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  4. エルシャダイ - El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON -
≫エルシャダイ - El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON -
■発売元 イグニッション・エンターテインメント
■開発元 イグニッション・エンターテインメント東京スタジオ、ランカース、デザインウェーブ(音楽)
■ジャンル アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、セクシャル描写あり
■定価 7600円(税別)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 HDDの残り容量によって変化
■必要HDD容量 3896MB以上
■その他 Play Station Network対応、振動機能対応、トロフィー機能対応
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 10〜11時間(エンディング目的)、40〜50時間(完全攻略目的)
ヒトの言葉や思想が別れるよりもずっと昔、ヒトという種が始まった頃。
神はこの未熟な生き物の進む道を案じ、グリゴリ天使団に地上界の監視を命じた。

だが、監視に従事していたグリゴリの天使達は自由奔放で、生命力と感情に溢れるヒトの生活に惹かれ、憧れを強めて行った。そしてヒトと共に生きる事を渇望するあまり、ついに神の手を離れ、堕天という禁忌を犯してしまう。
この事態に天界の最高機関『エルダー評議会』は激怒。堕天使達と交わって進化の道を誤り、大いなる計画から逸脱してしまったヒトもろとも大きな洪水によって一掃してしまう計画を決定する。しかし、その計画に異議を唱えるものがいた。ヒトでありながらその清く強い心から、神の意志によって天界に召され、書記官を務める青年、イーノックである。

イーノックの嘆願により、ヒトを憐れんだエルダー評議会は彼が堕天使達を捕縛し、天界に幽閉する事を条件に洪水計画の執行を待つ約束をする。そして計画遂行を止めるべく、地上界に降り立ったイーノックは堕天に成功した7名の堕天使の一人、アザゼルに降伏を促す。しかし、アザゼルはそれを拒み、自分達を探さぬよう警告して他の堕天使達同様、地上界の何処かに姿を隠してしまうのだった…。

こうして始まるイーノックの長い旅。果たして、その行く末に待つものとは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆移動パートと戦闘パートの二つを交互に繰り返しながら展開していく、少しベルトスクロール型アクションチックで取っ付き易さに秀でたゲームデザイン
◆ビジュアル面を重視するコンセプトを反映させた、少ない画面情報の数々(体力を主人公の服装の状態で示すなど、徹底してゲームっぽい部分を廃したデザインが成されている)
◆三竦みの関係を踏まえて武器を使い分け、時には武器自体を守る立ち回りも要求されてくる、独自の戦術性と分かり易い作りが光る戦闘システム
◆救済措置と見せかけて、使い続けるなりのデメリットもしっかり示した復活システム
◆システムの特性と無謀な力押しを廃した、丁寧な調整芸が光るゲームバランス
◆適切なボタン配置と軽快なレスポンスを特色とした良好な操作性
◆もはや絵画そのものな、独特過ぎるグラフィック(特に背景全般)
◆そのグラフィックによって描かれた、摩訶不思議で何でもありなロケーション(特に可愛らしいキャラクターが登場するエリア、チャプター6全般は必見!)
◆本編はやや短めながらも、トロフィー集めにスコアアタックが解禁される二周目、イラスト集めなど、それなりに充実したボリューム(&やり込み要素)
◆幻想的且つ、壮大な雰囲気に満ち溢れた印象深い音楽(特にメインテーマ、サリエル戦が秀逸)
◆ルシフェル役の竹内良太氏を始め、キャラクターに見事なまでにハマった声優陣とその演技
◆よく言えば、アクションゲームのテンポの良さに特化した本編の構成

--- Bad Point ---
◆説明不足が多過ぎて全く頭に入ってこないストーリー展開(とにかく時間が飛びまくるので、どうしてそんな事になったのかの理解が追い付かない)
◆それらの展開の末に辿り着く、壊滅的なエンディング(はっきり言って、打ち切り同然)
◆仕掛けに乏しく、ほとんどジャンプアクションに徹する作りになっている平坦過ぎる移動パート
◆移動と敵との戦闘が全体の7〜8割を占める単調過ぎる本編構成&レベルデザイン
◆途中、敵は出てくるが、基本的に仕掛けも何も無い移動パートを延々と歩き続けるだけの退屈過ぎるイベントシーン(歩き続けないとストーリーが進まないので余計にダルい)
◆足場と着地点が分かり難いなど、独特なグラフィックがアダとなっている描写の存在
◆作りは面白いが、中盤以降に戦術面での限界が生じて単調になってくる戦闘システム
◆メニュー画面全般におけるキーレスポンスの鈍さ(何故か異様に”もっさり”としている)
◆登場キャラクター、ナンナの不可解なキャスティング(二人の声優の内、加藤英美里氏が喋る場面が全くと言って良いほど無い。一体、何の為に起用したのか…?)
▼Review ≪Last Update : 11/8/2015≫
そんなに平坦で大丈夫か。

大丈夫じゃない、問題だ。


イギリスに本社を置くゲーム会社、イグニッション・エンターテインメントの東京スタジオ開発による完全新作のアクションゲーム。かつて『大神』、『デビルメイクライ』等に携わった元カプコンスタッフによって制作された作品でもある。また、開発協力として『影之伝説 THE LEGEND OF KAGE 2(NDS)』等で知られるランカースが参加している。

素晴らしい素材の扱い方を見事に誤った、稀代のガッカリアクションゲームだ。

ゲーム内容はストーリーに沿って進行する、3Dアクションゲーム。主人公のイーノックを操作し、地上界の様々フィールドを駆け巡りながら魔物達と戦い、禁忌を犯した堕天使7名の捕縛を目指すというものだ。本編は一本道で進行。他のゲームで例えるならば『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズに比較的近いものになっている。ただ、ストーリーはチャプター単位で分けられており、明確な区切りが設けられている点では少し異なる。また、各チャプターは移動フィールドとバトルフィールドの二つを交互に繰り返しながら展開。その詳細は文字通りなので解説は省略するが、移動フィールドでは雑魚敵との戦闘は一切発生しないなど、何処となく『ファイナルファイト』等のベルトスクロール型アクションゲームを意識した構成になっている。更に『ゴッド・オブ・ウォー』と同様にカメラ操作は一切無しの固定カメラ方式であり、演出に特化した作りになっているのも特色の一つ。それをより際立たせる狙いでか、画面情報にしても今作は徹底的に廃しており、体力ゲージと言ったものは一切表示されない。一応、本編をクリアした後、体力ゲージ等の情報を表示するオプションが解禁されるが、無くても十分に成立するよう徹底して無駄を廃すなど、その作りは何処となく『ICO』っぽい。そんな具合にビジュアル面重視のゲームデザインが成されており、アートとして製作した事が顕著に現れた仕上がりになっている。
ただ、ちゃんとアクションゲームとしても独特のシステムを実装した作り込みが成されている。それが三種類の武器と強奪の二つ。攻撃周りはベルトスクロール型アクションゲームを意識しているというだけあって、パンチとキックの格闘攻撃を主体としているのだが、敵をダウンさせる事によって所持している武器を奪えるシステムが実装されており、それを装備する事により、武器に応じたアクションが繰り出せるようになっている。三種類の武器の詳細は下記の通り。

■アーチ
刀剣武器。斬撃を主体とした攻撃が可能になる。

■ガーレ
射撃武器。背部に円形のオプションが展開され、射撃攻撃ができるようになる。
また、R1ボタン+×ボタンの組み合わせで高速ダッシュが可能になる。

■ベイル
拳闘武器。いわば通常の格闘攻撃の威力を更に高める装備、と言った趣。

なお、武器の装備は敵から奪うと同時に自動的に行われる。更に、武器は基本的に一つしか装備できない。なので、切り替えるに当たってはその武器を捨てる形で別の武器を持つ敵をダウンさせ、強奪しなければならない。三種類の武器を使いこなすというだけあって、少し複雑そうな雰囲気もあるが、実際はかなりシンプル。直感的にプレイできる事と分かり易さを重視した設計となっている。
また、武器にはもう一つ、「アーチ→ベイル→ガーレ→アーチ」の三すくみの関係があり、相対する武器で所持する敵を攻撃する事で、倍のダメージを与えられるようになる。逆の場合はこちらが大きなダメージを受ける。なので、戦闘では相手が持つ武器に合わせて違う武器を強奪・装備し、優位に立つ事を意識しながら戦っていく事が求められてくる。更に武器ではもう一つ、長く使っていると『穢れ』が溜まっていくようになっている。これが溜まると武器が赤に変色し、攻撃力と防御力が低下。それ以上使い続けると、最終的に壊れてしまうのである。これを防ぐ手段として『浄化』というアクションがある。やり方は簡単で、L1ボタンを長押しするだけ。敵から奪った武器の大半はこの『穢れ』が溜まっているので、一旦、『浄化』を行って通常状態に戻すのが基本となる。だが、浄化を行う間にイーノック自身は隙だらけになる。なので、変に敵が複数いる状況下で、タイミングを弁えずに浄化を行えば集中砲火を浴びる痛い目を見る事に。故に如何に被害が少なく済むタイミングに合わせるかと言った判断も求められてくる。そんな身を危険に晒す必要も出てきたりと、武器の切り替え以外でも戦術が試される要素を実装。意外と頭を使う場面が頻繁に挿入される作りになっているのだ。しかしながら、『浄化』を行えば絶対に武器が壊れない訳でも非ず。ボス戦とかでは相手が一撃で武器を破壊する攻撃を展開してきたりするので、浄化が一瞬で無に帰したりする。なので、武器を守る為に適切に立ち回る事も結構重要。その辺はまさにアクションゲームと言ったところ。攻防の駆け引きにしてもしっかりと織り込まれたものになっている。
アクションはこれだけに限らず。ある程度、ゲームを進めると『オーバーブースト』なる技が解禁。敵にダメージを与えたりダメージを受けるなどしてイーノックの闘志が一定以上に達すると、ウリエルの力を借りて攻撃力を上げ、なおかつウリエルの炎によって自動で追加攻撃を行えるようになる。加えてもう一つ、『緊急復帰』なるものもある。今作の体力はイーノックの鎧の状態で示され、これが完全に破壊された状況下で必要以上にダメージを喰らうとゲームオーバーとなる。だが、ゲームオーバーになるまでの間、イーノックが完全に倒れるまでにスローモーションの専用デモが挿入され、それが暗転するまでの内にボタンを連打する事によって、「大丈夫だ、問題ない」の決め台詞と共に体力を少し回復した状態でその場に復帰する事ができるのだ。ある意味、高速リトライとも言える機能である。なので、仮に鎧が無い状態で倒されたとしても全然オッケー…な訳が無く。基本的にやられればやられるほどにデモの暗転時間が速まっていき、最終的には連打した所で手遅れなまでになってしまうのである。故にイタズラなゴリ押しは不可能。現実は非情である。そう便利な機能なりのデメリットも万全。そこもまた、アクションゲームとしての意義を示すかのような作りになっている。
基本的な設計の面で見れば、『ゴッド・オブ・ウォー』等の同タイプの3Dアクションゲームを髣髴とさせる作りで、人によってはデジャヴを覚える。しかし、画面情報を極力排したシンプルな構成に三すくみの関係を考慮した立ち回りが要求される戦闘と武器の仕様など、独特の要素や工夫が凝らされており、似ているけどそうではない、明確な差別化が図られた内容になっている。同タイプとして例に挙げた作品のように、出血や四肢断裂と言った残酷な描写も皆無。男臭いところはどっちもどっちだったりするが、12歳以上対象なりに絵的に刺激は強くなく、万人に受け易い(?)作りになっているのも特色の一つと言えるだろう。まさにの固定カメラ方式の3Dアクションゲームから過激な描写を完全に取り除いたかのような作品。手応えこそ例に挙げた作品と似てはいるが、独自の個性が炸裂した内容に仕上げられている。

そんな今作の売りは、他に類を見ない個性を持ったビジュアル。今作の舞台となる地上界は人間が住む世界という設定ではあるのだが、その雰囲気たるや絵画そのもの。一種の芸術と言っても過言では無いビジュアルになっており、文字通りに不思議な世界を舞台にした冒険が繰り広げられるようになっている。
そのビジュアルパターンにしても多彩。リアル志向のキャラクターデザインと良い意味でマッチしない、摩訶不思議で神秘的な地形が続々と登場し、プレイヤーを圧倒させる。更に時には元のキャラクターデザインを完全に無視した、可愛らしいキャラクター達が多数登場するエリアがあったり、更にぶっ飛んだものでは、それまでのビジュアルから180度真逆の作風で構築されたエリアが登場したりと、所々でプレイヤーを盛大に裏切ってくる。そんな摩訶不思議で奇天烈、時には何でもお構いなしの舞台が連続していくだけあって、単にその景色を見ているだけでも楽しい。そして、バリエーションが豊かであるが故に次にどんな背景が見れるのか、自然とコントローラが手放せなくなってしまう魅力にも満ちており、プレイヤーの好奇心をこれでもかと言わんばかりに刺激する仕上がりになっているのだ。
特に数ある背景の中でも、チャプター6のフィールドは今作屈指にして、爆笑必至の見所だ。一体、どんな背景になっているのかは実際にプレイしてからのお楽しみという事で伏せるが、実際に見れば誰もが「急にゲームが変わり過ぎだ!」と突っ込みたくなること請け合い。演出、フィールドの構成も非常に凝ったものになっており、元のアクションゲームを良い意味で無視した展開が展開するほか、敵キャラクターにしてもぶっ飛びまくりなので、その方面でも要チェックだ。
と、今作の魅力についてはそこまで。残念ながら、あとは良い所以上に欠点の方が際立つ仕上がりになってしまっている。その欠点というのが道中。これがまた恐ろしく平坦。主に移動フィールドだが、ほとんどがジャンプアクションに留めたエリアばかりと、非常に味気ないものになってしまっている。先に紹介した作風が180度変わるエリア、ボス戦等、凝った作りのフィールドやイベントも用意されてはいるのだが、全体の7〜8割はそのジャンプアクションと敵との戦闘の繰り返し。ビジュアルに関心が湧かないプレイヤーであれば、中盤から確実に飽きる作りになってしまっているのだ。
しかも、本編では強制的に長々しい移動フィールドを走り続けなければならない場面が何度か挟まる。これがまた苦痛の極みで、ひたすらに長い道をイベントが終わるまで歩き続けるだけ。とんでもなく退屈で、ゲーム性の欠片も無いシーンを嫌でもやる羽目になるのである。一応、道中に敵が出てくるようにもなっているのだが、基本的に一対一の戦闘が続くだけの上、直に決着してしまうので面白さなんて皆無。加えて、その間に描かれるストーリーも唐突な展開ばかりなので、理解が追い付かない。酷いものでは強制イベントとして走る事も攻撃アクションも行えず、ひたすら歩いて前へ前へと進むしかない場面まである始末だ。本当、これの何が面白いのか?何が面白くてこんなのを入れ込んだのか。その全てが意味不明で、実際に面白くもなんともない場面が登場して、プレイヤーに凄まじい眠気と飽きを誘発するのである。
まさにビジュアルを重視し過ぎた事の弊害と言うべきか。あえて謎解き要素等のギミックを避け、シンプルにアクションを楽しめるように…というコンセプトがあったのかもしれないが、それにしたってこの単調さと変わり映えの無さ、退屈さはアクションゲームとしては落第点レベルとしか言い様がない。もう少し、起伏を付けられなかったのか。変則的に動く足場、簡単に倒せる雑魚敵、アイテムを配置するなりして単調さを緩和できなかったのか。この絶望的なまでに工夫されていない仕上がりは、派手な背景とそのバリエーションさえあれば、シンプルなアクションでもプレイヤーは飽きたりしないだろうという製作者の過信が現れた結果と言ってもいいだろう。それほどまでに壮酷い有様になってしまっている。
また、移動と戦闘が露骨に明示されたフィールド構成も先が読め過ぎて返って萎える。明らかに広いフィールドが見えてきて、そこで戦闘があるのだな…と思って到達したら、案の定戦闘が起きたりと、バレバレ過ぎて刺激に欠ける。逆に言うなら分かり易いからこそ、事前準備がし易いメリットがある。だが、どんな展開が待っているのか読め易くしてしまったのは、アクションゲームとしては盛り上がりを欠けさせる愚策だと言わざるを得ない。一応、緩急を付ける狙いでか、エリアによっては堕天使達との一時的な戦闘が発生したりする。しかし、基本的に短時間の内に決着が着く上、相手の攻撃パターンも分かり易く、回避し易いので面白いか…というと、そうは言い難い出来だからどうしようもない。
その他、個性的なビジュアルがアダとなっている所も幾つか。横スクロールステージで、足場の下を流れる雲の上に乗る事ができるのに、それがパッと見では分かり難かったり、足場なのか穴なのかの見分けが付け難かったりなど、凝った結果、変に難易度を高める方向に作用してしまっているのには苦笑いするしかない。逆に3Dフィールドはそれなりに分かり易く作られてはいる。だが、それでもジャンプアクションが展開される場面では着地点がパッと見、見分け難いなど、詰めの甘さが出ている始末である。
まさに典型的なビジュアル重視の姿勢が混在した惨状と言える。せめてもの救いとして、ボス戦は緊迫感のある内容に作られていて、手に汗握る戦いが楽しめる。戦闘自体にもユニークなアイディアが炸裂していたりと、元カプコンのスタッフが手掛けているだけにある個性が現れていて見事だ。だが、平坦さをフォローするには至っておらず、結果的にビジュアルを過信した災いが如実に現れた作りに落ち着いてしまっている。地形やギミック、戦闘をより起伏がある構成に仕立て上げられていれば、プレイヤーにも強い印象を残すゲームに成り得てただろうに、その作り込みを怠ったのは度し難いの一言に尽きる。最低限、謎解きを盛り込むのも一興だったのではないだろうか。戦闘にしても、三つの武器を同時に使いこなす法則性から外れた敵を設ける等、変化を付ける余地はあったはずだ。そうしたゲーム側を魅力的なものにしようとする工夫の無さで、結果的にビジュアル重視ゲーに収束している実態。この有様だけでも、何故、冒頭で平坦さバリバリと言ったのも納得できるだろう。そうも今作は厳し過ぎる出来になってしまっているのだ。

しかも、これだけビジュアル重視で作られながら、ストーリーの出来も良くない。ハッキリ言って、意味不明。最初のチャプターで一気に300年もの時が経過してしまっていたり、少しネタバレになってしまうが、とある重要そうなキャラクターがいつの間にかに倒されてしまっているなど、不明瞭な描写が盛り沢山で理解が追い付かない。挙句、終盤になると伏線放棄としか言い様がない投げた場面が増え、ますます内容が分からなくなる。そんな展開の末に辿り着くエンディングも壊滅的で、特にラスボス戦が終わった後の展開には誰もが呆然としてしまうだろう。なので、最後までやり切っても達成感はまるでない。発売前の個性的なトレイラー、ルシフェルを始めとするキャラクターの印象的な掛け合いを完全に裏切る仕上がりになってしまっているのだ。故に変に期待すれば、とんでもない裏切りに遭う。アクションゲームとしてダメならストーリー目的で行くしか…と、その希望すらない。一応、ルシフェルを始め、キャラクター周りは面白く出来上がっているのだが、それが見事に活かされていない。完全に製作者の頭の中だけで完結してしまっている自己欲の現れた作りには、猛烈な嫌悪感を覚えるばかりである。
また、ストーリーにちなんだ所では先の歩く以外の行動を封じる強制イベントが多々あるのも致命的である。当然、カット不可。アクション本編を楽しみたい方に極端なストレスを与えている点でも、本当に救いようがないの一言に尽きる。
逆に演出周りの出来は素晴らしい。中でも音楽はかなり気合の入った仕上がりで、神秘的という言葉がよく似合う、清楚な雰囲気漂う楽曲が豊富に収録されている。特にボス戦を始めとする戦闘関連の曲の出来はピカイチで、サリエルとの戦いで流れる曲は作曲担当者の本気が炸裂した仕上がりになっているので要チェックである。
音にちなんだ所ではボイス周りも秀逸で、ルシフェルを演じる竹内良太氏はハマり過ぎの一言。これだけでも、今作の存在意義はあると言っても過言では無い。また主人公のイーノックに三木眞一郎、堕天使に森山周一郎、此島愛子、中尾隆聖と、他のキャスト陣もインパクト十分。洋画の吹き替えを多数こなしているベテランの底力が発揮されている。ただ、一部不可解なキャスティングも。序盤の終わりから登場するナンナという少女キャラクターがそれで、このキャラの声は二人の声優(加藤英美里、名嘉祐佳)が担当している。しかし片方の声優、加藤氏は本当に担当しているのか?…と思ってしまう位に存在感が無い。完全にもう片方が主導権を握る格好になっている。本当に声を担当していたのか…?

その他、操作性に関しては特に難点は無い。メニュー周りのレスポンスがややもたつく程度。アクション周りは非常に軽快且つ、サクサクと動く仕上がりになっており、アクションゲームとしての基礎中の基礎は厳守されている。ボリュームは短過ぎず長過ぎず。単調な移動パートが半数を占める本編の構成を考えれば、これぐらいで丁度よい。これ以上、増えていたりでもしたら、余計に持たれ易いゲームになっていた可能性がある。やり込み要素も難易度別攻略と二周目以降のスコアアタック&高ランクチャレンジ、トロフィー集めなど、そこそこ充実しており、極めようとなればワリと長いこと遊べる。ゲームバランスもこれと言って破綻したところは無く、戦闘にせよ、フィールドのアクションにせよ、ゴリ押しが通用する場面は皆無なほか、ボス戦や戦闘にしても適切な行動と武器の取捨選択を心掛ければ難なくクリア可能な難易度。最高難易度においてもそのスタンスが確立されている。この辺は、かつてカプコンでハードコアなアクションゲームを手掛けたスタッフが作っている意地の現れ、と言ったところだ。
そんな具合に基本部分の出来は悪くないのだが…肝心の中身はもはや語るまでも無く。ビジュアル面の出来は文句の付け所がないのだが、アクションゲームとしては平均以下な出来になってしまっている。ストーリー的にも投げっぱなしな部分が見受けられるなど、一つの筋の通ったストーリーを楽しみたい気持ちで挑むと酷いしっぺ返しに遭うなど、散々な箇所が目立つ今作。まさに素材の活かし方を誤った凡作である。正直、お薦めできるものではない。少なくとも、純粋にアクションゲームを求めるユーザーは間違っても手を出してはいけない。どちらかと言うと、ちょっとビジュアルの個性の強いアクションゲームを遊んでみたいというプレイヤー向けだ。正直、そんなユーザー、居ても少数だと思われるが…。
本当、発売前の注目度は非常に高かった今作。しかして実態は、「こんなビジュアル重視で大丈夫か?」「大丈夫じゃない、問題だ」。どうしてこうなってしまったのか。
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