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≫WILD ARMS Alter Code:F(ワイルドアームズ アルターコード:エフ)
■発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
■開発元 メディア・ビジョン
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)<Best版:1800円(税込)>
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります / ≫こちら?
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 残り容量によって変化(※1つ作成につき約49KB以上使用)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応、プレイステーション2専用ハードディスクドライブ対応
■総説明書ページ数 32ページ
■推定クリア時間 38〜40時間(エンディング目的)、80〜100時間(完全攻略目的)
徐々に緑を失い、枯れた荒野と化していく世界『ファルガイア』。
過酷な自然環境と魔獣の脅威にさらされながらも、人は大地にしがみついて生きていた。

そんな枯れた世界を巡り歩き、危険と浪漫を求める冒険者『渡り鳥』。
物語はそんな『渡り鳥』の少年が、ある辺境の村を訪れたことから始まる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆正統派故に気軽に楽しめる安心感が秀逸なメインゲームシステム
◆武器や防具でなく、能力を強化する『スキル』をセットするだけの簡易的な仕組みが斬新な装備システム(いちいち武器の性能を気にする必要が無いのがグッド)
◆敵との遭遇を一時的に中断できるその仕組みが斬新なエンカウントキャンセルシステム
◆プレイヤーを飽きさせない工夫(ネタ)が充実した、個性豊かで起伏に富んだマップ構成
◆三人のキャラが持つ『グッズ』を駆使して解く過程が面白い、絶妙で歯応えのある謎解き(謎解きエリアのみ、敵との戦闘が発生しない配慮も素晴らしい)
◆3Dフィールドをグルグル回りながら展開する演出が新鮮な、独特のバトルシステム
◆中世の王国、天空に浮いた大陸、軌道エレベーターと「荒野」をベースにした世界観と(良い意味で)著しく反した、ぶっ飛んだマップロケーション
◆推定クリア時間40時間以上と、適度な長さでまとめ上げられた総計ボリューム
◆倉●番チックなパズルゲームに隠しボスなど、呆れるほど充実したサブイベント
◆昔ながらのRPGの手強さ・楽しさを演出した、絶妙且つやり応えのあるゲームバランス
◆王道ながらも丁寧な人物描写と世界設定が光る、見応え満点のシナリオ
◆荒野の世界観とシナリオの「熱さ」に富んだ、名曲揃いの音楽
◆音楽の素晴らしさも相まって、感情移入し易いものに仕上げられた各種デモシーン
◆特撮の怪獣に巨大なロボットなど、随所で炸裂したマニアックな小ネタの数々

--- Bad Point ---
◆極端に癖の強い操作性(特にダッシュ移動とカメラの操作がきつい)
◆無駄に高く設定されたエンカウント率(キャンセルシステムがあまり意味を成してない)
◆一部、ボス並に強い雑魚敵がいるなど、やや理不尽な箇所も目立つ戦闘バランス
◆冗長なキャラ移動が煩わしい、通常設定のバトルテンポ(ターボ設定の方が良い)
◆街や洞窟を発見する、その仕組みからして疑問の多いサーチシステム(何故、いちいちそれらを探す必要があるのか、イマイチ説得力に欠ける)
◆かなり独特の形状をした文字フォント(少し読み難い)
◆臭い台詞の多さ(苦手な人には合いません…)
▼Review ≪Last Update : 2/15/2008≫
「待たせたな…。」

※注:某伝説の傭兵ではありません。


1996年にプレイステーションにて発売され、SFと西部劇を融合させた世界観と王道のゲームシステムで好評を博したRPG『ワイルドアームズ』のリメイク(フェイク)作品。

特異なシステムと秀逸なシナリオで送る、ベタさたっぷりの傑作RPGだ。

基本的なゲーム内容は、3D見下ろし視点で繰り広げられる正統派のイベントクリア型RPG。主人公ロディを始めとする仲間達を操作して、舞台となる世界『ファルガイア』の各地で起こるイベントを攻略していく、この手のジャンルではお馴染みのものだ。ただ、基礎となる部分は正統派ながらも、ゲームシステムや本編に関しては独自の要素と味付けが沢山備えられたものに仕上げられている。
代表的なものとして、ゲームシステムでは武器・防具が無く『スキル』による特殊能力を備える事に特化した装備システム、全体マップにおける街探索機能こと『サーチシステム』、敵とエンカウントする前に戦闘を回避できる『エンカウントキャンセルシステム』などと言ったものが挙げられる。特にこの中でも特徴的なのは装備システムと『エンカウントキャンセルシステム』の二つ。前者は世間一般のRPGとは異なり、お店で売られている武器や防具を買ってプレイヤーに装備する…というのが今作にはなく、予め主人公を始めとするキャラには固定で専用武器がセット済み。代わりに『防御力の強化』や『魔法の特定属性の威力強化』などの『スキル』のセットだけを行う仕組みとなっている。なので「お金をある程度溜めて、強い武器とかを揃える」という面倒な作業の必要がなく、本編の展開に集中できる。
後者も、基本はシンプルな『ランダムエンカウント』…いわゆる、フィールド上を歩いていると突然敵と遭遇する、これまた世間一般のRPGでは馴染みの仕組みであるのだが、今作では遭遇前に一定の「間(敵と遭遇する前に「!マーク」が表示される)」なるものがあり、そのマークが出てる時にタイミング良くボタンを押せば、その戦闘を回避できるというのが新しい。『ランダムエンカウント』の欠点とも言える、唐突過ぎるが故の「ドッキリ感」みたいなものも無く、この手のシステムが苦手な方にも配慮した仕上がりになっているのも特徴的だ。ただ、このエンカウントキャンセルは回数が限られており、画面上部に表示されている『エンカウントゲージ』が空になると、キャンセルは効かないようになる。
いつでも出来る訳じゃないのが、少しもどかしく感じるかもしれないが、これはこれで各ダンジョンのマップ探索において一定の緊張感、並びに戦略性(どのタイミングで戦闘を回避するか?)と言ったものを演出していて面白い。ゲージ減少をより小さくする為の『マイグラントレベル』と言ったものもあり、これを強化すると言った新たな遊び(やり込み要素)が楽しめるというのも、その足かせの賜物と言ったところ。他のRPGには無い独自の魅力をより一層引き出す仕掛けとして機能しているのには、ただひたすら恐れ入る限りである。
またシステム以外の箇所、本編においても独自の味付けは満載で、特に各ダンジョンにおける『ゼルダの伝説』を髣髴とさせるアクション性の強い謎解きは秀逸。主人公を始めとする仲間達を常時使い分け、専用の『グッズ』を使って謎を解いていく過程も独特で、このゲームのプレイヤーキャラ達(仲間達)は戦闘するだけの人形じゃないぜ!…という存在感を発揮しているのが大変面白い。謎解きのネタ、難易度バランスも総じて絶妙なバランスで仕上げられており、少し頭を捻れば大概のものは解けるという適度な程良さが気持ち良い。謎解きのシチュエーションに限り、敵との戦闘は発生しない(エンカウントが起きない)という配慮も成されていて、落ち着いて一つの事に集中できるのも素晴らしいの一言だ。世間一般のRPGでも、ダンジョンに謎解きを凝らす作品とかはあるものだが、そちらでは敵との戦闘も発生する事が多く、イライラするのがしばしば。今作の謎解きをプレイすれば改めて、「他のRPGもこの配慮を見習えよ!」…とか言いたくなるのも、正直避けられないだろう。つくづく、そのプレイの新しさと気持ちよさを考慮した配慮には驚くばかり。開発スタッフが謎解きとRPGを融合させるが故のデメリットをちゃんと理解しているのには、ただひたすら恐れ入るばかりである。

そんな特徴的なシステムとユニークな試みの多い今作。だが、最大の売りは本編における「プレイヤーを飽きさせない工夫」がしっかりしていることであったりする。先に紹介したダンジョンにおける謎解き要素もその一つだが、今作では最初から最後まで飽きさせない・ダレさせない為の工夫と配慮が、ビッシリと成されているのである。その象徴こそが、謎解き要素などの遊びが豊富に詰め込まれた絶妙なマップデザインと多彩なロケーション。二つともいわゆる、露骨な「使いまわし」がほとんど無く、何処のマップであっても新鮮な驚きと遊びが楽しめるよう、徹底した作り込みが成されている。
中でもロケーションの多彩さは目を見張るものがある。シナリオの設定では一応、『荒野』…いわゆる西部劇の開拓時代を髣髴とさせる世界観になっているのだが、それを思わせない地形が作中ではこれでもかと言わんばかりに乱発。中世の王国、謎の古代遺跡、緑豊かな森、天空に浮いた大陸、更には軌道エレベーターに宇宙空間(衛星)と、これはどう考えても『荒野』という基本設定から外れてないか!?…とツッコミたくなるようなものが続々と出てくる。言うなれば、荒野を舞台にしたファンタジーとも言うべきか。単に一つの世界で統一させない、ゲームらしい(嘘っぽさ)ネタが全開なのだ。
だから、本編を進めれば進めるほど…ゲーム開始前のOPなどで得られたイメージとは真逆の光景がどんどん広がっていく。そんな予想に反した展開を見せるが故、プレイヤー側も「この先はどんな世界(舞台)が待ってるんだ?」とつい、コントローラを握りたくなる。そんな「未知の謎」が待ってるが故、グイグイと先へと進めてくなってしまうのだ。
荒野の世界だと最初に思わせておいて、その後にファンタジーにSFな展開が起きてしまっちゃ、そりゃ誰だって「何だ、このゲーム!?」と興味を抱いてしまうもの。そのプレイヤー心理を上手い具合に捉えたこの作り込みには「上手過ぎる」としかコメントが出てこない。
更にこのハチャメチャな世界を舞台に繰り広げられる、メインシナリオも完成度の高さも見逃せない。三人のキャラクター達とその他の仲間達が、世界を乗っ取らんとする魔族との戦いに身を投じる、至って王道な内容であるのだが、主人公を始めとする登場キャラクター達の人物の掘り下げ、設定などがとても丁寧に作り込まれており、知らず知らずの内にプレイヤーを引き込ませる、強烈な魅力を秘めたものに仕上げられている。単に王道という訳でなく、捻りの効いた意外な展開なども盛り沢山で、特に主人公ことロディにまつわるストーリーは一見の価値あり。RPGではお馴染みの無口(何も喋らない)キャラを思わせない、その内容には誰もが「こう来たか!」とつい唸ってしまうだろう。
また、デモを始めとする演出も上質で、(後程改めて紹介する)音楽の素晴らしさも相まって、感情移入し易いものに仕上げられている。そのあまりにも”上手い”描写の数々にもまた、先のロディのストーリーと同様の感動を味わうことができるだろう。ただ、台詞回しなどは総じて「臭さ全開」。カッコ付けるような独自の表現が呆れるほど成されているので、そういうのに耐性が無い方には辛いものがあるかもしれない。
そこでちょっと損をしてしまってるのが残念なのだが、それを無理に受け入れてもこのシナリオ自体を堪能する価値は十分にあり。先のマップデザイン(ロケーション)も含めて、ゲームだって本気になればここまで面白くて感動的なものが作れるんだという、熱き思いを存分に体感することができるだろう。

その他、シンプルなコマンド選択式でありながら、3Dフィールドで展開する臨場感溢れるバトルシステム、総合的なゲームバランスも見事な出来。特にバランス周りは謎解きとバトルも含めて絶妙で、いわゆる「悪戯にボタンを連打すればOK」といういい加減な難易度になってないのが秀逸。昔ながらのRPGの楽しさを演出している。ただ、昔ながら…らしく、一部戦闘にてやや崩壊気味なところ(雑魚敵に極端に強いものがいたりなど)もあり、手放しに褒められないところがあるのも事実。エンカウント率も総じてキャンセルシステムがあるにしても少し高めで、若干、煩わしさも演出してしまってるのがちょっと残念だ。バトルシステムも少しテンポが悪い(オプションで展開スピードを最高にしてようやくまともなテンポになる)のがちょっと惜しい。
また、グラフィックも背景や地形などのモデリングは素晴らしいのだが如何せん、キャラクターのモデリングがちと「ゴツい」のがタマにキズ(汗)。主として人間キャラ全般なのだが、もう少し柔らかいものにできなかったのか、悔やまれるところである。ただ、ゲームプレイに支障を与えるほどではないのがせめてもの救い。遊んでいけば魅力的なシナリオも相まって、徐々に気にならなくなっていくのでそこは安心して頂きたい。神経質な方は別だけど…。
それ対し、音楽は文句無しの素晴らしさ!「今作はこれの為に買っても損はしない」と言っても良いほど、素晴らしい楽曲の数々が沢山用意されている。荒野の世界観を思わせるテイストと、「熱さ」が絶妙に融合したその曲には、誰もが耳を奪われてしまうだろう。特に戦闘系の曲は強烈で、ジェーン専用戦闘曲、ブーメラン&ルシエド戦、ゼット戦、ゴーレム戦、そしてレディ・ハーケン戦の五曲は要チェック。うち、ハーケン戦の曲はあまりにもメロディが強烈であるが故、人によっては耳から離れなくなったりする…かもしれない。念のため、ご注意を。

ボリュームもメインが40時間以上、サブイベントも含めれば60〜80時間以上と盛り沢山。長めでありながらも、飽きさせない工夫もしっかりしているので、ダレることもほぼ無し。その見事なバランス感覚には脱帽の一言である。
とは言え、エンカウント率の高さや操作性の癖の強さ、全体マップにおける『サーチシステム』による探索要素など、チラホラと欠点もあり、残念なところもチラホラ。
しかし、全体的にはそんな粗も含めて愛したくなるような魅力が詰まっており、独自の面白さと感動が盛り沢山のRPGに仕上げられている。やや癖が強くもあるが、遊んだプレイヤーに確実に「何か」を残してくれる、この『ワイルドアームズ アルターコード:F』。PS2を持っているRPG好きユーザーならば、是非ともプレイすべき傑作である。結構、臭いところもあるけど、冒険と感動満載の荒野の世界を体験してみましょう。お薦め。
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