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≫Freedom Planet(フリーダムプラネット)


■発売元:GalaxyTrail / ■ジャンル:アクション /
■CERO:B(12歳以上対象) ※暴力・拷問描写あり / ■定価:1480円(税込) /
■対応OS:Windows、Mac、Linux / ■日本語:対応(※2018年8月31日より実装) /
■プレイ人数:1人 / ■備考:フルコントローラサポート、Steam実績対応

◆ストアページリンク
≫Steam / ≫GOG.com / ≫Humble Bundle
謎のエネルギーを秘めたオーブ、その名も「キングダムストーン」。
それを手に入れ、全宇宙の支配を目論む暴君「ロード・ブレヴォン」。



その恐るべき野望を阻止すべく、ライラック、キャロル、そして旅の途中で出会ったミラの三人の少女は、様々な仲間達の協力を得ながら、ブレヴォンの軍勢に立ち向かう。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆1990年代前半に一世を風靡したアクションゲームの伝統に則った、王道のゲームデザイン
◆それぞれ特技と戦術周りで明確に差別化された、三人(三匹)のプレイヤーキャラクター
◆前半と後半で構成された圧倒的なボリューム感と豊富な仕掛けが光る、12以上ものステージ
◆『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を髣髴とさせる360度ループに探索型アクションチックな謎解きなど、盛り沢山且つ、ネタ周りでも楽しませてくれるステージ内の仕掛け
◆遺跡、空中戦艦、秘密基地、更にはアジアンテイスト溢れる街まで、彩り豊かなステージロケーション
◆豊富なストーリーイベントのほか、分岐要素まで仕込まれた凝った作りの「アドベンチャーモード」
◆往年のアクションゲームの感覚で、ストーリー無しの直球勝負が楽しめる「クラシックモード」
◆多関節キャラクターが画面狭しと大暴れする、90年代溢れる演出で盛り上げてくれる熱すぎるボス戦
◆可愛らしい世界観とは裏腹に、シリアスでハードな作風でまとめられたストーリー
◆ストーリーを引き立てる、個性豊かで盛り沢山の登場キャラクター達(デザインも秀逸)
◆一周5時間近く、やり込みの攻略も含めれば、4倍近くに跳ね上がる驚異的な物量が光る総計ボリューム
◆ストーリー重視、アクション重視の楽しみ方に完全対応した全四種類の難易度
◆適切なキー配置と軽快な挙動が光る操作性(ミラのみ独特だが、慣れれば自然に動かせるようになる調整)
◆メガドライブのゲームを意識した色数、精微な描き込み具合で魅せるグラフィック
◆これぞアクションゲーム、と言わんばかりのメロディアスで熱い音楽(楽曲数も膨大)
◆90年代のアクションゲームに忠実な熱さと仰々しさに富んだ完璧な演出周り(特にボス撃破時)
◆英語でも問題ないところはそのままにし、訳す必要のある部分だけ変更する分を弁えた手法と違和感のない日本語表現が見事なローカライズ(特に英語表記をそのままにする判断が素晴らしい)

--- Bad Point ---
◆裏を返せばボリュームがあり過ぎて、全容の把握が困難を極めるステージ構成
◆同じくボリュームがあり過ぎるあまり、クリアするだけでも相当な時間を要されるステージ構成(探索が絡むステージだと、クリアまで30分近くも要することになったり…)
◆ハイスピードアクションを特色にする内容に不釣り合いで、テンポを乱す要因にもなっているカード集めのやり込み(ステージが広い所為で、集めるのにも手間がかかる)
◆無敵時間無しのダメージ仕様(主にボス戦で形勢逆転に追い込まれる危険性を作ってしまっている)
◆「看板に偽りあり」の難易度設定(標準の「ノーマル」が事実上の「ハード」なバランス)
◆「カジュアル」、「イージー」専用の自動回復機能が何故か適用されないシューティングステージ
◆意外と刺激的な暴力シーン(特に中盤の拷問シーンは、人によっては心をゴリゴリと抉られる)
◆終盤にかけて登場するブレヴォン兵士の鬱陶しさ(やたらと固くてしつこい)
◆何故か体力ゲージが設定されたラスボス(なのに何故、他のボスには無いのか…?)
◆一部、ノーヒントが過ぎる実績の存在(ピアノのアレとか…)
▼Review ≪Latest Update :4/17/2022 / First Publication Date:10/21/2018≫
悪逆非道の暴君に正義の鉄槌を!

この者が犯す所業を見過ごしてはならない。



セガゲームスの看板タイトル『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の二次創作作品として制作を開始するも、様々な紆余曲折を経て完全オリジナルのアクションゲームに方針転換し、2014年にPC用ソフトとして配信された横スクロールアクションゲーム。制作は個人開発者Stephen DiDuro氏が立ち上げたインディーディベロッパー「GalaxyTrail 」。

1990年代のアクションゲームの魂を受け継ぐ、パワフル・アニマルな傑作だ。
内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型のアクションゲーム。ドラゴンの「ライラック」、ワイルドキャットの「キャロル」、そしてバセット・ハウンドの「ミラ」のいずれかのキャラクターを操作し、強大な力を秘めた石「キングダムストーン」を手中に収め、宇宙を支配しようとする暴君ロード・ブレヴォンとその軍勢との戦いに身を投じていくというものだ。

本編は一本道構成で、ストーリーに沿ってステージを順に攻略していく形で展開。ステージは前半と後半の二部構成で、最奥で待ち構えるボスを倒せばクリア。ストーリーイベントを挟んだ後、次のステージが始まる仕組みだ。主に1990年前半に多く見受けられた、アーケードスタイルのステージクリア型アクションゲームの定石に基づいた作りになっている。
また先述の通り、本作は『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の二次創作作品として最初は作られていたという経緯を持つ。そのため、同作をモチーフとした要素も幾つか盛り込まれている。
象徴的な所では、ステージ内の360度回転ループ、ボールのように体を丸めての高速ダッシュがそれだ。なので、ソニックシリーズを知るプレイヤーなら、あまりのソックリっぷりに苦笑いしてしまうこと請け合い。現にゲームプレイの模様を映したトレイラーを見るだけでも、本作がソニックのオマージュ作品であるという事を嫌というほど実感させられるだろう。

しかしながら、本作は単なるソニックのオマージュ作品に終わっていない。更に言うなら、アクションゲームとしてのプレイ感も別物だ。それを最も演出しているのがプレイヤーキャラクター達である。先の通り、本作には三人(三匹)のキャラクターが存在し、それぞれが持つ特技によって、異なるアクションと戦闘を楽しめるようになっている。
各キャラクターの詳細を紹介すると、まず「ライラック」は本作に当たる主人公格に当たるキャラクター。一定時間地上、空中を問わず高速で移動する「ドラゴンブースト」、ジャンプした後に回転しながら二度目のジャンプを実施する「サイクロン」を特技とする。後者「サイクロン」には攻撃判定もあり、敵に重なるように使うことで回転中に限り、連続してダメージを与えることができる。攻撃は近接専門で、通常攻撃のスラッシュのほか、方向キー上+攻撃ボタンを押すことで上方向に向けてスラッシュを繰り出すこともできる。キャラクターの性能はソニックに比較的近いが、高速ダッシュこと「ドラゴンブースト」の性能は同じくメガドライブで発売されたアクションゲーム「ロケットナイトアドベンチャーズ」のスパークスターに使い勝手が似ていて、ソニックとスパークスターのハイブリッドとも言えるキャラクターに完成されている。三人の中では性能面で癖もなく、素直に動かせるので、ゲームを始めて間もない頃は選ぶことが強く推奨されるキャラクターだ。
次の「キャロル」はライラック以上に近接攻撃に特化したキャラクター。かの著名な対戦格闘ゲーム『ストリートファイターII』の春麗を髣髴とさせる百裂脚を必殺技として持つほか、ステージ上に配置された燃料(ガソリン)に触れるとバイクに搭乗。そのまま高速で移動しながらステージを進めていけるようになるという、一風変わった特技(?)を持つ。ライラックのように二段ジャンプはできないが、壁に張り付いてジャンプボタンを押すとそのまま駆け上がるという、『ロックマンX』シリーズでお馴染みの「壁蹴り」が可能だ。それらの性能から、カプコンのDNAを宿したとも言えるキャラクター。主に攻撃周りに癖はあるが、慣れれば攻撃的にステージを進めていける、使い込み甲斐のあるキャラクターになっている。
最後の「ミラ」は三人でも屈指の癖の強さを持つキャラクターになっている。特に攻撃周りが独特で、エネルギーをブロック状にして作り出し、それを投げたり、時にはレーザーに変換して指定の方向に射出するという技で敵と戦う。また、ジャンプした直後、更にジャンプボタンを押すことで『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』などを髣髴とさせる「踏ん張りジャンプ」をお披露目し、普通のジャンプでは届かない場所まで簡単に飛び移ることもできる。反面、体力が三人の中では最も低く、下手に敵の連続攻撃を浴びたりでもすれば、一瞬でやられてしまうほど脆い。ステージ内を隈なく探索しながら進むに当たっては最適で、機動性も優れているが、慎重な取り扱いが求められるキャラクターだ。メーカー的には任天堂のDNAを宿したキャラクターとも言える。癖の強さから、万人向けのテイストが皆無な点で大分違っていたりもするが。

このようにキャラクターごとにアクションが明確に差別化されているのに加え、特技も様々なのもあって、実際のプレイ感はソニックとは大分かけ離れたものになっている。更にシステム周りも、本作はダメージ制を採用しているほか、敵の攻撃やトラップにのみダメージ判定があって、敵本体には接触してもダメージを受けないという、珍しい設定が凝らされている。ダメージに関しても、無敵時間が存在しない。連続して敵の攻撃、トラップに接触し続ければ、一気に体力が減ってしまう。それもあって、敵が繰り出してくる連続系の攻撃はかなりの脅威。当たりどころが悪ければどんなことになるのか、想像に難くないだろう。それもまた、立ち回りの違いを表現していて、本作独自のゲームプレイを提供してくれる。

他にゲームモードにはストーリーに沿ってステージを攻略していく「アドベンチャー」のほか、それらのイベント無しでステージ攻略だけに集中する「クラシック」の二種類が用意されていて、それぞれ全く違った遊びを楽しむ事ができる。特に「アドベンチャー」は単にストーリーのイベントがあるだけでなく、行動の選択によって以降のステージ、ストーリーが変化する分岐要素も盛り込まれた、なかなか盛り沢山な内容になっている。一周目の時点では確認できないステージも幾つかあるなど、やり込み度も高く、一筋縄ではいかないプレイ感を演出している。
動いている様子は、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』。されどもその実態は、数多くの著名なアクションゲーム、それも90年代前半に評価された作品の要素を集めたハイブリッド。見た目と実態が違うだけでなく、ゲームプレイ自体もやり応え、新鮮味に富んだ作り込みが図られた内容にまとめられている。まさに制作者のアクションゲーム愛が詰め込まれたというに相応しい作品。その頃のアクションゲームに慣れ親しんだ世代の琴線を刺激する仕上がりになっているのだ。
そんな本作の魅力は、一つのアクションゲームとしての完成度の高さである。先述の通り、システム周りやキャラクターごとのアクションを始め、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』に代表される著名なアクションゲームのオマージュが多いのだが、それらが高いレベルで絡み合っていて、独自の手応えと熱さに満ちたハイスピードアクションゲームを実現している。

特にその魅力が現れているのがステージ構成。敵から仕掛けの配置、ステージ一つのボリュームに至るまで、こんなにもネタを詰め込んだのかと感心させられる濃密な内容にまとめられている。個性付けも盤石で、オーソドックスなアクションを楽しめる所もあれば、任天堂の『メトロイド』を髣髴とさせる探索が展開される所もあったりと、彩り豊かな展開が用意されているので、プレイヤーを退屈させない。ステージによっては前半に限り、別ジャンルのゲームが展開されるイベントも用意されているほか、それも選んだキャラクターごとに自機が変わるという凝りっぷりで驚かせてくれる。

また、多くのステージで落下ミスに繋がる罠が仕掛けられていない所も特筆に値する。基本的に進行ルートから外れ、下に落ちてしまったとしても、そこから先の別のルートが用意されていて、そのままステージの奥へと進んでいくことができるので、行き詰まることが起きにくいのだ。勿論、全てのステージがそうという訳ではなく、中には特定の手順を踏んだり、仕掛けを解除しないとその先へと進めない場面、正規ルートに戻る遠回りが必要とされるところもある。終盤になれば、落下ミスに繋がる罠も出てくる。しかし、例えそういう展開になっても仰々しい仕掛けで盛り上げたり、回りくどい展開にはしないと言った配慮が凝らされているので、あまりテンポを損ねることはない。また、いわゆる初見殺しな展開も、画面外から敵が襲ってきた際には警告のアイコンを表示してプレイヤーに危険を知らせてくれるので、あまり不意打ちをやられたという気持ちにされにくい。まさにハイスピードアクションなりのスピード感とテンポを大事にした設計で、前進していく楽しさと気持ちよさを尊重した設計が図られている。それらのステージを攻略する際に操作するプレイヤーキャラクター3人の個性付けも見事で、キャラクターごとに専用のステージも用意されていたりと、しっかりそれぞれを使う意義を設けているのもさすがの一言に尽きる。

そして何より、演出周りが90年代前半のアクションゲームのツボを完璧に抑えている。ステージにはストーリー性を感じさせる演出、展開も盛り沢山で、背後から巨大な岩が猛スピードで転がってきて、無事に乗り切った!…と思ったら、間もなくボスが現れ、すぐに戦闘に突入したり、仕掛けを解いて扉を開けたら下から針の山が迫って来て、脱出パートに移行するなど、操作しているキャラクターに感情移入してしまう場面が次々と繰り広げられる。特にボス戦はその真骨頂であり、複数のパーツで構成された多関節キャラクターが多く出てくるのには、90~95年代のアクションゲーム、具体的には魂斗羅シリーズ、『ガンスターヒーローズ』を知る人ならば「これだよ、これ!」と、思わずテンション爆アゲになってしまうだろう。ボス達の動きも大変素晴らしく、その種の作品が好きな人を唸らせる完成度。やられ様も非常に派手且つ、爆発力十分で、さながら、90~95年代のコナミ、カプコン、トレジャーの作品を髣髴とさせる仰々しさには、当時を知る人ならば懐かしさを感じると同時に、これがアクションゲームの演出というものだよ!…と、嬉しさがこみ上げてくるだろう。
他に各ステージは最速クリアを目指すのも熱く、そのやり込みに集中できる「タイムアタック」のモードも用意するなど抜け目がない。オマージュ満載且つ、アクションゲームとしての作りも王道だが、様々な要素が混じっているなりに刺激的な展開が繰り広げられるだけだけでなく、ちゃんと当時のアクションゲームらしい部分も押さえた作り込みが徹底されている。そして、今の作品らしいやり込みも整える隙の無さ。繰り返しになるが、最初はトレイラーの印象からソニックを想起するだろう。だが、実際にプレイすれば、全く違うことを思い知らされるはず。特にステージはその事を強く印象付けるものになっているので、チェックしてみて頂きたい。何度も違うと主張する理由を実感させられるはずだ。

ただ、裏を返せば各ステージはかなりの密度。中でも探索要素が絡む所は、全てを終えるのに30分近く要することになる。短めのステージでも最低10分近くは要するところが多く、場所によっては中ボス戦の多さから、「これ以上は勘弁して…」と、クリア直前にしてお腹いっぱいになってしまいかねない。終盤のステージは短期決着を意識した構成になっていたりもするのだが、さすがに盛り過ぎた感は否めず。なまじ本編のステージ総数が12を超えているだけに、長いステージは全体の2つ程度に留めるなりして緩和して欲しかったところだ。
更に言うなら、ステージの広さは返って全体像の覚えにくさも助長している。また、収集アイテム「カード」の存在もハイスピードアクションの魅力を損ねている。集めることでサウンドテストとアートワーク鑑賞が解禁される特典は魅力的だが、ゲームデザインとのミスマッチは否めず、できれば純粋なクリア特典として位置づけるのが望ましかったように思える。

難易度も総じて高い。特にダメージ時の無敵時間がない仕様が起因しており、一部、不必要に難しくなってしまっている場面が散見される。主に終盤の中ボスとボスは、少しでも回避タイミングを誤れば一気に体力を持っていかれて窮地に追い込まれるなど、調整が極端。雑魚敵にも終盤に登場するブレヴォンの兵士はやたら耐久力が高く、ノーダメージで倒すのも一苦労なほど機敏に動き、プレイヤーを執拗に追撃してくるのが嫌らしい。せめて耐久力ぐらい、低めにできなかったのだろうか。この辺もスピード感を損ねる要素として機能してしまっているのが残念だ。
難易度選択機能も完備されているが、「ノーマル」が言葉通りではない、事実上の「ハード」同然の調整であるのも首を傾げる。ここは更に下の「イージー」をそのポジションにするべきだったのではないだろうか。実際、「イージー」は適切なバランスに調整されているので、余計にその事を痛感させられる。この辺がメガドライブ、90年代のアクションゲームにオマージュを捧げた作品と言えば、それらしいとも言えるが、それでも終盤の調整は擁護不能。クリアできない難易度こそ回避しているものの、調整が甘さの出たまとまり方をしてしまっているのは惜しい限りだ。
とは言え、ノーダメージクリア可能な余地も残すなど、杜撰という訳ではない。また、「イージー」より下の「カジュアル」はアクションゲーム初心者も気楽に各ステージごとの迫力満点の仕掛け、ボス戦などを堪能できる良心的なバランスが素晴らしい。先の繰り返しになるが、クリアできないほど苛烈な難易度で収束していないのがせめても救い。欲を言えばもう少し調整して欲しかったが、キモとなるアクションゲームの面白さが保たれているのは素直に評価したいところだ。

密度の濃さも好意的に捉えるなら、全体のボリュームは十分。一周クリアするだけでも5時間はかかり、ストーリーの全容を追うとなればその約三倍の時間を費やすことになる。更にステージ内に隠された「カード」、タイムアタックなどのやり込み要素も豊富なので、それらも極めるとなれば、所要時間は更に伸びる。アーケードスタイルのアクションゲームとして、この物量は率直に言って規格外。内容とは裏腹にたっぷり楽しませてくれる内容だ。
ボリューム感を演出するストーリーも見応え十分。内容こそ王道の勧善懲悪モノだが、個性豊かなキャラクターと練り込まれた世界観設定で楽しませてくれる。そして、意外にもシリアス寄りの作風。思わずゾッとしてしまうような、過激なシーンも多々、挟まれるようになっている。中でも本作の敵として登場する「ロード・ブレヴォン」は文字通りの悪逆非道を体現したキャラクター。彼のせいで本作のレーティングが12歳以上になっていると言っても過言ではないほどだ。そこまで酷いのかと気になったのなら、ぜひ、オープニングをご覧になって頂きたい。彼のヤバさがよく分かるだろう。
また、日本語に訳されたテキストもキャラクターの性格を捉えた自然な翻訳が成されている。無理に日本語化しないでいい部分は英語のままで表記するなど、ローカライズも全編、神経を配って実施されているのも見事。地味ではあるが、堅実に日本語化されたそれらには、担当スタッフが真摯に日本語化作業に取り組んだことを実感させられるだろう。
その他、グラフィックもメガドライブのゲームを意識して、16色の制限を課したドット絵で構築するというこだわりの作り込みが成されている。動きも素晴らしく、先に取り上げたボス戦はその真骨頂とも言える出来栄え。90年代のアクションゲームに慣れ親しんだ人ならば、当時のように熱い血潮が呼び起こされるだろう。
音楽はメガドライブのゲームとしての意識はなく、純粋に現代路線の作風だが、楽曲の完成度は非常に高く、耳に残る印象深いものが多数用意されている。しかも、ステージの前半、後半ごとに別の曲を用意する、ステージ一つにしても固有の楽曲を用意するという驚異的なこだわりぶりだ。その並々ならぬ力の入れようには、音楽スタッフの本作に対する意気込みの高さを思い知らされるはずだ。中でもボス戦は非常に熱い曲に仕上がっているので、要チェックである。
これ以外にもキー配置の適切な操作周り、声優陣の熱演が光るボイス演出(※音声は英語のみ)、随所に散りばめられた往年の名作を想起させる小ネタなど、魅力は沢山あるが詳細は割愛する。

手放しで褒められない難点も多少あるが、総合的なアクションゲームとしての完成度は実にパワフルであり、アニマル成分もたっぷり。見た目の可愛らしさとは裏腹に、プレイヤーを熱い気持ちにさせてくれる作品に仕上げられている。動いているところはまさに『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』。しかしてその実態は、1990年代前半に一世を風靡したアクションゲームのハイブリッドであり、その魂を受け継いだ大迫力の演出が異彩を放つ本作。
アクションゲーム好きは勿論のこと、ケモナーにも自信を持って推せる傑作だ。

なお、本作は2018年8月31日にニンテンドースイッチプレイステーション4版の配信も開始されている(※販売元:マーベラス)。基本的な内容はこのPC版と大差ないが、テレビ画面で遊びたい、携帯モードで外出先で遊びたいのなら、そちらをどうぞ。三人の個性豊かなヒロインと共に暴君を打倒しよう!お薦めの一品です。
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