常に質の高いものに仕上げられている。
前者に関しては、主にグラフィックと多彩なロケーションがその象徴。どちらもずっとこの世界に入り浸り続けたいという気持ちにさせるほど強烈な魅力が秘められたものになっている。先の通り、今作の舞台となるのは広大な砂漠とという、乾き切った雰囲気漂う世界なのだが、この砂漠の描写というのが凄い。砂の粒一つまでを描き込んだ、驚異的な仕上がりになっているのだ。それだけでなく、歩く度に砂粒が飛び散り、「ザクッ、ザクッ」という効果音も鳴り響くなど、質感に関しても砂ならではのリアリティを追及。単にその場を歩き回るだけでも気持ち良いと感じられるものに仕上げられているのである。更にあるエリアでは波のようなうねりを見せたり、また別のエリアでは絶壁の崖から滝のように砂が流れ落ち続ける湖のような空間が出てきたりと、砂ならではの表現を追求した場面も豊富に用意されており、観る者を釘付けにさせる。そして、そんな砂漠のあちこちに佇む神殿と廃墟の数々とテキストで一切語られないストーリーデモ。一切説明されない故、何でこのような廃墟や神殿があるのか、神殿では何を祀っていたのかなど、プレイヤーの想像力を大いに刺激し、この世界の事を知りたい、もっと先へと進みたい気持ちにさせ、この砂漠の世界へ誘っていくのである。
こう言った仕上がりになっているだけあって、訴求力が桁違い。本当にこれはダウンロード配信専用タイトルなのかと、低価格で販売されているゲームである事に違和感を抱いてしまうほどの空気感を作り出しているのだ。特に砂漠の描写とそこに広がる廃墟、遺跡が醸し出す雰囲気は格別で、全く語られないストーリーと併せ、プレイヤーの口をずっと開いたままにしてしまうほどの魅力がある。終始、砂漠の世界が続いていくのではなく、時には謎の怪物が蠢く地下道、巨大な寺院が舞台になるなど、単調に感じさせない為の工夫が凝らされているのも見事。『旅』である事を強く意識させる構成にまとめられているのには、今作が如何にその魅力を追求して製作されたゲームであるのかという事を実感させられる。
何処となく、『ICO(イコ)』や『ワンダと巨像』に似た空気も感じられ、グラフィック周りの追求とストーリーの表現技法と演出周りにその影響が垣間見えるのも面白いところだ。極力、無駄を省いたゲームデザイン周りからもそれに近いものを感じさせられる。正直、辺り一帯砂の世界を旅していくというだけでも、単調な内容をイメージしてしまうかもしれない。だが、それを払拭するほどにグラフィックとロケーションが作り込まれており、本当に入り浸りたくなる気持ちにさせられるのだ。個人差もあるので、全てのプレイヤーがなるとは断言できないが、パッケージタイトルと見ても違和感の無いビジュアルは必見も必見。中でも『ICO(イコ)』、『ワンダと巨像』が好きなプレイヤーなら、あっという間に心を奪われるだけでなく、その似たような雰囲気に感動すら覚えてしまうだろう。
後者に関しても、雰囲気だけが主役のゲームとして終わらせない作り込みが素晴らしい。ロケーションの多彩さだけでも、既にレベルデザイン周りは完璧なのだが、それだけでなくチャプターごとの個性付けもしっかりと行っており、アクションゲームとしても手応えを感じられる内容にまとまっている。
特に緩急の付け方が素晴らしく、砂の波に乗って移動したり、謎の怪物の襲撃を回避しながら進むなど、探索だけに終始しないバラエティに富んだ展開が繰り広げられるので、プレイヤーを飽きさせない。難易度も絶妙過ぎるほどに優しいバランスでまとめられており、トライ&エラーを求められる事は無いけど、ある程度の立ち回りが要求されるという、安易な力押しは効き難い塩梅になっているのが見事。プレイヤーに過度なストレスを与えず、かと言って手応えを薄くしないようにしたその調整には、雰囲気とゲームの双方の魅力を両立させる事に尽力した製作スタッフの努力を実感させられる。そして、実際にその双方どちらを抜き取っても魅力のあるものに仕上げているのだから、驚かされるところだ。
雰囲気の良さを魅力とするゲームは、雰囲気を重視してしまうとゲームが単調になってしまい、逆にゲームを重視してしまうと雰囲気を楽しめなくなるなど、さじ加減が極めて難しい。実際にその加減を誤り、賛否の分かれる内容へと化してしまった作品というのは国内製、海外製を問わず、幾つかあったりするものだ。そう言った例と同じ轍を踏まない事を目標としたのか、今作は双方を大事にする作り込みを実施した。その結果、雰囲気ゲームとしてもアクションゲームとしても楽しめる、互いに喧嘩し合わない作品へとまとめ上げたのは特筆に値する。そして、そのストレスフリーな設計によって、ゲームが不得意な方でも気軽に楽しめるという敷居の低さまで実現してしまっているのだから、驚かされるばかりだ。
そして、このレベルデザインがアクションゲームの原点を追求した仕上がりになっているのも見逃せないところ。山の頂上に到達する為、ひたすら道を歩き続けるというのがまさにそれで、その直感的で分かり易いルールとサッパリとした目的には、往年のファミコン世代ほど、懐かしい手応えと匂いを感じてしまうだろう。更に3Dのアクションという、行動範囲が広い故に目的の場所が分からないという欠点をフォローすべく、常に目的地となる山の頂上を背景に表示し続けるビジュアルデザインとカメラワークも秀逸の一言。この配慮によって、プレイヤーは「そこを目指して進めばいいんだ」と直感的に理解できるだけでなく、このゲームが何の遊びをテーマとしているかもスッと頭に入ってくるので、何のゲームか分からなくなる事も、どちらに進むか迷う事もほとんど無く、最後の最後まで遊び通す事ができる。正直、手法としての真新しさは無い上、アクションゲームとしてはごく当たり前のものと言えるのだが、今作が『旅』を目的としたゲームである事を認識させ、3D視点で展開するアクションゲーム特有の迷い易さを徹底的に潰す為の機能として活かしているのは上手い。これと言って奇をてらったシステムも何も無く、素直に「前に進む」事に特化した作りにしているのも、そんな王道を大事にしたゲームにしようというこだわりの現れと言ってもいいだろう。逆に言うなら、保守的とも言えるが、雰囲気も大事にしたゲームで突飛なシステムを入れれば、そちらが目立って堪能できなくなりかねないので、このようにしたのは正解。王道だからこその誰もが遊べる分かり易さを大事にした作りを心掛けたそのスタンスには、改めて製作スタッフのバランス感覚の良さ、そしてアクションゲームの原点を大事にするこだわりを感じさせられるところである。
こんな具合に、今作は雰囲気ゲームとしても、アクションゲームとしてもバランスが良く、そして確かな遊び応えも堪能できる仕上がりになっている。どちらが最も印象的かというと、グラフィックとロケーションを始めとする空気感に軍配が上がるのだが、ゲームとしての作り込みも負けず劣らず。一つ一つの要素が妥協なく作られ、ゲームとしても確かな手応えが味わえるその作りには、これまでの雰囲気を主役とするゲームを過去に追いやる衝撃を感じるかもしれない。それほどまでに今作の完成度は折り紙付き。あらゆるプレイヤーに強烈な体験を提供する仕上がりになっているのだ。

また、レベルデザインはボリューム周りまで計算し尽された構成になっているのも見所。実は今作、普通にプレイするだけなら、必ず90分〜2時間の内にはエンディングに到達できるスケールとなっている。この辺は如何にもダウンロード配信専用タイトルらしいと言えばらしいのだが、注目はちゃんと計算された上での時間になっていること。プレイスタイルによる波はあれど、必ずその時間の内には到達できるよう、各チャプターのボリュームが調整されているのだ。少しイメージし難い所があるが、実際にプレイすればその緻密さがよく分かるはず。同じようにボリュームを計算した量にしたケースでは、先にも挙げた『ICO(イコ)』があったが、まさにあれに近いものになっている。なので、同作を知る人ならばそのソックリっぷりに変な笑いが浮かぶこと請け合い。併せて、今作の並々ならぬ同作への愛というものを感じさせられるだろう。
更にインターフェース周りも現在地を位置するマップは無し、体力ゲージと言った画面内情報も無し、チュートリアルも最小限のテキストとイラストだけで済ませるなど、本編の世界観への没入感を高める措置がこれでもかと言わんばかりに徹底されている。その恩恵が現れているシーンも沢山あり、特に先程に少し触れた砂の波に乗って移動するシーンは屈指の見所。グラフィック、演出的にもハード性能の恩恵を存分に実感させられるだけでなく、文字通りに鳥肌ものの仕上がりになっているので、今作をプレイした暁には是非、チェックしてみて欲しい。プレイヤーによっては、そのあまりの美しさに何度もプレイしたくなる衝動に駆られるかもしれない。
グラフィックと絡むものとして、音楽も素晴らしい仕上がり。基本的に雰囲気を際立たせる為、それほど主張しない作りになっているのだが、盛り上げる所では印象的な音楽を流すなど、空気を読んだ選曲が成されている。その曲もまた素晴らしいものが揃っていて、またまた取り上げるが、砂の波に乗って移動するシーンは極上の一言。そして、ボーカル付きのエンディングも素晴らしく、ムービーデモと併せて非常に印象深いものになっている。その強烈過ぎる仕上がりには鳥肌がブワッと立ってしまうかも。そんなところも含めて必見だ。

その他、操作性も素晴らしく、最低限のボタンしか使わないので3Dアクションが初めてのプレイヤーにも馴染める仕上がりになっている。ジャンプ(飛行)が制限式な為、縦横無尽に動き回る楽しさは弱いのだが、砂の中を進む時の手応えとレスポンスの良さは癖になる快感を覚えるほどの魅力がたっぷり。プレイヤーキャラクターの『旅ビト』のリアクションも地味に可愛いものになっているので、あれこれ動かしてみると変な快感を覚えるかもしれない。
オンラインの協力プレイもその制約の素晴らしさ故、二周目以降の再プレイ意欲を引き立てる魅力に富んでいるのが秀逸。さりげなく、トロフィー機能にも対応していて、ちょっとしたやり込みプレイが楽しめる作りになっているのも見所だ。
全体的には極めて高い完成度を誇る雰囲気ゲームであり、アクションゲームで、その分かり易いゲームルールから、ゲームが苦手なプレイヤーにまで幅広くお薦めできる内容となっている。ただ、ゲームとしての手応えはあるとは言え、基本的にはひたすら前へと進むだけの内容なので、奥深さを求めるプレイヤーには好みが分かれる作り。また、テキストを一切用いない表現技法にしても良い所ばかりではなく、チュートリアルで最小限の情報しか表示されない、操作方法をゲーム中に逐一確認できない難点もある。オンラインにしてもシングルとマルチの切り替えがゲーム中にはできず、ゲーム機本体のネットワーク設定で実施しなければならないというのも少し不親切に感じてしまうところだ。だが、どれも些細な欠点に過ぎず、それを覆い隠すほどの圧倒的なインパクトが今作にはある。
断言しよう。これこそプレイステーション3を持つユーザーなら必ず遊ぶべき傑作だ。好みの分かれる所もあるが、この唯一無二の体験は一度でも味わっておく価値がある。特に『ICO(イコ)』と『ワンダと巨像』が好きなプレイヤーは要プレイ。オマージュも満載なので、そこも併せてご堪能ください。お薦めの逸品です。
なお、2015年7月にはプレイステーション4版も配信されている。こちらではプレイステーション3版よりも更に美しいグラフィックと安定したフレームレートによる旅が楽しめるので、本体をお持ちの方は是非、お試しあれ。
≫トップに戻る≪