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≫メタルギアソリッド2 サンズ・オブ・リバティ
■発売元 KONAMI
■ジャンル タクティカル・エスピオナージ・アクション
■CERO C(15歳以上対象) ※出血、暴力描写等あり
■定価 7140円(税込)<Best版:1800円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリーカードの残り容量によって変化(※1つ作成に80KB以上使用、ディスク2では1つ作成につき60KB以上使用)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ専用、ディスク2枚組(※コナミ殿堂セレクション版のみ)
■総説明書ページ数 80ページ(※コナミ殿堂セレクション版)
■推定クリア時間 8時間〜10時間(エンディング目的)、45〜60時間(完全攻略目的)
シャドーモセス島事件の後、リボルバー・オセロットの暗躍によってメタルギアの技術情報が闇市場に流出。多くの亜種が世界中に拡散し、核武装国にとってメタルギアが特殊な兵器でなくなりつつあった。

そんな中、反メタルギア財団『フィランソロピー』のメンバーであるソリッド・スネークは、極秘裏に開発されていた新型メタルギアが密かに輸送されるという情報をキャッチ。新型メタルギアの情報を入手する為、ハドソン川を航行中の偽装タンカーへと潜入する。だが、スネークの行動に時を合わせたかのようにタンカーはヘリから舞い降りた謎の武装集団に制圧されてしまう。果たして彼らの狙いとは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作譲りの逆転の発想、見つからず行動するが故の高い緊張感が異彩を放つ独自のゲーム性
◆多彩且つ、練られた仕掛けと敵の配置が光る、珠玉のマップデザイン
◆主人公交代劇の意外性とボリューム感の向上を図った二部構成方式のストーリー
◆潜入の敷居を下げ、気軽にその醍醐味を味わえるようにした新しい武器『麻酔銃』
◆戦闘の敷居低下とバリエーション、臨場感の強化をもたらした新システム『主観撃ち』
◆制限時間イベント、要人護衛、水中探索と言った新しいシチュエーションが追加された事で、より魅力と遊び応えが深まったレベルデザイン
◆麻酔銃、刀と言った新しい武器の追加によって更に多彩になったプレイヤーアクション
◆相変わらずの潜入の面白さ、難しさを絶妙に体現した難易度設定(麻酔銃追加で戦術性の幅も広がった)
◆前作同様にムービー込みだと膨大、カットすると縮小する良くも悪くも個性的な総計ボリューム
◆凝ったカット割りとゲーム本編の攻略にも密接に絡むネタを仕込むと言った作り込みの深さが異彩を放つ、リアルタイム式のムービーデモ
◆全てのボタンを使用しながらも、違和感なく手に馴染む触り心地の良さが見事な操作性
◆進行ヒント提供の他、しょーもないネタも仕込まれた見所満載の無線画面
◆ハード移行に伴ってモデリングの質が向上して大幅に美しくなったグラフィック
◆緩急の付け方の上手さが光る、珠玉の音楽
◆前作同様にストーリー、無線などを大いに盛り上げる実力派声優陣による素晴らしい演技
◆ホラー染みた演出と声優・青野武氏の怪演で魅せるプラント編終盤の脱出イベント

--- Bad Point ---
◆前作以上に難解なストーリー(完全理解には3〜5周のプレイが必須)
◆事実上の本編同然なボリュームの二部ことプラント編(一部のタンカー編はおまけ同然)
◆前作までのプレイヤーにとっては愛着が湧き難いプラント編主人公の雷電(スネークはタンカー編でしか操作できない)
◆数が減って内容的にも平凡なものが大半を占めるようになってしまったボス戦
◆ゲーム本編の約6〜7割を占めるムービーデモ(今回はゲーム部分もそこそこあるが…)
◆右スティックで振るという癖の強い操作がタマにキズな新武器『刀』
◆ラストボス戦目前のムービーデモ、スネークの発言などに散見されるご都合主義的過ぎる一部の演出
◆前作からの進化が感じられない敵AI(相変わらず隙だらけなのが気がかり。)
▼Review ≪Last Update : 6/3/2012≫
さあ、今すぐゲームの電源を切るのだ!

らりるれろ、らりるれろ、らりるれろ…


隠れる事に重きを置いた緊張感抜群のゲーム性、練り込まれたストーリーと派手なムービーデモなどで高く評価され、国内外を問わず大ヒットを記録した戦略諜報アクション(ステルスアクション)ゲーム『メタルギアソリッド』の続編。

想定外の主人公交代劇が賛否を分ける作品だ。

ゲーム内容は前作と同じ、ステルスアクションゲーム。主人公のソリッド・スネーク、そして新主人公の雷電を操作し、巡回する敵兵の裏を掻い潜ったり、強敵との一騎打ちと言ったイベントを乗り越えながら敵テロリスト集団の陰謀阻止を目指すというものである。
基本システムはプレイステーションで発売された前作『メタルギアソリッド』を踏襲。グラフィックは3Dでありながら、2D見下ろし風の固定カメラ方式の画面(視点)構成、敵兵の動きなどを確認できる『ソリトンレーダー』、仲間との無線通信によるやり取り、左右を補助・武器と振り分けた装備システムなどは今作にもそのまま実装されている。それら、前作で完成されたシステムをベースに、今作では複数の新しくて便利な要素を追加した。
一つ目に『麻酔銃』。アメリカで放送されていた海外ドラマ『スパイ大作戦』を視聴していた方ならピンと来ると思うが、敵兵を眠らせる麻酔弾を発射する銃だ。これが今作にて新たに追加。巡回する敵兵に命中させる事で、その敵兵をしばらくの間、眠らせる事ができるようになったのだ。これにより、敵兵の行動をよく観察し、ゆっくり奥地へと進んで行く前作の潜入スタイルが大幅に一新。多少、力押しでも潜入していけるようになり、気軽にその醍醐味を味わえるようになった。簡単に敵兵の裏を掻く事ができるようになった為、緊張感が緩んだようにも見えるが、例によって麻酔弾は敵を永遠に眠らせる訳ではない。選択した難易度によっては永遠に眠らせられるが、基本的には効果の及ぶ時間が設定されている。また、近くに別の敵兵が居ると、その敵兵が眠った敵兵を起こし、途端に警戒態勢に警備レベルが上がる事態にもなったりする。気軽に潜入可能になったとは言え、完全無欠になった訳ではあらず。隙を付いて迅速に行動しなければならない、いつものやり方が求められてくるのだ。そういう性能を過信すると、酷い目に遭うという部分も残しているのがミソ。潜入の敷居を下げつつ、新たな新たな緊張感を付加させた非常に魅力溢れる要素として仕上げられている。前作で「これで敵を眠らせる事もできれば…」ともどかしい思いをしたプレイヤーにとっては、まさに待望の新要素と言っても良いだろう。
更にこの『麻酔銃』の魅力を引き立てる新要素で『主観撃ち』がある。その名の通り、主観視点に切り替えて銃撃を行うアクションで、FPS(ファースト・パーソン・シューター)と似た感覚で敵への攻撃が可能となった。前作では銃を構えると同時に近くの敵に自動的に狙いが定まる仕様だったが、今作でもそれを継承しつつ、自由な銃撃が可能となるこのアクションを新規に取り入れた。このアクション追加により、敵への攻撃はスムーズに行えるように。また、先の『麻酔銃』を使う際にこれを使えば、正確に命中させられるだけでなく、敵の不意を突く事も容易にできるようになっている。潜入時だけでなく戦闘、主にボス戦でも確実な攻撃が狙えるようになった事で快適性は大幅に向上。切り替えに関しても基本、ボタンを一回押すか、或いは長押しかの単純操作と快適で、使い勝手も申し分ない。これもまた、麻酔銃と同様、前作でもどかしい思いをしたプレイヤーにとっては嬉しい新要素。麻酔銃の魅力と潜入の緊張感を引き立てる要素としても上手く機能しており、今後のシリーズに標準搭載されて然るべきと言っても良いほど完成度の高いものに仕上げられている。それ故、慣れてしまうと前作に戻るのが大変。ある意味、素晴らしさと恐ろしさが混在した新要素と言っても良いかもしれない。
この他、ストーリー構成にも刷新が行われ、タンカー編とプラント編の二部構成に改められた。基本的にタンカー編はスネークを操作、プラント編では新主人公の雷電を操作して進める内容となっている。ボリューム的にはプラント編が事実上の本編と言った具合で、スネークを操作するタンカー編はオープニングに過ぎない程度の短いボリュームでまとめられてしまっている。その為、メタルギアソリッドの続編なのに肝心の主人公、スネークを操作するシーンが僅かしかない。本編で最も動かすキャラクターであり、存在感が強いのは雷電なのだ。
仮にも続編を名乗りながら、主人公のスネークの出番が少ないとはこれ如何に!?システム、ゲーム性は前作をベースに、より洗練されたものに進化を遂げている。だが、ストーリーは前代未聞にして、シリーズファンの予想を良くも悪くも超越する内容。果たしてこれをメタルギアソリッドと名乗って良いのか?それほどまでに今回は挑戦的、悪く言えばフェイクも甚だしいトラップが仕込まれた想定外にも程があり過ぎる作品に仕上げられている。

そして、今作最大の見所はその主人公交代劇と二部構成方式に改められたストーリーだ。
二つの物語が用意された事で、ボリュームが大幅に増したのかと思いきや、片方がほぼオープニング同然の短さで、もう片方が本編同然の長さ。しかも、前作の主人公であるスネークはその短いシナリオでしか操作できず、本編同然の長いシナリオでは雷電と呼ばれる新キャラクターを操作するという内容。正直な所、前作の続編…スネークを操作するメタルギアソリッド期待したプレイヤーにとっては、本末転倒過ぎる作りになってしまっている。
何と言っても、スネークが操作できる最初のシナリオ『タンカー編』の短さには、そのような続編を期待していた方ほど凄まじいガッカリ感を覚えるだろう。一応、ボス戦があるなど、そこそこ充実した内容にはなっているのだが、如何せん短い。大体、1時間半〜2時間半程度でエンディングに到達できるほど、あっさりした内容になってしまっている。対し、雷電を操作するプラント編はエンディング到達までは15〜20時間程度かかるなど、相当なボリューム。この決定的な差には、違和感を覚えるのも致し方無しだろう。
何故、このような構成にしたのかは意表を突く狙いがあったというが、さすがにこれはやり過ぎと言わざるを得ない。ゲームのパッケージ裏、説明書などにはスネークが主人公であるのを強調するかのような記載があるだけに尚更。これではあのスネークを操作できるメタルギアソリッドの続編を待ち望んだプレイヤーの心を弄んでいるも同然だ。何もここまで徹底してトラップを仕掛ける必要があったのかと、そのやり方には疑問が残る。
無論、このやり方自体、全てが悪い訳ではないのも事実。意表を突くという事で、確かに衝撃度は相当なもので、続編のようで続編でない、まるで新作であるかのような展開は新鮮な味わいに満ち溢れている。ストーリーもスネークのタンカー編で語られた内容が雷電のプラント編で不気味な形で絡んでくるほか、タンカー編の結末も非常に興味深いものになっているので、なかなか見応えのあるものに仕上げられている。
ただ、そういう魅力があるにしても、少し行き過ぎな感は否めない。前作の続編として買ったユーザーの事も考え、できればパッケージから説明書に至るまでトラップを仕掛けたりはせず、素直に内容の事を告げる配慮を施して欲しかったところだ。或いは、タンカー編をもう少し長くすると言ったボリュームアップも図って頂きたかった。しかし、繰り返しになるが、この作り自体は決して悪くは無い。スネークの短いタンカー編があってこそのプラント編とも言うべき、二部構成としての強みを活かしたストーリーの作りはなかなか面白い。また、プラント編で操作する雷電は基本性能こそスネークと同じだが、後半になると刀による斬撃が可能になるなど、風変わりな特徴も持っているのも面白い。タンカーとプラント、異なる場所が舞台となるが故の地形設計とギミックも変化に富んでおり、それぞれ違った潜入の面白さを演出しているのも見事だ。続編を期待した方にとっては酷い期待外れかもしれないが、作り込みと完成度は上々。良くも悪くも意表を突いたこの内容は、一度でも体験してみる価値のある代物と言っても何ら過言ではないだろう。悪い部分もあるが、良い部分も盛り沢山。これほど両極端な魅力を兼ね備えたストーリーというのも、他のゲームでもなかなか無い。
ストーリーとは別にシステムに関しては着実に進化。麻酔銃追加による潜入の敷居の低下、主観撃ちによる快適性の向上など、いずれもメタルギアソリッドの基本、ここに完成したりと言っても過言ではない出来栄えとなっている。特に麻酔銃の使い勝手の良さは抜群で、気軽に敵に気付かれずに進む隠密行動の醍醐味が味わえるようになったのは大変大きな進化。隙を付いて動くのは怖いし、ちょっと難しいと感じていたプレイヤーへの救済処置としても申し分なく、メタルギアソリッドのゲームとしての魅力をより高める要素として機能しているのは特筆に値する。往年のプレイヤーにとっても、”スパイ大作戦ごっこ”とも言うべき遊びが楽しめるようになったのが実に魅力的。そんな遊びの幅を広げている点にしても、この要素を追加した事が如何にこのシリーズにとって大きな革新を起こしたのか、という事を痛感させられる次第だ。
その他、前作でもずば抜けた完成度を誇っていたレベルデザインもより洗練されたものに進化。司令官の演説を聞いている兵士の陰から目標物の隠し撮りを行うイベント、重要人物の護衛、共闘、アレな姿での逃亡劇など、数多くの新しいシチュエーションが追加され、常に新鮮な刺激と笑いをプレイヤーに提供してくれる。
こんな具合にゲームとしては確実に進化。前作はストーリーとゲームの双方共に作り込んだ格好だったが、今回はゲーム部分に特化しており、それが如実に現れた仕上がりになっている。まさにゲーム性重視の続編。前作以上に遊びで楽しませてくれるメタルギアになっているのだ。

そういう風に作った為か、実を言うと今回のストーリーはあまり魅力的ではない。先ほど、二部構成ならではの作りが活かされていると言ったが、それは否定しない。実際、タンカー編の展開がプラント編に不気味な形で絡んでくる展開はゾクゾクするものがある。しかし、問題は終盤で、これがまたとんでもなく複雑。はっきり言って、初見で理解できたら凄いと思うほどに難解なテーマと真相が語られるのだ。前作も前作で難解なテーマが語られるシーンはあったが、今作は抽象的な部分が多いのもあって桁違いの域。正直、理解するなら3〜5周のプレイが必須となるので、その辺は覚悟しておいた方が良いだろう。敷居は高めだ。
対し、操作性や難易度選択周りの敷居は低い。操作は前作のものを踏襲しており、ほとんど全てのボタンを使うのだが、自然と手に馴染む作り。手触りも悪くなく、快適なものに仕上げられている。難易度に関しても前作同様、簡単なものから難しいものまで幅広く用意されているほか、差別化も良好。適度なやり応えのあるバランスでまとめられている。
グラフィック、音楽の質も高い。特にグラフィックは上位ハードへの移行もあって、キャラクターのモデリングが大幅に向上。ムービーもこのグラフィックの質の向上でより綺麗で、迫力あるものに進化し、非常に見応えのあるものに仕上げられている。音楽も印象深い曲が充実。特にオープニングテーマ、ボス戦の曲の二曲は必聴の価値アリだ。

全体のボリュームも基本は前作とほぼ同じ程度なのだが、二部構成によって密度が向上。二つの異なる舞台で潜入のミッションが展開されるのもあり、十分な満足感を得られる内容にまとめられている。また、敵兵を一切殺さない不殺プレイなどのやり込み要素は今回も健在。遊び方次第で様々なプレイが楽しめる奥深さも兼ね備えている。
その他、演出周りもグラフィックの向上で劇的に進化。時折、ギャグが混ざる無線会話も面白く、プラント編終盤に至っては会話内容が暴走するという衝撃的な展開もあるなど、存分に楽しませてくれる。声優陣も前作の大塚明夫を始めとする面々が続投しているほか、新たに堀内賢雄、井上喜久子、飯塚昭三と言った大御所が多数参加。また、前作の発売後、不慮の事故で急逝された塩沢兼人が特別出演しているのも見逃せないところだ。
続編というには色々裏切りが多過ぎるストーリーの作りと内容の難しさ、斬撃操作の癖の強さなど、少し気になる点も多々あるが、ゲームとしては間違いなく進化。メタルギアソリッドの基本が完成したと言っても過言ではない仕上がりになっている。ストーリー以上にゲームとしての魅力を向上させることに特化した今作。多少、賛否の分かれる部分はあるが、それでもプレイする価値は十分にある傑作だ。ストーリー的には続きモノだが、シリーズ初心者にも十分楽しめる作り。より手軽に潜入の醍醐味が楽しめるようになったメタルギアの世界を堪能してみよう。
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