Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. PlayStation 3>
  4. 007/ブラッドストーン
≫007/ブラッドストーン
■発売元 スクウェア・エニックス
■開発元 Bizarre Creations
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO C(15歳以上対象) ※暴力、犯罪、出血描写等あり
■定価 7600円(税別)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人(オンライン時:1〜16人)
■セーブデータ数 HDDの残り容量によって変化
■必要HDD容量 3778MB以上
■その他 PlayStation Network対応、振動機能対応、トロフィー機能対応
■総説明書ページ数 13ページ
■推定クリア時間 5〜7時間(エンディング目的)、80〜120時間(完全攻略目的:オンライン込み)
イギリスの最高機密である生物兵器プロジェクトが何者かの手中に落ちた。
敵の正体を探り出すこの任務を遂行できるのはただ一人。

英国情報部員:ジェームズ・ボンド(007)
▼Points Check
--- Good Point ---
◆一人称視点が定番の007のゲームとしては珍しく、三人称視点で目に見える形でジェームズ・ボンドを動かし、躍動的なアクションを決めていく楽しさを突き詰めたゲームデザイン
◆映画版007シリーズさながらの息つく暇をも与えない、波乱万丈なミッション構成
◆映画版007シリーズを強く意識したストーリー構成(特にオープニングは非常にそれっぽい)
◆時代が映画版007をゲーム側で忠実に再現できるまで追い付いた、ということを実感させる迫力十分の演出(特に爆発炎上シーン、逃げ惑う一般市民の描写は圧巻の一言)
◆生々しい挙動と作り込まれたコース構成が秀逸なカーチェイスイベント
◆TPS初心者に有り難く、手早く敵を仕留める爽快感が堪能できる一撃必殺攻撃「フォーカス・キル」
◆地下の洞窟、水族館、巨大なホバークラフトなど、多彩で見所満点のロケーション
◆実際の映画版007の吹き替え声優陣を起用しているほか、ゲーム本体側の言語設定を切り替えればダニエル・クレイグ本人の声でも楽しめる秀逸な仕掛けが光るボイス演出
◆失敗しても迅速に復帰できるなど、最小限に抑え込まれたロード時間
◆ルールこそ少なめながら、オンライン対応で最大16人まで参加可能、レベルアップを始めとする育成システムも完備と、やり込み甲斐のある作りにまとめられたマルチプレイ
◆スパイ特有の撃たれ弱い設定と相手を出し抜く重要性を押し出したゲームバランス
◆最小限に抑え込まれたアクションによる取っつき易さと軽快な挙動が光る操作性
◆背景周りの描き込みの深さとド派手なエフェクトで魅せるグラフィック
◆これぞ007な緊迫感を煽る楽曲が取り揃った音楽(特にカーチェイスの楽曲が秀逸)

--- Bad Point ---
◆黒幕こそ倒されるものの、重大な謎が残されたまま終了する未完のストーリー
◆敵に届かない壁から撃っても敵に届いて命中するなど、調整の杜撰さが目立つカバーアクション(この所為で反則紛いで超人的にも程があるノーダメージクリアが狙えるメリットも…)
◆ミッション一つ一つの密度は濃いが、総数的に不足気味なシングルプレイのボリューム
◆作り込みは凄いが、追跡劇メインのカーチェイス(逃亡劇があっても…)
◆海外勢と戦うと露骨な遅延(ラグ)が生じる上、実力無関係のマッチング故に鬼畜な展開に陥りがちであるなど、設計とバランス調整の両面で不備が目立つマルチプレイ
◆マルチプレイに絡んだ鬼畜過ぎるトロフィーの存在(特に「相手を一切殺さない」)
◆背景とエフェクトの作りは見事ながら、人物モデルは前時代的な質のグラフィック
▼Review ≪Last Update : 11/19/2017≫
最高のエージェントは壁を突き抜ける射撃もお手の物。

※あり得ません。普通にできません。


世界中に根強い人気を誇るスパイアクション映画『007(ダブルオーセブン)』を原作とするサードパーソンシューティングゲームにして、ゲームオリジナルのストーリーを描いた作品。プロジェクトゴッサムシリーズ、『ジオメトリー・ウォーズ』で知られるイギリスのBizarre Creationsが開発。脚本は『007 ゴールデンアイ(※映画版)』などに携わったブルース・フィアスティン、また英語音声に限り、六代目ジェームズ・ボンドで俳優のダニエル・クレイグがボンド自身の声を担当している。

「惜しい」の一言に尽きる佳作TPSだ。

ゲーム内容は三人称視点で展開する、サードパーソンシューター(TPS)。主人公のジェームズ・ボンドこと007(ダブルオーセブン)を操作し、イギリスの生物兵器プロジェクトを悪用しようと目論む敵の正体に迫るミッションに挑むというものである。本編はストーリーに沿って発生するミッションを攻略する、一本道方式で進行。一応、ストーリーごとに専用の舞台が用意されたステージクリア型の体裁を取っているのだが、クリア時に結果画面が表示されることなく、そのまま次の舞台へと進む地続き方式で、あまりその事を感じさせない作りになっている。映画版007シリーズのストーリー展開をそのままゲームに落とし込んだ作りと言えば、何らかのシリーズを観た経験のあるプレイヤーならピンとくるかもしれない。
システム周りも遮蔽物に身を隠し、敵の攻撃を回避したり、反撃に転じる「カバーアクション」、敵の背後を突いて一撃で仕留める「テイクダウン」、自動回復システムと言ったTPSではお約束のものを網羅。また、TPSという事でプレイヤーキャラクターのボンドは画面に表示されている。007のゲームと言えば、NINTENDO64の『ゴールデンアイ 007』に象徴されるようにファーストパーソンシューター(FPS)…一人称視点の印象が強いが、本作は三人称視点という事でカバーアクションを始め、一人称視点ではお目にかかれない躍動的なアクションを楽しむことができる。ゲームのシリーズとしても、『エブリシングオアナッシング』以来という事で、同作経験者には懐かしさを感じるはずだ。
勿論、特徴的なシステムも実装されている。それが「フォーカス・キル」。簡潔に言えば必殺技で、発動すると銃の照準が敵の頭に自動で固定。正確なヘッドショットを撃ち込んで、敵を一発で倒すという便利なアクションだ。細かな照準の調整をする必要もなく、瞬時にヘッドショットを決められるという点で、TPS初心者にも優しい救済措置の意味合いも持ったものになっている。ただ、発動に当たっては「フォーカス・メーター」なる特殊なポイントを消費。これが一つも溜まっていなければ、発動することはできない。メーターを溜める方法は簡単で、敵をテイクダウンで仕留めること。それによって1つ溜まる仕組みになっている。最大値は3。それ以上は溜められない仕様だ。なので、使うに当たっては「ここぞ」という時を狙うのが重視される。まさに上手い話に裏あり。如何にもな制約と駆け引きの楽しさを詰め込んだシステムに完成されている。
テイクダウンに象徴されるように、ステルス要素も実装。ミッションの合間に敵に気付かれないよう進むパートが差し込まれるなど、スパイを主人公にした作品なりの展開が用意されている。ただ、意図的に銃撃戦を仕掛け、力押しで進む選択肢も取れる設計。静かに攻めるか、大胆に攻めるかはプレイヤー次第のある程度の自由を許した、押しつけがましさの無い要素に落ち着いている。しかしながら、主人公はスパイだけあって、耐久力は低め。銃撃戦でドンパチできるからと言って、コマンドー的ゴリ押し無双プレイは無茶の極みなので、相手の出方を見極めながらの立ち回りが重視される。そう言ったバランス面でおいてもスパイらしさを尊重するなど、設定を活かす作り込みが徹底されている。
また、ステルス絡みでは携帯電話による「ハッキング」も実施でき、ミッションによってはそれを使って情報を引き出したり、ターゲットとなる人物を探し出す事が求められる。更に携帯電話を起動すると、敵の位置や次に向かうべき場所までの位置と距離も表示してくれる。ただ、発動したまま敵と戦ったりはできないので、最終的には目視での判断が試されてくる。目的地表示まで携帯電話を起動しないといけないというのは多少不便だが、そうした事によってスパイらしさが色濃く表現されているのはちょっとした特徴。こう言った所でも、設定の意義を突き詰めた作り込みが成されている。
そして、007シリーズと言えば作品にもよるが、派手なカーチェイスシーンも特色の一つ。そのカーチェイスのパートが本作にも組み込まれていて、実際に車を操縦しながら敵を追跡する展開が楽しめるようになっている。しかも、単なるミニゲームではなく、レースゲームさながらの操作性とシステムで楽しめる本格的な設計。本作の開発元は『ブラーレーサーズ』というレースゲームを多く手掛けてきた実績を持つデベロッパーというのもあって、その得意分野が如何なく発揮された仕上がりだ。操作するのも車だけではなく、ボート、クレーン車と特殊なタイプが用意されているほか、それぞれ操作感からブレーキの仕組みに至るまで、個別の特色を盛り込んでいるというこだわりぶり。プレイすれば、これはレースゲームとして独立させても良いのではと感じてしまうかもしれない。
その他、本作にはオンラインにも対応した「マルチプレイ」も実装。「チームデスマッチ」、「オブジェクション」、「サバイバル」の三つのルールで日本のみならず、世界中のプレイヤーを相手にしたバトルが楽しめる。更にマルチプレイは最大で16人まで参加可能。ルール周りが乏しい感じだが、レベルアップシステムなど、昨今のTPS、FPSのマルチプレイに則った作りで、それなりにやり込み甲斐のあるものになっている。また、冒頭でも触れた通りに今作のストーリーは完全オリジナル。映画版を観たことがあっても無くても新鮮な気持ちで楽しめる内容になっているのも大きな特色だ。
総じて、007シリーズとしてのらしさとスパイの設定を忠実に反映させたTPSに仕上げられている。システム的には実を言うと真新しさは無く、特に「フォーカス・キル」は別のステルスアクション作品のシステムのオマージュなのだが、潜入あり、銃撃戦あり、そしてカーチェイスありの構成で007らしい遊び応えを演出している。まさに映画版007シリーズを再現し切ったTPS。ストーリーも完全新作だけあって、二重の意味で新しい007の世界を堪能できる作品になっている。

そんな本作の魅力は映画さながらのスピーディなストーリー展開と遊び応え十分のミッション構成(レベルデザイン)である。特にミッション構成は、映画版007シリーズ……具体的には1995年の『ゴールデンアイ(※念の為だが、映画の方でゲーム版では無い)』以降の作品の雰囲気を忠実に再現した仕上がりで、その近辺のシリーズを観た経験のあるプレイヤーならば興奮必至の作りになっている。かと言って、それ以前のシリーズの印象が強いプレイヤーには楽しめない訳では無く、シングルプレイ開始と同時にオープニングが始まり、それをクリアすると主題歌のムービーデモへと移行するお約束の演出も仕込まれている。その見事な再現振りにはこれこそ007だ!…と、思わず顔がニンマリとしてしまうだろう。
再現具合だけに留まらず、中身も濃い。周囲に敵が一切居ない状態下で捜索が始まったかと思ったら、敵が罠を仕掛けてきて絶体絶命のピンチに陥ったり、ステルス状態で敵の中枢に突入したと思ったらターゲットの敵との格闘戦の末、ヘリコプターまで参戦する激しい銃撃戦になったり、そのまま逃げる敵を追いかけていく内にカーチェイスが始まるなど、息つく暇すら与えない展開がこれでもかと言わんばかりに繰り広げられる。各展開が発生するタイミングも、映画版の007シリーズを強く意識した調整が図られており、特に絶体絶命の窮地に陥るシーンが挿入されるタイミングの絶妙さは特筆すべきものがある。そして、そう言ったピンチの場面をボンド自身ではなく、プレイヤー自身の手で乗り越えるという追体験が味わえるというのも非常に魅力的だ。数あるピンチシーンの中でも、序盤にある巨大なドリルがボンドを追いかけてくる所は映画版007シリーズとしてのらしさと映画さながらの緊張感を堪能できるシーンに仕上げられているので要チェック。その恐怖に改めて、映画版ボンドの強さというのを再認識させられるかもしれない。
また、最新鋭のゲーム機だからこその強みが活かされているのも大きな魅力。敵だけでは無く、一般市民の逃げ惑う姿も描かれたカーチェイスシーンの描写、リアルで精密な破壊描写、大迫力の爆発炎上シーンなど、映画版007シリーズとみても遜色のない演出と派手なビジュアルには、時代が映画版007をゲームとしてほぼ忠実に再現できるまでに追い付いたという、感慨深いものを感じてしまうこと請け合い。特にオープニングに当たる最初のステージは、その恩恵が如何なく発揮された仕上がりで、何度も遊びたくなる魅力に秀でている。一番最初という事で嫌でも遊ぶ羽目になるステージだが、最後までやり通せば、本作の007作品としてのらしさを存分に感じること間違いなし。同時に夢のような時代になったなと、素晴らしいビジュアルの数々にため息が出てしまうだろう。
TPS単品としても、必要最低限に留めたアクションに「フォーカス・キル」によるヘッドショットのサポート機能など、TPS未経験者に取っ付き易い作りになっているのが秀逸。ボンド自身の耐久力が低めに設定されているだけあって、迂闊な力押しができない所こそあるが、敵の耐久力も相応に低めで倒し易いほか、「フォーカス・キル」を使えば最大三人を瞬殺できるなど、長期戦になり過ぎない為の工夫が凝らされているので、テンポ良く楽しめる作りになっている。
何より、「フォーカス・キル」で手早く、攻撃される前に敵を仕留めた際の快感は格別で、凄腕スパイである007の強さを実感できるのが秀逸。また、そう言った強力な一撃が可能になる事から、自然とステルス行動を心掛けていきたくなる、スパイとしての隠密行動を推奨する役割として機能しているのも見事だ。基本、ステルス行動を心掛けた際の特典と言えば、プレイヤー自身が無傷で居られる事だが、今作はそこに必殺技が使えるようになるという特典を設け、より行動する事の魅力を高めている。それによって「突破するなら全滅させればいいじゃん」という簡単な発想にプレイヤーを行き渡らせず、「静かに動けば後々、楽かも…」と先の事を考えて進む意義を持たせるようにしているのは実に巧み。主人公がスパイであるという設定を活かしているだけでなく、銃撃戦に挑んでも構わないという自由な設定を凝らしたステルス要素特有の穴を塞ぐ措置になっているのにはこのシステムが如何に秀逸なものであるのか、という事を実感させられる。先の通り、厳密には今作独自のものではないのだが、スピーディに連射できて瞬殺できる使い勝手の良さには、007としてのらしさがたっぷり。真新しさ皆無とは言え、非常に計算されたシステムに仕上げられている。
その他、ロケーションも多彩。静かだけど罠だらけの工事現場と地下洞窟、水族館、巨大ホバークラフトなど、次々と移り変わっていく背景と奇抜なシチュエーションの数々はプレイヤーを退屈させない。カーチェイスも市街地を爆走するなど、破壊から爆発まで何でもありのハチャメチャで、007に限らず、アクション映画が好きな人ならば興奮必至。
そう完成度の高い本作だが、致命的な欠点がある。その象徴がストーリー。ネタバレになってしまうが、何と完結しない。これから、という所で終わってしまうのだ。一応、最終的に黒幕は倒されるほか、そこまでの流れもなかなか衝撃的な構成になっているのだが、全体的に大きな物語の序章という締め方になってしまっていて、スッキリしないものになってしまっている。こういう続編ありきの作りは『カジノ・ロワイヤル』以降の映画版007シリーズらしいと言えばらしいが、オリジナル作品ならオリジナル作品でしっかり完結する内容にして欲しかったところ。折角、本編が至れり尽くせりの充実した内容になっているだけに、こういう所でケチをつけてしまっているのは、ただひたすらに勿体ないの一言に尽きる。
TPSとしても作り込みの甘い所がある。特にカバーアクションの調整がおかしく、本来なら弾が敵に届かない所から撃っても敵に届いて命中してしまう。当たり判定が無いのは端の部分で、中央部分からはさすがに貫通せずにそこに着弾するのだが、この所為でギリギリ安全圏からショットすれば無傷で敵を仕留められてしまうのはゲームバランス的に問題があると言わざるを得ない。テストプレイで指摘されなかったのか。仮にもTPSでこういう粗を残してしまっているのは正直、お粗末と言わざるを得ない。他にカーチェイスシーンも作りは本格的だが、ほとんど追跡劇で統一されてしまっていて味気ない。逃亡劇もあって良かっただろうに、そう言ったものが一切無い故の出し惜しみ感が出てしまっているのは残念だ。
映画版007シリーズさながらの再現具合とレベルデザインの濃密さ、良心的なシステム周りは特筆すべき出来。なのに、周囲を固める要素とバランス調整がイマイチ。それもあって、手放しに誉められない内容になってしまっているのが惜しまれる。意欲的な内容なのに、どうして周りの要素をそうも不完全な状態にしてしまったのか。特にストーリーに関しては、続編前提の案を立てた制作スタッフに対しての憤りを覚えるばかりである。

シングルプレイだけでなく、マルチプレイにも問題があり、海外勢と戦うと露骨な遅延(ラグ)が生じるのが辛い。ルールも乏しく、ほとんどがチーム戦なところには強烈な物足りなさを覚えるかもしれない。また、マルチプレイに関連したトロフィーが用意されているのだが、この中に「相手を一切殺さない」というのがある所為で時折、不殺プレイを行うプレイヤーが出てくるのも嫌らしい。他にもトロフィーには問題点が多く、ほぼ運頼みなものがあったりする始末。この影響でコンプリート自体が無理ゲー同然になってしまっている。折角作ったのだからプレイして欲しいという意図があったのかもしれないが、だったら特定レベルを達成するとか、何回参加したとか、そういう簡単なものに留めて頂きたかったところだ。
ボリュームもシングルプレイのステージ総数が不足気味。その分、一つ一つが長めになっているが、ストーリーの難点もあって物足りなさが勝ってしまう。やり込み要素こそ先のトロフィーなど、それなりに充実しているが、もう少し単体での物量も頑張って欲しかったところ。ちょっと残念に感じてしまう内容だ。
操作性に関しては概ね良好。アクションが必要最低限に抑えられているので操作自体の習得はし易い他、挙動とかも重くなく、ボンド自身、軽快に動いてくれるのでストレスは感じさせない。カーチェイスシーンにしても、基本的にはアクセルとブレーキの二つを活用するだけと、シンプルな作りに徹しているので触り心地は良好だ。
グラフィックも背景やエフェクト周りの作り込みが凄い。ただ、人物周りのグラフィック(モデリング)はPS2時代のグラフィックを綺麗にしただけな古臭さが漂う。その分、背景や店舗に力を割いた結果なのかもしれないが、性能の持ち腐れ感が否めず。もう少し頑張って作り込んで頂きたかったところである。
反面、音楽は文句無しの出来。これぞ007と言わんばかりの印象深い楽曲が揃っている。特にカーチェイス全般の曲の出来は圧巻の一言。緊迫感溢れる旋律で大いに盛り上げてくれるので要チェックだ。

演出周りもムービーデモのカット割り、爆発系のエフェクトは圧巻で、前時代的なグラフィックを大いにフォローする。特にゲーム中盤、爆発炎上する石油工場をバックに展開されるカーチェイスは今作屈指の見所。その無茶苦茶過ぎるシチュエーションと作り込みの深さには思わず手が震えるほどの衝撃を覚えるだろう。
ボイスも日本語吹き替え仕様で、ボンド役に声優の小杉十郎太氏、その上司・M役に此島愛子氏を起用するなど、BD、DVD版『カジノ・ロワイヤル』、『慰めの報酬』に準じた配役が成されているのが見事。また、ボンドガールのニコールの役を声優ユニット「スフィア」のメンバーとして知られる高垣彩陽氏が務めるなど、007シリーズとしては比較的珍しい、若々しさの滲み出たキャスティングが行われているのも見所だ。
更に今作には英語音声も含まれていて、PS3本体を英語設定にする事でダニエル・クレイグ本人の声で楽しむ事もできる。設定が歪だが、吹き替えではないプレイヤーに向けた配慮が成されているのには、ローカライズ元であるスクウェア・エニックスが『コールオブデューティ モダン・ウォーフェア2』で非難を浴びた経験が活かされている感じだ。
全体的に007シリーズ作品としても、単品のステルス要素を含んだTPSとしても遊び甲斐は十分にある内容に完成されている。だが、未完のストーリーを始め、目に余る欠点も多く、傑作かと言われると正直、口を噤んでしまう出来ではある。007を題材にしたTPSとしての作り込みは悪くないのに、もどかしさ溢れる部分も多い本作。お薦めかというとはっきりと言い切れないが、凝りに凝ったシングルプレイの構成とカーチェイスシーンの迫力は一見の価値あり。決して遊べない出来では無いので、TPS未経験者や007シリーズファンなら機会があったら遊んでみて欲しい佳作だ。
≫トップに戻る≪