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≫20XX


■発売・開発元:Batterystaple Games、Fire Hose Games / ■日本語ローカライズ:架け橋ゲームズ
■ジャンル:アクション / ■CERO:A(全年齢対象)/ ■定価:1,480円(税込)

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©2018 Batterystaple Games, LLC. All rights reserved.
時は20XX年……。

2人の博士が製造した8体のロボットたちが暴走し、都市を破壊し始めた。
彼らは「問題ない、何もかも順調だ!」と、同じく2人が製造した特別製ロボットの「ニナ」、「エース」に連絡するが、映し出された現場の模様はどこからどう見ても大丈夫ではない。問題だらけだ。



……ということで、ニナとエースは出撃するのだった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ローグライク『ロックマンX』と称せる、ありそうでなかった珍しさに富んだゲームデザイン
◆思わず公式かと疑ってしまうほど、挙動も含めて忠実に再現したプレイヤーアクション
◆ローグライクと『ロックマンX』の親和性の高さが滲み出た各種システム周り(特にパーツによるパワーアップ要素がローグライクとの見事な融合を果たし、変化に富んだゲーム展開を作り出している)
◆8ステージの中の3つしか選べず、さらに毎回選択肢が変わるローグライクなりのアレンジが施されたステージセレクトシステム(それを本編と地続きで組み込んでいるのも面白い)
◆性能的に個性の強さが際立っている各種パーツ類(一部、ロックマンX由来のものもある)
◆クリアする度に後の仕掛け密度、ボスの強さが上昇するスリリング且つ、変化に富んだ展開を引き立てるステージレベルアップシステム(※名称は筆者が勝手に付けたもの)
◆まんまロックマンな仕組みながら、性能的にも強力なものが揃っている追加武器「パワー」
◆パワーの活用次第で優しくも厳しくもなる、ロックマン的な味わいも込められたステージ構成
◆元ネタを色んな意味で忠実に再現しすぎな性能を持つプレイヤーキャラクター「ニナ」と「エース」
◆ローカルのみならず、オンラインにも対応した設計が嬉しい2人同時プレイ
◆ローグライク独特のシビアさはありながら、残機制モードも用意する配慮も凝らされた難易度
◆1周大よそ1時間半、やり込みを含めれば数倍以上に跳ね上がる適度な総計ボリューム
◆『ロックマンゼロ』の方をモチーフにした手に馴染むキー配置が光る操作系
◆アニメ調のキャラクターと背景、そして派手なエフェクト表現が異彩を放つグラフィック
◆思わず口ずさみたくなるほど名曲揃いなチップチューン調の音楽
◆ロックマンシリーズ経験者なら苦笑い確実な小ネタの数々(特にオープニングは必見)

--- Bad Point ---
◆変化に富んだ展開は作り出せているものの、後半を苛烈にしすぎな嫌いのある自動生成周りの仕様(しかも、特定のパーツとパワーが無ければ無傷での突破すら困難になる部分も……)
◆後半ステージの問題から、取得しない選択肢が形骸化している追加武器の「パワー」
◆対応する要素を増やして難易度を上げる、いささか乱暴な手法が取られた後半のボス戦
◆基本、1発ミスで最初からやり直しのため、辛口度合いが突き抜けている「ノーマル」以上の難易度(あまり気負わずプレイしたいなら最も優しい「オマージュ」でのプレイを水晶)
◆やや似たり寄ったりな地形が目立つステージの自動生成パターン
◆全体的に胡散臭さ漂うストーリーと世界観(あまり明確な内容も語られない)
◆胡散臭さを際立たせる奇妙なテキスト(ただ、意外とこの世界観に適している)
▼Review ≪Latest Update :4/24/2022 | First Publication Date:12/13/2020≫
蒼き英雄と紅き英雄の亜種が変化する世界を往く……?

そして、暴走ロボット8体を撃破せよ!



個人開発者兼ロックマンファンのChris King氏が、自らの考える新しいロックマンを作るのを目的に誕生したオマージュ作品。2017年8月16日に製品版が発売され、後に家庭用ゲーム機版も国内外で発売されている。
日本語版のローカライズと販売は架け橋ゲームズが担当。

ロックマンとローグライクはいずれ巡り合う運命にあった!?
意外な完成度を誇るゲームシステム、オマージュ作品らしいネタの数々が素敵な良作だ。
元が元だけに包み隠さずぶちまけるが、ゲーム内容はロックマンそのものである。厳密には、数ある派生シリーズ作のひとつ『ロックマンX(エックス)』および『ロックマンゼロ』をモチーフにしたステージクリア型の横スクロールアクションゲーム。「ニナ」、「エース」のいずれかのキャラクターを操作し、暴走した8体のロボット鎮圧に挑むというものだ。

アクション周りも単発とチャージ(溜め)形式のショット攻撃、壁を駆け上がる「壁蹴り」、身を屈めて高速移動する「ダッシュ」など、前述2作を踏襲。本編の流れもステージクリア型で、最後に待ち構えるボスの撃破を目指すという紛うことなきロックマン。もちろん、ボスを撃破すれば彼らが持っていた「特殊武器」が手に入り、それを弱点に設定されたボスに対して使えば大ダメージを与えられる「相性」の概念も設けられている。さらに道中で手に入る「パーツ」を拾えば、体力の最大値や防御力が強化される成長要素も実装。もはや言い逃れ不可と言わんばかりの”そっくりさん”だ。『ロックマンゼロ』にちなむなら「コピーエックス」である。しかし、詳細なシステム周りやその遊び心地は似て非なるものである。

その象徴とも言えるのがローグライク要素。チュンソフト(現:スパイク・チュンソフト)の不思議のダンジョンシリーズ由来のシステムが採用されているのだ。かと言って、同シリーズのように自分が動けば敵も一歩動く、ターン制で進行するゲームではない。そもそもターン制は対象外。「自動生成」、「ミスすれば本編最初からやり直し」、「手に入るアイテムは毎回ランダム」の一部要素をピックアップし、採用した形になっている。遊び心地そのものはステージクリア型のアクション、ロックマン(ロックマンX)だ。だが、遊ぶたびに最初のステージは変わり、その地形から入手するアイテムまで変わるという、先の読めない展開が描かれる作りになっているのだ。故に似て非なる。
また、ロックマンの代名詞のひとつ、ステージセレクトシステムもローグライク要素にちなんだ独自仕様。ステージクリア後に現れる3つの転送装置の中から1つを選ぶ形式になっている。最初から8体全員は選べず、その内の3体しか選べないのだ。しかも、最初のステージ1はランダムで強制的に選択・決定される。クリア後に選べる3体のボスにしてもランダムだ。毎回、同じボスが選べるとは限らないのである。そして極めつけ、ボスを1体倒すたびに残るボスの強さ、ステージの難易度(仕掛けの密度)が上昇するシステムも搭載。最後の1体の時には、普通に戦えば雑魚に等しいボスも凶悪化してしまうのだ。そのため、強くなっても支障がないボスを見極め、ステージを攻略していくことがゲームクリアのカギになってくる。
さらにボスを倒した時に手に入る「特殊武器」……作中の用語で表すと「パワー」だが、これも実は獲得するかしないかは任意。要らなければ無視できるのだ。代わりに基礎ステータスを向上させるアイテム、道中のお店で売られているアイテムを買うのに必要な換金アイテム「ナット」のどちらかを選ぶ形になる。いわゆる3択形式になっているのだ。もちろん、選べるのはたった1つだけ。普通にパワーを選んで攻撃手段を増やすか、基礎ステータスを上げる、あるいはお金を貯めて今後の保険にするか。このような際どい選択も試されるようになっていて、ロックマンとは似て非なる選択のもどかしさが味わえるようになっている。

他にいわゆるロックマン及びエックスに近い性能を持つ「ニナ」、近距離攻撃主体のゼロに近い性能を持つ「エース」など、プレイヤーが操作するキャラクターにも異なる特徴があり、どれを使うかで攻略法と難易度も変わってくる。さらに本作はローカルのみならず、オンラインにも対応した最大2人の協力プレイモードも搭載。一緒に協力して難関を潜り抜ける、ひとりプレイ専用ゲームとしての印象が強いロックマン(及びXとゼロ)では体験できない遊びも用意されている。
アクションの手触りなどに関しては言い逃れできない程度にロックマン。特に壁蹴りとダッシュができる点で、『ロックマンX』、『ロックマンゼロ』っぽさは溢れんばかりに滲み出ている。だが、ローグライク要素のおかげでその攻略過程や難易度に関しては全くの別物になっていて、ロックマンシリーズの経験者のみならず、アクションゲーム好きも新鮮な心持ちで楽しめるゲームに仕上げられている。とてもよい意味でコピーエックスになっているのだ。
本作の魅力は、『ロックマンX』とローグライク要素の親和性の高さを実感させられる完成度の高いゲームシステムである。『ロックマンX』はローグライクと巡り逢う運命にあったと言わんばかりに溶け込んでおり、新たな面白さを確立している。

とりわけローグライク要素との親和性の高さが表れているのは「パーツ」による成長要素だ。元々、『ロックマンX』のパーツシステムは、ロールプレイングゲーム(RPG)から着想を得て、それをアクションゲームなりに解釈したものであることを、シリーズの関連書籍において制作スタッフがコメントしている。そもそもの生まれがRPGなのである。同じ様にRPG要素を持つローグライクとの高い親和性を発揮するのも、そりゃ当然だわとしか言い様がない。実際に完全固定ではなく、ランダム式になったことによって、手に入れた種類に応じてその後の難易度が上下したり、立ち回りまでもが変わるローグライクならではの変化と刺激に富んだ展開が確立。何度遊んでも新鮮な気持ちで挑める面白さがプラスされている。さらにはステージも常に仕掛けの配置や構造などが変わって繰り広げられるので、パーツが見つけられるかどうかも常に分からない。場合によっては一切手に入らないまま、終盤に突入してしまうことすらある。故に序盤から気が抜けないし、繰り返しプレイしても退屈しない。決まって新しい展開が生まれ、その周回だけの「ニナ」、或いは「エース」が誕生するようになっている。

このような違いが常に生まれるのは、ローグライクの醍醐味と言える。元のパーツシステムも入手するか否かは基本的に任意で(※一部シリーズ作では強制あり)、腕に自信があれば無強化の状態で最終ステージまで行き、攻略することもできた。だが固定式ゆえ、やり方には限界があるため、大方やり尽してしまえばそれ以上の新たな展開は生まれにくい側面もあった。その変化を実質無限にし、何度も遊べるようにしようとの発想が本作のパーツ周りには込められていて、紛うことなき1000回遊べるロックマンを実現している。前述の通り、本作の制作を主導したChris King氏は大のロックマンファンを名乗る人物でもあるので、まさにその思いの丈を余すことなくぶつけた格好だ。いかにもインディーゲームらしい、自らが作りたいものを作る姿勢が押し通されていて痛快。同時に単なる物真似で終わらせず、独自の面白さを持つゲームに仕上げているのも見事だ。

また、肝心のパーツも多彩且つユニーク。十字砲火型ショット、カウンター効果が発動するアーマーなど、『ロックマンX』にありそうでなかった性能を持つものが豊富に用意されている。もちろん、2段ジャンプやホバリングと言った”出てきたもの”もあるので、シリーズ経験者なら手に入れた時にニヤリとしてしまうこと必至だ。

ボスを倒すと得られる特殊武器こと「パワー」も個性的。中でもトラップを無効化させる(壊してしまう)武器は大胆極まりなく、ロックマンシリーズに出てきたらアクションゲームとしての型が壊れるのではと戦々恐々な思いになるインパクトがある。実際に本作だからこそできた(許された)点はあって、前述のステージをクリアする度に移行のステージの仕掛けの密度が濃くなり、ボスも強化されていくシステムへの対抗策として機能している。さらにそれらの強力な武器を用い、厳しい場面を緩和させていくのがとてもロックマンらしく、全シリーズに共通する”答えを見つける面白さ”を描いているのが素晴らしい。仕掛けの密度が濃い点は、ボスよりもステージの方が難しいことに定評(?)がある『ロックマンX6』を彷彿とさせるが、あれほどの理不尽さは無いのに加え、パワーの活用法次第で急激に易しくできる点で決定的な違いがある。むしろ、本作は『ロックマンX6』が本来やりたかったことをやり遂げているのでは……と、思えるような作りにすらなっているのだ。そういう意味では同作に違和感を覚えた人ほど、本作の作りには腑に落ちる思いを抱くかもしれない。ぜひ、パワー(特殊武器)を使って一見、理不尽に見える仕掛けの波を潜り抜けてみて欲しい。恐らく「こっちの方がまとまっていないか……?」との思いが湧くはずだ。

とは言え、終盤のステージは仕掛けの密度を手加減無用にし過ぎているきらいがあり、例に挙げた『ロックマンX6』といい勝負になっている。何よりパワー未入手ならノーダメージによるクリアは困難。一部、飛距離を伸ばす脚部用のパーツがないと、かなりギリギリのジャンプが試される場面があるのも厳しい。強化ボスにしても、戦闘ステージ内に仕掛けを増やして難易度を上げる嫌らしいやり方で調整しているので、タイマンで戦いたい思いが強いほど残念な気持ちになるかもしれない。人によっては、タイマンと言い張りながら、部下によるサポートを繰り出してきた『ロックマンX7』の総長(ヘルライド・イノブスキー)はまだ優しかったとすら思う……かどうかは何ともかんともである。
しかし、落下ミスの概念がない(ダメージ判定になって足場に戻される)、トゲの罠に接触しても即ミスとはならないなど、ある程度の配慮が凝らされているだけでも幸いではある。そんな加減の誤りはあれど、ゲームシステムの完成度の高さは揺るぎないものがあり、ローグライクとロックマンXがいかに相性抜群の組み合わせなのかがよく分かる仕上がりになっている。カプコンではなく、個人のいちファンがこれを作り上げたのも衝撃的で、なぜこれを公式側はやらなかったのだとの思いが湧くことすらある。それほどまとめ方が自然であり、本作にしかない魅力が備わっているのである。
本作にしかない魅力として、語らずにはいられないのが2人協力プレイ。ある意味、ゲームシステム以上のセールスポイントで、片方のプレイヤーと共闘して難所を潜り抜け、強力なボスに立ち向かう展開には、本作でしか味わえない面白さとワクワク感が凝縮されている。特に1人だと苦戦確実なステージ、ボス戦が楽々攻略できてしまう爽快感は格別。それでいて終始簡単とはならず、ローグライク要素の存在から、相応に厳しい局面も挟まれるのがいいアクセントになっている。何より、毎回違った展開になるので、何度遊んでも常に刺激のある展開が楽しめるのが秀逸だ。この点でもローグライクの醍醐味が発揮されている感じで、ゲームシステムに並んで見逃せない仕上がりになっている。また、協力プレイはローカルのみならずオンラインにも対応。マッチング形式も世界中の誰かしらと一緒に遊ぶランダムのほか、気の合う知人・友人とのフレンドの2つを網羅しているので、好みに応じたスタイルで楽しめる。回線遅延もほとんど無いに等しく、快適に遊べる設計になっているのも見事だ。

遊びやすさへの配慮も万全。難易度に関しては「ミスすれば本編最初からやり直し」のルールが採用されている関係で、高めの部類に入るが、数回コンティニュー可能な残機形式の「オマージュ」なる優しい難易度も用意。残機を増やす機会はなく、全部無くなると最初からやり直しになる点で他の難易度と共通なのだが、イタズラにその仕組みを徹底させない姿勢には好感が持てる。特にローグライクが苦手な人はこちらでプレイすることを強く推奨する。
プレイヤーの基礎ステータスを強化させた状態で最初から始める永続強化機能も昨今のローグライクに倣う形で実装。強化の際には本編で手に入るアイテムが必須になるため、何度かトライ&エラーが避けられないが、繰り返せばきちんと突破口が見えてくる点ではローグライクが苦手な人には嬉しい機能になっている。他にステージクリア後の途中経過記録(セーブ)などの機能も網羅されていて、気負わず遊べるようにしているのも本作の見所である。

そして、操作性も言うことなし。しかも、ゲームパッド使用時のキー配置は『ロックマンゼロ』シリーズを元にした、LRボタンにダッシュを振ったものになっているので非常に動かしやすい。もちろん、キーコンフィング機能も万全で、プレイヤー好みのアレンジも効く設計だ。アクションの反応も非常によく、『ロックマンX』の初期3作に近い手触りになっているのにはシリーズ経験者ほどニヤニヤしてしまうこと間違いなし。一連の操作を学ぶチュートリアルもあり、ロックマンXをやったことがない人にも触れやすくしているのも見事だ。何気にこのようなことは本家本元、怠りがちなところがあるだけに、相対的に本作は輝いてしまっている。そんな”やるべきこと”をやっているのも必見……かもしれない。
グラフィック、音楽も盤石の出来。中でも音楽は名曲揃い。サウンドトラックもダウンロードコンテンツとして用意されているほか、音楽配信&販売サイトの「BandCamp」で単品も販売中。試聴も可能なので、興味があればチェックいただきたい。

ボリュームも本編は1周大体1時間程度と、ローグライク要素のあるアクションゲームとしては平均的。ただ、「デイリーチャレンジ」を始めとするやり込み要素が豊富。さらに「ニナ」、「エース」以外にも全く異なる性能を持つ3人目以降のキャラクターもおり、それで本編を攻略するチャレンジも用意されているので、極めるだけでも十分な満足度を得られるはずだ。
細かい部分でも演出面ではロックマン由来の小ネタが満載。オープニングの始まり方は、経験者なら見た瞬間吹くこと確実である。ストーリーも謎の胡散臭さに満ちていて、随所で挟まれる珍妙なテキストも相まって良くも悪くも印象に残る。逆に何がなんだか分からない内容ゆえ、人によっては不快感を覚えるたりするかもしれない。

当のゲーム本編も、ローグライクゆえの失敗すれば最初からやり直しな点で万人におすすめできるとは言い難い内容ではある。だが、ロックマンのオマージュ作品としての出来はよく、ゲームシステムの独特さや2人協力プレイの存在もあって、唯一無二の魅力が詰まった作品になっている。主にアクションゲーム好き、ロックマンシリーズ経験者なら、一度でもいいから遊んでみていただきたい野心作にして良作。筆者的には結構おすすめの1本です。
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