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≫Splatoon(スプラトゥーン)


■発売元:任天堂 / ■ジャンル:アクションシューティング /
■CERO:A(全年齢対象) / ■定価:5,800円(税別) ※パッケージ、ダウンロード版共通

◆公式サイト / ストアページリンク(ダウンロード版)
≫Splatoon(スプラトゥーン)(任天堂公式サイト)

© 2015 Nintendo
▼Information
■プレイ人数:1~2人 (通信プレイ時:8人) / ■セーブデータ数:1つ(※ユーザーごとに作成可) /
■消費ブロック数:32MB以上(セーブ) /
■その他:Nintendo Network対応、WiiU PROコントローラ対応、クラッシクコントローラ対応(※PROコントローラも含め、いずれも一部モードに限る)、amiibo対応 /
■推定クリア時間:5~8時間(エンディング目的)、550~1200時間(完全攻略目的)
世界を塗り替えなイカ!?
四人のチームを組んでインクを塗り合い、多くの「ナワバリ」を物にし勝利を掴め!
試合の判定は謎のネコにおまかせを!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆仲間と協力して陣地ことナワバリ確保に徹する、独自性の強い対戦ルール(さらにオンライン対戦を主軸としている)
◆狙い撃つのが苦手でも、ナワバリ確保という形で貢献できるなど、TPS初心者への配慮が万全に成されたゲームデザイン
◆TPS、FPSで最も爽快な「武器を撃ちまくる気持ちよさ」にこだわり尽した操作感と効果音
◆WiiUゲームパッド内臓のジャイロセンサーによる、直感的且つ正確性に秀でた照準操作
◆人間とイカの二つに姿を変え、独自のアクションをお披露目するプレイヤーキャラクター「インクリング」
◆「ウデマエ」をどこまで伸ばせるかに挑む、上級者向けに特化した設計と文字通りの戦闘が楽しめる「ガチマッチ」
◆塗りに特化した近接系など、射撃系だけに留まらないバリエーション豊富な武器(ブキ)
◆全100種類以上にも及び、一部にはあの侵略イカの衣装までもがある装備こと「ギア」
◆メリットとデメリットが自然と設定され、破綻なくまとまっているブキごとのバランス
◆巨大なイカになって突貫するなど、戦況を打開する逆転要素の側面も併せ持つ「スペシャルウェポン」
◆地形構造、ギミックに至るまで戦略・戦術を練る楽しさに富んだ15以上もの対戦ステージ
◆一定時間単位で対戦ステージが変わる、オンラインの時計機能を活かしたスケジューリングシステム
◆本作独自のシステムによるステージクリア型アクションが楽しめるシングルプレイこと「ヒーローモード」
◆アクションゲームの醍醐味が豊富に盛り込まれた「ヒーローモード」のステージ構成
◆独特の可愛らしさを秘めたデザイン、背景周りの異様な作り込み具合が光るグラフィック
◆ロック調のノリノリな楽曲が取り揃った音楽(特に「シオカラーズ」絡みの曲が秀逸)
◆インクでステージを塗りつぶすやりたい放題感と気持ちよさにこだわったエフェクト演出
◆見た目に反して闇を秘めた世界観とストーリー(特にヒーローモードの「ミステリーファイル」)

--- Bad Point ---
◆回線切断などのトラブルでチームメンバーが欠けると数的優位側に押される展開になりやすい対戦バランス
◆エラーなどでメンバーが欠けてしまったチームに対する救済措置の不備(何ひとつ対策が組まれてない)
◆合流しても相手が対戦中だと一定時間待たされたり、その後に部屋に空きが作られなければさらに待たされるなど、微かに煩わしさをはらんだ「フレンド合流機能」
◆対戦開始後のブキ・ギアチェンジ不可(一旦、部屋から抜ける以外に選択肢が無い)
◆時折、初心者と上級者が混在する事が起こり得るマッチング(主に深夜帯に見られる)
◆周辺機器「amiibo(アミーボ)」無しでは絶対に遊べない「ヒーローモード」のおだいチャレンジ
◆人によってはストレス要因にもなり得る「チョーシ」の概念(ボーナスがある事から)
◆主にやり込み周りに物足りなさが見え隠れする「ヒーローモード」のボリューム
▼Game Overview
「に゛っ!(チョーシ上げていこうぜ!)」



◇2014年6月にアメリカで開催された「Electronic Entertainment Expo(E3)」で初お披露目され、国内外を問わず大きな注目を集めた完全新作のアクションシューティングゲーム。厳密には射撃系の武器を用い、対戦相手との戦闘を繰り広げていく対戦に主眼を置いたサードパーソンシューター(TPS)。
1人用の「ヒーローモード」もあり、そちらはワールドごとに設けられたステージを攻略していくアクションゲーム色の強い内容となっている。ワールドの最後にはボスとの戦闘があるなど、全体的に『スーパーマリオ』シリーズっぽい。

◇対戦は「チーム戦」が基本。4人で編成されたチームのひとりになり、相手チームと戦う。対戦時間は3分。勝敗の決め手になるのは「ナワバリの支配率」で、自分のチームがステージ内の陣地をどれだけ確保できたかを競い合う。「ナワバリ」は手にした武器で地面を塗るだけ。本作で用いる武器は、インク(液体)を発射する水鉄砲のようなもの。いわゆる銃火器ではない。ただし、射出するインク自体には攻撃効果もあり、相手に命中させればダメージとなり、一定量に達すると倒すことができる(逆も然り)。

◇インクは有限。補充は一定時間、武器を撃たずにいれば自動補充されるが、スピードは非常に遅い。素早く補充したくば、ナワバリ確保のために地面へと塗ったインクに潜ればいい。プレイヤーの操作するキャラクターは人間とイカの形態を持つ「インクリング」なる生命体で、ZLボタンを押すとイカに姿を変え、インクの中に潜り、インクの補充と共に高速移動が可能になる。潜れば相手が姿を視認できなくなるので、これで裏をかいて攻撃を仕掛ける戦術も可能。ただ、この形態だと武器は使えない。

◇武器こと「ブキ」は銃タイプ以外に近接主体の「ローラー」もある。他に補助ブキの「サブウェポン」、専用ゲージが満タンになると使える強力な「スペシャルウェポン」もあり、上手く併用すれば戦況を一変させられることも可能。それぞれの威力を高めたり、特殊効果をプレイヤーキャラクターに付与する「ギア」なる装備もある。「ギア」は頭、胴体、足の3ヶ所に装備可能。

◇対戦ルールはスタンダードな「ナワバリバトル」のほか、プレイヤーの腕前が評価される「ガチマッチ」がある。いずれもオンライン専用と、ローカル重視の志向がある任天堂としては珍しい仕様。また、各種モードは「ハイカラシティ」と呼ばれる拠点エリアを移動し、対象の施設へと向かって選択する形式。シティ内には「ギア」「ブキ」を販売するお店のほか、広場中央に対戦した他のプレイヤーが現れ、詳しいプロフィールが見れたりする。他にもギアの効果を拡張させてくれる「ダウニー」、試合で勝利を重ねると高まっていく「チョーシ」に応じて報酬をくれるまん丸な猫(&試合の審判)「ジャッジくん」がいる。
▼Review ≪Latest Update :4/23/2023 | First Publication Date:12/31/2017≫
競技性を押し出した革新的なゲームデザインが光る、WiiUを象徴すると言ってもいい傑作。
TPS初心者、上級者まで幅広くフォローした対戦ルールとゲームデザインが異彩を放つ。
特に操作スキルが重要視されないのが革新的。
具体的には武器の照準操作で、これで相手を正確に狙い撃って倒せるかがTPSでは(&1人称視点のファーストパーソンシューター、FPSでも)勝敗に大きく影響する。だが、相手も人間。やられまいと機敏に動くと同時に、的が小さいのもあって狙いを付けるのは難しい。照準を動かすのが大抵、コントロールスティックなのもそれを際立たせ、相当な修練をプレイヤーに要求する。作品によっては自動的に狙いを付けてくれる「エイムアシスト」なる補助機能を備えたものがあるが、多くはシングルプレイ向け。対戦では対象外とされやすい。そうした難しさから、初心者は手慣れた熟練者に圧倒され、自らの実力不足に打ちのめされやすい。チーム戦ならなおのことで、結果的に対戦を最大限楽しむには、自身のスキル向上が前提になる。

そこを本作は「ナワバリの確保」という目的にすることで、完全に取っ払った。地面を塗ることが重要なので、適当にぶっ放すだけで十分。狙いを付けるスキルなんてなくても勝利に貢献できる。
それにチーム戦が基本なので、味方が足りない分を補ってくれる。また、仲間が戦闘に集中すれば、必然的にナワバリ確保がおろそかになる。それを防ぐため、初心者や苦手な人はナワバリ確保に尽力するなど、役割の分担が明確に打ち出されるようにバランスが取られていてるのだ。そうして対戦を重ねていくことで、いずれはいずれは初心者だったプレイヤーも相手との戦いをこなせる実力者に成長することも。そんなジャンル特有のハードルの高さを独自ルールによって下げ、あらゆるプレイヤーが対戦を楽しめるという環境を本作は構築してしまっているのだ。まさに革新的としか言い様がない。

操作周りもTPS初心者などに配慮した工夫が凝らされている。基本は左スティックで移動、右スティックでカメラおよび照準を動かすTPSお馴染みのスタイルだが、右スティック操作はWiiUゲームパッド内蔵の「ジャイロセンサー」でも可能。パッド本体を動かしつつ、直感的に狙いを定められるようになっている。さらに右スティックと組み合わせて使うことも可能。また、センサーで照準を定める時に限り、狙いをほんの少しだけ自動で補整してくれるアシスト機能も働くため、わずかでも相手に照準が重なるだけで攻撃が当てられる。こうした工夫もあって、初心者や苦手な人でも狙い撃つ楽しさが味わえる。
もちろん、ジャイロを切って従来操作で遊ぶのも可能だが、熟練者でも人によってはこっちがいいとなってしまうことも。これもまた、ゲーム全体の門戸を広げる措置として効果的に機能している。

「ブキ」を撃つ気持ちよさが突出しているのも見逃せない。TPS、FPSで最も気持ちよい瞬間と言えば、武器を乱射する時。何も考えずに「ダダダダ」という音と共に弾をぶっ放すのはそれはそれで気持ちよく、かの有名な『セーラー服と機関銃』のように「カ・イ・カ・ン」な心境になる。本作はそこにもこだわり尽くしており、効果音にエフェクトに至るまで、撃つだけでも気持ちよさが感じられるものに仕上げられている。しかも、ひたすらぶっ放す行為自体が「ナワバリの確保」として返ってくるので、まったくムダにならない。相手に当てられなかったとしても、撃っていればそれだけで十分に貢献できるのだ。この快感に着目した仕組みも見事で、TPSとFPSの”気持ちよさ”という本質を見事に捉え、遊びに昇華させていて唸るしかない。

ブキも「ローラー」に代表される近接武器もTPS初心者に配慮した第二の選択肢となっているのが上手い。遠距離のブキとも台頭に渡り合えるよう、威力を高めに設定するなどバランス周りもよく考えられている。「ガチマッチ」に代表される熟練者向けのルールも歯応え抜群かつ、そちらではTPS顔負けの熾烈な戦闘になるなど、「ナワバリバトル」とは別の顔を見せるのが面白い。 対戦ばかりに目が行くが、シングル専用の「ヒーローモード」も完成度は高い。特にステージの個性付けは、マリオを始めとするアクションゲームを多く制作されてきた任天堂の熟練の業が炸裂。各ワールド最後のボス戦もマリオ、ゼルダを彷彿とさせる秀逸なアイディアが満載かつ、このシステム特有の駆け引きが楽しめる内容にまとめられている。

他にグラフィックも背景の描き込み具合が凄く、プレイ中、まず目に映ることがない場所までしっかり描かれている。対戦のステージの一部は試合前に「さんぽ」ができるのだが、それで細部を見ることで、その凄さを思い知らされるはずだ。音楽も作中の世界で若者の間でヒットしているポップミュージックという設定を活かしたロック調のノリノリな楽曲が揃っている。独自言語を交えたボーカル入りの楽曲も多く、その中でも本作の案内役を務めるアイドルユニット「シオカラーズ」の曲は珠玉の出来。

演出周りの派手さも言わずもがな。キャラクター達も魅力的で、特に審判役のジャッジくんは存在感十分。数百種類に渡って用意された「ギア」もバリエーション豊か。その中にはあの”侵略イカ”の衣装まで用意されている。なんとビックリ、公式コラボである。そんな任天堂作品としては異例のネタが仕込まれているのも、色んな意味で見逃せないでゲソ。

一般的にハードルの高いジャンルとされたTPSを初心者も中級者も上級者も遊べる作りにしていること。それだけでも本作が如何に革新的で、稀有な作品であるのかは言うまでもない。まさに全てにおいて懐が広い。それが本作なのである。
ただ、難点もいくつかある。対戦周りでは、通信のトラブルでチームメンバーのひとりが居なくなった時、「bot」(※コンピュータが操作するキャラクター)に切り替わるような対策が組まれていない。そのため、試合終了まで数的不利な状況で戦い続けることになってしまう。この辺りは技術的にも難しい所があったと推察されるが、欠けたチームに救済措置が入らないのは若干、配慮不足。せめて攻撃力と防御力が向上するみたいなブーストがあっても良かったように思える。

また、「ヒーローモード」では使えるブキが1種類だけで、他のブキで攻略したい場合は周辺機器「amiibo」の購入が必須というのは阿漕さが否めない(これ以外に特殊なやり込み要素の解禁に当たっても購入が必須になる)。他に「amiibo」が無くても解禁できる条件を高難易度でもいいので用意して欲しかった。将来的に「amiibo」が生産終了となり、遊べなくなるのを踏まえるとこの仕様はさすがに問題が多すぎる。少しでもその可能性を想定して欲しかった。

そのような粗削りな箇所も散見されるが、対戦に関してはマッチング速度はほぼ申し分なし。バトル中もフレームレートの低下、ラグによる遅延はごく稀で(※ただし、環境次第は話は変わる)、ほぼ常時60フレームが堅持される辺りは見事だ。
そして、肝心のゲームルールの魅力は色褪せない。相手を倒すのではなく、ナワバリ確保が目的という点でも革新性の高いTPSに仕上げられている。ジャイロセンサーの活用など、操作面でもWiiUの特色を活かす試みが満載の本作。WiiU本体を持つプレイヤーならば義務レベルで遊ぶ価値大ありの傑作である。このゲームのためにWiiU本体を買っても後悔はしない。TPSに苦手意識を抱いていたプレイヤーにも取っつき易いゲームになっているので是非、お試しいただきたい。すごくお薦めの1本だ。
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