≫ワンダと巨像
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■発売元 |
ソニー・コンピュータエンタテイメント |
■ジャンル |
アクションアドベンチャー |
■CERO |
B(12歳以上対象)
※暴力、出血、殺傷描写あり |
■定価 |
7140円(税込)<Best版:2800円(税込)> |
■公式サイト |
≫こちら ※音が鳴ります |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1人 |
■セーブデータ数 |
メモリーカードの残り容量によって変化(※320KB以上の空きが必要) |
■その他 |
プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ専用 |
■総説明書ページ数 |
34ページ |
■推定クリア時間 |
15〜16時間(エンディング目的)、35〜45時間(完全攻略目的) |
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魂を奪われた少女。
青年ワンダは、少女を甦らせる為、「古えの地」を訪れる。
そして、天より響く導きの声。
声はワンダに、少女を甦らすのならば、この地に潜む16体の巨像を倒せと告げる。
ワンダは少女の為、愛馬アグロと共にたったひとり、巨像との戦いに立ち向かう…。
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆巨像を倒すだけに絞り込んだ、ボス戦主体のシンプルで分かり易い全体構成
◆ICOを髣髴とさせる、独特の空気感に満ち溢れた、美しくて繊細なグラフィック
◆巨像を探して見つけたら討伐…の繰り返しで構成された、分かり易い本編の展開(探索用のヒント機能も実装)
◆巨像戦の臨場感を大いに盛り上げる、壮大なオーケストラ調の音楽
◆文字通りの「死に物狂いな戦い」を体験できる、白熱必至の巨像戦
◆始めと終わりしか語られない故の「不安」が異彩を放つ、独特のストーリー
◆普通の人型のほか、動物型から鳥型、魚型まで多彩なバリエーションに富んだ巨像達
◆一体一体の特徴と個性が如実に表現されているのが見事な、巨像達のデザイン
◆アートとしてもゲームとしても、細部までしっかりと作り込まれた広大なフィールド
◆巨大な敵に登る事の難しさと絶望感を嫌になるほど煽り立てる、登る際の圧倒的な臨場感
◆ボス戦主体ながらエンディングまで15時間強と、なかなか充実した全体ボリューム
◆タイムアタック、高難易度モードなど、やり込み派向けの対処も万全なおまけ要素
◆本当に自分が主人公になり切ってるという錯覚が味わえる掴む操作のリアルな感触
◆温さと手強さが程好く絡み合った、適切なゲームバランス(全体の難易度)
◆あらゆる意味で見逃せないエンディング(ICOファンなら必見)
◆世界観の独特さを丁寧に表現した演出の数々(特にボイス演出が面白い)
--- Bad Point ---
◆ボタン操作も含め、ぎこちなさが際立つ操作性(特にジャンプ絡みの操作が難あり)
◆一部、1時間以上の長期戦に陥る巨像戦の存在
◆振り落とされた際の復帰のやる気を殺ぐ、一部巨像戦の無駄に広大な戦闘フィールド
◆基本、同じ事の繰り返しの為、単調化し易いゲーム展開(巨像戦は別)
◆美しい映像に割り合わない低いフレームレート(カクカクする…)
◆思い通りにコントロールするのに癖があるのが勿体無い、アグロ(馬)の操作性
◆斜め後方視点という特殊な作りの為、やや慣れを要されるカメラワーク
◆人によっては賛否が分かれるエンディング
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▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
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魂を呼び戻すのなら、相応の代価を差し出せ…。
そして悲劇は訪れる。
プレイステーション2初期の名作にして、独特の世界観と芸術的な映像表現で国内外からも高い評価を得た『ICO』の開発スタッフが送る、新作アクションアドベンチャーゲーム。
巨像の圧倒的な威圧感と独特のゲームデザインが光る、PS2の意欲作だ。
ゲーム内容は3D視点で展開する、アクションアドベンチャーゲーム。しかし、その基本的な構成はかなり特殊。全部で16体もの巨像との戦いを終始、繰り返して行くという、ボス戦だけに絞り込んだ、極めて斬新なものとなっている。一応、広大なフィールドもあり、そこを動き回れるのだが、道中には敵など一体も登場しない。
出て来る敵は、基本的に巨像のみ。そして、戦う場面も巨像との戦いだけしかない。よく見てみれば結構シンプル、だけど構成としては他に類を見ない。何とも摩訶不思議な内容のアクションアドベンチャーとなっている。
それだけに、本編の流れもかなりシンプル。『ドルミン』なるプレイヤーを導く存在から「この巨像を倒せ」という指示を受け、フィールド上を歩き回って巨像がいる場所を探し、巨像を見つけたら戦って倒す。たったそれだけ。途中、「このアイテムを回収してこい」みたいな別の指示をされる事も一切無し。最初から最後まで、淡々と巨像を討伐していくだけのサッパリとしたものとなっている。それでも肝心の中身は意外にそうでなく。
特に巨像を探し出すパートだが、この探す対象となるフィールドが随分と広大。単純に動き回るだけでもおなかいっぱいになれる。しかも、このフィールドを彩るグラフィックがまた大変美しく、各地を観光する楽しみまで演出されているという凄さ。目的はシンプルなのに、それが苦にならない楽しみを加味すると言う、絶妙な味付けが成されている。
巨像が隠れている場所もまた絶妙に分かり難く、フィールド全体を調べ尽くす、探索の面白味が引き立てられているのが秀逸。更に主人公、ワンダの武器である剣をかざすと、巨像のいる場所を光で指し示してくれるなど、迷わせなくする為の配慮も万全。やるべき事は単純。だけども簡単に終わらせずその絶妙なさじ加減は、まさに職人技だ。また、この単純な流れはプレイヤーの目的の分かり易さ、ゲームのコンセプトを明確に示しているのも面白いところだ。基本的に巨像を倒す事に集中すればよい、そしてこのゲームはそれだけが全てだと、その潔いは実に気持ち良い。目的がはっきりしているからこそ、他の事に気を取られ難いし、本質的な遊びだけにのめり込む事ができる。このゲームはこういうものなんだと、こうもズバッと示すゲームデザインは何処となく、昔のゲームを髣髴とさせる良さが際立っている。目的を絞り込んでこそ、ゲームの個性は出ると主張するそれは、如何にも、脱出というテーマを徹底して見せたICOスタッフらしい。
他にストーリーも流れが単純であるが故の「不気味さ」があり、先の気になる作りになっているのが印象的。その不気味さを恐怖へと変えるエンディングの内容もまた、プレイヤー心理を捉えた仕上がりになっていて、見応えがある。
巨像との戦いを淡々続ける。シンプル過ぎる今作だが、細かい所において単純さを逆手に取った工夫が充実。味気ないと思わせて実はそうでない、ワリと意外性の強い構成となっているのである。主に淡々と展開するが故のストーリーとその結末は結構、衝撃的。淡々と進む構成ならではのその演出には、誰もがしてやられたと感じてしまうだろう。
だが、そんな淡々に見えて意外性の強い全体の構成は今作の売りではない。例によって、売りはメインディッシュたる巨像との戦い。今作の肝となる部分が故に、その内容は実に衝撃的なものに仕上げられている。
特に衝撃的なのは単なるボス戦になってないことだ。基本的に巨像戦は、巨像の体力をゼロにすればプレイヤーの勝ちというルールなのだが、この巨像にダメージを与える過程が特殊。弱点である『光の紋章』に剣を突き刺せば良いのだが、その紋章というのが巨像の頭とか、地上からは到底届かない場所にセットされている。つまり、そこまで行くのに巨像本体にしがみ付き、登らなければならない。要は巨像とは、ボスであると同時に「意思を持ったステージ」でもあるのである。弱点という名のゴールを目指す為、揺れ動く身体を登る!そんな斬新極まりないゲーム性をこの戦闘は演出してしまっているのだ。そもそも、ボスそのものがステージという考え方自体が実に大胆。大きなボスは、単にでかいだけでなく、手を加えるとステージにもなる。その着眼点がまた、アクションゲームとしては革新的過ぎる。大きいからこその強さで終わらせず、大きいからこその遊びを導入する大胆さ。正直、これには脱帽だとしか、他に言葉が見つからない。
ステージ単位の考え方で作られているが故、巨像自体の個性も際立つ。空を飛ぶタイプ、水中タイプ、小柄なタイプと一体一体、異なる戦いと登る楽しみを演出している。肝心の倒し方の過程もアイディア満載だ。戦闘フィールド上にある建造物を罠代わりに使ったり、指定の方向に突撃させて気絶を誘うなど、この巨像との戦いに絞り込んだからこその作りの深さが光っている。デザインも秀逸で、「巨像」の名を馳せないその威圧感と大きさは、単に見るだけでも圧倒させられるものがある。巨像戦の肝でもある、体を登る過程もスリル満点。基本的にR1ボタンで巨像の「体毛(?)」を掴んで登るのだが、これを掴んでいる際、腕力が消費されていくのがミソ。永遠にしがみ付いたままでいられず、素早く登らないと落とされてしまうのである。しかも、腕力は巨像が体を揺らしたりすれば、更に消耗が激しくなる。巨像によっては、例え掴んでいても強風で飛ばされるなど、他の付加要素が邪魔をしてくるなど、まさに死に物狂いの激しさ。真の意味で手に汗握る感覚に富んだ、圧倒的な臨場感と手応えを堪能できるのである。掴んで離してはいけないその手応えは、アプローチは違えどICOそのもの。前回は少女の手、今回は巨像の毛と、別のやり口で「手を離してはいけない恐怖」を描いたその様は、何ともユニークだ。そして、この本当に巨像を掴んでるかのような生々しさも強烈。緩やかな振動と相まって、本当にコントローラに汗が溜まっていく様はある意味、恐怖だ。画面の向こう側の出来事が、こちらにも伝わって来るなんて前代未聞。演出次第でこうも生々しくできるかと、その感触の凄さには圧倒されてしまうだろう。
ただ、操作の癖が強いのが惜しい。主にジャンプだが、かなりもっさりとしている上、助走を十分につけないと届かない事があり、変にリアリティを追求し過ぎてしまってるのがきつい。その追求が件の生々しさを醸し出しているのも事実で、このやり口は決して悪いとは言えないだが、無駄に誤動作が起き易いのはどうにかならなかったのか。掴んだはずが掴めてなかったりと、妙にシビアな調整には疑問が残る。この辺は多少緩くするなり、して欲しかったところだ。折角、臨場感では申し分無い凄さを出してるのに、ここで足を引っ張ってしまってるのは惜しい。
それでも、巨像をステージとして捉えた設計、掴む手応えの生々しさは十分過ぎるほどのインパクト。主に巨大なボスは強いだけでなく、手を加えればステージにもなるというその作りは、まさにしてやられたな気持ち良さが溢れている。
そして、本編の展開を淡々とさせる犠牲を払って作り込まれた各巨像のデザイン、戦闘内容の多彩さも素晴らしく、常に新鮮な戦いが味わえるのも見事。まさに一つのコンセプトに絞り込んだなりの作りの深さに秀でたこの様。ここで推すのもアレだが、この戦闘はPS2を持つユーザーなら何が何でも挑む必要のあるものと言ってもおかしくないだろう。
文字通りにスケールのでかい展開、強敵を打ち倒す達成感、その全てがプレイヤーに色んな意味で、爆笑必至の面白さを提供してくれる。これが見所じゃないとして何と言う?本当、これは色んな意味で必見だ。
その他、各巨像との戦いの戦闘バランスも適切。体力の回復が単に立ち止まるだけで出来る等、親切な一面もあるのだが、それでも気の緩みが命取りになるなど、なかなか突き詰めた調整が図られている。だが、戦闘バランスは一考の余地あり。主にフィールドの広さを無視した、異常に長引く巨像との戦いがあるのはちと問題。広いフィールドだから、時間がかかるのは当たり前という説得力は出てても、実際は辛さが勝っているので、褒められたものではない。復帰手順を簡単にするとか、そう言った工夫を徹底して頂ければ良かったのだが、それが希薄なのが残念である。
ボリュームは全体的に適切な量。ボス戦中心の内容でありながら、クリアまで15時間以上はかかると、なかなか歯応えのあるものに仕上げられている。更にタイムアタック、ハードモード等のやり込み要素まで搭載。ICOとは異なる、ゲーム的なアプローチが徹底されているのも、なかなか面白いところである。
グラフィックも素晴らしい。繊細な光と影の表現で彩られた美しい自然物、幻想的な遺跡を初めとする建造物など、全てが芸術的な美しさで、「この世界をじっくり駆け巡りたい」という思いに浸らせてくれる。巨像戦にて流れる音楽も熱い。大谷幸氏作曲による荘厳なオーケストラ風の楽曲の数々は、戦闘の臨場感を無駄に盛り上げる。曲自体もパワフルな名曲が充実しているほか、戦闘の状況に応じて、曲調が変わるなど、ニクい演出が成されているのが印象的だ。
そしてストーリー、演出も独特。特に前者は既に語ったが、結末が実に衝撃的。巨像を倒し続けると何が起きるのか、というプレイヤーからの疑問にストレートに答えたその展開は見逃せない。また、前作に当たる『ICO』を髣髴とさせる演出もチラホラ。一部、それとの繋がりを示すかのような描写もあるので、前作ファンなら要チェックである。
操作性の問題や巨像との戦いメインの展開など、今作は欠点もICO以上に目立つ。フレームレートが低いなど、荒削りな一面が見受けられるのも苦しいところだ。だが、純粋にアクションゲームとしてはかなりの出来。巨大な敵を相手に戦う臨場感の高さ、手応えに富んだ操作感は他では味わえないオリジナリティに溢れている。全てにおいて革新的なアイディアが満載の、この『ワンダと巨像』。
好みの分かれる一面もあるが、PS2を持っているユーザーならばプレイする価値アリの意欲作である。この圧倒的な威圧感は、他では味わえない。せめて一撃だけでも加えてみましょう。
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