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≫OZ -オズ-
■発売元 KONAMI
■ジャンル アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、殺傷描写あり
■定価 7239円(税込)<Best版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリーカードの残り容量によって変化(※158KB以上の空き容量が必要)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応
■総説明書ページ数 22ページ
■推定クリア時間 12〜16時間(エンディング目的)、60〜90時間(完全攻略目的)
かつて『人』と『カテナ』の2つの種族が共存していた世界。

だが数百年前に降臨した『神々』により、『カテナ』が神々の手先、『御使い』へと変えられてしまった時、その関係は終わりを告げる。超自然的な力を振るう『神々』を、本当の神であるように崇め奉っていた人々も、やがて彼らが世界に災いをもたらす存在である事に気付き、抵抗を試みが事もあったが、それは『御使い』達によって打ち砕かれ、絶望が人々の心を支配してしまう。世界は静かに、だが確実に滅びへの時を刻み続けていた。

そして静かに人が営みを続ける村。
妹のドロシーと猫のトトと平穏に暮らす少年・フィール。
そこに神々からの御使いが降り立つ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆王道の面白さが詰まった、シンプルなステージクリア方式のゲームシステム
◆真の意味での3Dらしさに溢れた、斬新な『三位一体アクション』
◆『三位一体アクション』の気持ち良さをより引き立てる、仲間キャラクター達の優れたAIプログラム
◆仲間探しあり、探索ありとバラエティーなネタに富んだ全20以上のステージ
◆難易度選択機能と難易度ごとの専用要素無し、敵に狙いを付けられるロックオンシステムも搭載と、3Dアクション初心者への配慮が行き届いた救済処置の数々
◆他のアクションゲームとは一線を欠く、『チーム戦』の面白さに満ちたボス戦
◆アクションゲーム特有の爽快感と3Dならではの味に富んだエフェクト周りの演出
◆マルチエンディング、各難易度制覇など充実したやり込み要素
◆癖はあるが、自らマスターする面白さに満ちた、独特の操作性
◆自分自身が上手くなっているという手応えを実感できる、卓越したゲームバランス
◆世界観の設定からキャラクター作りまで、丁寧に作られた熱いシナリオ
◆少し粗い所もあるがが、神秘的なデザインが光る、独特のグラフィック
◆神秘的なグラフィックの雰囲気にマッチした、名曲揃い音楽
◆アニメながらも、風変わりなカット割りのセンスが炸裂したデモムービー

--- Bad Point ---
◆分かり難い上、シビアな感が否めないマルチエンディングの条件
◆上手くこなせるようになるまで、ある程度の時間を要する『三位一体アクション』
◆やや長い感が否めない各ステージ(後半、ダレてしまうのも気になる)
◆誤った敵を選んでしまうなど、やや調整の甘さが目立つロックオン操作
◆設定のややこしさもあり、少し分かり難い描写も多いシナリオ
◆カット割りが特殊過ぎて、何が起きてるか分かり難いデモムービー
◆敵が大量に出現した際、たまに起きる処理落ち
▼Review ≪Last Update : 8/9/2009≫
OZの名において、神命を執行する。

そして今、3Dアクションゲームに革命が起きる。


『悪魔城ドラキュラ(旧キャッスルヴァニア)』シリーズ、『幻想水滸伝』シリーズのスタッフが結集して制作された、完全新作の3Dアクションゲーム。

コナミが起こした、3Dアクションゲームの奇跡。
この視点無くして実現しなかったシステムが光る、隠れた名作だ。

ゲーム内容は、オーソドックスなステージクリアタイプの3Dアクションゲーム。主人公フィールを操り、様々な敵との戦闘が用意されたステージを攻略していくというものだ。ただ、システム周りはかなり特殊。特にプレイヤーアクション周りだが、世間一般の3Dアクションゲームとは大きく一線を欠く、斬新な要素が仕込まれている。
その名も『三位一体連携アクション』。
先程の内容解説では省いたが、実は今作は主人公フィール以外に二人の仲間がサポート役として一緒に行動。フィールを含めた三人のキャラで連携攻撃する、全く新しい攻撃アクションができるようになっている。
連携攻撃のやり方はシンプル。敵を攻撃して気絶させ、その気絶した敵を他の二人に向かって投げ飛ばして攻撃を繋げていき、『テンションゲージ』と呼ばれる必殺技のメーターが溜まったら、必殺技を繰り出して止めを刺す。もの凄く簡単に言ってしまえば、バレーボールそのもの。敵をボールと見立ててトスを繋げていき、力が溜まったらスマッシュを決めてフィニッシュ!そんな感じの風変わりな攻撃が、今作では楽しめるのである。
ただ、シンプルではあるものの、その癖をマスターするのが厄介。リズミカルにボタンを押して攻撃を繋げていくのが基本となるので、最初は誰も、その感覚を掴むのに一定の時間を費やす事になる。一応、チュートリアルもあるにはあるのだが、そこで教えてくれるのは基本操作全般だけで、攻撃の「感覚」については全く。それについては実戦で覚えてね、と地味に突き放した配慮が成されている。
結局のところ、その連携攻撃のリズムの癖を掴めるか、掴めないかが今作を楽しめるかどうかのカギ。その何が何でもマスターしようとする執念深さを持って挑まねば、今作はほぼ楽しめないと言っても良い。そこが、このアクションでタマにキズなところ。カプコンの『ヒットラーの復活』ほどじゃないが、アクションゲーム初心者にはやや厳しい作りとなっている。
しかし、何も完全にアクションゲーム初心者を突き放してる訳ではなく。
難易度選択機能にアイテムによるプレイヤー強化システム、そして三人全員が全滅しない限りはボタン連打で何度もその場復活できる体力システムなど、三位一体アクションの習得をし易くする為の環境配慮は徹底されている。ゲームバランス的にも、初っ端からいきなり高度なアクションを要求はさせず、ステージが進むにつれて自然にアクションの肝が分かってくる、理に適った調整が成されているので、ある程度なら、アクションの醍醐味は習得できるようになっている。
完全に習得し、三位一体アクションの本質を掴むのなら、それはそれで相当なやり込みが必要だが、普通にプレイするだけなら、少しのやる気さえあればどうにかなるレベル。そこは『ドラキュラ』に『ゴエモン』など、アクションゲームの制作にはこなれたコナミと言ったところ。癖は強めだけど、触りが分かればそこそこ楽しめる、癖のあるアクションゲーム特有の欠点を補う配慮を行った上で作られている。
それに、何も三位一体アクションじゃないと敵が倒せないとか、そんな訳でもない。通常の攻撃だけでも、敵は倒せる。流石にボスでは、それをやらないと攻撃が通らないとか、そういう類のが出てきたりするが、それも連続して攻撃を決めないとダメとか、そこまで厳しい存在はあまり出てこず。どちらの操作に偏る、そんな硬派な処置はされてないので、身構える必要も無しだ。それらが、いわゆる癖のあるアクションゲームとは一線を欠くところ。慣れは要求されるが、そこまで慣れてなくてもある程度楽しめる、それこそが今作独自の強みである。バレーボール感覚で攻撃する、その斬新さも見るべきものがあるけど、そんな敷居の低さも十分なインパクト。昔ながらの癖のあるアクションゲームとは、一線を欠く取っ付き易さがあるのだ。それでも十分、アクションの癖は強めではあるのだが。

そんな今作の見所はやはり、その三位一体アクションに尽きる。バレーボール感覚で攻撃するというそのアイディア、溜めに溜めて攻撃を解き放つ、リスクとリターンの概念を効果的に反映させた爽快感と、全てが上手くまとめられている。 癖が強いアクションだからこその、プレイヤースキルが露骨に反映されるバランス調整もまた、この種のアクション独自の「癖の強いアクションをモノにする快感」があり、動かす気持ちよさに満ちている。
しかし、それ以上にこの三位一体アクションで秀逸なのは、3D視点だからこその独自性が発揮されていることだ。2D視点では絶対に無理な爽快感と演出、操作の面白さと言ったものが、このアクションには込められている。実際に遊んでみると、とくと思い知らされる。トス攻撃で仰々しく宙を舞う敵キャラ、それを手前や奥で打ち返す仲間達のアクション、そして目まぐるしく動くカメラ。その全てが3D視点という、奥行きとカメラの概念がある視点だからこそ出来たものに仕上げられている。奥行きもなく、カメラの概念の無い2D視点では、こんなのまず不可能。三位一体アクションのシステムは、2Dでも見下ろしタイプのものなら表現できるだろうけど、その他の激しいアクションとかなんて到底無理。やれたとしても、それは味気ないバレーボールもどきになってしまうのは、目に見えた結果だろう。そんな2Dだと絶対に無理なアクションを表現した。それだけでも、今作は一つの3Dアクションゲームとして、かなり秀逸な部類に入ると言える。
何と言っても、3D視点だからこそのアクションを表現した、それがでかい。巷の3Dアクションゲームでも、3Dだからこその爽快感が秘められたアクションが楽しめるのはごまんとあるが、あくまでもそれは操作の感触に限った話。
アクションのネタとしては、2D視点でも十分表現可能なものが多かったりする。空を飛ぶ、広範囲攻撃など。どちらも別に3Dだからこそ生まれたネタではないし、2Dでも十分表現できるネタだ。パンチとか、物を投げての攻撃だって、3Dだからこそのオリジナリティは無いし、わざわざ3Dで表現する必要だってない。むしろ、それは2Dの方がやり易さの面では勝る可能性すらあるほど。結局、2Dでも3Dでも表現は十分可能。そんなオールラウンドさをまとったものが、巷の3Dアクションゲームではワリとありがちなのである。
ところが、今作は違う。先述の通りだが、メインである三位一体アクションのネタ自体、空を飛ぶアクションとは比較対象にすらならない、3Dだからこそのオリジナリティ溢れているし、2Dで表現した際のデメリットもでかい。トス攻撃で敵をふっ飛ばすにしたって、『距離感』をきちんと表現。キャラクターのアクションの見せ方も3Dだからこその躍動感を出すなど、3D特有の強みを活かすなど、その視点だからこその魅力を引き出す為の工夫が徹底されている。まさに、2Dへと安易にすら転化できない3Dアクション。別に3Dにする必要なんてゼロでしょ、2Dにした方が遥かに良いじゃん。そんな文句が言えなく作られてるのが、今作の素晴らしいところなのだ。
何故、3Dアクションの中で秀逸な部類に入るのかの理由はそこ。2Dへの転移ができない作りとなってる訳である。
ワリとそう言った2Dへの転移が可能だったりするものが多い中、このようなアイディアで2D以外への転移を不可能とした今作は本当に貴重だ。如何に、今作のスタッフが3Dアクションの独自色を引き出そうとしたのか、その苦労が三位一体アクションを始めとするところから、うかがい知ることができる。何の為の3Dなのか。時代に合わせる為か、それともその視点のゲームを作る為か。ハードのスペックが上がったのを受け、前者に沿う安易なものが何かと多い3Dアクションの市場にて、今作のような後者の理念を大事とした作品を出したことは本当、お見事であるとしか言い様が無い。
結局、3Dアクションとは2Dアクションの視点代わりに過ぎない。そんな文句を一言も発せられない言えないのが今作の凄味。3Dだからこその独自色が洒落になってないのだ。遊んでみれば、その凄味は直に伝わって来るはず。特に3Dアクションゲームが好きでないという方なら、倍の凄さを体験できるだろう。

単に3Dアクションの独自色ばかりでない。他の操作性、ゲームバランス等も優秀な出来。特にバランスは難易度別にきちんと手応えの違いが表現されているだけでなく、先の繰り返しになるがプレイヤースキルが反映される調整となっている辺りに、癖のあるアクションゲームとしてのらしさが出ていて素晴らしい。
総計ボリュームも、ステージは20以上、更にマルチエンディングによる分岐があるなど、充実していて遊び応えがある。ステージも作りはシンプルながら、敵との戦闘あり、仲間探しあり、探索ありと、バラエティーに富んでいてプレイヤーを飽きさせない。ただ、ややスケールがでか過ぎるのもあり、後半、ダレてしまうのは勿体無い。マルチエンディングの分岐条件が選んだ難易度に関係ないとは言え、妙に入り組んでいる(ボスを必ず必殺技で仕留めるなど)のも感心できない。この辺は、もう少し軟化出来なかったものかと悔やまれる。
グラフィックも悪くはないのだが、少しフレームレートが低く、キャラの動作にぎこちなさがあるのが気になる。デモシーンも主にアニメ系のムービーだが、カット割りが特殊過ぎて、何が起こってるのか、理解し難いのがタマにキズ。単なるアニメでまとまってない辺りにセンスがあるのだが…。
対し音楽はかなり良い出来。神秘的な雰囲気漂う楽曲の数々がプレイヤーを熱くする。ドラキュラシリーズ等を手掛けた山根ミチル氏作曲なだけに、曲のクオリティも盤石。特に著名なクラッシック曲でもあり、今作のメインテーマ曲でもある『だったん人の踊り』のカッコイイアレンジは要チェックだ。

シナリオも内容は王道ながら、キャラクター造形が良く出来ていて盛り上がる。声優陣も実力派揃いで、きちんとゲームの熱さに繋がる演技をしているのが見事。ドロシーなど、熱さを盛り下げる声もあるのだが、滅多に出てこない辺りに、熱さへのこだわりが出ている。
独自色が強く、人によって好みの分かれ易い三位一体アクションなど、所々に癖のあるアクションゲーム特有の欠点もあるが、面白さはかなりのもの。3D視点だからこそ実現したアクションとアイディア、癖のあるアクションゲームらしいプレイヤースキルの反映されるバランスが光る今作。
風変わりなゲームがやりたいという方は勿論のこと、アクションゲーム好きにも自信を持ってお薦めする、隠れた名作だ。真の意味での3Dアクションゲームがここにある。
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