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≫ゾンビ イン ワンダーランド
■発売元 マーベラスエンターテインメント(現:マーベラスAQL)
■開発元 アカオニ・スタジオ
■ジャンル お伽噺アクションシューティング
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、セクシャル描写あり
■定価 800Wiiポイント
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■消費ブロック数 127ブロック
■セーブデータ数 3つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク対応
■推定クリア時間 2〜5時間(エンディング目的)、30〜50時間(完全攻略目的)
ワンダーランドにある北の国に住まうワガママ王子は、匂いをかぐと誰もが自分の虜になる媚薬を作らせた。そして、薬の効果を世界中に広げる為、王子はワンダーランドの小人達を連れさらい始める。小人は動きが激しく活発な上、周辺の匂いを吸収し、逃さない特異な体質から、薬の触媒としては理想的な存在だったのだ。

そんな事が起きている事も知らず、ワンダーランドへと帰郷するモモタロウ。
彼の背後にかぐわしい香りを放つ、ゾンビの軍団が迫る…!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆迫り来るゾンビの群れを銃撃で殲滅させる事だけに特化した、単純明快で取っ付き易いゲームルール
◆カオスで何でもありな構成とゾンビの大群で強烈な印象を残すステージロケーション
◆照準をリモコンで動かし、キャラクターをヌンチャクで操作する、違和感の無さと相性の良さが滲み出た良好な操作性
◆フリーターの桃太郎、ロリっ子のドロシー、ドSな白雪姫と、それぞれの原作の世界観完全無視、好き放題やりまくりの作風が滲み出た、ぶっ飛んだ世界観とその設定
◆海外製のゲームらしからぬ、萌えの要素を前面に推し出したキャラクターデザイン
◆麻薬的な魅力を兼ね備えた狂気の音楽(特に桃太郎のテーマは色んな意味で要チェック)

--- Bad Point ---
◆自機と照準を同時に操作するゲーム性、緊急回避用ローリングなど、過去に発売された同システムのタイトルとの大差が少ない、独創性に欠けたゲームシステム&ゲームデザイン
◆敵を殲滅する事しかなく、単調になりがちな各ステージ構成
◆仕掛けに乏しく、敵の種類も少ないなど、詰めが甘くて飽き易いレベルデザイン
◆地味過ぎるエフェクト全般の演出(銃火器で戦うゲームでありながら地味)
◆エフェクトの地味さを一層強めている、質感と仰々しさに欠け過ぎた効果音
◆インパクトは凄いが、ゲーム性との相性は悪いと言わざるを得ない音楽(盛り上がりに欠ける)
◆物量任せな調整が残念極まりない難易度設定(クリア不可能な難易度ではないが、単調になりがち)
◆レベルデザインの甘さなどもあり、やり込み甲斐は非常に乏しいスコアタック
▼Review ≪Last Update : 4/7/2013≫
「♪モ〜…モタロサン…、モモタロサン…」

岡山県民震撼の衝撃作現る!?


マーベラスエンターテインメント(現:マーベラスAQL)がWiiウェア向けに立ち上げた新ブランド『ワールドゲームパレード』の第一弾としてリリースされた、日本のお伽噺を題材にしたアクションシューティングゲーム。開発はスペインのゲームメーカー、アカオニ・スタジオが担当。

ゲームとしての出来はイマイチだが、狂気の世界観が強烈な印象を残す怪作だ。

ゲーム内容は3D視点で展開する、ステージクリア型アクションシューティングゲーム。桃太郎を始めとする著名な御伽噺のキャラクター(自機)と照準を同時に操作し、画面奥から迫って来る敵の群れを撃ち倒していくというものである。
その内容からイメージされる通り、基本的なゲーム性は任天堂の『罪と罰 地球の継承者(&宇宙の後継者)』に近い。但し、スクロールの概念がなく、各ステージは固定の一画面内で展開する仕組みであるなど、ゲームデザイン的にはこの手のシューティングゲームの始祖、TADの『カベール』に近いものとなっている。
システム周りもカベールに近いというか、ほぼ同じ。一定時間だけ、強力な攻撃が可能となる武器アイテム、敵の攻撃を喰らえば問答無用でミスとなる一発アウト制、破壊可能な背景オブジェクトなど、見覚えのあるものばかりとなっている。最初に挙げた『罪と罰』二作に実装されていた、僅かな間だけ無敵状態が発生する高速回避こと『ローリング』も当然の如く実装。このような作り故、全体的にゲームとしては新鮮味は皆無。いずれかの作品を経験済みのプレイヤーなら、強烈な既視感を覚える内容となっている。
とは言え、全てがこの手のゲームではお約束の要素ばかりという訳ではない。例えば本編だが、基本的に雑魚敵達を相手にする通常ステージとボスとの戦いに特化したボス戦ステージの二つを順に攻略しながら進めていく構成となっている。通常ステージのクリア条件も『撃破率』と呼ばれる、雑魚敵を倒す事で上昇していく数値を100%にまで到達させる事とやや特殊。この為、通常ステージでは雑魚敵が無限に湧き出すようになっており、持久戦同然の戦いを強いられる。更にこのような仕様である為、ある程度の敵を倒し終えると違うフィールドへと移動すると言った要素も無し。基本的に撃破率が100%に到達するまで、ずっと同じ舞台で戦い続ける仕組みとなっている。まさに殲滅、破壊重視。そのコンセプトに沿った露骨さと分かり易さを推し出したゲームデザインが図られている。そこが先に挙げた二作との大きな違いにして特徴。純粋に撃ちまくる事に特化したゲームになっている。
そして、もう一つの特徴が異様な世界観だ。最初の概要でも少し触れたが、今作は『桃太郎』を始めとする著名な御伽噺のキャラクター達を操作し、雑魚敵ことゾンビの群れを倒していく事になる。桃太郎が鬼ではなく、ゾンビを退治する。これだけでも今作の世界観の異様さ、電波っぷりが容易に想像できるだろう。
しかも、それだけではない。桃太郎だから、ゾンビには刀で対抗するのかと思いきや、シューティングゲームという事で、普通にサブマシンガンで対抗する。それでいて、武器アイテムを手に入れれば、ライフルや火炎放射器、ミサイルランチャーまで問答無用でぶっ放す始末。原作破壊にも程がある!…と、日本人(特に岡山県民の方々)なら呆然必至の光景が画面いっぱいに繰り広げられるのだ。ちなみに桃太郎以外にも、『オズの魔法使い』のドロシー、『白雪姫』の白雪姫もプレイヤーキャラクターとして登場。例によって、サブマシンガンなどを駆使して、ゾンビの群れと戦う。
極め付け、これらのキャラクターの設定も桃太郎はフリーター、ドロシーはロリっ子、白雪姫はドSな女王様と言った具合に大変酷い事になっている。まさに、どうしてこうなった。デザインも露骨な『萌え』を推し出したものになっているのも特徴。そして面白いのが、このデザインを日本のイラストレーターの方が手掛けているという事だ。手掛けたのはプレイステーション2などで発売されたミステリアスアドベンチャーゲーム『12RIVEN -the ψcliminal of integral-』の鳴海編のキャラクターデザインで知られる、元KIDのbomi氏。知る人ぞ知るアドベンチャーゲームに携わった方が今作のキャラクターデザイン全般を担当しているのだ。そんな日本の御方が手掛けているだけに、デザイン自体はアニメ好きの方ならば違和感なく受け入れられるものに仕上げられている。何かと海外製ゲームのアニメキャラクターのデザインというと癖が強く、日本人には受け入れ難いものになってたりする事が多いが、今作はあえてそこを日本の方に担当させ、癖の強さなどを緩和させる施策を打っている。やり方自体は地味だが、海外製ゲーム特有のイメージを払拭させようとするその配慮には、制作側の強いこだわりと日本の嗜好を汲み取ろうとする強いこだわりと真摯な製作姿勢を実感させられる。設定周りは別の意味で灰汁が強いが、見た目で抵抗を感じさせないデザインにこだわった海外製ゲームというのは結構珍しい。その点でも、今作が一際異彩を放った作品になっているというのは言うまでもないだろう。
ゲーム自体はありがちである。ただ、殲滅と破壊に絞り込んだゲームデザイン、海外製とは思えないほど癖の無いキャラクターデザイン、そして電波染みた世界観など、独特の売りの数々がそこかしこに存在。それだけに作品としての個性の強さは相当なもの。あらゆる面において独特過ぎる味と魅力が詰め込まれた内容に仕上げられている。

例によって、今作最大の売りは世界観である。御伽噺のキャラクター達を操作し、ゾンビの群れを倒していく。もうその基本的な内容からして、(良い意味で)頭がおかしいんじゃないのかとドン引きしてしまう程度にインパクト抜群。自分は悪い夢を見ているのだろうかと錯覚してしまうほど、強烈極まりない印象を残すものになっている。
そんな世界観をより際立たせる為の雰囲気作りも凝り過ぎの一言だ。特に強烈なのが音楽。これがまた、世界観のカオスさを象徴するかのような不安定且つ、狂った作風のものになっている。中でも最初のステージで流れる『桃太郎の歌』の強烈さは桁違い。桃太郎の歌と言ったら、もはや御伽噺における名曲中の名曲の一つとして日本ではあまりに有名だが、その歌が何という事か。今作の無茶苦茶な世界観と禁断の合体をしてしまったが為に電波な歌にその姿を変えてしまった!何だか怪しげな曲と「モ〜モ〜タロサン、モモタロサ〜ン…」という異常にテンションの低い女性の歌声がこだまする、明らかに精神面がおかしくなりそうな歌になってしまったのである。そして、こんな怪しげな曲を今作は本編序盤のメインテーマとして起用。ゾンビ達との戦いを盛り上げる…否、盛り下げて、開いた口を塞がらせなくするのだ。そんな曲がゲームスタートから間もなく流れるというだけに、掴みのインパクトは相当なもの。嫌でもプレイヤーにこのゲームの世界観が普通ではない事を知らしめてくれる、色んな意味で印象深い楽曲に仕上げられている。楽曲が不安定なのは桃太郎の歌だけに留まらず。その他の曲にしても、何処となく”幻覚的な”雰囲気が漂うものになっている。ボスとの戦いの際に流れる曲ですら、だ。そういう曲が大半というだけに、アクションシューティングという視点から見るとイマイチ、盛り上がりに欠ける作風と言えなくもない。だが、御伽噺による電波な世界観を体現するにはこの上ないほどマッチした作風でもある。仮にもアクションシューティングなのだから、もう少し熱さにこだわって欲しかったというモヤモヤとした所があるのも事実だが、電波な世界観という唯一無二の体験と雰囲気を最優先する為、このような作風を徹底したという辺りには潔さと執念深さを実感させられる。余りに癖の強い作風なので、賛否も激しく分かれるが、この徹底した姿勢はなかなかのもの。如何に今作のスタッフが唯一無二の雰囲気というのにこだわったのかが良く分かる仕上がりとなっている。
また、先ほどにも紹介したが、キャラクターデザインが日本向けに作られているというのも、世界への入り易さを演出していて見事。おかしな世界観を演出しつつ、見た目では入り易くするという工夫を凝らしている辺りにも、雰囲気に対する強いこだわりを感じさせられる次第だ。
だが、逆に言えばゲームとしては物足りなさが半端なく強い。特に通常ステージの面白味のなさはずば抜けていて、敵が無限湧きで、ある程度の量が登場すると再び最初の出現パターンが繰り返されるという辺りは単調過ぎて非常にダルい。一定数を倒すと別のフィールドへと移動するという要素もなく、全ステージが一画面内のフィールドで迫り来るゾンビ達を撃ちまくるという内容であるのもレベルデザインとしては手抜きの一言に尽きる。このような構成になったのも、全ては撃破率のシステムを考慮してのものなのだろうが、こういう作りにするぐらいなら全ての敵が出現し終えた後、撃破率が80%以上に達していなかったらステージクリア失敗にした方が、ゲーム的にもテンポが良く、遊び甲斐のある内容になっていた。そういう作りにせず、単調な方向にまとめてしまったのは、何とも残念な限りだ。レベルデザイン的にも華やかさな感じを出せていた可能性があっただけに非常に勿体無い。また一画面内での戦い故、持久戦となる為に下手に武器アイテムを回収してしまうと後半がきつくなる辺りなど、設計面での難点が浮上している。敵の種類もそれなりに居るとは言え、イマイチ動きに個性が無いのが単調さに拍車をかけてしまっている。
そうゲーム部分の出来がイマイチな一方、雰囲気周りの作り込みは素晴らしく、そこを楽しみながらプレイするとそこそこの充実感は得られる。ロケーションも多彩で、御伽噺詰め合わせなごちゃ混ぜぶりは見ていて飽きない。
そんな具合に今作は、雰囲気ゲームとしての作風を全面に押し出してる。というより、そちらを楽しむ事に重きを置いた作りとなっているのだ。一応、アクションシューティングとしてのシステム周りの基本はそこそこ出来ているが、イマイチな点が多いので過度の期待は禁物。そこに期待してはいけない類のゲームというのは、もはや言うまでもないだろう。

難易度設定にしても詰めの甘さが目立つ。先の通り、ひたすらに迫り来るゾンビ達と戦う構成故にメリハリが無く、面白味に欠けるし、後半になると相当な物量の敵や唐突な攻撃を仕掛けてくる敵も沢山登場するなど、調整が力任せ過ぎる。
一応、ノーダメージで攻略可能な程度にまとめられているほか、操作性自体はリモコンのポインティング操作を無難に活かしたものになっているので、何もかもが悪い訳では無い。ただ、構成周りのメリハリの無さもあってか、物足りなさを感じるバランスとなっている。なのでスリルとか、爽快感を求めてプレイすると酷く裏切られるかもしれない。
ボリュームも短め。しかし、おまけ要素はそれなりに用意されているので、それらのコンプリートを目指すとそこそこ遊べる。とは言え、本当にそれなりの量なので、過度の期待は禁物。また、一応スコアアタックのやり込みもあるが、レベルデザインの問題もあってやり甲斐はイマイチ。ここも過度の期待を胸に挑むと酷く裏切られるだろう。
その他、グラフィックに関しては雰囲気重視の作風というのもあってか、気合の入った仕上がりとなっている。特に背景周りはなかなかで、美しくも何処か狂った世界観というのを見事に描き切っている。キャラクターモデル周りも元のデザインを尊重したアニメっぽい仕上がりとなっており、海外ゲームっぽさが全くないというのも必見だ。

しかし、エフェクト周りは総じて地味。というか、演出周りが非常に弱い。この手のシューティングゲームと言えば、効果音がある意味では命とも言えるが、そこが何ともショボイ。銃撃にせよ、何だかエアガンを売っているかのような軽さで、爽快感に欠けるのである。派手な爆発なども皆無で、敵のやられ様にしても地味。ボスにしても、倒した時に派手なエフェクトと音が鳴ったりもしないので尚更だ。アクションシューティングとしては致命的に等しい出来となっている。仮にも雰囲気を重視したのなら、こういう所も気合を入れて頂きたかったのだが、そういう努力が一切感じられないのは非常にもどかしい。せめて効果音ぐらいはもっと重くできなかったのだろうか。御伽噺のキャラクターが登場する世界観故に、下手に派手にしたらしたで拙かったのかもしれないが、そういう思い切れない所は本当、残念の一言に尽きる。アクションシューティングなら、そこは最低限のものを抑えて頂きたかった。
他にもストーリーもデモシーンの曲の種類が一曲しかないなど、演出的にイマイチな所はチラホラ。レベルデザインにせよ、エフェクト周りにせよ、低価格故に妥協せざるを得なかったのかもしれない。しかし、最低限抑えるべき部分の作り込みが甘いのは褒められたものではない。総じて、雰囲気重視でゲーム性は期待してはいけない出来となっている今作。
怪しげな世界観を楽しみたいのなら、試してみる価値はある怪作である。アクションシューティングを楽しみたい場合にはお薦めはできない。ちゃんとしたアクションシューティングがやりたいのなら別の作品を検討しましょう。
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