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≫tERRORbane


■発売元:WhisperGames / ■開発:BitNine Studio / ■ジャンル:アドベンチャー /
■IARC:7歳以上対象(軽度の暴力、恐怖表現あり) / ■定価:1,640円(税込)

◆公式サイト / ストアページ
≫『tERRORbane』(Steam)
≫『tERRORbane』(My Nintendo Store) ※Nintendo Switch版

tERRORbane is developed by BitNine Studio
and published by Whisper Interactive (Xiamen) Co., Ltd. ©All Rights Reserved.
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:1個 / ■必要容量:3.0GB /
■推定クリア時間:2~3時間(1周)、10~11時間(完全攻略目的)


開発者:
「プレイヤーのみんな、ようこそ!
これが僕が長い年月をかけ、作り上げたゲーム『tERRORbane(テラーベイン)』だ!

これは最高で完璧なゲームなんだ。
なぜかって?それはこの僕自身がぜんぶプログラムしているからさ!
だから当然、僕のために遊んでくれるよね!?
だって、最高で完璧なゲームなんだよ!?

このゲームは2022年4月1日からPC(Steam)、Nintendo Switchで発売中だ!
買ってくれたみんなには、ゲームの気に入った部分を書き込める素敵な用紙を渡すよ。
これで君だけの冒険の記録を残そう!

用紙の最後にはバグや不具合を書くセクションもあるけど、使うことはないよ!

じゃあ、さっそくゲームを始めてみてね!
歴史に名を残す傑作が生まれるその瞬間を見逃すなッ!」
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆バグ探し(デバッグ)という”総当たり”行為をアドベンチャーゲームに置き換えた、発想と解釈の勝利なゲームデザイン
◆バグによる分岐パターンの豊富さも相まって、先の展開が全く読めない「セクション」ごとのイベント
◆バグによる不安定ぶりから、常々意表を突く攻略が要求されてくる戦闘イベント
◆一見、コメディ調の内容と思わせて、実は心打つ展開でプレイヤーの涙腺を刺激する衝撃のストーリー
◆誇張抜きに”最高で完璧”の評価に値する、翻訳からデザイン変更まで凝りに凝った日本語ローカライズ
◆1周2~3時間、完全攻略10時間ほどの長すぎず、短すぎずの塩梅に収まった本編全体のボリューム
◆往年の名作に限らず、最近の名作まで網羅するというゲーム愛が込められたパロディネタの数々
◆200種類以上という膨大さとバリエーションの豊富さでプレイヤーに衝撃(笑撃)を提供するバグの数々
◆個人開発者が作ったゲームらしさのある、いい意味でアクの強いキャラクターデザインとグラフィック
◆色んな意味でゲーム好きの血の気をひかせるパロディ効果音の数々(特に街でドアを調べると……?)
◆バグによってゲーム世界が破壊される怖さと珍妙さを克明に表現したエフェクト演出全般
◆性格面で好みは分かれるが、いろんな意味で印象に焼き付くこと必至の開発者(しかも、日本語版の声優は杉田智和氏)

--- Bad Point ---
◆総当たりが基本になる関係で、若干の作業感が付きまとうゲームプレイ周り
◆マップ移動速度の遅さ(走るアクションがないため、探索のテンポはイマイチよくない)
◆分岐パターンが豊富すぎるゆえ、不明瞭気味な正規ルート(そもそも正規ルート自体がない……?)
◆一部、初見殺しでクリアしないと先に進めない戦闘イベントの存在(特に「セクション3」序盤)
一部、ほぼアウトと思しき効果音の存在(中でも終盤の”トレーナー”戦がかなり怪しい)
◆自己顕示欲の強い性格もあって、人によっては嫌悪感を抱く恐れもある開発者
▼Game Overview
「なにが歴史に名を残す傑作だ。
歴史に名を残すのは、こんなダメなゲームを作った開発者のお前だ!




◇最高で完璧なゲームを作り上げたと豪語し、有頂天になっている開発者の鼻をへし折るため、ゲーム内のセクションごとに潜むバグを暴き出すことに挑む新感覚アドベンチャーゲーム。ちなみに正式名称は『tERRORbane』と書いて『エラーベイン』。開発はイタリアのインディーゲームスタジオ「BitNineStudio」。PC版以外にNintendo Switch版も発売されている。また、2022年9月14日には大型アップデートで、当初英語のみだったボイスが日本語吹き替えに対応した。日本語版の開発者役には『銀魂』の坂田銀時役、『涼宮ハルヒの憂鬱』のキョン役を代表作とする杉田智和氏を起用。

◇プレイヤーは”最高で完璧なゲーム”『tERRORbane』(テラーベイン)を遊び、その現実を根底から覆す”真実”という名の”不具合(バグ)”を見つけ出すことに挑む。厳密にはロールプレイング(RPG)要素のあるアドベンチャーゲームで、「セクション」ごとに設けられた様々なイベントをこなし、バグを発見しながらストーリーを進めていくという内容。RPGだけにマップの探索、謎解き、敵との戦闘も用意されていて、一部のセクションでは”真剣に”取り組まないとストーリーが進展しないようになっている。

◇『テラーベイン』が”最高で完璧なゲーム”というのは完全に開発者の主観全開の”自称”。そのため、各「セクション」には膨大な量のプログラムミスが隠されている。オブラートに包まず言ってしまえば、”最低で不完全なゲーム”。もっと酷い言葉で表すればク●ゲーである。念のためだが、設定上の話で、実際のゲームの出来は断じてク●ゲーではない。誤解なきよう。
そんな”最低で不完全”なことが何を意味するのかと言えば、本編は元の筋書き通りに進行せず、システム全般も多くが成立しておらず、まともに動作しない。そのため、プレイヤーの操作に応じてグラフィックが崩壊したり、ストーリーが中断するといった思わぬ不具合が発生しては、想定外の事態へと発展してしまう。それとは別に開発者の設定ミスもあり、普通にストーリーを進めていたら、史上最強にして最強最悪の最終ボスとの戦闘が始まって、心が圧し折られる結末を迎える、なんてことも起こる。

◇そのような数々のバグ、設定ミスの数々をゲーム本編をプレイしながら発見し、時にはプレイヤー自らが体験することによって「バグリスト」が埋まっていく。これらを繰り返しながら『テラーベイン』の世界とストーリーを巡っていくというのが基本的な流れになる。どんなゲームなのかが想像しにくいかもしれないが、一般的なアドベンチャーゲームやノベルゲームで例えるなら、「セクション」は「チャプター」(エピソード、章など)、バグや不具合は「選択肢」、そしてバグリストは「イベントリスト」(もしくは実績、トロフィー)と言い換えれば、どんな仕組みであるのかが大体想像できるかもしれない。

◇要は膨大な選択肢と分岐パターンが設けられたアドベンチャーゲーム。そこに探索、謎解き、戦闘といった要素があって、プレイヤーが参加したり、時にはそれをいじり倒して壊すことが求められてくるという具合。『テラーベイン』の最高で完璧なゲームというのは紛うことなき”自称”だが、本来の『エラーベイン』は斬新で異形のアドベンチャーゲームと明言できる作りである。
▼Review ≪Latest Update :5/21/2023 | First Publication Date:5/21/2023≫
まさに「この発想はなかった」の一言に尽きる意欲作。
あまりにギリギリすぎる名作タイトルのパロディと、そのマニアックさにも度肝を抜かれる内容である。
このゲーム、何が面白いというか、笑えるのがビックリするほどアドベンチャーゲームをしていること。前述の特徴からして、異様な作りをしているのが明らかだが、これで完全にアドベンチャーゲームになっている。具体的には選択肢による分岐要素が備わった、コマンド選択型のテキストアドベンチャーゲーム。それに極めて近い遊びが楽しめる内容になっている。

どの辺が近いのかと言えば、メインのバグ探し。これがコマンド選択型アドベンチャーゲームで言うところの”総当たり”そのもの。ストーリーを進めたいのに会話が進まなくなったり、新たな手がかりが見つからない時、どれが次に繋がる”フラグ”であるのかを一通り確かめるというあの行為だ。本作はそれをバグ探しという行為で、件の体験を作り出している。
元々、実際のゲーム開発でも、バグ探しこと「デバッグ」では、本来のプレイでは到底あり得ない可能性も想定して、色々な動作を行ってバグが発生しないか否かを確かめることになる。壁に延々とぶつかり続ける、正規ルートから外れてみるといった感じに。そういった行為のことを”総当たり”という。まさにアドベンチャーゲームで行き詰まった時にやるアレだ。

それもあって、見事にアドベンチャーゲームとして成立している。
正直、「そんなムチャクチャな……」と思ってしまうところもある。だが、遊んでみると全然違和感がなく遊びとして成り立っていて、やればやるほど「アドベンチャーゲームだ」と思ってきて「悔しいッ!」となってしまう。しかも、RPGのフォーマット上でこれを確立させているのだから、発想と解釈の勝利としか言い様がない。よくぞデバッグという、ゲーム開発における作業(見方によっては苦行)をアドベンチャーゲームの遊びと結び付けて成立させたなと思う限りだ。

こうしたバグ探しを遊びのキモにしているなりに、そのバリエーションにも並々ならぬこだわりが注がれている。とにかく、仰々しくて腹筋を刺激するものばかり。マップが崩壊する、システムが正常動作しなくなる、ブルースクリーンが表示されるといったのは序の口。ストーリーイベントを見ていたはずが突然、見覚えのないゲームが始まってしまったり、デバッグ用ツールが起動して設定をいじり放題になるなど、「これなんのゲームだっけ?」と困惑必至な出来事がこれでもかと言わんばかりに連発する。

一応、RPGであることから戦闘イベントも都度発生しては、王道のターン制コマンド選択システムの下で一戦を交えることにもなる。だが、それもバグでコマンド選択型からアクションコマンド方式に変わったりと、終始安定しない。酷い時には開発者用コンソールの解禁でプレイヤーと敵とでソースコードの回収とチート行為の応酬にもなる始末だ。

そのようなバグの総数は実に200種類上。率直に「よく考えたな」と感心させられてしまう物量。また、これほどの種類があるからこそ、どんなネタが飛び出してくるのか探したくなってしまう面白さもあって、決してネタ目的で作ったのではない本気を感じさせられる仕上がりになっている。

そして、本作でプレイヤーの遊ぶ『テラーベイン』とは個人の開発者が作った、いわゆるインディーゲーム。インディーゲームと言えば、歴史に名を刻んだ傑作のネタを入れたり、全編に渡ってオマージュしたりするのがある種の定番。本作もそれを踏まえてか、有名な傑作のパロディが大量に仕込まれている。というか、本来の『エラーベイン』もインディーゲームなので、どのみち、そういうネタがあるのは必然……と言っていいのかどうか。

ただ、古いタイトルに偏らず、最新タイトルも扱っているのはちょっと珍しい。一例を挙げれば、心が折れそうになるほど難しくて世界観も暗い”魂”のゲームとか、基本無料でクロスプラットフォームなアクションゲームなど。
また、古いタイトルのパロディも妙にマニアック。”た~る”の工房、竜の退治に飽きた人向けのアレ、ジャンル名を装飾しては解き放つテイルがなんちゃらとか、「よく、そこに目を付けたな」と言いたくなるものばかり。こうも新旧幅広くネタとして扱い、年老いた世代だけのゲームにしないとの思いが込められているのも本作の魅力のひとつ。バグの豊富さとそれを遊びとして昇華していることもだが、本作を単なるネタゲーとして終わらせまいとする開発チームの本気を知るだろう。
その本気はストーリーにも込められている。コメディと見せかけて、実は凄く心打つ展開が用意された感動的な内容になっている。具体的にはトゥルーエンドにまつわる一連の展開。本作には2種類のエンディングがあって、200種類以上のバグをすべて発見すると、トゥルーエンドのルートへと突入する。これに入ってからのストーリーが非常に素晴らしく、誇張抜きにプレイヤーの心に訴えてくるものに仕上げられている。どんな展開と結末が待つかは割愛するだが、見ればますますもって、本作をネタゲーとして片付けるのはあまりにも失礼だとなってしまうはずである。条件的に結構大変だったりもするが、相応の価値があるエンディングになっているので、騙されたと思って頑張ってみて欲しい。

ストーリーを魅力的なものにしている”最高で完璧な”日本語翻訳とローカライズも特筆に値する。
念のためだが、これは断じてゲーム側の設定によるウソではない。本当に”最高にして完璧”と称しても大げさではない完成度。画面に応じてフォントを使い分けたり、台詞にもイマドキの表現を用いるなど、「元々、日本語で書かれていたのでは?」と勘違いしてしまうほどに凝っている。大型アップデートで日本語吹き替えに対応させるのも凄いし、開発者役に人気声優にしてベテランの杉田氏を起用するのも驚きだ。間違いなく、数ある日本語に対応したインディーゲームの中でも、並外れた日本語ローカライズがされた作品のひとつと言ってもいい。

他にも1周は2~3時間、トゥルー目的だと10時間程度というボリュームも手頃で遊びやすい。1周クリア後にはセクションの途中から始められる「ワープポイント」なるチャプター選択機能も解禁されるなど、完全攻略の際の負担を軽減させる対策も万全に成されている。グラフィックと音楽もいい意味で個人開発者が作ったゲームらしいクセの強さが独特の味わいを醸し出している。
ただ、マップでのキャラクターの移動速度が遅い、基本的に総当たりで進めていく関係でトゥルーを目指すとどうしても作業感が出てしまうのは好みが分かれやすい。また2023年現在は解消済みだが、本物のバグ……それも進行不能系(ゲームパッド操作が受け付けなくなってしまう、というもの)が紛れ込んでいたのはいただけない。さすがにそういうのは優先的に潰しておいて欲しかったところである。アップデートによる対処が遅かったのも気がかりだ(2022年9月のことだった)。
念のためだが、これからプレイする分には全く問題ないのでご安心を。

そういった惜しい部分もあるが、全体的には意欲作にして良作と評価できる作品に完成されている。デバッグをアドベンチャーゲームの総当たりの遊びとして置き換えたまとめ方は、まさに発想と解釈の勝利。すごく心打つストーリー、マジで”最高で完璧”な日本語ローカライズも圧巻だ。新旧幅広く、若い世代にもピンと来るものを揃えたパロディの数々も面白い。このゲームシステムとストーリー設定に少しでも関心を抱いたのならば、すぐにでも遊んでみよう。かなりおススメ。そして、バッチリ”最高で完璧”なゲームです。その評価を保証するのはあの……いや、このネタは危険すぎるからやめておきます。各々ご想像ください。
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