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≫サモンナイトエクステーゼ 夜明けの翼
■発売元 バンプレスト
■開発元 フライトプラン
■ジャンル ファンタジックアクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリーカードの残り容量によって変化(※145KB以上の空き容量が必要)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ(DUAL SHOCK2)専用
■総説明書ページ数 50ページ
■推定クリア時間 21〜25時間(エンディング目的)、60〜70時間(完全攻略目的)
見知らぬ洞窟で目覚めた主人公。
彼(彼女)は、その瞬間に自分の記憶が失われていること、そして自分の身体の中にもう一つの別の意識が入ってしまっていることに気付く。
それと同時に現れる不思議な少年『ノヴァ』…。
彼らはその者の言葉の通り、自分自身と世界の理を知る為の長い旅に出る事となる。
果たして、その先には何が待っているのか…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆アクションRPGの基本を尊重した、オーソドックス極まりないメインゲームシステム
◆特徴の異なるキャラを状況に応じて使い分ける、ネタとしてはありきたりだが安定した面白さを秘めたキャラクターチェンジシステムこと『二人で一人の主人公』
◆攻撃力が高い、連続攻撃が出し易いと言った明確な差異が強調された二人の主人公
◆基本は剣を振るとジャンプぐらいと、初心者にも取っ付き易い希少なプレイヤーアクション
◆アクションの少なさがもたらした、シンプルで取っ付き易い快適な操作性
◆王道のファンタジーと思わせて意外な展開を見せる、見所満載の秀逸なシナリオ
◆チュートリアルにボイス消去機能など、痒い所まで手の届いたサポート機能群
◆ほぼ皆無に等しいロード時間(故にゲームテンポも良好)
◆ごり押しを封じるなど、シナリオ主導ながら意外にきっちりまとめられたゲームバランス
◆優し過ぎず、難し過ぎずの丁度良いバランスでまとめられたフィールドの謎解き
◆一画面に収まる程度のボリュームが絶妙なマップ構成
◆マルチエンディング、モンスター図鑑などしっかりと整えられたやり込み要素
◆2Dと3Dを違和感なく織り交ぜた、独特のポップな雰囲気が印象深いグラフィック

--- Bad Point ---
◆『名前のかけら』を集める、その根本的な仕組みからして理解不能な召還獣の取得方法(何故、宝箱などからすんなりと入手する仕組みにしなかったのか?)
◆落とす確率が低すぎる、雑魚敵が所持する『名前のかけら』(このせいで持ってる事に気付かずに素通りしてしまい、後で最初のマップに取りに戻らねばならぬハメになる事が…)
◆全てを入手しなければクリア不能な召還獣達(この仕組みでこの条件は酷過ぎる)
◆いちいち、敵の色に応じて切り替えねばならないのが面倒臭い二人で一人の主人公
◆初心者には取っ付き易いが、やはり少ない感は否めないプレイヤーアクション
◆地味に広過ぎる感が否めない、プレイヤーの当たり判定
◆あまりに空気で印象にすら残らない音楽(一部、良い曲もあるが…)
◆何故かポーズ不能のボス戦(トイレに行きたくなった時とかどうするの…)
◆基本的にテキスト主体で構成された、素っ気無いチュートリアル(丁寧だけど…)
▼Review ≪Last Update : 12/20/2008≫
デジャヴループ、ここにあり。

初体験であればそれも無い…。


程好い難易度と可愛らしい世界観で好評を博したシミュレーションRPG『サモンナイト』シリーズの外伝。開発は正伝シリーズと同様にフライトプランが担当。

システムはデジャヴ全開、ストーリーは良し。
主となるコンセプトが見え難い、どっちつかずなアクションRPGである。

ゲーム内容は正伝サモンナイトシリーズとは大幅に異なる、トップビュー(見下ろし)視点で展開するアクションRPG。レオンとエイナ、男女二人のキャラクターを使いこなし、章(ACT)単位で区切られたシナリオを攻略していくというものだ。
全体的な作り自体は、任天堂の『ゼルダの伝説』などのアクションRPGの基本に忠実とでも言わんばかりにオーソドックス。ジャンルとしての真新しさは皆無と言っても良いような内容に仕上げられている。ただ勿論、今作特有の要素もしっかりと搭載。けど、どの要素もゲーム歴の深いユーザーの方ならば、猛烈な既視感(デジャヴ)を覚えるに違いないだろう。
というのも、今作を構成している要素の大半は過去に別ゲームであったネタの使い回し。
例えば、その特有の要素で『二人で一人の主人公』…なんてのがあるんだが、これ要は『キャラクターチェンジシステム』のこと。二人の性能の異なるキャラを状況に応じて使い分ける、アクションRPGはおろか、アクションゲームなどの他ジャンルでも起用された歴史を持つ、もはや新しいとは到底言い難いシステムを何故か、こんな呼び名で今作は収録しているのである。まるで昔、一世を風靡していた人気商品を名前を変え、新商品として発売するかのように。 しかもそれでいて(悪い意味で)凄いのがこれらの要素、独自の試みがまるで凝らされてないこと。
言うまでも無く、現在取り上げている『二人で一人の主人公』もだが、基本的な作り自体はまさに、一昔前のゲームにあったものと一緒。身体的な特徴が二人とも異なったりなど、ひたすらありきたりに終始してしまっているのである。そんなのだから、触った際の手応えに新鮮味も皆無。初めてこのシステムに触るという方は新鮮な味が堪能できるだろうが、もう既に様々なゲームでこれに似たシステムを体感してきた方ならば「またこのシステムですか」と言った感じに、逆に呆れてしまうだろう。ただ、その基本を忠実に守っている点では、評価に値すると”辛うじて”言える。これで二人の特徴をほぼ一緒にするとかしていたら、何の為の二人か意味を成していなかっただけに、その辺の処置は素直にお見事だ。使い慣らされた処置であるので、決して大声では言えないが。
しかし、そうやって基本を忠実に守りつつも足した要素、敵の『色分け』なる試みは余計の一言。青の敵にはレオン、赤の敵にはエイナと言った感じに今作では戦闘をこなしていくのがメインとなるのだが、これがまた強烈に面倒臭くて面白くない。何よりも、この色分け自体が使い分けの面白さ以前に作業的なプレイを促してしまっているのがあまりにも痛過ぎ。遊びと言うよりは『仕分け』になってしまってる。しかも、肝心の敵達はプレイヤーキャラの色がなんであろうと適用される攻撃を繰り出してくるのだから、バランス的にも不公平が貫かれてしまっている有様。
これで、青の敵の攻撃はレオンで受けるとダメージが少なくなる(流石にノーダメージはゲームバランスが崩れる恐れがあるだろうから無しとして)などの救済処置が凝らされていれば、少しはメリハリも付いていただろうに。ただひたすらにこれは余計だといわざるを得ない。こんな要素を足すぐらいだったら、最初から基本に忠実なアクションRPGを守り抜いていた方が遥かに良かっただろうに。何故、こんな真似をしたのか。全く持って、適当にも程があるばかりだ。新要素を入れるぐらいならば、ちゃんとそれが遊びとして成立するのかどうかの検証をきっちりやってもらわないと困る。
まさに、ここまでの時点で締めくくると『オリジナリティは皆無の作品』と言った感じ。それでありながら、肝心の詰めがいま一つという、純粋にアクションRPGとしても物足りない雰囲気が漂う、どうしようもない作りに終始してしまっている。
見方を変えれば、新しくて面白いゲームを作る志すら無いと見てもおかしくははないほど。
元ネタがあろうとも、そこから新しいものを作り上げようとする意欲が薄過ぎるのである。

更に基本的なシステム周り、アイディアだけに限らず、アクションや個々の特殊要素と言った箇所もネタがありきたり、検証不足な出来に終始してしまっている。
アクションに限っては、とにかくその乏しさに驚かされる。基本的にキャラチェンジ以外でプレイヤーが行えるものと言ったら移動(走る)と剣を振る、ジャンプする、そしてアイテムを使うのたった4種類。敵の攻撃を防ぐガード、ダッシュ斬りのようなものもなく、ゲームを進めるにつれてアクションが増える…ことも無い。ずっとその4種類のまま。ある意味、アクションRPGとしては失格もスレスレな、酷く詰めの甘い作りに終始してしまっている。
同じアクション要素を絡めた外伝作品『クラフトソード物語』ではガードがあったりと、アクションも充実していたのに何故に今作ではここまで絞り込んでしまったのか。初心者にも安心して楽しめるように…という狙いがあってなのかもしれないが、だからと言ってこれは流石に削りすぎである。せめて最低限、ガードアクションぐらいは入れて欲しかった。
そしてもう一つの個々の特殊要素…、その中でもシリーズお馴染みの『召還獣』のシステムも詰めが甘い…いや、むしろこれは最悪としか言い様が無い。
仕組み自体は『ゼルダの伝説』で言う所のアイテムみたいなもので、これを使って今作ではマップ上のトラップや仕掛けを解除して行ったり、或いは戦闘で補助として使ったりするのだが、これの習得方法がまた残酷。普通に宝箱とかを開けてゲットするのではなく、『名前のかけら』と呼ばれるパズルのピースみたいなアイテムを一定数集める事で手に入る、あまりにも煩わしいことこの上ないものになってしまっているのである。しかも、この『名前のかけら』…大半はフィールド上を歩く雑魚敵が所持。加えて彼らを倒しても直には手に入らない…最低で三回、多くて五回は倒さなければ出てこないという、とてつもなく嫌らしい確率補正が行われてしまっている。それ故に「その敵がかけらを持っている」と言っても、なかなか出て来ないのでハズレとその時点で勘違いし、無視して素通りしてしまう「事故」が起き易い。つまり、あとでその召還獣が必要になった際に、最初の方のマップに戻らねばならないという無駄な手数を強いられるハメになったりするのである。そして極め付けがこの召還獣は一つの取りこぼしも許されないこと。
もう、この仕様からして見え見えだが、これは最悪も最悪なシステムだ。普通に宝箱を開けたと同時に手に入る仕組みの方が明らかにストレスも少ないし、ゲームとしても快適に楽しめるだろうに何故、こんなプレイヤーに無駄な手数を強いるようなゲームデザインを施してしまったのか、理解不能だ。
また、あからさまなボリューム稼ぎの狙いが見て取れるのも実に気持ち悪い。そんなにもボリュームを増やしたければ素直に章の数を増やしたり、或いは一章を長めにすれば良いだろうに、何でこんな手段を使うのか。本当、こればかりはスタッフのゲームデザインセンス、無さ過ぎの一言に尽きる。仮に他のシステムがありきたり過ぎたたから、ここだけは独自性を出すとかいう狙いでこうしたとかだったら言語道断も良い所。こんな面倒臭くて手数のかかるシステムの何処が、遊びとして面白いと言えるのだろうか?楽しいという言葉が出てくるのだろう?本当、この本気で面白いゲームを作る志の無さには呆れるばかりだ。
どんなにネタが過去の使い回しであれ、そこに独自の工夫を凝らせば、そのゲームは一定のアイデンティティーを確立するもの。 そんな工夫をしない以前に、逆にゲームとしてのクオリティを低めるような処置を行ってしまっている今作は、純粋にアクションRPGとしては二番煎じに過ぎないのは言うまでも無い。一体、スタッフは何の遊びをプレイヤー側に提供しようとしたのか。そして、どんなコンセプトのゲームを作ろうとしたのか。それすら見えてこない今作は正直、アクションRPGという以前に…ゲームとして完全に成立しきっていないと言ってもおかしくは無いだろう。

しかし、システムなどは無茶苦茶だが、操作性やゲームバランスは今作、綺麗にまとめられている。特に後者のバランスは、見た目の世界観に左右されない、ちゃんとした手強さのある難易度でまとめられているのがお見事。戦闘において「ごり押し」が封じられている辺りも、堅実なゲームを作ろうとする姿勢がうかがい知れるのがある意味、救いだ。
また、このアクションRPGと言えば、ダンジョンなどにおける『謎解き』が付き物だが、これも今作は変に入り組んだものを用意せず、初心者も冷静に考えれば必ず解ける、シンプルなものに終始しているのが素晴らしい。システム自体は問題だらけだが、主に召還獣を使った謎解きとかはなかなか良く出来ており、サモンナイトシリーズとしての「らしさ」が尊重されているのが良い感じだ。
そしてゲーム以外の箇所だが、メインとなるストーリーもなかなかの出来栄え。公式サイトやパッケージの雰囲気からして一見、王道のファンタジーモノっぽい感じなのだが、これがまた…思わず口が開いたままになるほど、驚きの内容となっている。特に中盤以降からの展開は衝撃的で、そのあまりに惨たらしい光景に誰もが「こんな可愛らしい絵でこんな重い話とは…」と、呆気に取られてしまうだろう。正直、このストーリーを見る目的で今作を遊ぶだけの価値は十分にある。シリーズファンにとっても興味深い描写などがチラホラあるのみならず、シリーズ初心者でも入れ込み易い作りとなっているので、是非とも要チェックだ。このストーリーへのこだわりは、流石はサモンナイトと言ったところ。そして、そう言ったこだわりをゲームでも発揮して欲しかった…の一言だ。

その他にも丁寧なチュートリアルに充実したオプション、豪華声優陣によるフルボイス演出(オプションで消す事も可能)、そして2Dと3Dが違和感なく融合したグラフィックなど、見所はそこそこある。純粋に見て、ストーリーとかキャラクターを楽しむ目的で今作をプレイするのはアリと言えるだろう。 しかし、アクションRPGというゲームとして遊ぶのはそうとは言えず。詰めが甘過ぎるシステム、真新しさにかけるアイディア、そして致命的な面倒臭さと…今作だからこそ体感できる遊びは、皆無と言っても良い位なので、過度な期待はしない方が無難だ。 『愛の無い使い回し』としか言い様の無いつまらないゲームシステムを備えながらも、痒い所にまで手の届いたサポートと優秀なストーリーを裏に秘めたこの『サモンナイトエクステーゼ』。 辛うじて遊べる作りにはなっているが、総じてストーリーとキャラ重視のプレイヤー向けの一本である。
何か面白いストーリーのゲームが無いかなという方には、この上ないほど適した作りとなっているので是非、プレイしてみて欲しい。逆に純粋なゲームを求める方は、別のゲームに行きましょう。
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