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  4. キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ
≫キャッスルヴァニア ロード オブ シャドウ
■発売元 KONAMI(コナミデジタルエンタテインメント)
■開発元 MercurySteam、小島プロダクション
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO D(17歳以上対象) ※過度の暴力・身体欠損描写等あり
■定価 7980円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※ユーザーごとに作成)
■必要HDD容量 435KB以上
■その他 振動機能対応、トロフィー機能対応
■総説明書ページ数 24ページ
■推定クリア時間 25〜28時間(エンディング目的)、60〜80時間(完全攻略目的)
西暦1047年、希望無き暗黒の時代、闇に覆われた世界。
天と人は邪悪な呪いにより、分かたれていた。
救われぬ魂が大地を彷徨い、悪夢に棲む獣が絶え間なき暴虐を尽くす。怯える民達を救うべく、『燈光教団』を統べる修道会は聖なる意志のもと、この渦を究明すべく、一人の相応しき者を遣わした。

その者の名はガブリエル・ベルモンド。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆原点回帰とも言える、ドラキュラシリーズの王道に則ったステージクリア型のゲームデザイン
◆敵と自身が取りたい行動に応じて属性を切り替える、戦術的な戦いが求められてくるゲームバランスが新鮮な『光と影』のシステムが演出する戦闘
◆基本攻撃から敵を掴んでの致命的一撃、衝き上げなど、ビックリするほど多彩なガブリエルのアクション(更に経験値を獲得する度にどんどんその数が増えていく!)
◆敵の動きを見極めながらの戦いが常に求められてくる、ドラキュラシリーズとアクションゲームの原点に則った調整が成されたゲームバランス
◆バランスの妙味が沢山盛り込まれた、歯応え抜群のボス戦(※巨大ボス戦は除く)
◆森に雪原など、ドラキュラシリーズとしては異質な舞台が豊富に用意されたステージロケーション
◆ドラキュラシリーズ史上最高クラスのボリューム(本編クリアだけでも25時間以上かかる!)
◆シリーズ独特のゴシックホラーなテイストがふんだんに盛り込まれた、美麗なグラフィック
◆随所に盛り込まれた、ドラキュラシリーズ経験者をニヤリとさせるネタの数々
◆ムービーなどのイベントを大いに盛り上げる、実力派声優陣の熱演(キャストも豪華)

--- Bad Point ---
◆他のゲームからの寄せ集めで作られた、独創性皆無のゲームシステム(一言で言ってしまえば、ゴッドオブウォー。時々、ワンダと巨像とアンチャーテッドが混じる)
◆攻撃のレスポンスは良好だが、移動周りはイマイチな操作性(挙動が重い)
◆原点の面白さこそあるものの、変に固くし過ぎで爽快感に欠けた雑魚敵との戦闘
◆広いフィールドが舞台となるステージにおけるカメラワークの悪さ(時々、変な方向に行く)
◆テンポを乱すのみならず、内容的に面白味にも欠けた謎解き(&パズル)要素
◆謎解きにおけるヒントの少なさとガイドメッセージの適当さ
◆多過ぎて、一部が完全に死に技になっているスキル取得で解禁されるアクション
◆過剰のみならず、没入感を著しく損ねるガイドメッセージ(特にQTE時のメッセージが酷い)
◆ほとんど作業も同然で、面白みに欠けた巨大ボス戦(まんまワンダと巨像な作りも寒いの一言)
◆ドラキュラシリーズらしさ皆無で、ファンの期待を大いに裏切る空気過ぎる音楽
◆似通ったステージが多く、後半以降からダレ易くなる退屈なレベルデザイン
◆退屈なレベルデザインの所為で、水増し感が否めない総計ボリューム
◆プレイヤーのモチベーションを損ねる全体マップ画面(ある程度、本編が進んでいくと「まだこんなにあるの…」という絶望感を抱くようになる)
◆率直に言って、不細工にも程がある女性キャラクターのモデリング(男性周りは普通)
◆最悪過ぎるエンディング
▼Review ≪Last Update : 12/29/2013≫
闇の中で十字架と鞭が舞う。

何もかもが変わった新生悪魔城、ここに参上。


ゴシックホラーアクションの先駆けでコナミの看板タイトルとしても知られる『悪魔城ドラキュラ』最新作にして、シリーズ初の海外主導で製作された作品。開発はスペインのゲーム開発スタジオ、MercurySteam(マーキュリーストリーム)。日本語版ローカライズの監修は『メタルギアソリッド』シリーズで知られる小島プロダクションが担当した。

攻撃周りとベルモンドしか『らしさ』が無い、強烈な別物臭漂うドラキュラ新作だ。

ゲーム内容は3D固定視点で展開する、ステージクリア型アクションアドベンチャーゲーム。主人公のガブリエル・ベルモンドを操作し、章ごとに用意されたステージを攻略していくというものである。アクションアドベンチャーを名乗ってはいるが、基本はステージクリア型。各ステージのクリア条件も目的地(ゴール)に到着するだけと、見た目こそ現代風だが、本編の構成は往年のドラキュラシリーズを踏襲したものになっている。但し、道中には敵との戦闘、難所の突破以外に謎解き、探索など、僅かながら『月下の夜想曲』以降を髣髴とさせるシチュエーションも設けられている。全体的には往年のステージクリア型、探索型の良い所取りとも言える集大成的な内容。過去のシリーズで例えるなら、ニンテンドーDSで発売された『奪われた刻印』をより豪華にした、密度の濃い構成になっている。
また、アクション周りも3Dのドラキュラという事で、プレイステーション2で発売された『キャッスルヴァニア』に近く、メイン武器『バトルクロス』による攻撃アクションは、そちらの鞭による攻撃アクションを踏襲且つ、発展させたかのような作りになっている。更に詳細な仕組みこそ異なるが、道中で敵を倒したり、謎を解いた際に手に入る経験値を一定数集める事で、新たなアクションを習得する『スキル』のシステムも健在。ドラキュラシリーズ定番の要素でもあるナイフを始めとする『サブウェポン』もそのままだ。その為、キャッスルヴァニア経験者であれば比較的、すんなり馴染める作りになっている。
しかし、それ以外のシステム等は完全な別物。そもそも、カメラが自由に動かせない固定型である時点で違う。他のゲームで例えるなら、『ゴッド・オブ・ウォー』のような感じだ。というか、バトルクロスの攻撃時の軌道など、明らかにゴッド・オブ・ウォーを意識している部分が多数あり、その意味でも今作はPS2版『キャッスルヴァニア』の進化系というより、ゴッド・オブ・ウォーという下地にキャッスルヴァニアの要素を足したかのような作りになっていたりする。
実際にシステム周りも、ステージクリア型である点を除けばかなりそれに近い。道中での謎解き、クイックタイムイベント(QTE)方式の必殺技、体力の最大値を上昇させる収集専用アイテム、そして能力強化アイテム入手によって拡張される移動系のアクションなど、ほとんどが見覚えのあるものばかり。それでいて、『キャッスルヴァニア』にあった『リアルタイムウィンドウ』や武器の装備を始めとするRPG的な要素は皆無であり、アクション重視のゲームデザインとしている辺りも、その”らしさ”を余計に際立たせている。
ゴッド・オブ・ウォー未経験者なら、それなりに新しさを感じ取れるかもしれないが、経験者ならもの凄いデジャヴを覚えるのは言うまでも無く。しかも、一部のボス戦に至っては『ワンダと巨像』そのまんまなものがあったりするので、そちらも経験済みとなれば余計にそれが濃くなる。これだけでも今作のシステムが、如何にオマージュ色の強いものであるかは容易に想像が付くだろう。見覚えのあるものだらけの新鮮味に欠けたゲームになっているのだ。
だが、『光と影』の二つの属性を使って異なる攻撃を繰り出すシステムを始め、幾つか今作ならではの要素も実装されている。特に『光と影』は今作最大の特徴とも言えるシステムで、属性を切り替えて回復行動に転じたり、攻撃力を上昇させて一気に畳み掛けたりなど、戦術的なゲームプレイを演出するユニークなものに完成されている。無論、どの属性も発動時には専用のゲージが消費される為、永久にその効果を持続させる事は無理なのだが、それが戦闘における緊張感と戦術性を適度に演出。単に目前の敵を仕留めるだけでは終わらせない奥深さを引き立てている。また、回復行動と称した通りに今作では体力回復用のアイテムが一切登場しない。この攻撃でしか、回復は行えない仕組みになっているのだ。それ故に戦闘中、何処でその行動に転じるか、と言った判断が求められてくる事もしばしば。非常に思い切った試みだが、それを戦闘の奥深さを引き立てる要素として反映させているのが実にユニーク。やや地味な所もあるが、少し風変わりな戦いをプレイヤーに体験させてくれるシステムに完成されている。他にも戦闘で対峙した敵を捕らえ、乗り物代わりとして使用するアクション、パートナーと共に謎を解くパートの存在もそれなりの独自色を醸し出している。
だが、基本部分のソックリっぷりが群を抜いている為、既視感を覚えてしまう事自体はどうしても避けられない感じだ。繰り返しになるが、経験者なら尚更、これはゴッド・オブ・ウォーだ!…と思ってしまうのは必至。ドラキュラの新作として見ても、『キャッスルヴァニア』の進化系的な所もあるが、システムの違いもあり、ほとんど別物同然の仕上がり。まさにこれは『キャッスルヴァニア』という独立した作品で、『悪魔城ドラキュラ』ではない。それを主張するかのような、露骨な違いとらしさの欠如が露骨。何とも言い難い作品になってしまっている。

そんなドラキュラシリーズとしてのらしさの無さが今作の致命的な欠点だ。だが、ドラキュラという括りを外せば、出来がいいゲームなのかと言われると否。単体のアクションアドベンチャーとしても、淡々とし過ぎたレベルデザインとそれによるテンポの悪さが際立つ、非常にかったるい内容になってしまっている。
特にその酷さを際立たせ、且つドラキュラシリーズのらしさを損ねさせているのが道中に用意された謎解きと探索だ。今作にはシリーズとしては初めて、パズルネタの謎解きが用意されているのだが、これがまた全然面白くない。それ以前にアクションを楽しみたいというプレイヤーの欲求とゲームテンポを著しく害する要素として機能してしまっている。しかもこの登場タイミングが常に最悪な上、その量もやたら多く、解法も複雑という三拍子。難易度こそ緩めなのだが、必要以上に時間が取られる作り故、バトルクロスで敵と真剣勝負したいという気力を徹底的に吸い取られるのである。ステージの展開にアクセントを加える為に用意したという狙いは分かるのだが、そのバランスの悪過ぎる作りから、アクセントどころかストレスを与える要素になってしまっているのには作りの甘さを感じざるを得ない。
また、ステージ構成は謎解き以外の面でも相当な難がある。中でも、バトルクロスで崖をよじ登るクライマーアクションのパートは嫌気を覚えるほどにつまらない上、無駄に多い。敵も出てこず、淡々と仕掛けを乗り越えていく展開はもの凄く味気ないし、それでいて仕掛けの面でもあっと驚くようなネタがある訳でもないので、全然盛り上がらない。しかも、これが謎解きと合わせてステージのつまらなさに拍車をかけてしまっているのだから最悪だ。鬼に金棒という諺を体現するにしても、こんなやり方は幾ら何でも無いだろう。アクションゲームの醍醐味を理解できてないにも程がある。
なら、戦闘はどうなのかと言うと、これも面白くない。というのも、敵が強い。雑魚敵ですら、連続攻撃を命中させても簡単に怯まないので、かなり的確な立ち回りをしないと負けるほど難易度がきつめで、個々の操作を楽しむ余裕すらないのだ。この難易度設定にはドラキュラシリーズのらしさが現れていて、良い調整とも言えなくも無い。だが、雑魚敵ですら異様に強く、尚且つ耐久力も高めという調整には違和感を覚える。雑魚敵なら一網打尽にする爽快感を出す為、少し弱く設定するのが妥当だと思うのだが、何を考えて固めにしたのか。それが仮にドラキュラ=難易度高いゲームという考えの元によるものだというのなら、原作を舐め過ぎだ。
また、ボス戦もイマイチ。特に巨大ボスとの戦いは壊滅的に面白くなく、完全にワンダと巨像である上、指定されたコマンド入力でダメージを与えるQTE方式なので、完全に作業になってしまっている。同じ巨大ボス戦でも、ワンダは戦い甲斐のある内容になっていたのに、その良さを全く継承できていない辺りに制作陣のセンスの悪さを感じさせられる。
更に極め付けとして、一連のステージ、戦闘にせよ、印象的な音楽は一切流れない。ドラキュラと言ったら音楽にも定評のあるシリーズで、ステージクリア型に探索型にせよ、ゲーム性の違いはあってもその魅力だけは一貫して引き継がれてきた。なのに今作にはそれが一切継承されていない。全部の曲が空気!印象深い曲が何も流れないので、どんなパートも全く盛り上がらず、淡々と進行するのだ。そして、曲自体を堪能すると言った楽しみも皆無。正直、これだけでも今作をドラキュラの新作として失格だと下す人も少なくはないだろう。中身が変わっても決して外して来なかった音楽の良さを捨てた。ファンにしてみれば、許し難い暴挙だ。一応、完全新作なのだから、たまにはそういう路線もアリかもしれない。だが、せめて戦闘ぐらい、印象的な曲を流すべきだったのではないのか?そういうシリーズのらしさの象徴とも言える部分を削った挙句、楽しみまで奪う試みを実行した今作の制作スタッフには本当、ドラキュラの良さというものを全く理解できておらず、憤りすら覚えるほどである。
最も、ドラキュラシリーズに何を求めるかでこの辺の印象は激変する。別に音楽など…と思う方なら、この点に関しては憤りも何も覚えることは無いだろう。冗長なパズル要素やクライマーアクションに関しても同じ事が言える。
だが、それでもレベルデザインの酷さは見過ごせない。ひたすらプレイヤーにダルい思いをさせ続ける構成は、ジャンル的には致命的の一言に尽きる。それでいて、戦闘も面白くない、演出が悪い、巨大ボス戦は作業的という酷さ。バトルクロスのアクションは非常に多彩ではあるものの、何処と無く鞭っぽい武器と多彩なサブウェポンがあればそれはドラキュラシリーズだ、という薄っぺらな考えの元で作り込んでいるかのような邪なものが見えてしまうのが厳しい。
シリーズモノとしては失格レベル、新しい作品としても詰めの甘い部分が多過ぎるなどと散々。せめてシリーズのらしさの象徴、音楽を外してさえいなければ少し印象は違っていただろうに、何故にそこすら捨てたのか。ドラキュラシリーズに一度も携わった事が無いスタッフが作るとこうも別物になってしまうものなのか。長い歴史を重ねてきたシリーズなだけに、その雑な作りと外し過ぎた定番要素の多さには本当、憤りを覚えざるを得ないばかりである。こんな作品が今後のスタンダードになるとか、到底認められたものではない。

アクションゲームとしての出来の悪さは操作性にも現れている。とにかく挙動が重い。主にジャンプなどの移動操作においてその劣悪さが現れており、この為に余計な事故が生じるほどだ。操作に癖があるという点では、ある意味ドラキュラシリーズを踏襲して言えると言えなくも無いが、探索要素も濃い目な内容なら、せめて探索型の快適な操作を引き継いで頂きたかったところだ。バトルクロスのレスポンスは全く問題無いだけに、少々勿体無い。
また、ボリュームもシリーズ史上最大と言っても良いほどの量なのだが、明らかに多過ぎの域。章数が12もあり、エンディングまで25時間以上もかかるとか、さすがに度を超えてるとしか言い様が無い。しかも、レベルデザインの悪さもあり、充実感もイマイチなので尚更。アイテム回収などのやり込みもあるのだが、膨大さとレベルデザインの悪さも相まってやる気が湧き難く、完全に趣味の域になってしまっているのが厳しい限りだ。
グラフィックも背景は非常に綺麗なのだが、人物周りのモデリングが酷い。特に女性キャラクターは不細工過ぎるの一言。人によっては拒絶反応すら覚えるレベルで海外メーカー特有の悪い所が現れてしまっている。もう少し、万人受けするデザインにできなかったのだろうか。

ストーリーもプレイステーション2で発売された『キャッスルヴァニア』より更に前の時代を舞台にしているが、実際は過去のシリーズとは無関係で、下手に期待すると肩透かしに遭う。それでいて、肝心の内容も意味不明な酷い出来。特に結末は最悪で、誰もが「は?」と声を挙げてしまうだろう。
その他、演出もアクション周りは悪くないのだが、デモ関係は回りくどい台詞回しもあってテンポが悪くてダルい、簡単な難易度ですら厳しい為に選択機能が意味を成してないなど、至らない部分はそこかしこに見受けられる。
光と影を使い分けながら展開する戦闘、バトルクロスによる多彩なアクションなど、良い所もそこそこあるのだが、それ以上に悪い部分が目立ち過ぎている上、ドラキュラシリーズとしてもらしさが必要以上に欠如していて、遊び応えもイマイチという始末。単体のゲームとしてもイマイチで、手放しに褒められない出来になってしまっている今作。<遊べなくはないが、とてもお薦めできたものではない佳作だ。特に昔からのドラキュラファンは間違っても遊んではいけない。これをやるぐらいなら、ダウンロード配信されている『ハーモニー・オブ・ディスペア』に行きましょう。その方が幸せになれる。
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