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  4. コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2
≫コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2
■発売元 スクウェア・エニックス
■開発元 Infinity Word
■ジャンル ファースト・パーソン・シューター
■CERO D(17歳以上対象) ※過度の暴力、出血、犯罪描写等あり
■定価 7980円(税込)<※廉価版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら ※動画が再生されます。
▼Information
■プレイ人数 1〜4人(オンラインプレイ時:2〜18人)
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 25MB以上
■その他 Play Station Network対応、DUALSHOCK3対応、AVチャット対応、ヘッドセット対応、トロフィー機能対応
■総説明書ページ数 9ページ
■推定クリア時間 5〜7時間(エンディング目的)、200時間以上(完全攻略目的)
西暦2011年、イムラン・ザカエフを筆頭とするロシア超国家主義派が実行したテロ計画は、ジョン・プライス大尉率いるイギリスSASとアメリカ海兵隊の合同作戦によって阻止され、ザカエフも壮絶な攻防の末に抹殺されるに至った。

それから5年後の2016年、ロシアではザカエフを信奉する大統領が誕生。ザカエフの後を次ぐ形で、超国家主義派の新たな指導者となったウラジミール・R・マカロフはロシアの政治不安定の隙を見て、大量の軍事物資を入手。そして、ロシア国内で驚くべきテロを実行した。
更にマカロフに影ながら接近していたアメリカ軍の兵士をテロの実行犯の一人と露呈させる事により、ロシア国内での反米感情は激化してしまう。アメリカは世界中から精鋭が集められた特殊部隊『タスクフォース141』を動員。マカロフの追撃に打って出るのだが…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆スノーモービル、ボートでの逃走劇など、アクション映画的な大幅に増えた『キャンペーン』本編の構成
◆虐殺テロを実行する衝撃的な設定と描写でプレイヤーを驚かせる『空港』のステージ
◆様々なシチュエーションを舞台にした特殊な任務を遂行するという、チャレンジモード的な面白さと極め甲斐に富んだ新モード『スペシャルオプス』
◆前作に引き続き、プレイヤーに戦争の恐怖を嫌というほど思い知らされる作り込みが光るフィールドマップ
◆コンパス式でなくなった目的地表示アイコン(次に進むべき場所が分かり易くなった)
◆前作同様、チュートリアルの成績で選択範囲が制限される、良心的な仕様の難易度選択機能
◆前作同様に一人称視点の強みを最大限に活かした、シームレスで迫力満点の演出
◆日本語吹き替え仕様になり、より理解し易くなったストーリー展開(しかし…?)
◆瀕死状態時に大きな警告が出るなど、前作以上に痒い所に手に届いた配慮の数々
◆クリアまでは短めだが、オンラインを含めると急激に増す極端さを持った総計ボリューム
◆前作譲りの快適な操作性(即座に狙いを付ける機能など、非常に良好な仕上がり)
◆前作以上に質が向上したグラフィック(それに伴い、暴力描写の過激さもパワーアップ…)
◆銃撃戦時の臨場感を恐怖感を引き立てる、生々しさ満点の効果音(特に銃の発砲音)
◆ゲームオーバー時における歴史上の人物の名言表示の演出(今回も健在)

--- Bad Point ---
◆あまりにも雑過ぎる日本語吹き替えの翻訳(おかしな台詞や呼称、表現が非常に多い)
◆一部、プレイヤーを罠にはめて詰みに陥れる台詞の存在(空港の「殺せ、ロシア人だ」が顕著。制限に気付かずその通りにやってしまうと話が進まなくなる)
◆英語音声への切り替えオプション非搭載(何故、同時収録ができなかったのか…?)
◆日本語訳の悪さも相まって、ほとんど崩壊してるも同然なストーリー
◆やや消化不良気味なストーリーの結末(続編に続くかのような描写もある)
◆ミスリード台詞の存在もあり、初見では理不尽な所すらあるキャンペーンの難易度設定
◆マップが広大化し、スナイパー有利な調整にされてしまったオンラインマルチプレイ
◆『スペシャルオプス』追加に伴い、僅かに削減されたキャンペーンの総計ボリューム
▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
耳に届く台詞だけを信じるな。

詰むぞ。(※冗談ゼロ)


映画的な演出と圧倒的な臨場感、そして中毒性抜群のオンライン対戦モードで国内でも高い評価を獲得した『コールオブデューティ4 モダン・ウォーフェア』のストーリーの続きを描いた続編作品。開発は前作『モダン・ウォーフェア2』に引き続きInfinity Ward。日本語版ローカライズは前作のアクティビジョンではなく、スクウェア・エニックスが手掛けた。

杜撰なローカライズが残念極まりない続編だ。

ゲーム内容は前作『コールコブデューティ4 モダン・ウォーフェア』と同じ3D主観視点(一人称視点)で展開する、ファースト・パーソン・シューター(FPS)。豊富な銃火器を駆使し、迫り来る敵兵達を倒したり、課せられる目標を達成しながら戦場を駆け抜けていくというものだ。
ゲームモードも前作と共通。シングルプレイの『キャンペーン』、オンライン対戦が楽しめる『マルチプレイ』が用意されている。一方で前作にあった『アーケード』は廃止。その代わりとして新たに『スペシャルオプス』というゲームモードが追加された。これはシングルプレイと最大二人までのオンライン協力プレイが楽しめるモードで、小さなマップを舞台とした短編ミッションの攻略に挑むという、いわゆるチャレンジモード的な内容となっている。このモードが追加された事に伴い、前作にあった『アーケード』ことキャンペーンのオンライン協力プレイは廃止となった。その為、今回の『キャンペーン』はシングル完全特化型の内容になっている。また、『スペシャルオプス』の導入に伴い、シングル全体のボリュームも増強。キャンペーンしかシングルで遊ぶものが無く、物足りなさを覚えていたプレイヤーには嬉しい改善が図られている。
メインに当たる『キャンペーン』の構成は基本的に前作を踏襲。『ACT』単位で区切られた章ごとに用意されたシナリオを攻略していく内容になっている。複数の主人公の視点でそれぞれの物語が描かれるザッピング構成もそのままである。
システム周りも、最初のミッションでの訓練でのプレイヤーの腕に応じてチョイスされる気の利いた難易度選択機能、目的地表示機能などは前作と同様に実。基本的にゲーム性に大きな変化を与える程度の刷新は行われていない。純粋な正当進化系に徹した作りとなっている。
ただ、幾つか細かな改善と刷新が図られている。第一に目的地表示機能だが、前作のコンパス方式から一転。進むべき方向に専用アイコンが表示される、分かり易さを重視した仕様に改められた。これにより、今回はどちらに行くべきかコンパスを逐一確認する必要は無くなり、スムーズ且つ、直感的に進めていけるようになっている。前作のコンパス方式もそれなりに親切ではあったが、やや分かり難い所があったので、この見た目でも分かり易い方式へと変更したのは良い判断。「こちら側に進んでください」と露骨に表示される為、一本道且つ誘導されている感じは強くなったが、この機能刷新により、全体的なゲームテンポは大幅に向上している。前作のコンパスに少し苛立ちを覚えてたプレイヤーにとっては、有り難い改善点と言えるだろう。
第二としてミッション周りでも、爆撃機から空爆を行うミッションが無くなった。代わりとしてスノーモービルなどの乗り物に搭乗し、追っ手から逃げたり、敵を追跡するというスピード感溢れるミッションが新たに追加されている。シューティングゲームの代わりとしてレースゲームが追加されたと言った格好だ。当然ながら、今作はFPSという事で、乗り物に搭乗した状態で銃火器を駆使して追っ手を迎撃する場面も用意されている。その緊張感とスピード感は、アクション映画のワンシーンを自らが操作しているような手応えに満ち溢れており、その手の映画の場面に焦がれていた方にとっては心底たまらないシチュエーションになっている。また、このレースゲーム的な展開以外にもテロリストとなり、テロ行為を行うと言った衝撃的なミッションも用意。前作にも核爆弾が爆発するというショッキングなシーンが大きな話題を呼んだが、今作でもそれを髣髴どころか、凌駕するものを用意。再び、プレイヤーに戦争の惨さと暴力の連鎖を思い知らしめる、衝撃度抜群の構成にまとめられている。
そして、更なる変更点としてボイス。何と日本語吹き替えに改められた。前作では英語音声であった為、台詞の字幕を読まないとストーリーが追えない、少し苦しい仕様となっていたが、今回は吹き替えという事で、その必要は消滅。その為、今回はよりストーリーが理解し易くなっている。吹き替えという事で、前作で色んな意味でプレイヤーに強烈な印象を残した戦場での掛け声なども日本語になってしまっている為、雰囲気の点では魅力が落ちたとも言えるのだが、息付く間もなく戦闘が展開される今作において、この変更はナイス。より本編の世界観に没入し易い作りに改められている。
他の『マルチプレイ』に関しても、基本的には前作と変わってない。但し、空爆などの支援攻撃のバリエーションが増えたり、三人称視点で展開される対戦モード、フラッグ戦、新装備の追加などにより、ボリューム感が増大。より戦略的なプレイが楽しめる作りに進歩している。
総じて、前作をベースに改良を行った如何にもな続編であり、バージョンアップ的な作りに徹している。目立った変更点が少ない為に多少のマンネリ感も漂うが、基本的なゲーム性に変わりはないほか、複雑なシステムや要素などは何一つ追加されてない為、安心して遊べる作り。まさに正統進化系という言葉がよく似合う続編に仕上げられている。

そんな今作最大の売りは、よりショッキングな内容になった『キャンペーン』本編の展開と演出である。スノーモービルに搭乗しての脱出を始めとするバラエティー豊かなミッションもさることながら、戦争の惨さと暴力の連鎖による悲劇を描いた演出は前作以上に増強され、プレイヤーにそれらの恐怖を嫌というほど知らしめる、生々しさ溢れるものへと進化を遂げている。特に先ほど少し触れた、テロ行為を行うミッションの衝撃性はかなりのもの。無抵抗の民間人、実に数百人以上が次々と凶弾によって命を落としていく光景は、見る者にテロの恐怖と理不尽さというものを嫌になる位に見せ付ける、大変ショッキングなシーンに仕上げられている。テロを行うとは言え、基本的にこのミッションでは一人でも民間人を射殺するとゲームオーバーになる仕組みの為、プレイヤーがやる事は仲間のテロ行為を傍観して、途中で戦闘を仕掛けてくる警官隊と戦う程度なのだが、それでも目前で描かれる理不尽な死の光景はあまりにも強烈。精神面が強くない人なら、一生のトラウマになりかねないほどのものになっている。
前作にも核爆発で仲間や街が廃墟と化す、非常に衝撃的なシーンがあったが、今作のこのシーンも路線こそ違えど、プレイヤーに強烈な印象を残すものに仕上げられている。テロリストでも何でもない、無抵抗の一般人達が成す術も無くその生涯を理不尽な形で終えられていく。その一連の光景に貴方は何を感じるだろうか?ミッションとしては味気ないとは言え、その演出と展開の数々は必見。もはやゲームという枠を超えたその衝撃性と生々しさは、ゲーム好きなら一度でもいいのでチェックする価値があると言ってもいい。
この他にも、雪原を舞台にした潜入ミッションも、アクション映画さながらの緊張感溢れる展開が実に印象的。そして、先のテロも始め、一人称視点だからこその迫力と独自性も圧巻の一言。三人称の視点では到底、表現し難いそれらの演出の数々には、この視点である事を最大限に活かそうとする制作スタッフのこだわりとセンスと技術力の高さが炸裂したものに仕上げられている。その相変わらずの高い完成度もまた、印象的なシーンと並行して必見だ。
しかし、これらの魅力を汚す致命的な問題点が存在する。それは日本語吹き替えの台詞全般。何と、これが誤訳・珍訳ばかりなのである。特にテロのミッションでの台詞はあまりにも酷い。先ほど紹介した通り、このミッションでプレイヤーは民間人を射殺する行為が禁止されているのだが、それなのにミッション開始と同時に「殺せ」と仲間の一人が射殺を許可する台詞を発するのだ。撃ってはいけないとは言わずに撃て、と。普通に考えて、こんな台詞を聞かされたら、誰だって民間人を撃ってしまうだろう。しかし、実際は撃ってはダメなルール。完全にミスリードを誘う、ゲームとの整合性を無視した台詞になってしまっている。しかも、これだけではない。他にも「ミグの所まで走れ!」という台詞があるのだが、これに従ってミグの所まで到着してしまったら爆死してゲームオーバーになる。というのも、このミグはストーリー展開上、爆発寸前という事になっているのだ。なのに、そこまで走れと台詞に出る。もう「お前は何を言っているんだ。」と某格闘家の如く怒りたくなる訳し方。テロの冒頭と言い、全くゲーム展開に合わせてないのである。
他にもストーリーに関連する台詞にも、敵に武器を渡しただけの人物が真犯人だと語られたり、「ヘリは死んだ」という謎の言い回しもあったりと酷い。前作も一部、文字化けなど翻訳に粗はあったが、それでもゲームプレイに支障をきたすものはなかった。なのに今作は支障をきたすどころか、世界観までぶち壊す翻訳になってしまっている。何故、このような事が起きたのか?連携できていなかったのか?真相は神のみぞ知るだが、少なくとも今作のローカライズが杜撰な体制の元で行われたのは、間違いないと言ってもいいだろう。普通、そうでもなければここまで酷い翻訳にもならないからだ。如何に今作の日本語版を手掛けたスクウェア・エニックスがローカライズを軽視しているのかを察する次第だ。こんな杜撰な事をしたが為に今作はあらゆる魅力の部分が汚されてしまっている。先のテロの場面にしても、だ。まさに翻訳が全てを潰した作品と言ったところ。世にも珍しいというか、あり得ない事柄だらけの作品になってしまっている。
念の為だが、キャンペーンの展開自体は決して悪くは無い。説明不足な点や結末など、幾つか粗はあれど、前作同様に衝撃的な体験を味わえる内容に仕上げられている。だが、翻訳の酷さがその体験の足を引っ張る。翻訳の間違いにさえ気をつければ、遊べない事も無いのだが、それを意識しなければならないのも正直、変な話である。本当、何故こんな事に?それほどに今作のローカライズは酷い。悪い意味で歴史に名を残すほどのものになってしまっているのだ。

翻訳による問題はキャンペーンのみならず、マルチプレイにも散見される。特に明らかに日本語的におかしなマップ名に失笑モノ。適当に訳している事がバレバレとなっている。
更にマルチプレイ自体にも問題点が多い。マップが広くなり、潜伏ポイントが増えた事でスナイパーが圧倒的に有利なバランスに改悪されていたり、グレネードなどの一部の武器の威力が異常に底上げされているなど、気持ちよく対戦が楽しめない。中でもスナイパー有利は致命的で、普通に戦闘するのが大きなリスクになるなど、対戦バランス的にほとんど破綻している。正直、ちゃんと調整したのかどうか疑わしい出来だ。何故、このような調整を施してしまったのか、ここもまた、翻訳と同じく謎としか言い様が無い。
また、難易度設定も誤訳によるミスリードがある為、少し壊れている。特に気付かない人には詰みとなりかねない要因が存在するのは、かなり致命的だ。しかし、それを除けば全体的には概ね安定したバランスとなっている。
ボリュームも『スペシャルオプス』の追加に伴い、『キャンペーン』が短くなったが、それでも十分な充実感を味わえる内容。相変わらずのやり応えを堪能できる仕上がりになっている。
グラフィックも大幅に質が向上。特に人物周りのモデルにその進化具合がよく現れている。出血描写を始めとするエフェクト全般もグラフィックの質の向上に伴ってより派手になり、戦場の臨場感を恐怖を大いに引き立てるものに仕上げられている。特に破壊表現全般はその効果音の生々しさと仰々しさも含め、必見だ。

ゲームオーバー時、歴史上の人物の名言が挟まれる独特の演出は今作にも健在。ストーリー周りでは誤訳が目立つ一方、こちらはほとんど無し。今作でも印象深い名言を通じ、戦争について色々と考えさせてくれる。
その他、細かい所でも瀕死の状態になった際、隠れて体を休ませろと言った具合に指示が入るようになるなど、FPS初心者への配慮も地味に強化。操作性もワンボタンで敵に狙いを定めてくれるなど、前作の完成されたものを継承している為、感触は非常にいい。
基本的には前作をベースに細かな変更と刷新などを図った正当進化系の続編に仕上げられている。だが、翻訳があまりにも酷く、その為にストレスを溜めさせられる場面がある為、完成度は前作より僅かに劣る。また、マルチプレイに関してもマップ広大化などの改悪が施されてしまった為、ますます遊び難い作りになっているなど、対戦ツールとしての魅力も落としてしまっている。全く遊べないほど酷い出来ではないが、海外で発売されたゲームのローカライズの悪質な例としては、歴史にその名を残すほどのものになってしまっている今作。まさに残念としか言い様の無い作品である。一応、前作経験者やFPSが好きな方にはお薦めできる。ただ、翻訳は本当に酷いので、それに関する情報を一通り集めた上で挑戦する事を強くお薦めします。何も知らずに挑むと大変な事になので要注意。
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