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≫EAT LEAD(イートレッド) マットハザードの逆襲
■発売元 ディースリー・パブリッシャー
■開発元 ヴィシャスサイクルソフトウェア
■ジャンル コメディサード・パーソン・シューティング
■CERO C(15歳以上対象) ※暴力、殺傷描写あり
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 458KB以上
■その他 振動機能対応、トロフィー機能対応
■総説明書ページ数 15ページ
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、20〜22時間(完全攻略目的)
かつてゲーム業界一の大人気ヒーローとして、その名を轟かせていた男、マット・ハザード。
彼は90年代始めにマラソンソフト社として契約した後に誕生した『マットハザード3D』を始め、数多くのキラータイトルを輩出し、トップスターとしての不動の地位を得た。

だが、未知の分野に挑戦したいと会社に提案したのが運の尽き。その出演作『マットカート』が超地雷的クソゲーとして世間に評価されてしまい、会社の株価が大暴落。次の『ファミリー向け三人称水鉄砲シューティング』も失敗し、急激にスターとしての人気は衰えてしまった。

そして今や、完全に「あの人は今」的な存在になってしまったマット。そんな中、マラソンソフトがウォレス・ウォーリー・ウェルズリー三世なる男に買い取られ、マラソンメガソフト社へと新生する。更にウォレスは、次世代シューティング第一弾の主役としてマットを指名した。
10年ぶりの主演作に心が躍るマット。
だが、これはマットの扱いに困ったマラソンメガソフト社が、彼を抹殺する為に仕組んだ罠だったのだ…。そんな事も知らずに新作に出演するマット。果たして彼の命運や如何に!?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆課せられた目的達成を淡々とこなしていく、TPSの王道に則った取っ付き易いゲームシステム
◆ゲームの世界という設定を活かしまくったハチャメチャなステージロケーション
◆効果の仰々しさが異彩を放つ、危機的状況打開の為の強化攻撃『アップグレード』
◆かつて一世を風靡したゲームスターがゲーム会社の陰謀に巻き込まれるという無茶苦茶な設定、危険な台詞の数々が異彩を放つストーリー
◆随所に盛り込まれた、危な過ぎるネタ要素の数々(特に他社のゲームネタ)
◆主人公のマットをサポートしたり、時には敵として立ちはばかるネタだらけの登場キャラクター達
◆主人公マットの個性とストーリーのおかしさを際立たせる、『24 -TWENTY FOUR-』のジャック・バウアー役などで知られる声優・小山力也氏による演技
◆通常の銃火器からレーザー銃、更には水鉄砲(!)まで、突っ込みどころ満載の武器の数々
◆盛り沢山でハチャメチャな敵キャラクター達(2Dの平面で描かれたキャラクターまで出てくる!)
◆敵キャラクター達の酷くて素敵な断末魔(松●優作の名台詞を吐いたりなどなど…)
◆簡単に5割越えを狙える低難易度もさることながら、説明文がネタまみれのトロフィー
◆TPSとしては平均的な丁度いい長さでまとめられた総計ボリューム(やり込みもそこそこ)
◆主人公マットの愚痴と合わせて展開する、妙にユニークなチュートリアル
◆各レベルでの銃撃戦を大いに盛り上げる、名曲揃いで臨場感満点の音楽
◆ゲーム世界が舞台という設定ならではの電子的なエフェクトが印象的な演出周り

--- Bad Point ---
◆移動の遅さと微かなモッサリ感による手応えの悪さがタマにキズな操作性
◆やや冗長気味な感のある各レベルのボリューム(また銃撃戦主体な為に単調になりがち)
◆基本的に銃撃と格闘主体で、できる事が少ないプレイヤーアクション
◆耐久力が高くて固過ぎる敵キャラクター達(ヘッドショットを積極的に狙っていかないと直に倒す事はできない)
◆敵の固さの所為で、消耗が早過ぎる武器の弾薬(詰みは起きない調整にされてるが…)
◆敵の一人、ガールズの面倒臭過ぎる倒し方(銃で怯ませてから殴らないといけないのはきつい)
◆音を察知して攻撃を回避しなければならない上、それを一発でも喰らえば即死というのが厳し過ぎる怪物との戦闘
◆悪く言ってしまえば、やり応えはいまひとつなトロフィー集め
◆冗長な上に油断すれば即死という構成が厳し過ぎる最終ボス戦
▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
「お待たせ!ハザード・タイ…」

あえてキャンセル。


『SIMPLE』シリーズの発売元として知られるディースリー・パブリッシャーの子会社で、アメリカのノースカロライナ州に拠点を置く『ヴィシャスサイクルソフトウェア』が開発した、完全新作のサード・パーソン・シューティングゲーム。日本語版の脚本は『マルドゥック・スクランブル』、『蒼穹のファフナー』などで知られる小説家兼脚本家の冲方丁氏が手掛けた。

基本は平凡なサード・パーソン・シューティング。
その実態はバカゲーという、両極端な作風が特徴の迷作だ。

ゲーム内容は三人称の3D視点で展開するサード・パーソン・シューター(TPS)。主人公のマット・ハザードを操作し、銃撃戦や強敵との一騎打ちを乗り越えていくというものである。本編はレベル単位で分けられたシナリオを攻略していく、一本道のキャンペーン方式に則って展開。最終的にレベル終盤で待ち構えるボスを倒すとレベルクリアになり、次のレベルに進む仕組みとなっている。各レベルは基本、要所要所で課せられる目標(ミッション)を攻略していく形で進行。TPSなどではお馴染みの構成となっている。但し、肝心の目標の内容に関しては『敵の全滅』がほとんどで、昨今のTPSと比較するとかなり平坦。一応、途中で格闘戦が挟まれたり、護衛ミッションが始まったりと言った変化を付ける工夫は成されている。しかし、基本的には8〜9割が全滅メインの銃撃戦で、それらのミッションが挟まれる機会自体は少ない。ある意味、TPSの王道に忠実とも言えるが、悪く言ってしまえば前時代的としか言い様のない構成。戦闘特化型の今時珍しい内容にまとめられている。
それは本編に限らず、システム周りに関しても同様。一応、遮蔽物の陰に隠れ、敵を迎撃する『カバーアクション』、近接時限定の格闘攻撃など、TPSではお約束のアクションは普通に用意されている。遮蔽物に照準を合わせ、ボタンを押すと自動的にダッシュで照準を合わせた場所まで移動し、物陰に隠れてくれるサポート機能も実装されている。
だが、それでも全体的な作りは前時代的。正直言って、古臭い。特にアクションの少なさにそれが顕著に現れており、遮蔽物の影に隠れる事はできてもそれ以外の場所ではしゃがめなかったり、ダッシュはできても前転による高速移動はできないなど、とにかくできる事に限りが多い。この為、戦闘での行動も完全にパターン化する。遮蔽物に隠れて敵を迎撃し、時には接近して格闘攻撃を仕掛ける…のやり方で、大半の戦闘が乗り越えられてしまうのである。無論、中にはこのやり方が全く通用しない特殊な敵も登場するが、基本はこの繰り返し。TPSとしては王道に忠実過ぎる上、特徴に欠けると言わざるを得ないものになっている。ただ、動きが限られているからこそ、個々の操作が覚え易いというメリットがあるのも事実。その意味では、TPS初心者には優しい作りと言っても良い。だが、昨今の流行から見ると、かなりの物足りなさがあるのは否めず。「もう少し動きがあっても」と、様々なTPSをプレイしてきた方にとっては新鮮味が薄く、できる事の少なさにもどかしさすら覚える、何とも言い難い平凡さが漂う作りになっている。
ただ、アクション周りはそんな感じでも、攻撃周りは意外と多彩。炎、氷の属性を付加した特殊な銃撃『アップグレード』、道中に落ちているアイテムを拾うことで一定時間攻撃力が倍増する『マキシマムハザード』、同じくアイテムを拾う事であらゆる攻撃を無効化させる『マスターシールド』など、あまり他のTPSでは見られないぶっ飛んだ技の数々が用意されている。特に『アップグレード』は、戦況を一変させる逆転要素として上手く仕上がっているほか、これを使うと敵を早急に始末できるなど、TPS初心者に対する救済処置としても機能している。属性が二つだけなのは少し華に欠けるが、その効果は面白く、氷の属性では一瞬で敵が氷の塊となり、連続ダメージの末にそのまま横にバタリと格好悪く倒れてしまうなど、見た目だけでも結構楽しませてくれる。一時的に能力が上がるマキシマムハザード、マスターシールドも発動中は無茶な攻撃で敵を翻弄できるようになるのが実に爽快。発動時におけるボイスによる演出も珍妙で、プレイヤーの笑いを誘うものに仕上がっているのが見事だ。
そう攻撃周りのアクションは多彩で新鮮味と独自性に満ち溢れている一方、TPSとしては平凡の一言に集約される程度の出来具合。何とも両極端な作風となっている。
先の繰り返しになるが、システム周りはこれと言った特徴に欠けている為、TPS経験者にとって今作はかなりの物足りなさを覚える内容だ。今時、当たり前の要素がほとんどない事には、人によっては戸惑いすら覚えるかもしれない。
だが、今作にはそんなTPSとしての平凡さをカバーする魅力的な売りが存在する。

それこそがシナリオである。上記、ストーリー紹介の欄でも述べているが、今作の主人公マット・ハザードは、かつてゲーム業界で圧倒的な人気を博したゲームキャラクターという設定になっている。いわゆるデジタルデータで、生身の人間ではない。TPSとしては非常に珍しいタイプの主人公だ。彼はデビュー作となった作品で数千万本以上のセールスを記録し、以降、スターの道を進んでいた。しかし、ある時に別ジャンルへの挑戦をテーマに出演した作品が前代未聞の地雷的クソゲーとして罵倒され、それに伴い人気は急激に低下。その後に出演した作品も人気に恵まれず、今では「あの人は今!?」で特集されても不思議じゃない程度のゲームスターに落ちぶれてしまっていた。そんなマットにかつて、自らが出演したゲームを製作した会社『マラソンソフト』改め『マラソンメガソフト』から新作タイトルへの出演オファーが出され、久々に主人公として表舞台に立つのだが、実はそれはマットを消し去ろうとする会社の最高経営責任者の罠だった…というのが冒頭のあらすじである。これだけでもツッコミどころ満載な内容であるのは言うまでもないだろう。落ち目のゲームスターが架空のゲーム世界で生き残りをかけた熾烈な戦いに巻き込まれていく。一体、どんな頭をしていたらそんな設定が思いつくのかと言いたくなるほど、珍妙なストーリーになっている。
このようなゲームをテーマにした世界観という事で、それにまつわるネタも本編では多数登場。それも、かなりギリギリなモノばかりとなっている。例えば、ゲームスタート時のオープニングでマットが出演した作品の経歴が語られるのだが、その出演した作品というのが何処かで聞いた覚えのあるタイトルばかり。『マットハザード3D』、『スーパーマットランド』、『ダイオハザード』、『マットカート』、『マットハザードは二度死ぬ』などなど、かつて世界中で実際にヒットした著名タイトルの数々のパロディとなっている。しかもこの内、『マットカート』は先ほどに触れた地雷的クソゲーとして、マットの人気が落ちるきっかけになったタイトルとして紹介されている。ある意味、任●堂に喧嘩を売っている。
更に本編では、任●堂の看板キャラクターであるマ●オがマットの友人として登場する。無論、本人ではないが、オーバーオールの服装に個性的なジャンプ音、緑色の土管、奥さんが何処かの国のお姫様など、「ちょっと待て」と言いたくなるぐらいに設定がそのまんま。色んな意味で大丈夫かと言いたくなるぐらいにスレスレにやっている。また、マ●オだけではない。あるレベルでは『フ●イナルファ●タジーVII』のク●ウドのようなキャラクターがマットの敵として登場。召喚魔法にメ●オ、クレイモアによる斬撃で襲い掛かってくる。更にもう一つ、別のレベルでは世界的に大ヒットしたFPS『H●LO』のマ●ター・●ーフならぬ、マスター・シェフなるキャラクターもマットの友人として登場し、『ギ●ーズ・●ブ・ウ●ー』な服装をした敵達と戦いを後方からサポートしてくれる。更に更に、別のレベルではカ●コンの『バ●オハザード』と●ガの『ハ●ス・オ●・ザ・●ッド』を織り交ぜたゾンビ軍団も登場し、また別のレベルでは『メ●ルギアソ●ッド』な敵兵、『ゴー●デンアイ0●7』をベースとしたロシア兵、『D●OM』な2Dドット兵まで登場したりともうハチャメチャ。やり過ぎだろと言わんばかりに露骨なネタが仕込まれている。こんなネタだらけ、更に統一性も皆無な世界観なだけにストーリー、ゲーム本編の展開はカオスの極み。TPSとしてのリアリティの欠片も無い前代未聞の銃撃戦が画面いっぱいに繰り広げられる。
逆に言うと、このハチャメチャさがTPSとしての平凡さをカバーしていて、銃撃戦主体の本編を大いに盛り上げてくれる。特に敵の面子にこの設定が上手く活かされており、ゾンビ軍団はヘッドショットを狙わないと簡単に倒せない、2Dドット兵は何紙っぺらの如くに攻撃を回避する技を持っているなど、戦闘に起伏を付ける要素として見事に機能している。また、この無茶苦茶さはロケーションの面でも上手く活かされている。普通の豪邸がゾンビが徘徊する場所になったり、クルーズ船が幽霊船に変化したりなど、ゲームの世界が舞台だからこそできる大胆な演出と地形の変化はプレイヤーを飽きさせない。変化と同時に敵の面子が変化、混成部隊になるなどの展開も盛り沢山で、単調な銃撃戦に華を添える要素として活かされているのも見事。敵を倒した時の断末魔も個性的。普通の悲鳴はさることながら、中には「あべしーっ!」、「ペレストロイカー!」、「(●田優作風に)ぬわんじゃあこりゃあ!」、「ヴァンダボー!」と言った意味不明の断末魔を吐いて倒れる敵もいたりとこれまたハチャメチャ。ネタだらけの設定が適度に活かされている。まさにジェットコースター的なレベルデザイン。このような作り込みが成されているのもあり、不思議と本編をグイグイ進めていきたくなる面白さがある。
それでもTPSとしての平凡さは払拭できてなく、敵の種類と演出で変化を付けているとは言え、単調に感じる部分があるのも否めない。一部のレベルで、冗長な展開があり、もう少し短くまとめられなかったのかと感じる点もある。しかし、シナリオが優れているのもあり、それがプレイヤーを引っ張ってくれる。
変化に富んだレベルデザインでプレイヤーを楽しませる手法が多いTPSで、今作のようなシナリオで引っ張るタイプは結構珍しい。ネタ抜きでもシナリオ自体は面白く、個性豊かなキャラクター達の珍妙な掛け合いで楽しませてくれる。TPSとしては主役のゲーム部分が霞んでる為、出来自体は際どいものがあるが、それをカバーする強烈な売りの存在は非常に大きい。まさにネタで楽しむ作品と言ったところ。ちょっと珍しいTPSになっているのだ。

裏を返せば、ネタ以外のゲーム部分の出来はあと一歩なクオリティであったりする。
第一に操作性だが、全体的に挙動が重く、触り心地が宜しくない。ボタン配置自体は悪くないのだが、微かな鈍さともっさり感で落としてしまっている。難易度設定も三種類の難易度が用意されているのだが、全体的に少し雑。特に雑魚敵の固さは難ありで、何十発も撃ち込まないと倒せない為、常にヘッドショットを狙って攻撃していかなければならないのが辛い。また、ボス戦も初見殺しな面子がいるのが難点。一応、チェックポイントが豊富なのでリトライの敷居は低いが、もう少し敵は柔らかくするなり、調整をして頂きたかったところだ。ネタを売りにするゲームで、この調整はちょっと褒められない。
ボリュームに関しては並。平均10〜12時間ぐらいでエンディングに到達できる、短過ぎず長過ぎずの丁度良い量になっている。やり込みもトロフィー集め、難易度制覇などを用意。ただ、トロフィーは入手難易度が異様に低く、高難易度で挑めばほとんど全てのものが集まってしまうのは拍子抜け。やり込みを求める方には物足りなさを覚えるかもしれない。
グラフィックも近年のHD機向けのゲームとしては並レベルで、可もなく不可もなくな出来栄え。対し、音楽は非常に完成度が高く、印象深い楽曲が盛り沢山。各レベルでの銃撃戦を大いに盛り上げてくれる。特にマットハザードのメインテーマ、ロシア兵、水鉄砲戦隊との戦闘において流れる三曲はいずれも必聴の価値ありだ。

また、演出周りはエフェクト、ボイス、デモシーンに至るまでおバカなノリが全開で、見るだけでも楽しいものに仕上げられている。特にボイスは主人公のマット役にかの海外ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のジャック・バウワーの吹き替え、『名探偵コナン』の毛利小五郎役(二代目)でお馴染みの声優兼俳優の小山力也氏を起用しているというだけでも笑える。本編では氏の名演によるボヤキも多数収録されているので、ファンなら要チェックだ。
TPSとしての出来は平凡で、アクションの少なさや操作性の地味な悪さなどが尾を引く作りになってしまっている。しかし、それをカバーするシナリオの出来が非常に素晴らしく、他に類を見ないハチャメチャな世界観と演出で楽しませてくれる内容に仕上げられている。ある意味、TPSとしては売りとする部分を履き違えている感じも否めないが、それ故の唯一無二の魅力と味わいに富んだ今作。
古臭い作りな上、バランスも少し雑なのでTPS初心者、経験者にはあまりお薦めできないが、何かおバカなノリのゲームをプレイしたいという方なら是非、体験してみて欲しい珍作だ。伝説のゲームスターによる、無茶苦茶過ぎる復活劇をその目に刻め!なお、露骨なパロディの数々は大人の目で楽しむようにしましょう。真面目に考えたら負けだぞ。
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