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≫怪盗スライ・クーパー
■発売元 ソニー・コンピュータ・エンタテインメント
■開発元 サッカー・パンチ
■ジャンル 怪盗アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 6090円(税込)
■公式サイト こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※約50KB以上使用)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ専用
■総説明書ページ数 24ページ
■推定クリア時間 8〜12時間(エンディング目的)、18〜30時間(完全攻略目的)
「狙うは悪党のみ、善人からは盗まない」という厳しい掟の下に行動する、誇り高きアライグマの義賊『クーパー一族』。その家系に生まれたスライは9歳の頃、父親から祖先達が編み出した技を記した『ラクーナの秘伝書』を受け継ぐはずだった。だがその晩、『デアボリック・ファイブ』なる5人の悪党が彼らを襲い、スライと大切な杖『セプター』を隠した父親を手に掛け、秘伝書を5つに引き裂き、逃亡してしまった。

一人ぼっちとなり、身寄りもなかったスライは街の孤児院へと引き取られるが、そこでスライはカメのベントレー、カバのマーレーの二人の素晴らしい仲間と出会う。そして青年に成長したスライは父の仇を討ち、秘伝書を取り戻す為、二人の仲間を連れて『デアボリック・ファイブ』の本拠地へと乗り込む。

クーパーの名に恥じぬ義賊になれるか、御先祖の顔に泥を塗るか。
彼らの運命はどっちだ?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆宝物を奪い取るのではなく、潜入しながらステージを攻略していく事に特化した、シンプルなゲームシステム
◆ジャングルに雪山、要塞など種類に富んだ全5ワールド40以上のルート(ステージ)
◆一般的なアクションからシューティング、更にはレースまで種類豊富なルートジャンル
◆サーチライトにレーザートラップ等、怪盗らしさを助長するルート内の多彩なギミック群
◆壁に沿ってのすり足、物陰に隠れるなど、見た目の華麗さが秀逸な怪盗アクション
◆如何にも「怪盗してます」という気分を煽る、雰囲気満点の怪盗アクションの演出(特にすり足等のアクションで静かに流れる愉快な効果音は必聴の価値アリ)
◆複雑さ皆無で取っ付き易い、優れた操作性(怪盗アクションのシンプルさも秀逸)
◆「1対1のガチンコ勝負をする」だけの内容に留まっていない、アイディアに富んだボス戦
◆『金庫破り』に『タイムトライアル』等、豊富に盛り込まれたやり込み要素
◆怪盗のシビアさと実力でカバーできる絶妙さが両立した、練られたゲームバランス
◆チュートリアルにショートカット機能付セーブファイル等、無駄に凝ったサポートシステム
◆激しく回転する事も無くて酔い難い、適切なカメラワーク
◆トゥーンシェーディング技術をフルに活かした、アメコミ調のセンス溢れるグラフィック
◆状況に応じて曲調を一変させる等、場の雰囲気作りがしっかりした音楽
◆基本は悪者退治だが、怪盗お約束のネタが盛り沢山の秀逸なストーリー
◆オリジナルの英語に日本語吹き替えの二種類が選択できる、贅沢な音声オプション

--- Bad Point ---
◆劣悪なシューティングルートの操作性(右スティックで弾発射とか、あり得ない)
◆丁寧だが、解説が無駄に長くてじれったい感も否めないチュートリアル(カットが効かないものがあるのも嫌らしい)
◆ネタは盛り沢山だが、コンパクトにまとまり過ぎている感が否めないルート構成
◆数字が小さくて目の悪い方には辛い、金庫破りの数字操作(クローズアップされないのが酷い)
◆悪者退治の匂いが強く、怪盗らしさに乏しいストーリー
◆時間設定がシビア過ぎる感の否めない『タイムトライアル』(いつもギリギリなのは…)
▼Review ≪Last Update : 6/14/2008≫
レッツ怪盗!

でも、実際の所は悪者退治メインです。


義賊のアライグマとその仲間の活躍を描いた、3D視点で展開する怪盗アクションゲーム。開発は海外のソフトハウス『Sucker Punch Production』が担当。

宝物を悪党から奪い取るのではなく、怪盗として潜り込む事(&逃げる事)と仕掛けを突破する面白さにこだわった、PS2の隠れた名作アクションゲームだ。

怪盗アクションゲーム…と表記されているが、実質的なゲーム内容は3D視点で展開する、ステージクリア型アクションゲーム。アライグマの義賊『スライ』を操作し、全5ワールド40以上ものルート(ステージ)を攻略していくという、至ってシンプルなものだ。怪盗を題材としたアクションゲームという事から、いわゆる『悪党に奪われた宝物を取り返していく』と言ったものを想像してしまうが、実際の本編にはそう言った『宝物を奪って逃げる』みたいなシチュエーションはほとんど無く、基本的に舞台となるルートの奥にあるゴール、厳密には他のルートにかけられたロックを解除する為の『カギ』が置かれている部屋を目指していくという、よくあるタイプのアクションゲーム…とも言うべき内容となっている。某ルパン三世さながらに、敵を欺きながらお宝を頂戴していくアクションゲームであらず。その事からして、今作がかなり拍子抜けなゲームとなっているのは、想像に難くないだろう。
だが、全編において怪盗らしさが無いという訳ではあらず。確かに、舞台となるルートのクリア条件こそ、カギを手に入れる…という怪盗らしさに欠けたものになっているが、そのカギを手に入れるまでの道のりに関しては別。発見されると、激しい攻撃を仕掛けて来る敵兵が巡回していたり、同じく発見されると攻撃モードに移行する『レーザートラップ』が張り巡らされていたり、サーチライトが所々に仕掛けられていたり等、全体的に怪盗として”潜入する”事の面白さとその醍醐味が存分に発揮されたものに仕上げられているのである。また、基本的にどのルートでも敵兵はそんな出て来ず、どちらかと言うと先のサーチライトを始めとするトラップの方に大きく比重が掛けられた構成となっているのも然り。更に「怪盗が相手に見つかる事は死を意味する」という事で、敵の攻撃やサーチライトを始めとするトラップに触れただけで即アウトとなる、『一撃アウト制』を取り入れているのも、そんな怪盗としての”らしさ”を大いに演出している。
物を頂戴する要素は皆無ながら、こう言った怪盗として潜り込む要素(&逃げる要素)、在るべき姿に対するこだわりについては今作、とても丁寧に作り込まれており、如何にも「怪盗が主人公のアクションゲームをやっているな」と言う気分に浸れる作りとなっているのだ。宝物を悪党から奪ってこその怪盗なんじゃかと思う方も、実際にプレイしてみればそんな要素が無くても今作がちゃんと怪盗している、そして宝物を悪党から奪い取る事だけが怪盗の在るべき姿ではないんだという事を、とくと思い知らされるだろう。
丁寧に作り込まれているのは怪盗らしさのみではない。舞台となるルートも仕掛けの配置、構成共に絶妙なバランスで設計されている。更にルートも一般的な潜入ルートのほか、仲間の援護をするスナイパールートに乗り物に登場して迫り来る敵を打ち倒していくシューティングルート、敵と競争をするレースルート等、バラエティーに富んでおり、プレイヤーを飽きさせない。特に一瞬の油断がミスへと繋がる、スナイパールートの緊張感は格別。そして、怪盗がスナイパーとして活躍するそのシチュエーションには、誰もが目を疑ってしまうだろう。
その他にも、各ルートには『金庫破り』、『タイムトライアル』等のやり込み要素も完備されており、ただクリアするだけでは物足りない上級者プレイヤーの為の配慮が徹底されているのもお見事。そして、ワールドの終盤にはボス戦が行われるのだが、これも「ただ普通に敵を倒す」だけの内容となっていないのが刺激的だ。特にワールド3にて対決する『ミズ・ルビー』との戦闘は要チェック。このあまりに突拍子な戦闘をやる目的だけでも、今作を遊んでみる価値は十分にある。

今作の売りでもある『怪盗アクション』も秀逸。壁に沿ってのすり足、物陰に隠れる、尖った先端への華麗なる着地、タルの中に身を隠しての移動など、それっぽいものが満載で、怪盗の醍醐味を満喫できる。しかも、これらのアクションがたったワンボタン(○ボタン一発)で発動できるのだから凄い。すり足する際にもワンボタン、物陰に隠れる時もワンボタン、着地する際もワンボタン…と、驚くほどスムーズに数々のアクションを繰り出す事ができてしまうのである。3Dアクションゲームと言う、複雑な操作(コマンド操作)が要求されがちなジャンルにおいて、この驚異的なシンプルさは特筆モノ。これぞまさに、複雑な操作がザラでもある他の3Dアクションゲームに対するアンチテーゼと言うに相応しいだろう。
また、怪盗アクションの数々が、ゲーム本編が進むにつれて徐々に増えていく仕組みとなっているのも大変親切。おかげで、自然とアクションの数々が身に付いていく。舞台となるルート内でも、新たにゲットしたアクションの基本を教える為に、その練習となるような地形をワールド序盤に張り巡らせるなど、実際の経験を積む事によってその感覚を覚えてもらおうとする、自然なチュートリアルが組まれているのも流石の一言に尽きる。加えて、仲間のナビゲーションによるチュートリアルまで備えられている始末。もう、ここまで丁寧にやられてしまうと、やり過ぎも良い所だ。何処までこのゲームのスタッフは、3Dアクション初心者の事を意識しているのか。本当、この徹底振りには圧倒させられるばかりだ。
他にも各アクションが、如何にも「ボク、怪盗やってます」的な雰囲気と気持ち良さに満ち溢れているのも面白い。特に発動時において周りの音楽が急に静まり、すり足等で移動する際には「テッテッテッテッテ…」という”如何にも”な怪しい効果音が流れるのは、否が応にもそんな気持ちを昂ぶらせてくれる。
潜り込む面白さと怪盗としての在るべき姿のみならず、こう言った怪盗特有の雰囲気を高める演出が成されているのもまた、先のように「怪盗が主人公のアクションゲームをやっているな」と言う気分に浸らせてくれて気持ち良い。改めて、今作の開発スタッフが如何に怪盗に対して思い入れがあるかという事を大いに実感させられるだろう。繰り返しになるけど、本当、実際に遊んでみれば「宝物を悪党から奪い取る事だけが怪盗じゃない」という事を、とくと思い知らされるだろう。

この他、操作性も既に先に語ったが難しいコマンドを入力せず、簡単に特殊なアクションが出せるようになっているので、凄く快適。キャラ自身の動きも変にもっさりとしていないので、気持ち良く個々のアクションを堪能する事ができる。
しかし、アクション以外のルート(ミニゲーム)での操作性については劣悪の一言。特にシューティングルートにおいて、弾を発射する際にボタンでなく、右スティックを倒すと言うのは意味不明。普通にボタンで撃つ方が遥かに快適なのに、何でこんな変なのを起用したのか理解できない。これは普通にボタンにして欲しかった。折角、アクションの操作性が良い仕事をしていると言うのに勿体無い。
ゲームバランスも、そのミニゲームの存在で若干、食われている所があるのが痛い。だが、全体的には安定しており、落ち着いて臨めばどのステージもすんなりと攻略できる、極めて絶妙なバランスを維持している。またルート内に再開地点が豊富に用意されており、凄く良い位置から再開してくれるので、さほどモチベーションが下がる事が無いのもお見事だ。
グラフィックもトゥーンシェーディングをフルに活かした、アメコミ風の描写が実に印象的。音楽も東京スカパライダイスオーケストラ作曲のテーマ曲以外、さほど印象に残る曲は無いが、状況に応じて曲調を変える等、雰囲気作りがとてもしっかりしているのがお見事だ。
そしてサポート周りもチュートリアルを始め、ショートカット機能付セーブファイル等、凄くこだわっている。また音声は日本語吹き替えとオリジナル(英語)の二つが選べ、プレイヤーお好みの音声で楽しめるようになっているのも必見。日本語音声の声優陣も関智一、真殿光昭、茶風林と実力派揃い。更にヒロイン役には元宝塚の真琴つばさを起用。舞台経験のある女優ならではの、ノリにのった演技は是非とも要チェックだ。

それ以外のカメラワークもさほど激しく回転したりしないので酔う事もほとんど無く、ストーリーも申し分無し。ストーリーは多少、悪者退治の要素が強過ぎるのが気になるが、随所において如何にも怪盗がテーマの作品らしい王道の描写が成されているのが秀逸。中でもスライとヒロインのやり取りは、ルパンファンならば思わずニヤリとしてしまうはずだ。多少ながら、臭い所もあるんだが…そこは目を伏せるとして。
シューティングルートにおける操作性、やや冗長気味なチュートリアル(レースルートのチュートリアルが特に酷い)、一部の無駄な怪盗アクションなど、残念な所もチラホラとあるが、アクションゲームとしての完成度は折り紙つき。潜入の面白さにこだわったゲーム展開、バラエティ豊かな全40以上ものルート、爽快な怪盗アクション、優れたサポートシステムと、怪盗ながらも”優等生”と言うに相応しい出来を誇る、この『怪盗スライ・クーパー』。
アクションゲーム好きは勿論のこと、PS2を持っているユーザーならば要プレイの逸品だ。
基本は悪者退治ですけど、「レッツ怪盗!」で行きましょう!文句無しにお薦め。
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