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≫スタートリングアドベンチャーズ 空想3×大冒険
■発売元 カプコン
■ジャンル オムニバスアドベンチャー
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 6090円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※プレイステーション専用メモリーカード対応:1ブロック使用)
■その他 アナログコントローラ対応
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 5〜6時間(各作品ごと)、15〜30時間(全作品、完全攻略目的)
一本の中にバラエティ溢れる3つのアドベンチャーゲームを収録。
懐かしくて新しい、そんな冒険がここにある!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆分岐も無く、ストーリーを読み進める事と遊びを楽しむ事に特化した、シンプルなゲームデザイン
◆作品ごとに異なるミニゲーム、世界観など、徹底して盛り込まれた差別化要素の数々
◆過度に長過ぎず、短過ぎずの丁度良い物量でまとまった各作品ごとの総計ボリューム
◆ロックマンライクな構成、豊富なミニゲームなど、収録作品の中でも突出して気合の入った作り込み具合が異彩を放つ『スペースレスキュー・ジョウ』
◆収録ミニゲームがたったの一つでありながら、意外とシステム周りで凝った作りになっているのがユニークな『PRINCESS'S KNIGHTS(プリンセスズナイツ)』
◆各種作品のストーリーを盛り上げる、実力派声優陣による演技(※但し、一名を除く)

--- Bad Point ---
◆運要素の強いミニゲームを収録している所為で、収録作品の中で傑出してゲームバランスの悪さと理不尽さが際立っている『キョウコと百鬼王』
◆『キョウコと百鬼王』の主人公、キョウコを演じる女優・岡本綾の酷い棒読み演技(しかも、脇を固めるキャストが三石琴乃、折笠愛、飯塚昭三と実力派揃いで余計に浮いてしまっている)
◆ストーリーとミニゲームが終わる度に必ず挟まれる上、その頻度が多過ぎるセーブ画面
◆セーブ画面の過剰な挿入の影響で、ぶつ切り感とテンポの悪さが際立ったシナリオ構成
◆そこまで濃く描かれない上に盛り上がり所にも欠ける為、印象に残り難い各種作品のシナリオ
◆レスポンスが悪く、動かしていてモヤッとする操作性(インターフェースの出来もイマイチ)
◆リバース操作に設定不可、アナログコントローラでも動かせないと言った問題の所為で、過度にプレイヤースキルが求められてくる『スペースレスキュー・ジョウ』の3Dシューティング
◆3Dシューティングの問題点の影響により、極端な塩梅になっている『スペースレスキュー・ジョウ』のゲームバランス
◆資料閲覧の度に長いロードが発生するなど、不備が多過ぎる特典要素『少年まくのうち』
◆作品ごとに極端に差が現れたグラフィック(特にスペースレスキュー・ジョウ)
◆空気同然で、全く印象に残らない音楽(ただ、雰囲気作りにはそれなりに貢献している)
▼Review ≪Last Update : 1/19/2014≫
狙うのにいちいち唸らんでください。

そうなってしまうのも分からなくもないが…。


2001年5月、プレイステーション末期にカプコンより発売された、完全新作タイトル。

突出した魅力に欠ける上、詰めの甘さが随所で散見される凡作である。

ゲーム内容はオムニバス形式のアドベンチャーゲーム。全三種類の異なるアドベンチャーゲームを収録した、いわゆる詰め合わせ的な内容のゲームである。
各アドベンチャーゲームは全て、ストーリー主導型のゲームデザインとなっており、基本的に選択肢による分岐は無く、単純にストーリーを追っていく事に特化した、一本道のシンプルな作りになっている。ただ、選択肢による分岐が無い代わりとして、各ゲームには『ミニゲームパート』なるものが存在。これが要所要所で挟まれ、クリアする事によって次のストーリーへと進める仕組みとなっている。当然ながら、ミニゲームの攻略に失敗してしまうと、その時点でゲームオーバー。再び、ミニゲームをプレイする事になる。アドベンチャーゲームというと、ゲームオーバーとは無縁のジャンルで、強いて言うなら、選択肢を誤ってバッドエンドが訪れるのがその代わりみたいになっているが、今作はそのようなものがある故に仕組みがやや特殊。更に、ミニゲーム自体もアクションあり、シューティングあり、更にはシミュレーションありと多彩なので、それなりのコントローラさばき及び、戦略も要求されてきたりする。その為、ストーリーを楽しむ(読み進めるだけの)内容と思って挑むと、痛い目に遭うのは言うまでも無く。この手のジャンルでは珍しい、ゲーム性を最優先とした作りになっている。ある意味、その部分に関して強いこだわりを持つカプコンらしい作り。ストーリー以上にそちらに力を入れた内容に仕上げられている。
そんな今作に収録された、全三種のアドベンチャーゲームの詳細は以下の通り。

≪キョウコと百鬼王≫
封印を解かれた巨大な魔獣『百鬼王』と、彼に魅入られてしまった女子中学生『キョウコ』とその家族達の騒動を描いた作品。各キャラクターの名前の通り、日本を舞台とした世界観となっている。基本的にプレイヤーはキョウコとなり、ストーリーを読み進めながら、百鬼王とその手下達が仕掛ける対決(ミニゲーム)に挑んでいく。
対決時に繰り広げられるミニゲームは『百鬼王の玉はじき』、『清乃のすごろく』の二つ。
前者はいわゆるビリヤード。自分の手玉を打って的玉を穴に落としつつ、勝利条件の達成を目指すというものになっている。後者はその名の通りにすごろくだが、舞台となる盤が円形であるほか、勝利条件が相手のコマに追いついた方が勝ちなど、ルール周りが特殊。また、『カード』による妨害要素も存在し、これで相手を足止めすると言った事もできる。 ミニゲームの性質上から、全体的に運要素と戦略性の強さが際立った作品になっている。
ちなみに他の作品にも共通する事柄だが、会話はほぼフルボイス。
更にこの作品に限り、主人公のキョウコ役には女優の岡本綾が起用されている。

≪PRINCESS'S KNIGHTS(プリンセスズナイツ)≫
20世紀初頭のヨーロッパを舞台に国の再建をかけ、逃亡する小国『アルカリ王国』の王女ローズと彼女を守る近衛戦車隊の活躍を描いた作品。
プレイヤーは戦車隊のリーダーであるフレットとなり、ストーリーを読み進めながら、彼らを狙う『マンガン帝国』の戦車隊との戦いに身を投じていく。
ミニゲームは『ミッションコンバット』の一種類のみ。いわゆるリアルタイムストラテジー(RTS)で、部下の戦車隊に指示を出し、ターゲット(敵)の撃破に挑むというゲームになっている。リアルタイムストラテジーという事で、少し複雑な内容をイメージするかもしれないが、仕組みはシンプル。ユニットの違い、相性などの要素はあるが、基本的には指示を飛ばして敵を撃破していくだけに集中していけば難なく遊べるので、全くの初心者でも楽しめる作りとなっている。無論、チュートリアルも完備。また、単に敵を撃破するだけでなく、マップによっては離脱があるなど、勝利条件全般も多彩。短めではあるが、ある意味、本編のアドベンチャーを喰うほど、ミニゲームの存在の濃さが際立つ作品に仕上げられている。

≪スペースレスキュー・ジョウ≫
スペースコロニーで『何でも解決屋:RESCUE(レスキュー) コンダコワ』に下宿する主人公のジョウ・グリソムが、コロニーに住まう人々の様々な問題解決に挑むという作品。SFの世界観が特徴で、ストーリー的には全三作の中で最もコメディ色を推し出した内容になっている。
加えて、収録ミニゲームも全三作中最大。『早撃ち』、『コード当て』、『爆弾解体』、『操縦』、更には『3Dガンシューティング』まで色々なものが用意されており、これらをストーリーを進める為にクリアしていかねばならない。あまりに数が多い為か、練習モードも用意されている。
また、この作品に限り、『依頼選択』なるものが存在。好きなルートからストーリーを進めていける、ロックマンシリーズのような構成になっているのも大きな特徴である。
収録ゲームの多さ、好きなルートから進めていける本編など、ゲームデザイン的にもストーリー的にも明らかに力の入れ具合が他の二作と違い過ぎる作り。ある意味、今作のシンボルと言っても過言ではないほどの作品になっている。

以上が今作に収録されている三作の簡単なあらましだ。
なお、三つの作品は全てプレイしなくても問題無し。別に全てをプレイしなければ、エンディングが見れないと言ったような要素は無いので、気に入らないものは放置しても構わない。如何にもオムニバス形式らしい、自由度の高いゲームデザインと言った具合だ。各作品もその違いの多さ故、全体的な密度と遊び応えは相当なもの。アドベンチャーゲームというには少し違和感のある部分もあるが、大きな差別化が図られた作り込み具合は見逃せないものがある。このように全体的にかなり斬新で意欲的な試みに満ち溢れた作り。これまでに無いタイプのようで、どこか見覚えがあるような、不思議な香り漂うアドベンチャーゲームに仕上げられている。

しかし正直な所、これら三作品の完成度は絶賛できるほど高くは無い。むしろ、イマイチだ。ストーリーは一本道な上、ミニゲームと合わせて淡々と会話が展開されていくだけなので、あっと驚くような場面も少ないし、ミニゲームも特段、面白いと言えるような出来ではない。「それぞれ作品の良い所は?」と言われても、頭を抱えてしまうほどに突出した売りや魅力が出てこない、薄味な内容にまとめられてしまっているのだ。
唯一、『スペースレスキュー・ジョウ』はミニゲームの種類が多彩なだけに、本編はなかなか起伏に富んだものになっている。だが、肝心のストーリーはあってないようなレベルの出来で、本当に何の急展開も無いまま(僅かにある事はあるのだが…)、終わってしまう。『キョウコと百鬼王』、『プリンセスズナイツ』もまた然りである。「アドベンチャーゲームはストーリーに真髄あり!」。そんな風に考える方ほど、今作は微塵も受け入れられない内容だと言ってもいいだろう。それ以前に別にアドベンチャーゲームが好きでないという方でも、この味気なさと見所に欠けた内容には気持ちが萎える。例え一本道であろうとも、急展開やどんでん返し、巧妙な伏線回収劇などがあれば、話は大分違ったであろうに、そこにあまりこだわらず、ミニゲームと合わせた淡々とした構成にまとめてしまったのは作り込みが甘過ぎるとしか言い様が無い。
また、先ほども少し触れたが、ミニゲーム自体も特段、面白くない。『プリンセスズナイツ』の『ミッションコンバット』はそこそこ頑張っているのだが、それ以外はとにかく味気なく、奥行きにかけた浅い作りで終わってしまっている。
また、『キョウコと百鬼王』の『百鬼王の玉はじき』において目立つ点なのだが、やたら運要素の絡む勝負があるなど、バランス調整の不備も散見される。救済処置も皆無で、実力で勝たなければならないのにも、その嫌らしさに拍車をかけてしまっている。ストーリーを読み進めたいのに、ゲームがクリアできない為に読み進められないとか、幾ら何でも本末転倒過ぎるだろう。救済処置が無い辺りも不親切極まりない。せめて難易度選択ぐらい設けて良いだろうに、何故、そういう考えに至れなかったのだろうか?こういう部分でもアドベンチャーゲームに対する理解の甘さが如実に現れてしまっていて腹立たしい。これでシステム周りと演出全般の出来も宜しくないのだから、ますます救い様が無い。システムというか本編の構成だが、シナリオパートとゲームパートが終わる度に毎回、セーブ画面が強制的に挟まれるのだ。これがまた非常にウザい。話の腰を折るだけでなく、各作品全体のテンポをも悪くしてしまっている。これ故にストーリー全体のブツ切れ感も強くなってしまっているし、展開も全然盛り上がらない。
演出もブツ切れ感が強い所為で全くパッとしない。また、フルボイス演出にしても、『キョウコと百鬼王』の主人公、キョウコの演技が壊滅的に酷い。先に女優が起用されているという事から、熱心なアニメ好きの方ならば容易に想像が付くと思うが、感情表現皆無の棒読み。それが最初から最後まで延々と繰り返されるのだ。もはや拷問同然である。その他の作品はしっかりとプロの声優陣(それも関智一、高山みなみ、玄田哲章と言ったベテラン勢)を起用しているというのに何故、この作品に限って声優経験の無い女優を起用したのか?謎過ぎる。
ただ、声自体はオプションで消せる。そういう回避手段が用意されている点ではまだ救いと言える。しかし、そういうオプションが用意されている反面、『スペースレスキュー・ジョウ』の3Dシューティングのリバース操作への変更は不可能であるなど、気が利いてない所もあったりする為、褒められた出来かというとそうでもないのがもどかしい。三作のアドベンチャーゲームが遊べるその内容自体は非常に魅力的ではある。しかし、肝心の中身の出来がお粗末で、人によっては駄作判定を下されても致し方が無いレベルのものになってしまっているのが惨い。ゲーム性を最優先としたコンセプト自体は決して悪くない。だが、各ゲームの作り込みが及第点に届いていない上、他の部分の悪さと相まってシナリオパートの良さを根こそぎ食い尽くしてしまっている点にアドベンチャーゲームに対する理解の甘さが露呈されてしまっている。
まさに不慣れさと話題性を狙った空回りぶりが痛過ぎる出来。コンセプトは面白いというのに、それがロクに作り込まれてないという浅さが腹立たしい作品に仕上がってしまっている。個々のアイディアは悪くないのに何故、ここまで魅力に欠けた内容になってしまったのか。実力不足にしても、ちょっとこのレベルは問題があり過ぎる。

細かい所で操作性も宜しくない。特に先ほども触れたが、『3Dシューティング』はリバース操作への変更ができないのもさることながら、アナログコントローラにも対応していないのが最悪極まりない。そもそも、PS成熟期に発売されたゲームだというのに何故、非対応にしたのか?方向キーよりもアナログスティックでプレイした方が遥かに快適になるのは素人目でも明らかだというのに理解に苦しむ。操作以外でも、メニューインターフェース全般も劣悪。レスポンスが鈍く、動かす気持ちよさに欠けた残念な作りになってしまっているのが痛い。
そして、全体的なゲームバランスに関しては言わずもがな、ほぼ壊れているも同然。先に挙げた『キョウコと百鬼王』以外でも、何度も挙げてる『3Dシューティング』は照準が縦横の軸にしか動かせない仕様な上、こちらの操作スキルに関係なく大量の敵が一挙に現れるなど、調整が不十分なところが目立つのが気がかりだ。
対し、ボリュームは適切で、1作品、大体6〜8時間程度でエンディングを迎えられる為、サクッと遊べる。しかし、作品によってはミニゲームの理不尽な勝負で長引くことがあるので、充実感はどうかというと、察してくださいの一言だ。

グラフィックも『ジョウ』のグラフィックだけ異様にクオリティが高いなど、統一が取れていない部分があるのは地味に気になる。音楽に関しては、はっきり言って空気同然。語ることは皆無だ。他に各作品をクリアする度に設定資料集などが閲覧できる『少年まくのうち』と呼ばれるコンテンツが設けられているが、各作品の出来がイマヒトツなのもあって、見る気力が湧きにくい。また、今作はロードも気持ち長めで、『幕の内』では閲覧の度に発生するので、余計にその気が失せる始末。別に無くても良かったんではと言いたくなるほどに存在感が無いのが惨い。
正直、良い所を挙げてと言われても、異なるアドベンチャーゲームが三つ遊べること、『ミッションコンバット』の手軽なゲームデザインと言ったぐらいで、後は何があったのか本気で頭をかかえてしまうほど。それほどまでに特徴と魅力に欠けた内容になってしまっている今作。駄作では無いのだが、あまりお薦めできたものではない作品である。特にアドベンチャーゲーム好きの方に対しては、薦める事自体が喧嘩を売るも同然になる。これをやるぐらいなら、今作の後にカプコンから発売された逆転裁判シリーズをプレイするのがお薦めです。
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