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≫ボクは小さい
■発売元 ビクターインタラクティブソフトウェア(現:マーベラス)
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)<Best版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリーカードの残り容量によって変化(※132KB以上の空き容量が必要)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ専用
■総説明書ページ数 27ページ
■推定クリア時間 20〜25時間(エンディング目的)、35〜50時間(完全攻略目的)
宇宙パトロール隊『プッチメン』は、指名手配犯であるスペースパイレーツの『シルバー』が、未知の星『チキュウ』の原住生物の家屋に潜伏している事を掴んだ。
見習い隊員のポムを母船に残し、すぐさま『プッチメン』の本隊はチキュウへと降下。
潜伏先とされる『ユウキ家』へと乗り込むのだが、そのまま行方を絶ってしまう。

ほどなくして、『チキュウ』からのSOS信号を受信する母船。緊急事態発生の命を受け、ポムはサポートロボットのパルと共に行方不明となった隊員達を探す為、チキュウのユウキ家へと降下する。

しかし、そこには恐るべき罠が待ち受けていた…!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆迷子になった仲間を探す、目的がはっきりとしたメインゲームシステム
◆時間をさかのぼりながらマップを探索する、壮大且つ斬新なアイディアが凝らされた独特のゲーム展開
◆5cmの視点から見る一軒家(4LDK)の凄味を表現した、壮大なフィールドマップ
◆一軒家らしく、それでいてゲームらしい嘘っぽさも効いた、ユニークなマップ上の仕掛け群
◆家に住む人の生活を覗き見する、斬新な面白さに満ちた『4Dドラマシステム』
◆攻撃、滑空、盗聴と多彩なアクションが楽しめる、変身システム(この変身システムを活かした、マップの構成も上手い)
◆ネタはシンプルながら、適度に考える面白さを演出した、絶妙な謎解き要素
◆フワリとしつつも、レスポンスは気持ちよく仕上げられた、優れた操作性
◆ほのぼのとした雰囲気を徹底した、刺々しさの無い、緩いゲームバランス
◆監視カメラ起動、アイテム収集など、コレクター魂を刺激するやり込み要素
◆人を選ばない、ほののぼとしたテイストが秀逸なグラフィック
◆ほのぼのとした世界観にマッチした、心地良い音楽
◆王道ながら、芸術的な伏線回収など、恐ろしく丁寧に作られたシナリオ
◆宇宙人に人間のみならず、未来人など、地味にぶっ飛んだ登場キャラクター達
◆種族別に専用のボイスを付ける、地味なこだわりが光る演出

--- Bad Point ---
◆無駄にグロテスクなデザインの敵キャラクター達(もう少し可愛くしても…)
◆癖のあるカメラワークとカメラ操作(主観ボタンで調整するしか無いのは、地味に辛い)
◆演出が地味で、痛々しさが伝わってこない落下ダメージ(どの位の高さでダメージを受けるのか、分かり難いのも×)
◆無駄に長い、スタッフロール前のエンディングデモ
▼Review ≪Last Update : 8/23/2009≫
似非関西弁なのバレバレ…。

が、実はこれも伏線。(※詳細は本編で)


5cmの宇宙人が、4LDKの一軒家に迷い込んでしまった仲間を助ける為、冒険を繰り広げる、完全新作の3Dアクションアドベンチャーゲーム。

見た目とタイトルに反した脅威の作り込みが光る、PS2の隠れた名作だ。

基本的なゲーム内容は、イベントクリア単位で進行する3Dアクションアドベンチャーゲーム。見習い宇宙パトロール隊員『ポム』を操作し、地球の『ユウキ家(4LDKの一軒家)』内で行方不明となった仲間達を助けつつ、凶悪犯『シルバー』を追い詰めていくというものだ。アクションアドベンチャーという事で、若干ながら『ゼルダの伝説』を脳裏に描く方がいるかもしれないが、家の中の様々なエリアを巡っていくというゲーム性から、どちらかというと作りとしては『ICO(イコ)』に近い。しかし、アクションアドベンチャーとしての基本的な作りは、他に類を見ないほど斬新。
まず何と言っても今作で目を見張るのが、プレイヤーキャラのサイズ。『ボクは小さい』というその名が語る通り、かなり小さい。何と、推定約5センチ。煙草の箱と同等のサイズとなっている。ちなみにそれは、他の宇宙パトロール隊員達、敵のシルバーも同様。そんなにも小さなキャラをプレイヤーは動かし、一軒家の中のあちこちを巡りながら、行方不明の仲間を探していくことになる。 勿論、家の中にある机や椅子、本箱と言った置き物、通路の長さは全て、5センチを基準とした大きさで描写。普通の人間なら、軽々と乗り越えられるものが、それなりの苦労と遠回りをしなければダメという、ギャップの激しいマップデザインで統一されている。その5センチの視点から見た、本箱等のオブジェクトの大きさと威圧感は相当なもの。さながら、逆ガリバー旅行記な雰囲気を満喫する事ができる。
更に逆ガリバーと申した通り、家の中には勿論、原住民(ユウキ家の人々)が住んでいて、彼らもまた障害物として立ちはばかる。その迫力も相当なもので、別に悪者でもないのに怖いという不思議な錯覚に捉われるほど。5センチにとって160〜180センチ(推定数値)の人間が何処まで恐ろしいのか、そんなのまで体感できてしまう。まさに、未体験の衝撃と恐怖とはこのこと。5センチだからこその面白味、怖さがギッシリと詰め込まれた仕上がりとなっている。
メインのゲーム展開の仕組み結構、独特。基本は行方不明となった仲間達を家の中から探し出す、至ってシンプルなものなのだが、実を言うとこれはフェイク。正しくは「時空間を行き来しながら仲間達を探していく」という、やたらと壮大なものとなっているのである。
実は今作には時間の概念と『時間移動』の要素が存在。○時間前に戻ったり、或いは○時間後に進むと言った事が可能なほか、時間の経過によって部屋で起きるイベントが変化すると言った、インタラクティブな仕掛けまでもが施されているのだ。そんな時間を行き来しながら、仲間を救出していく展開は何処と無く斬新。更に移動できる時間はゲーム開始の時点で1時間のみ(というより、時間移動はあるイベント発生後にできるようになる)で、それを増やす為、『タイムピース』と呼ばれるアイテムを回収していかなければならないという流れそのものも、従来のアクションアドベンチャーにない、自分が時間を征していくという不思議な手応えを提供してくれる。仲間は何処の時間にいるのか、そしてその時間には何が起こるのか、それを推測しながら進めていく楽しさもまた、他のアクションアドベンチャーにない考える面白さがあって秀逸。ここまで「時間」と「仲間の救助(アイテム探索)」を絶妙に織り交ぜたゲームデザインも結構、珍しいかもしれない。
また、マップ内に仕掛けられた監視カメラを伝って、家の中の住民達の生活ぶりを監視する事ができるのも斬新。これこそが『4Dドラマシステム』と呼ばれるもので、主にマップ内のトラップを解くヒントや部屋の情報(住民がいるのか、いないのか)を得たい際に重宝する。しかもそれだけでなく、住民たちにも個別で物語が用意されており、それを眺めて楽しむという、映像鑑賞的な遊びができるのも面白い。さながら、『覗き見』とも言えるその雰囲気は、まさに5センチのキャラが主人公だからこその特権。こんな楽しみ方ができるのも、今作のちょっとした売りである。
5センチの主人公、時空間を行き来するゲーム展開、そして観察(覗き見)。これらだけでも今作が、如何にアクションアドベンチャーとして、他に類を見ない要素で構成されているのかは、想像に難くないだろう。そんな感じに今作は、随所にて奇抜さが炸裂。遊んだものに強烈なインパクトをもたらす、画期的な内容に仕上げられている。
そもそも、5センチの主人公という時点でかなり画期的だが。

そんな5センチの主人公が活躍する今作最大の売りは、それ故の特権が活きたゲームデザイン全般とマップデザインの巧さに集約される。主に『4Dドラマシステム』だが、誰にも気付かれる事無く、人様の生活ぶりを眺めるその楽しさは、5センチという小さなサイズのキャラだからこそ確立する独自性に富んでいるのが素晴らしい。普通の人間キャラでは絶対に実現できないその自由度の高さには、5センチの主人公との相性の良さを痛感させられる。
またマップデザイン全般においても、5センチだからできるゲームらしい嘘っぽさがあり、笑いを誘う作りになってるのが上手い。例えば、今作では瞬時に部屋に移動する乗り物として『タクシー』が用意されているのだが、これが何と人間語を喋るハムスターだったり、そのハムスターが所々でお店(回復アイテム等が購入できる)を開いていたり、挙句の果てには、とある部屋に自分達の街(!)を作っていたりなどと。人が普段見えない所に、信じられない世界が広がっているという、その無茶苦茶さにもまた、主人公が小さいからこその魅力が反映されていて非常に面白い。アクションアドベンチャーの視点から見ても、単なる一軒家に常識を逸した地形があるというのは、プレイヤーの冒険心と好奇心を煽るのみならず、夢のある世界観に思わず嬉しい気持ちにさせられる。第一、家の中にハムスターが自分達の街とかを作っているという時点で、既に好奇心が爆発する。そんなのがあっちゃ、もっと隅々まで冒険しないと拙いだろ!…と言わんばかりに。しかも、今作の場合、舞台となる場所が日常なだけに、その世界も一層際立つからなおの事。そんな設計が成されてる辺りからも、今作のゲームデザインの巧さを感じ取れる。
純粋にゲームらしい嘘っぽさが炸裂してるのみならず、アクションアドベンチャーとしても、マップが丁寧に作り込まれてるのも見逃せないところ。一見、何の変哲の無い積まれた本がアスレチックになってたり、部屋の上部に意外な隠し通路が隠されていたりなど、見た目は一軒家らしい風景なのに、きちんとゲームっぽく仕上げられたその構成には、よくぞここまで違和感の無いものにしたなと感心させられる。それでいて、隠し通路の存在など、きちんとプレイヤーの探索心を煽る配慮も万全なのだから巧い。これもまた、日常の風景に非日常の存在を絡めたこその恩恵と言ったところだ。
そして、普通の身体能力では届かない場所は、仲間を助ける事で手に入る変身能力で突破できるなど、成長能力を活かす工夫がきちんとされてる辺りにも、アクションアドベンチャー独特の快感を尊重する姿勢が滲み出ていて秀逸。届きそうな所、届きそうにない所の見た目(距離感など)も、ギリギリ日常に溶け込ませて非日常に見せかける、絶妙なバランスで構築されていて凄い。あからさまなゲームっぽさを見せない、その絶妙さはまさに、スタッフの執念にも似たこだわりの賜物と言ったところ。よくぞここまで自然にさせたなと、それらを眺めると感心させられる。ここもまた、日常と非日常のバランスを意識したが故の産物と言ったところ。本当、こう言った所への神経の注ぎっぷりには驚かさせられる。
謎解きも、パズル系は少なめで難所突破だけに留めるなど、家の中を冒険するという元来の特徴が巧く活かされてる。少しネタ的な乏しさがあるのも否めないが、非日常的なエリアの存在が強烈なだけに、さほど気にならない作りにされてるのがせめてもの救いだ。
5センチだからこそ見せられる世界と探索する喜び、そしてその世界を明らかにゲームっぽくしない配慮の数々。それらに込められた制作スタッフのこだわりは本当、よくここまでやったなと、つい言いたくなってしまうほど強烈。
アクションアドベンチャーだけど、単なるアクションアドベンチャーには絶対にさせない。先のこだわりも、全てはその熱き思いによって実現されたのだろう。つくづく、巧いことをするなと感心させられるばかり。全てにおいて、信じられないほど自然な仕上がり、それでいてアクションアドベンチャーとしてのゲーム性を活かした作り込みが成されているのだ。
本当、大げさ過ぎるかもしれないが、この巧さは職人技の域と言っても良い。

操作性、バランス周りも丁寧なゲームデザインとマップデザインに沿うように、見事な出来栄え。特にバランスは激しい戦闘等が無い(ボス戦はあるが…)ゲーム性を考慮して、程好く温い難易度で統一されてるのが秀逸。また、難所突破を始めとする仕掛けの難易度も、冷静に周囲を観察すれば必ず突破できるバランスでまとめられてるのがお見事だ。アクションアドベンチャーの肝とも言えるところをきちんと守っている。
また総計ボリュームも適度な量で、大体クリアに20〜25時間ぐらいとなっていて程好い。寄り道要素も充実していて、アイテム収集や監視カメラ全起動など、コレクター魂を刺激するものが揃っていて、やり甲斐がある。
グラフィック、音楽も及第点の出来。中でも音楽はほのぼのとした世界観にマッチした印象的な曲が盛り沢山で、ゲームを大いに盛り上げる。特にボス戦における、何処と無く緩くてカッコイイ曲は必聴の価値あり。何気に作曲が『ポケモンコロシアム』や『イーハトーヴォ物語』を手掛けた、多和田吏氏だというのもゲーム音楽ファンには見逃せないところだ。
そしてシナリオは脅威の出来。凶悪犯を捕まえるという内容こそ至って王道のものなのだが、細かい展開が丁寧に作られており、見応えがある。中でも終盤、『4Dドラマシステム』で閲覧できるサブシナリオで張られた伏線が、本編と結びつく展開は鳥肌モノの衝撃がある。この素晴らしいシナリオを堪能してみるだけでも、今作を遊ぶ価値は十分あると言っても良いほどだ。それだけでも、元値は十分取れると自信を持って保証する。

演出も主にボイス周りだが、主人公達は宇宙語、原住民には日本語と、種族別の割り振りがされてるのが面白い。声優陣も地味に豪華で、未来からやって来た悪党二人組が、大塚周夫(『忍たま乱太郎』の山田先生)&青野武(『ちびまる子ちゃん』の友蔵)の重鎮コンビなのは、実に衝撃的。今時珍し過ぎるその組み合わせは、声優ファンなら要チェックだ。
他にも可愛らしいプッチメン達のデザイン、ロード時間の短さなど見所は多い。
カメラアングルと操作のし難さ、雑魚敵の気持ち悪いデザイン、そして落下ダメージの演出の地味さと判定高さの曖昧さなど、少し調整不足なところも散見されるが、完成度はかなりのもの。5センチ故のメリットが活かされたゲームデザインとマップデザイン、珠玉のシナリオと斬新なシステムが異彩を放つ、この『ボクは小さい』。
可愛い見た目に騙されることなかれ。
PS2を持っているユーザーならば体験すべき価値大アリの衝撃の名作だ。
これは本当、冗談抜きに面白い。是非、やるべし。超お薦めです。
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