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≫UnMetal


■発売元:Versus Evil / ■開発:@unepic_fran / ■ジャンル:ステルスアクション /
■CERO:C(15歳以上対象) ※暴力・出血、過激言語、性的表現あり / ■定価:1,900円(税込)

◆公式サイト / ストアページ
≫『UnMetal』(Steam)
≫『UnMetal』(My Nintendo Store) ※Nintendo Switch版
≫『UnMetal』(PlayStation Store) ※PlayStation 4|5版
≫『UnMetal』(Microsoft Store) ※Xbox One版

©FranciscoTéllezdeMeneses / ©Versus Evil LLC
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:3個 / ■必要容量:400MB /
■推定クリア時間:9~10時間、20~25時間(完全攻略目的)
1972年某月某日、一機のソビエト連邦(ソ連)製軍用ヘリコプターが連合国領内に侵入。
軍はただちに対空砲火を実施し、ヘリコプターは撃ち落とされる。
そして、墜落現場でひとりのパイロットの男が捕らえられた。

男はそのまま連合国の軍事基地へと移送。将校による尋問を受けることになった。



男の名はジェシー・フォックス。
伝説の傭兵でもなければ忍者でもない、トヨタ製自動車を愛する民間人である。
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆主人公の回想(過去の出来事)中心に展開されていく、ユニークすぎるストーリー構成
◆敵の数と種類、仕掛けにその後のイベント、果ては主人公の命運まで左右する選択肢システム(ストーリーが回想中心で構成されていることを巧みに活かしたシステム)
◆人間を殺害すればゲームオーバーという、主人公の民間人設定を活かしたユニークなペナルティ
◆潜入に破壊工作、兵器の奪取、そして殺人ネズミからの逃亡(?)など、個性豊かなミッション
◆ミリタリーな世界観と雰囲気をいい意味で踏まえない、個性的すぎるネタが仕込まれたボス戦
◆シリアス1割、ユーモア9割でありながら、時に意表を突く展開で魅せるコメディ寄りのストーリー
◆シリアス1割、ユーモア9割のストーリーの魅力を巧みにつかんだ、キレのある日本語ローカライズ
◆初期の『メ●ルギア』を思わせつつも、光の表現などの現代的な手法も採り入れられたグラフィック
◆ミリタリーな世界観と雰囲気にマッチしつつ、時に盛大に外す試み(?)も込められた音楽
◆フルボイスによるイベントデモ、派手な爆発、そして質感十分の効果音など、要点を押さえた演出
◆『メタルギ●』を知るプレイヤーなら苦笑い必至な小ネタの数々(かの有名な台詞も……?)

--- Bad Point ---
◆選択肢システムの都合、ステルスアクション特化のプレイが困難な設計(どうしてもイベントデモを見なくてはならないため、ステルスアクションだけを遊びたいプレイヤーなら拒否反応を覚えやすい)
◆構造的に複雑で、攻略に長時間を要しやすい迷路エリア(特にチャプター5が難関)
◆スリルはあるものの、初見殺しがすぎる即ゲームオーバーになる選択肢
◆必要な素材を取り漏らすと、手間の多い戻り作業を要される一面を秘めたアイテム合成システム
◆光の表現を採り入れた結果、一部、過度に暗くて視認性が落ちている箇所の存在(特に地下)
◆色んな意味で賛否が分かれるエンディング(賛否というよりは、戸惑いやすい?)
▼Game Overview
「話せば長くなるが、これが俺の体験したことのすべてだ。……たぶん。」



◇『UnEpic』に『Ghost 1.0』といった、ユーモアとブラックジョーク満載の探索型アクションゲームを手がけてきたインディーゲーム開発チーム「UnEpic Fran」による2Dステルスアクションゲーム。またの呼称で、タクティカルエスピオナージ……とか言ったら、伝説の傭兵と偉大なるボスにCQCをぶちかまされそうな気がするので止めておく。2021年4月に海外先行でPlayStation Vita版が発売され、同年9月にPC(Steam、Epic Games Store)、Xbox One(Xbox Series X|S)版が発売された。Nintendo Switch、PlayStation 4|5版も海外先行で販売され、日本では2023年から販売開始となっている。

◇地面と木々しか見えない、2Dのふざけた見下ろし視点(By:ジェシー・フォックス)で展開されるステルスアクションゲーム。主人公のフォックスを動かし、様々な任務(ミッション)をこなしながら、投獄された軍事基地からの脱出を目指す。だが、この軍事基地というのは冒頭のストーリー紹介で言及した連合国の軍事基地とは別の軍事基地である。詳細は後述する。
本編はステージクリア型となっていて、「チャプター」を順番に攻略していく形で進行。チャプターごとに舞台となるマップは固有のものになっていて、チャプターをクリアしてしまうと再訪はできなくなる。ただし、「チャプターセレクト」の機能を経由した再プレイは可能である。また、ステルスアクションゲームなので、敵とは正面からぶつからず、後ろから不意打ちを仕掛けたり、時には監視の目の隙を突いて潜り抜けることが基本戦術となる。

◇舞台が連合国の軍事基地ではない、別の軍事基地である理由について、ストーリー紹介の続きをここに記す。尋問を受けることになったフォックスは、なぜ自らがソ連製の軍用ヘリコプターとともに連合国領内に現れたかを語り始めた。いわく、フォックスはとある精鋭コマンドー部隊に濡れ衣を着せられ、謎の軍事秘密基地に投獄された模様。フォックスはこの窮地を乗り越えるため、にわかな知識を総動員して独房から脱獄したらしい。そして、様々な監視を潜り抜け、基地からの脱出を試みた……との話である。伝聞的な表現の通り、本作の舞台となるのはフォックス当人の記憶の中にある軍事基地。ストーリーもフォックスの記憶をもとに語られることから、全編が回想という独特かつ大胆なものになっている。

◇この回想という設定を活かした独自システムとして、アドベンチャーゲーム(ノベルゲーム)由来の選択肢イベントがある。本編は随所でフルボイス(英語)によるイベントが発生し、ストーリーが語られていくのだが、その中に選択肢が現れ、どれかを選んで決めるものが用意されている。そのイベントにて選んだ選択肢に応じて、以降の展開が変化。具体的には敵の配置(人数)が変わったり、特殊な仕掛けが現れたり、時には新たなイベントが発生したリする。
選んだ選択肢に応じて難易度も変化。敵の人数が変わる選択肢が特に分かりやすいが、ひとりだけなら容易に突破可能な反面、2人以上になると監視の目が増えて難しくなるのである。なお、中にはミッション遂行になんの影響も及ぼさない選択肢も存在。しかし、そうすることでストーリーがあらぬ方向に転んで、大変なことになったりする。選んだら即ゲームオーバーの選択肢もあったりするので、こちらに気概がないからと、軽い気持ちで考えずに応じるのが推奨される。

◇ステルス周りのシステムは、敵に発見されると警戒モードに変わって追撃を受ける、それを解くにはどこかに身を隠して数秒待つ必要があるといった定番のものを採用している。ただ、独自要素として殺傷行為が禁止されており、人間を殺してしまうとゲームオーバーになる。よって、人間に対しては背後から格闘攻撃を仕掛ける、もしくは非殺傷系の武器で気絶されることが推奨される。殺傷系の武器自体は拳銃を始め、複数存在するのだが、これを人間に対して撃つと相手は瀕死状態になり、そのまま放置してしまうとゲームオーバーになる。もし、撃ってしまって、ゲームオーバーを回避したい時は手持ちの「救急キット」で応急措置を施せばいい。一連の特徴は主人公のフォックスが民間人であることに由来。民間人の殺害行為は犯罪という定説に則った独自システムとなっている。なお、ゲームオーバーになるのは人間を殺した時である。大事なことなので、何度も繰り返した。他にも本作には敵に発見されない状態で気絶させると「EXP」が手に入り、一定値に達するとフォックスのレベルが上昇し、ステータス強化が図れるシステム、手に入れたアイテムを組み合わせて別のアイテムを作り出す合成システムも用意されている。
▼Review ≪Latest Update :9/22/2024 | First Publication Date:9/22/2024≫
題名からして、隠す気が無いほどに『メ●ルギア』をオマージュ。
しかし、回想主体という設定を活かしたストーリーとシステムによって、独自性を確立させた傑作である。
『UnMetal』というタイトル名、見下ろし視点という画面構成は、歴戦の傭兵なら最初期の『メタ●ギア』を連想させられるだろう。実際、見た目は隠す気がないほど、その頃の『メタル●ア』を踏襲している。
おまけに主人公、フォックスの容姿までス●ークっぽい。おまけにジェシー・フォックスという名前からは、フラ●ク・イ●ーガーことグ●イ・フォ●クス、あるいは●ルが脳裏を過ぎってしまうはずである。

細かすぎるが、拳銃で人を殺めることが許されないというシステムも、「戦いの基本は格闘だ」という某台詞が思い起こされる。だが、イメージビジュアルやゲーム中のイベントデモも見れば明らかだが、●ネークそっくりの民間人である。ついでに言うならば、「追い込まれた狐はジャッカルよりも凶暴だ!」という台詞を塩●兼人氏の声で喋ったりもしない。

そして、前述したようにゲームシステム、ストーリーも非常に独自性が高く、本作だけでしか味わえない体験が満載。まさに「似て非なる者」ということわざをこれ以上なく体現した、大変手の込んだ作品に仕上げられている。

特に面白いのがストーリー。作風としてはシリアス1割、ユーモア9割と、元ネタとは180度異なるコメディ寄りの作風になっている。そもそも、フォックスが精鋭コマンドー部隊によって投獄されるに至った罪というのが「無実の罪」である。思わず「異議あり!」とツッコみたくなるのも無理はない。だが、これはまだ序の口。本編開始以降は、まさに流れるように珍妙奇天烈な展開が連続し、フォックスを尋問している将校とそれを追体験するプレイヤーからのツッコミに次ぐツッコミの祭りとなる。チャプター1の一例を出すと、トイレットペーパーを手に入れるために拳で便器を破壊する、溝から触手、血まみれの槍、骨の腕が飛び出すといった感じ。真面目に考えたら負けの連続である。

チャプター2以降に入ると、この傾向はさらにエスカレート。下水道で「ピラニア人間」との戦闘が始まったり、チーズになって殺人ネズミの追撃から逃亡したリ、イエローサブマリンが現れちゃったり、性欲を持て余しかねない警告を受ける、誉(ほまれ)ある戦いに挑むといった感じに「どうしてそうなった!?」な出来事が相次ぐ。
いずれも初見で体験してこそ印象が強烈になり、腹筋を刺激させられるところがあるので、これ以上の紹介は割愛する。少しでも気になったのなら、製品版でお確かめいただきたい。記憶に残る潜入劇(兼脱出劇)を保証する。

各種、ネタの豊富さは本編全体の起伏を作り上げることにも貢献している。ネタの使いまわしも少ないどころか、基本、チャプターごとに固有のネタを入れるという凝りっぷりなので、次にどんなネタが飛び出すのか気になって、どんどん進めたくなってしまう。また、選択肢による分岐があるので、一回クリアした後も別の選択肢を選んだ場合の展開見たさで遊びたくなるリプレイ性も押さえている。単純にプレイヤーを笑わせることだけでなく、ゲームとしての遊び応えと面白さも引き立てるための要素として活かしたそのまとめ方には感服してしまうこと必至だ。

単体のステルスアクションゲームとしても非常に完成度が高い。前述のネタに限らず、舞台となるマップに登場する敵、仕掛けまでチャプターごとに固有のものを用意しているので、どこもかしこも刺激的で、遊び応えがある。

チャプターによってはボス戦も用意されているが、これも大変面白く、戦い甲斐のあるものに仕上げられている。素晴らしいのが、ここでもコメディ寄りの作風であることを活かしきっていること。ミリタリーな世界観と設定から、ボスの多くは人間や兵器類が中心という先入観が働くと思われるが、これがとてもいい感じに裏切られるメンツが勢ぞろいなのだ。詳細は見てのお楽しみだが、前述の「ピラニア人間」から、だいたいどういうことかは察せるかもしれない。
そんな訳で、これも気になったのなら製品版でお確かめを。誉(ほまれ)あれ。

他にストーリーもコメディ全開ながら、後半に入ると徐々にシリアスさが増すなど、プレイヤーの関心を引きつける内容に仕上げられている。日本語翻訳も自然なものになっていて、元々のシリアス1割、ユーモア9割の内容を違和感なく楽しめる。そのユーモア9割なことは念頭に置いていただきたいが、こちらもこちらでネタ、ステルス全般同様に記憶に焼き付けられるほどの体験をお約束する。ジェシー・フォックスに対する圧倒的な不信感を抱くようになることに関してもまた然り、だ。
ストーリーにちなんだ部分では、イベントデモを始めとする演出も手の込んだ仕上がりとなっている。前述したが、イベントは英語音声のみだがフルボイス。しかも、ジェシー・フォックスにはネタ元の『メ●ルギア』で英語版のスネー●と近しい声質を持った声優を起用するという謎めいたこだわりが炸裂している。
また、ボスを倒した時の演出にも注目である。色んな意味で「ゲームがちがくね?」となると思う。

ボリュームも結構大きく、本編を1周するだけでも10~12時間近くは要する。やり込み要素も4段階用意された難易度への挑戦、チャプターごとの隠しアイテムの回収といったものも用意されている。
操作性も良好。ゲームパッド使用時であれば、右スティックの上下左右に好きな装備をセットできる機能が解禁され、指定の方向に倒せば瞬時に切り替えられるようになる。これが大変快適。他にグラフィック、音楽も完成度が高く、とりわけ音楽は場面にマッチしつつ、不意に笑いを誘ってくる使い方をしてくるのが面白い。

一方、選択肢システムに関しては初見殺しすぎる一面もあり、中でも即ゲームオーバーな選択肢にはストレスを抱きやすい。また、本作はグラフィック全般に光の表現が用いられているのだが、反動で暗いところが見えにくいといった、手法特有の弊害も散見される。アイテムの合成に関しても、基本的に素材となるアイテムは自力で発見して回収する必要があるため、漏れてしまうとマップを右往左往する手間が生じ、テンポが悪化するというのも若干ながら、詰めの甘さが現れている。

また、選択肢システムの関係で本編ではイベントデモ発生によるゲームプレイの中断も頻繁に発生する。しかも、その後の展開と関係する都合でどうしても見なくてはならない。それゆえ、純粋にステルスアクションだけを楽しみたいプレイヤーからすると、テンポの悪いゲームと見なされやすい一面もある。あくまでも、そういうゲームだと割り切らないともどかしく感じるかもしれない。

しかし、そういった粗を補って余りあるほど完成度は高い。また、全体的な独自性も素晴らしく、単なる『メ●ルギア』のクローン、二番煎じとして終わっていない作りも素晴らしい。随所に『メタルギ●』を知るプレイヤーをニヤリとさせる小ネタもあるなど、元ネタに対する敬意と愛の深さも感じられ、まさにオマージュとパロディかくあるべしとも言える傑作だ。
ストーリーによる縛りが強めな点に注意が必要だが、ステルスアクションゲーム好き、『●タルギア』好きならプレイいただきたい。ある意味、唯一無二のステルス“回想”アクションゲームがここにある。
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