≫ICO(イコ)
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■発売元 |
ソニー・コンピュータ・エンタテイメント |
■ジャンル |
アクションアドベンチャー |
■CERO |
B(12歳以上対象) ※暴力、出血描写あり |
■定価 |
6090円(税込)<Best版:1800円(税込)> |
■公式サイト |
≫こちら ※音が鳴ります。 |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1人 |
■セーブデータ数 |
10個(※360KB以上使用) |
■その他 |
プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ専用(DUAL SHOCK、DUAL SHOCK2対応) |
■総説明書ページ数 |
24ページ |
■推定クリア時間 |
6〜10時間(エンディング目的)、12〜20時間(完全攻略目的) |
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いつだか分からない時代の、何処かも分からない場所でのお話。
ある村に、頭に角の生えた少年『イコ』がいた。
村のしきたりでは、角の生えた子供は海の上に聳え立つ、誰もいない城に生贄として捧げられる事となっており、今年はイコが連れて行かれる年だった。
そして13歳の誕生日、イコは三人の神官と共に城へと連れて行かれた。やがて城の中にある沢山のカプセルの一つにイコは入れられ、神官達はそこから立ち去って行った。
遂に一人きりになってしまったイコ。
だが、イコが静かに目を閉じたその時、突如として部屋が揺れ始める。そしてイコの入ったカプセルは台座から転げ落ち、イコは部屋の真ん中へと投げ出されてしまう…。
これが彼にとっての小さな冒険の始まりだった…。
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆複雑な要素を廃して分かり易さにこだわった、簡略化されたゲームシステム
◆寄り道要素が無く、メイン目的に没頭できるのが秀逸な一本道の本編構成(それでありながら、狭さを感じさせない)
◆アクションアドベンチャーとしては程よく、それでいて適切な総計ボリューム
◆少女ヨルダと手を繋ぎ、共に行動する新鮮な手応えと味わいに満ち溢れた手繋ぎシステム(勝手に命名)
◆そのシステムの特性とパズル的な面白さを絶妙なバランスで織り交ぜた、珠玉の謎解き
◆同じく、システムの特性を可能な限り反映させた、巧妙なマップ構成
◆ヨルダと手を繋いだ際の生々しい振動が秀逸な、独特の操作性
◆本当にそこに実在するかのような匂いが伝わってくる、質感のあるグラフィック
◆グラフィックの存在感を大いに煽る、綺麗な自然音とまぶしさすら感じさせる光の描写
◆敵との戦闘など、必要最低限のシチュエーションに限られた、使い方の潔い音楽
◆舞台となる地の広さや見所を徹底的に”魅せる”、ダイナミックなカメラワーク
◆不明瞭な描写がプレイヤーの想像力を大いに刺激させる、印象深いストーリー
◆(男性に限って)防衛本能を沸き立たせる、美しくも可憐なヨルダのデザイン
◆素晴らしいテーマソングと共に展開する、切なくも美しいエンディング
◆絵本のような語り口によるテキストとページ構成が面白い、独特の説明書
--- Bad Point ---
◆必要以上に回り過ぎな感のあるカメラワーク(少し、3D酔いを起こし易い)
◆少し、曖昧なミス判定(アウトじゃない所から落ちてアウトになる事がチラホラある)
◆多少、癖のある操作性(ジャンプの挙動が若干、人によっては馴染めないかも)
◆逆に曖昧さを嫌う方には肌に合わない、不明瞭過ぎるストーリー
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▼Review ≪Last Update : 1/12/2008≫
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必ず、二人で逃げ出してみせる。
例え、手を引き離されたとしても。
プレイステーション2の発売から約一年が経過した後、もの悲しげな歌と共に颯爽と現れた、SCE制作の完全新作アクションアドベンチャーゲーム。
美しく、存在感のある世界観と手つなぎによる新たなゲーム性。シンプルな作りでありがらも、底知れぬ奥深さが随所に秘められたPS2屈指の名作だ。
ゲーム内容は、3D視点で展開するアクションアドベンチャーゲーム。プレイヤーは角の生えた少年『イコ』を操り、謎の少女『ヨルダ』と共に舞台である『霧の城』からの脱出を目指す…というのが、大まかな目的となる。
全体的なゲームとしての手応えはアクションアドベンチャーというだけに、『ゼルダの伝説』に若干ながら近い。ただゼルダみたいなRPG的な要素…、例えば武器の装備と言ったものは、マップ上に落ちている物を拾ってそれを使用するというタイプとなっていたり、またプレイヤーキャラであるイコにはいわゆる『体力(HP)』の概念が無く、高い所から落下するか、或いは連れであるヨルダが敵にさらわれてしまうとアウト(ゲームオーバー)となるルール方式になっているなど、ゲームシステム自体はかなり簡略化されており、全体的にアドベンチャーとしてのカラーを強く押し出した作りとなっている。
そういう意味ではむしろ、ゼルダと言うよりはかの有名な海外ゲーム『アウターワールド』に近いと言うのが妥当なのかもしれない。特に、プレイヤーキャラクターに体力の概念が無く、ゲームオーバーが条件方式だという時点からして、それはあからさまである。(『アウターワールド』も、そのような方式となっている)
しかしながら、本作がそんな海外のゲームを国内で作ってみた(実際に、本作のスクリーンショットを見ると、海外ゲームっぽい印象を受けるかもしれないが、作ったのは日本のスタッフである)…という芸の無い作品という訳ではない。本作ならではの新しい”遊び”もちゃんと盛り込まれており、その中でも少女ヨルダと手を繋いで、一緒に謎を解いたり、敵と戦ったり(或いは彼女を敵の手から守ったり)しながら行動していく手繋ぎシステム(勝手に命名)は新鮮な味わいに満ちている。そもそも、プレイヤーがか弱い少女と一緒に手を繋いで行動していくと言うそのシチュレーションからして、アドベンチャーゲーム、並びにアクションゲームとしては新しい。今までにも、二人一組(或いは三人一組)で行動するゲームは色々とリリースされてきたが、本作のようにパートナーが全く持って”何も”できない…、文字通り「弱い存在」だと強調したものはあまり無かった。あったとしても、そう言ったキャラが登場するのはゲーム中での1つのイベントでの事で、一緒に行動できる範囲も限られる”縛り”が施されていた。
ところが、本作ではゲームの最後の最後まで、そんな弱い存在と行動を共にしていく。終始、そんなコンビで最終目的の達成に勤しんでいかねばならないのである。これだけでも如何に本作が、アドベンチャーゲーム、並びにアクションゲームとして異色で、緊張感のあるものであるかは想像に容易くないだろう。それほどまでに本作には、アドベンチャーゲームとしての新しい手応えが満ち溢れているのだ。
また、このシステムを効果的に活かした巧みなマップ構成とネタが満載の謎解きも、新しい手応えを大いに演出する。謎解きは全体的にバランスも良く、落ち着いて考えればどれもすんなりと解けるレベルに抑えられているのは見事だ。更にゲームの基本的な流れが一本道であり、寄り道要素がほとんど無く、集中して城からの脱出に挑める構成も素晴らしい。そしてプレイヤーが行動を共にする事になるヨルダ本人も、男性なら否が応にも「君だけは絶対に守る!」という本能が駆り立てられる、可愛らしいデザインになっているのも流石としか言い様が無い(笑)。
徹底的に簡略化を行ったゲームシステムの中に、ダイヤモンドの如く輝く新しさを表現。このように本作は、シンプルな作りでありがらも、それだけでは済まされない新しさと懐かしい香りが秘められた、不思議なゲームとなっているのだ。
そんなゲームとしての”不思議さ”を大いに煽る、美しく、存在感のある世界観も先の手繋ぎや簡略化されたゲームシステムと同じく、本作の大きな魅力の一つとして挙げられる。
実際に本作のスクリーンショット(画面写真)を見れば一目瞭然だが、本作はゲーム全体を彩るグラフィックの質感がもの凄い。城壁から植物、更には瓦礫まで、まるで本当にそれらがそこにあるかのような、”匂い”がヒシヒシと伝わってくる。そのあまりの凄さに、人によってはテレビの中に広がる世界が本物だと錯覚してしまうほど。バーチャルリアリティに負けず劣らずの圧倒的な存在感を醸し出しているのだ。
更に、基本は風と言った自然音だけに統一し、戦闘などのイベントだけに留めた音楽、まぶしさすら感じてしまう美しい光の描写もまた、そのグラフィックの存在感を大いに煽る。特に音楽のコンセプトは凄く新鮮且つ潔く、ガヤガヤと曲が流れている時では味わう事の出来なかった、自然音だからこそのリアリティと恐怖感を大いに演出していて面白い。まぶしさすら錯覚させる光の描写も、PS2の能力の高さを痛感させられるほどだ。
だが、そう言ったもの以上に、本作の存在感を大いに煽ってるのは、何と言っても「世界を魅せるカメラワーク」だろう。こればかりは実際に遊んでみないと分からないが…、本作ではカメラが過剰過ぎる位に周りの風景を見せてくれ、一本道のゲーム構成を全く感じさせない、世界の広さをプレイヤーに提供してくれるのである。中でも圧巻なのが中盤で城の城壁の上を進む際のカメラワークで、プレイヤーキャラを徹底的に小さくし、城の全体像から城周辺の風景までを画面いっぱいに映し出すのだ。そのあまりの絶景に、誰もが本当に自分が高所にいるかのような恐怖感、そして世界が本当に存在しているという事を錯覚してしまうだろう。実際は敵も結構出てきて、気を取られているどころじゃないのだが(そこが少々残念)、こうも虚構に過ぎぬ世界を本当に存在しているかのように構築した制作スタッフのセンスには、脱帽するしかない。もうここまで来ると、ゲームと言うよりは芸術の領域。アドベンチャーゲームという体裁を持っていながらも、実際は「ゲームという名の画集」とも言わんばかりの、システム自体を食い殺しているかのような、インパクト溢れる内容となっているのである。それ故に、多くの方は遊んだ際にゲームとしての魅力ではなく、この存在感のある世界観に魅了されてしまうだろう。それほどまでに、映像の破壊力が凄いのだ。
しかしながら多少、残念な所がある。主に先のカメラワークの事なのだが、世界を魅せるとは言え、必要以上にグルグルと回る為、3D酔いを起こし易いものとなってしまっているのは、流石に褒められたものじゃない。また、ヨルダが敵にさらわれた際のカメラモードもあるのだが、これがイマイチ見難い作りになってしまってるのも残念だ。世界を徹底的に魅せようとするその姿勢は面白いが、もう少し、ゲームとしての遊び易さの事も考えて欲しかったところだ。
操作性も癖のある作りになっているのが惜しまれる。特にジャンプの感覚が掴み難いのは、アクションゲームとして考えるとやや致命的。もう少し、快適なジャンプアクションを追及して欲しかった。ただ、それ以外は概ね良好。また、本作は振動の使い方が非常に上手く、中でもヨルダと手を繋いだ際に「ブルッ」と静かに震える感触は実に秀逸。手を引っ張って、走っている際の振動に限っては、本当に手がちぎれてしまうんじゃないかと錯覚してしまうほどだ。このような魅力もあってか、本作の操作性には他の快適な操作性のゲームには無い、不思議な味わいがある。
ストーリーもなかなかの完成度。昨今の、沢山のテキスト(台詞)で流れを追っていくのでは無く、テキストはあるけどあくまでも「動」がメインというスタンスが取られた作りとなっており、凄くゲームらしい。細かい設定も一切明かさず、不明瞭な所は徹底的に不明瞭にし、プレイヤーの想像にお任せする姿勢が取られているのも潔く、それでいて変に説教臭くなくて好印象だ。不完全な描写で構築されているが故のインパクトの強さもあり、その事もあって全体的に記憶に残る物語となっているのも素晴らしい限りだ。細かい設定を明かさぬ姿勢を嫌う方には、馴染めない作りとなってるのも確かだが、こうやって高性能のゲーム機で、遊び手を第一に考えた物語を作り上げた、その功績はでかい。何が何でも、この物語は体験してみるべきだ。改めて、テキスト主体で展開するゲームでの物語の空しさを痛感させられる…かも。
総評としてはPS2を持っているユーザーならば、是非とも遊んで欲しい名作である。カメラワークや操作性など、細かい不満点もチラホラとあるが、圧倒的な存在感を誇る世界観と手繋ぎによる新しくも不思議な手応え、そして不完全故に記憶に残るストーリーは圧倒的なオリジナリティに満ち溢れている。素直にこのようなゲームがPS2初期にリリースされたという事実だけでも驚きだが、当時、様々な大作がリリースされた時期と被り、見事に埋れた作品となってしまったのは正直、悲劇としか言い様が無い。もっと早く…或いは遅く出ていたら、どんな事になっていただろう。
とにもかくにも、子供から大人まで、幅広く楽しめる一本だ。是非とも、本作ならではの不思議且つ、存在感ある世界観をその手で感じ取って見て欲しい。
但し、本作には意外とダイレクトな出血表現や殺傷表現がある為、苦手なプレイヤーはご注意を。別に、そこまで過激という訳じゃないのですが。(それに、そんな滅多にある訳じゃない)
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