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  4. リーヴェルファンタジア マリエルと妖精物語
≫リーヴェルファンタジア マリエルと妖精物語
■発売元 ビクターインタラクティブソフトウェア
(現:マーベラスAQL)
■開発元 インフィニティー
■ジャンル ハートウォーミングRPG
■CERO(推定) A(全年齢対象) ※一部、出血描写あり
■定価 7140円(税込)<Best版:3150円(税込)>
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※31KB以上使用)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ専用
■総説明書ページ数 30ページ
■推定クリア時間 20時間〜25時間(エンディング目的)、40〜55時間(完全攻略目的)
奇跡が宿ると言われる『妖精の樹』。
それを守る家系に生まれた少女マリエル。村の人々には見えない妖精の姿が見える為、変わり者扱いされる事もあるマリエルだが、明るく元気な彼女は村の人気者でもあった。

そして、年に一度のお祭りの日。
突然の来客が訪れた事により、物語が始まる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆仕事をこなして借金の返済を行っていく、現実的な生々しさに満ち溢れた個性的なゲーム内容
◆バランスの良い構成と巧みな伏線回収が光る、珠玉のストーリー
◆非常に人間臭く、愛おしさすら覚える魅力的な登場キャラクター達
◆戦闘皆無で探索と謎解きに特化した、独特且つシンプルな作りが異彩を放つダンジョンマップ
◆洞窟、遺跡から足場が全く無い谷まで、バリエーション豊かなダンジョンロケーション
◆妖精使いという主人公自身設定を効果的に活かした、謎解き要素の数々
◆ダンジョン内に散らばる『マテリアル』を集めて妖精を作るという、作業的ながらも独特の中毒性に富んだ探索要素
◆多種多様な能力と見た目の可愛さが異彩を放つ全十種類以上もの妖精達
◆エンディングまで20〜25時間ほど、寄り道要素も適度に盛り込まれた充実したボリューム
◆簡易マップからのダンジョン移動など、気持ちよさにこだわった快適なインターフェース
◆ロムカセットのゲームかと錯覚するほどに早いロード時間(セーブデータ呼び出しも一瞬)
◆モデリングが古臭いが、元のイラストの可愛らしさがよく表現されたグラフィック
◆ほのぼのとした世界観に絶妙にマッチした穏やかな音楽
◆地味ながらもキャラクターモデルの動きと表情変化で適度に魅せる演出(イベントシーンがフルボイスであり、各キャラクターを演じている声優陣が意外と豪華なところも見逃せない)

--- Bad Point ---
◆じゃじゃ馬過ぎるカメラワーク(やたらグルグル回る上、自由に設定できないなど非常に劣悪)
◆プレイヤーに近付き過ぎた基本設定とグルグル回るその仕様故に発症し易い3D酔い(3D慣れしてない人なら、地獄のような苦しみを味わうかも)
◆挙動が重く、ぎこちない手応え故に動かす楽しさに欠けた操作性
◆ぎこちなくて癖が強過ぎるジャンプアクション(いわゆる『プリンス・オブ・ペルシャ』的で、慣れが必要とされる)
◆カメラワークと操作性の所為で無駄に高く引き上げられてしまっている難易度設定(謎解きはそれほどでもないが…)
◆判定の境界線がイマイチ分かり難い落下ダメージ
◆ノルマの高騰で、後半になるほど作業感が増す借金返済
◆出現率の低いマテリアル集めの強烈な作業感と単調さ(一応、出現率を上げる策はあるが…)
▼Review ≪Last Update : 9/23/2012≫
見えない所に彼らは潜んでいる。

そして、こっそり奇跡を起こしている…。


見習い妖精使いの少女が借金返済の為、街の住民達から依頼される仕事に奔走するストーリーを描いた完全新作のハートウォーミングRPG。開発は『チョコレートキッス(PS)』などの作品を手掛けた事で知られる開発会社、インフィニティー。キャラクターデザインは元コンパイルのデザイナー、戸部淑氏が担当。

プレイヤーキャラクターのアクションやカメラワークと言った箇所の粗が厳しいが、秀逸なストーリーと演出でプレイヤーに強烈な印象を残す、もどかしさ溢れる秀作だ。

ゲーム内容は『ハートウォーミングRPG』を呼称しているが、その実はダンジョン探索とアイテム収集をメインとした、3Dアクションアドベンチャーゲーム。見習い妖精使いの主人公マリエルを操作し、舞台となる『オークベリーの町』に住まう人々から課せられる仕事をこなし、父親から背負われた借金の完全返済を目指すというものである。
本編は月単位で区切られたシナリオを攻略していく形で展開。各シナリオは住民からの仕事、借金返済の為の資金集めの二つをこなしていく構成となっており、最終的に仕事が決着すれば、そのシナリオは事実上のクリアとなる。但し、”事実上”の通り、次のシナリオへ進むには、借金の返済を行う必要がある。借金の返済は、『オークベリーの町』の拠点ポイントでもある『母屋』に居る猫のキャラクター、アルフレッドに話しかけ、指定された金額を支払う形で行われる。借金の額はシナリオごとにノルマが決められていて、そのノルマの額を支払い終えるとようやくシナリオクリアに至り、次のシナリオ(月)へと進む。そして、再び住民からの仕事と借金返済に努めていく。基本的にはこれらの事柄の繰り返しで本編は進行。借金返済が最終目的だけにある生々しさとエグさに満ち溢れた構成になっている。
そんな各シナリオのメインとなる『仕事』は、厳密にはダンジョン探索とアイテム収集の二つをこなしていくものになっている。基本的にどの仕事も達成に当たっては『妖精』の存在が必要不可欠で、その妖精を探し出したり、時には妖精を誕生させるのに必要なアイテムこと『マテリアル』を集める為、プレイヤーは町外れにあるダンジョンを探索していく事になる。ダンジョンの作りはアクションアドベンチャー、アクションRPGの王道に準じた、様々な仕掛け、謎解きが多く張り巡らされたものになっている。但し、最大の特色として、敵が一切登場しないというのがある。つまり、今作には戦闘がない。妖精探し、マテリアル収集の二つに特化した、探索に重きを置いた構成になっているのだ。だが、探索主体で戦闘がない故、スリルとは無縁なのかというとそうでもあらず。ちゃんとプレイヤーキャラクターことマリエルには体力の概念があるほか、ダンジョンによっては危険なトラップも設置されており、それらに直接触れてしまうと普通にダメージを受ける。例によって、体力がゼロになってしまえばその時点でアウトだ。一応、ゲームオーバーの概念は無く、ダンジョン内でやられても町に戻されるだけという緩い仕組みではあるのだが、ジャンル特有の手応えと緊張感は健在。静けさの中に手強さありとも言える、珍しいタイプのダンジョンに仕上げられている。
また、ダンジョン探索での特徴的な要素の一つとして、『妖精』を使った謎解きがある。先も少し解説したが、今作では仕事の達成に当たっては妖精の存在が必要不可欠であり、彼らが持つ特殊な力(特技)が要所要所で求められてくるようになっている。特にダンジョン探索では『技能妖精』と呼ばれる妖精の持つ特技が攻略の大きなカギとなってきて、状況に応じて彼らを召喚し、謎を解いたり、仕掛けを突破していく事になる。技能妖精の能力は多彩で、火を吹いたり、穴を掘ったり、遠くの物を引き寄せたりなど、基本的に移動周りの能力しか持たないマリエルを協力にサポートしてくれる。但し、召喚に当たってはAPと呼ばれるゲージを消費する為、無計画に召喚すると行き詰まりを起こすなど、その使い所には慎重を要するのがミソ。また、彼らを仲間にするには、特定のマテリアルと『レシピ』と呼ばれる作成資料が必要となるなど、そう容易に能力を使える訳ではないというのも大きな特徴である。
妖精の力で謎を解くという、その仕組み自体はありがちではあるが、召喚のタイミング、作成過程などで一筋縄では行かぬ独自のゲーム性を演出。意外とその手応えは新鮮で、主人公の妖精使いという設定との親和性も素晴らしく、このゲームとストーリーにしてこのシステムありと言えるほどの要素として完成されている。妖精の種類も十種類以上と豊富で、仲間にすればするほど、多彩なアクションが可能になっていくのも面白いところだ。
更に妖精にはダンジョンでの発見対象で、マリエルの身体能力を上げてくれる『野生妖精』、仕事達成に当たって重要な役割を担う『奇跡妖精』と言った特殊なタイプもおり、探索とシナリオ双方の展開を盛り上げてくれる。中でも野生妖精はダンジョンだけでなく、町中に隠れている者も居たりする。そんな彼らを探し出すかくれんぼ的な遊びが楽しめるのも今作の謎解き周りにおける大きな特色だ。
戦闘皆無で謎解き、探索がメインと、全体的にアクションアドベンチャーとしては緊迫感に欠ける内容ではあるが、それはまさに『ハートウォーミングRPG』というに相応しい構成。アクションの面白さを求める方にはかなり好みが分かれるが、そのほのぼのとした雰囲気と平和的ながらも何処か黒い一面を持った世界観は他のアクションアドベンチャー作品には無い独自性と味わいに富んでいる。ある意味、意外とありそうで無かったタイプのゲームデザイン。唯一無二の個性に富んだアクションアドベンチャーゲームに仕上げられている。

そんな今作最大の魅力は妖精を使った謎解き…ではなく、ストーリーであったりする。
特に素晴らしいのが、月単位で語られるストーリーの題材とそこでクローズアップされる町の住民キャラクターの個性付けの上手さだ。先も解説した通り、月単位で分けられたシナリオは町の住民の内の一人に焦点を当てた内容になっており、それに関連した『仕事』とイベントが展開されていく。この各シナリオで語られるストーリーというのが、いずれも独立したお話として完成されているだけでなく、内容的にも見応えのあるものに仕上げられているのである。主人公マリエルの新しい友人にまつわるお話、一向に関係が進展しない男性と女性のお話、幽霊の謎を追うお話と、ほのぼのあり、ギャグあり、シリアスありと、非常にバランスが良い。更に各シナリオでクローズアップされる住民キャラクターも人間味溢れる面子ばかりで、本当にその世界で生活しているという確かな説得力を醸し出しているのが素晴らしい。脇を固めるキャラクター達も魅力的で、誰一人とて嫌味な性格のキャラクターが居ないというのも、まさに『ハートウォーミングRPG』というらしさが出ていて見事。かの世界名作劇場を髣髴とさせる安心感に満ち溢れた内容に仕上げられている。
更に全体構成も上手い。シナリオごとの独立したストーリーの中で、本編最大の謎である失踪したマリエルの父親に関するエピソードを何気なく挟んだりと、適度にプレイヤーの関心を誘わせる仕掛けが凝らされている。その仕込みがまた、凄く自然に出来ていて、終盤の展開を大いに盛り上げてくれるのだ。さながら、1〜2クールの筋の通ったアニメを髣髴とさせるかのような計算の上手さ。内容、キャラクターの差別化に留まらず、こんな流れの部分に至ってもしっかりと作り込んでいるのには、如何に今作がシナリオに並ならぬ力を入れたかを実感させられる。肝心の終盤の展開自体も衝撃的の一言で、それまでの雰囲気を一変させる鬱要素に満ちたイベントの数々にはプレイヤーに言葉に表し難いもどかしさを与える。そんな鬱イベントを乗り越えた先に訪れる結末とは…?その真相は是非、本編でご覧になって頂きたい。”人によって”は「そんなバカな!?」と開いた口が塞がらなくなるだろう。
シナリオごとに違ったストーリーが繰り広げられる内容上、差別化を図るのは至極当然の事ではあるが、こうも構成から細かいキャラクターの描写まで人間らしさとジャンル名のらしさにこだわって作り込んでいるのには、職人の仕事を痛感させられる次第。パッケージの雰囲気などから、多くの方はほのぼのストーリーを連想するだろう。だが、あえて断言しよう。その連想はとても苦々しい形で裏切られる。それ位、今作のストーリーの出来は傑出したものになっているのである。
また、ゲーム本編たるダンジョン探索も侮り難い作りだ。戦闘が皆無な反面、仕掛けなどで徹底した個性付けを図った作り込みが成されており、予想以上に手応えのある展開を楽しめる。ダンジョン自体も足場が全く無いダンジョンなど、ぶっ飛んだタイプのものもあったりしてプレイヤーを飽きさせない。
ただ如何せん、そう言った作りの良さを操作感とカメラワークの壊滅的な酷さが台無しにしてしまっているのが残念極まりない。操作は挙動が重いだけでなく、ぎこちなさも突出していて動かしていて全然気持ちよくない。特にジャンプの操作はまどろっこしいの一言で、狭い足場を渡る場面の難易度を無駄に高めてしまっている。それでいて、カメラワークも劣悪の一言で、プレイヤーに合わせてくれないだけでなく、変にグルグル回る為に3D酔いに陥り易い。挙句、自由に設定する事すらもできないので、先の狭い足場を渡る場面に至っては、そのせいで落下事故に繋がる弊害まで及ぼしてしまってる始末。本当、何が良くてこんな最悪な操作のままにしてしまったのか、スタッフの神経を問うレベルの有様なのである。
この部分の出来の悪さの為、先ほど語った魅力全てがかき消されてしまっているのは残念の一言では済まされない。調整の時間が純粋に足りなかったのかもしれないが、本当、ここだけはもっと力を入れて調整して頂きたかった。折角、ストーリーとレベルデザインがよく出来ているというのに勿体無い限りだ。
その欠点を含めても、ストーリー自体に魅力があり、それだけでも秀作と言い切れる出来なのだが、万人には薦められないのは何とももどかしい。まさにこれぞ惜しゲー。あと一歩で傑作に成り得た作品で終わってしまっているのだ。

ゲームバランスもお世辞にも良いとは言い難い。操作性とカメラワークの悪さから生じる想定外の事故が多い為、随所において理不尽さを感じさせる場面があり、不快感すら抱くバランスになってしまっている。一応、それを除外すれば、謎解きから地形設計、トラップの配置などは綺麗にまとまってはいる。だが、結果的にその良さも全て、操作性とカメラワークが台無しにしてしまっている感じ。何とも言い難い有様になってしまっている。
しかし、操作性とカメラワークが劣悪な一方、快適性はずば抜けた出来。特に起動、ロードの速さはずば抜けて早く、ロムカセットのゲームかと錯覚させるほどテンポ良く画面が切り替わる。インターフェースの作り、レスポンスも申し分なく、サクサクと快適に動かせるものに仕上げられているのも地味ながら驚かされる。この部分に関しては十分及第点どころか、水準以上と言っても良いだろう。操作性の悪さとは対照的にも程がある出来栄えだ。
また、グラフィックもプレイステーション2初期の作品という事でモデリングが古臭いのだが、元のイラストの可愛らしさを残したものに仕上げられている。特に今作、もう一人の主役とも言える妖精達の破壊力抜群な可愛らしさは必見。女性ユーザーならぬいぐるみなどの人形が欲しくなるほどの衝撃を覚えるかもしれない。対し、音楽は世界観を考慮してか、全体的に静かな曲が多めで地味。しかし、使い方は非常に上手く、イベントなどの各シーンを適度に盛り上げてくれる。印象深い曲も幾つかあり、町の中心部、そしてオープニングとエンディングで流れる歌はいずれも要チェックだ。

演出周りも地味ながら、音楽の使い方とキャラクターモデルの動きで適度に魅せてくれる。また、各イベントは全てフルボイスで展開されるなど、なかなか凝っている。出演声優陣も結構豪華で、水樹奈々、野島健児、緑川光、青野武、山崎和歌奈と言った実力派からベテランが多数参加しているのも声優ファンにとっては見逃せない見所だ。
その他、ボリュームもエンディングまで20〜25時間ほどとなかなか。妖精集めと言った寄り道要素も豊富で、遊び甲斐のある内容にまとめられている。
操作性とカメラワークという、ゲーム部分の根幹を担う箇所の出来が非常に悪く、ストーリーを始めとする魅力の数々が台無しにされてしまっている今作だが、そんな欠点を含めても強烈な魅力と売りがある内容であるのは事実。プレイした者に良くも悪くも印象深い余韻を残す、印象深い作品に仕上げられている。また、アクションアドベンチャーとしても、アイテム収集と探索主体という構成は地味ながら新鮮で、唯一無二の味わいに富んでいる。
3Dアクションが苦手な方にはあまりお薦めできないが、逆にそれ以外の方ならば是非、チャレンジしてみて欲しい秀作である。特に繰り返しになるがストーリーの出来はなかなかのもの。見た目に反した衝撃と感動をお約束します。
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