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≫危険空域
■発売元 トライファースト
■開発元 AKINAI GAMES
■ジャンル スペースアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 1000Wiiポイント(※2014年現在、配信終了。購入不可)
■公式サイト ≫こちら(※任天堂紹介サイト)
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■消費ブロック数 308
■セーブデータ数 1つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー不可
■その他 ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■推定クリア時間 6時間〜8時間(エンディング目的)、11〜12時間(完全攻略目的)
ドクター・ダークマターと手下の宇宙海賊達に天を構成する『星座の石』が盗まれた。
石が盗まれた事によって宇宙からは光が消滅。闇が全てを覆い尽くそうとしていた。
この緊急事態に銀河防衛隊の隊員達が出動するが、ダークマターとその手下達が逃走した先の危険空域で全滅。残るは女性隊員のコンキしかいなくなってしまう。
既に隊員の多くが失われた中、コンキは宇宙に光を取り戻す、ただそれだけの目的で危険空域へと向けて出撃する。

ダークマターに盗まれた『星座の石』の幾つかは、宇宙にはこびる悪徳業者に売られ、幾つかは逃走中の事故で行方不明になっている。この先、あらゆる困難を乗り越えなければ前に進む事はできないだろう。
果たして、コンキの運命や如何に。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆自機をゴールに導くだけの単純明快で取っ付き易いゲームシステム
◆単純明快なゲーム性を尊したミッション内容(アイテム回収などが中心)
◆リモコン一本のみの手軽さ、穴に糸を通すかのような独特の手応えがユニークな操作性
◆シビアさを突き詰めた仕掛けの配置とそれを突破する快感を尊重したステージ構成
◆バリアを展開できるようになったり、ダメージを受けた後の復帰速度が短くなったりなど、ステージ攻略の救済処置として上手く機能しているアップデートシステム
◆回転強制スクロールに360度自由に動ける空間など、数は少ないが見た目のインパクトは抜群のステージロケーション(特に回転ステージは見た目からしてユニーク)
◆かなりシビアだが、確かな上達を実感できるよう上手く調整されたゲームバランス
◆最速クリアを極める楽しさに満ちたタイムアタック(上達を実感できるバランスと相まって、中毒性もそこそこ)
◆宇宙空間独特の幻想的な雰囲気を見事に表現しきったグラフィック

--- Bad Point ---
◆単純明快で取っ付き易いが、慣性がかかる為にかなり癖もある操作性
◆シビア故に余程の根気がなければイライラすること必至なゲームバランス(特に制限時間設定のシビアさが応える)
◆難易度がぶっ飛び過ぎな回転強制スクロールステージ(クリア条件からステージの地形も含めて、あまりにもシビア過ぎる。特に終盤に登場するタイプは鬼畜の極み)
◆不自然なサイズ設定が成された文字フォント(メインメッセージが小さく、ボタンを押してくださいなどのガイドメッセージが大きいというアンバランスさ)
◆ステージを選択して決定後、Bボタンでキャンセルできないなど、イマイチ調整の甘さが目立つメニューインターフェース
◆『ストーリーモード』選択時に決まって行われるデータの削除(厳密には上書き。任意選択方式にできなかったのか?)
◆地味な演出(淡々としたゲーム内容である為に派手さは無い)
◆ほとんど空気に過ぎない音楽
▼Review ≪Last Update : 10/17/2010≫
YES , YOU CAN !

根気で頑張れ。


株式会社ユークス米法人のダウンロードゲーム専門部門、『AKINAI GAMES』の第一弾としてリリースされたアクションゲーム、『Evasive Space』の国内移植版。ローカライズはユークスの子会社(2009年当時)トライファーストが担当。

色んな意味で「イライラ」必至。歯応え満点の迷作アクションだ。

ゲーム内容は横スクロールのステージクリア型アクションゲーム。宇宙船を壁や障害物に当らないように動かし、与えられたミッションをこなしながらゴールを目指していくというものである。例えが古いが、ゲーム自体は1995年代にテレビ朝日系列で放送されていたバラエティ番組、『ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャー』の名物コーナー、『電流イライラ棒』に近い。ただ、イライラ棒が壁や障害物にぶつかれば一発ミスだったのに対し、今作はダメージ制なので、イライラ棒ほどのシビアさはない。また、360度自由に動き回れるステージがあったりなど、ステージのバリエーションも多彩。全体的には2Dアクションゲームの色が濃い作りとなっている。
操作はリモコン一本のみ。Bボタンで前進し、センサーのポインタで軌道修正をし、宇宙船を動かす。非常にシンプル且つ、Wiiらしい操作体系となっており、取っ付き易さはかなりのもの。色んな意味で「ありそうで無かった」手応えに秀でたものに仕上げられている。しかし、意外に自機操作の癖は強い。と言うのも、自機の動きに慣性がかかるので、下手に加速を付け過ぎると曲がりきれずに壁に激突する。また、壁や障害物を避けながら進めて行くゲーム性から、本編では慎重な操作テクニックも求められてくる。操作自体のシンプルさに反して、ワリと自由度は低めなのである。それでいて、自機にも癖があったりと、何処となくイライラ棒チックなところも目立つ様。単純に見せかけて実態は何気に硬派と、意外に癖の強いものとなっている。だが、単純明快なのに難易度は高いというのは、妙なギャップに秀でていて面白い。そういう意味では、Wiiの「裏の顔」を現した操作性と言えるだろう。なかなか斬新な感触である。
また、ゲームモードは2種類。『ストーリー』、対戦プレイの『マルチプレイ』が用意されている。メインとなるのは『ストーリー』。全20ステージの攻略を目指す。ステージのクリア条件は、既に紹介済みだがゴールを目指す、至ってシンプルなもの。しかし、ステージよっては『ミッション』が設けられてる所もあり、それを達成しないとゴールが現れないという特殊な所もある。ただ、ミッションは基本的にアイテム回収のみと、複雑なものは皆無。ステージの作りは一貫して迷路。そして迷路は「ゴールを目指す」という目的を達成するところに面白さがあるという基本的な作りを考慮してか、必要以上に入り組んだものは設けない姿勢を貫いている。あくまでも迷路の突破に重きを置いているので、派手さを出す為の装飾は控えめ。その辺は結構、こだわって作られている。
また、これも先ほどに少し触れたが、ステージの形も全てが迷路という訳では無く、360度自由に動き回れる場所があったりと、結構多彩であるのも大きな特徴。中には強制回転スクロールなる、ぶっ飛んだステージもあったりして、プレイヤーを驚かせる。最初の流れで迷路主体かと思わせ、実はそうでないのを見せ付ける構成の(良い意味での)意地悪さは、如何にも海外制作だけにあるというべきか。単純に迷路のみで終わらせず、ちょっとした驚きも込めたその全体構成に対する工夫は、なかなか上手いの一言に尽きる。
このようにゲーム自体はイライラ棒に近い、と思わせてワリと捻ってる作り。ステージが迷路だけでなかったり、操作はシンプルと思わせて意外に癖のあるものであったりと、所々に面白い裏切りが仕込まれた、個性的な内容に仕上げられている。シンプルに見せかけて実は硬派というその作りは、ある意味でWiiというハードだからこそ成し得た裏切りと言っても良いかもしれない。結構、侮ったら痛い目に逢うゲームなのである。

そして、侮ったら痛い目に逢うその裏の顔こそが今作ならではの売りでもある。
単刀直入に言って今作の難易度はかなり高い。シンプルな操作性ならではの取っ付き易さとかけ離れた、極めてシビアな調整が成されている。特に自機の操作が難しい。操作自体はシンプルなので、触っただけですぐ覚えられる。だが、それを覚えても、肝心の慣性の感覚自体が簡単に覚えられないほど独特。思い通りに動かそうにも動かせないのである。曲がりきれると思って位置調整したら、曲がりきれずに壁に激突したり。そんな感じの事故が初めはやたら頻発する。人にもよるが、酷い時にはリモコンをぶん投げたくなる衝動に駆られることもあるだろう。
しかし癖が強い故、上手に操れるようになった時の快感は格別。どのタイミングで位置調整をすれば良いか、そのタイミングが分かると、驚くほどスムーズに自機が動くようになる。そんなプレイヤー自身の上達を実感できる手応えが、今作はしっかりしている。経験を重ねれば重ねるほど、面白さが増していく。癖のあるアクションゲームならではとも言うべき味わい、達成感の高さが凝縮されているのだ。
主に操作自体の敷居の低いのが秀逸。基本的にリモコンのポイント操作で、特別な操作が要されないので、ただ慣性の慣れだけに集中できる。その気を配る対象の少なさこそが特筆すべきポイント。誰もが簡単に触れる、というのが凄く親切で、この手のゲームにしては珍しい敷居の低さを醸し出しているのだ。何かと癖の強いアクションというと操作も厳しく、敷居も高かったりするものだが、今作はその操作の厳しさが無い。なので、自然と操作そのものの醍醐味に入って行けるし、感覚の練習に集中できる。そんな間口の広さこそが、この手のゲームとしてはかなり新しい。Wiiリモコンからこその売りが発揮されているのだ。まさに、リモコンならでは。癖の強いゲームもリモコンなら更に敷居が下がる、と打ち出した今作は、まさに革新的な一作であると言っても良い。
全体のバランスもシビアとは言え、侮れるものがある。スキルの上達が露骨に反映される、癖の強いゲームならではのスルメな味わいがあり、やり込める深さがある。初め苦戦したステージが凄い速さでクリアできたりと、その辺の自分の上達に酔いしれる快感は格別である。この快感を刺激させるタイムアタック要素も見事で、上手くなった人なりの楽しみという余地を与えてるのが秀逸。更に今作には自機の操作性を向上させる『アップデート』なるアイテムを集める要素もあり、これを集めるか集めないかで難易度を下げたり、上げたりする選択肢が用意されているのも懐が広い。集めて快適にクリアするのも良し、茨の道を通るのも良しと、様々な遊び方ができるのも面白いところだ。難易度選択システムを用意するのとは違う、センスの高さが光る。
ステージの作りも仕掛けなどを含め、適度な嫌らしさが炸裂。しかし、慣れれば無傷で突破も容易など、意外に理に適ってるという有様。その絶妙な配置には、丁寧な計算と調整を施したが故の結果がよく現れている。
しかし、迷路ステージはまだしも、360度動けるステージと回転強制スクロールステージの作りは甘い。特に後者はアイテム集めが大半なのだが、そのノルマが異常に多かったり、仕掛けが嫌らし過ぎて難易度が高過ぎたりと散々。見た目は面白く、回転ならではのスリルが出ていて秀逸なのだが、嫌らしさの方が勝る調整にされているのは正直、腹立たしい。前者も隕石が降りかかってくるのだが、それが明らかに回避不能だったりする事があるのが甘い。ノーミスクリアを目指そうにも目指せないこの仕様は、アクションゲームとしては褒められるものではない。折角、迷路系は良い感じにまとめられてるのに、これらが無理矢理なのは悲しい。発想的に悪く無いだけに、ここはもっと作り込んで欲しかったところだ。致命的としか言い様が無い。
そんな残念な所もあるのだが、操作の敷居の低さ、上達の結果が露骨に表れるゲームバランスなどはかなり魅力的。簡単さに反した嫌らしさもギャップがあって面白く、ライトユーザー騙しな様になってるのがユニークだ。シンプルさの裏に罠を仕掛けるどす黒さ。今作ほど、羊の皮を被った狼ということわざが似合うゲームも無いと言っても良いだろう。

その他、今作はグラフィックの質も高い。主に背景の色使いなのだが、宇宙を舞台にした世界観ならではの「幻想的な雰囲気」を見事に表現している。色の主張も落ち着いていて、単に見るだけでも楽しい。シンプルなグラフィックでも、色使いを工夫すれば十分綺麗になる、今作のグラフィックにはそんな工夫の大切さみたいなのを教えられるかもしれない。何気にダウンロード専用タイトルでこの出来栄え、というのも凄いところだ。
ただ、一方で音楽は空気も同然。単調なリズムを繰り返す曲ばかりなので、あまり期待しない方が吉だ。どうせなら、もう少しゲーム的な音楽にして欲しかったところだが。演出も基本的に地味なので、そこも期待しない方が良い。
また、サポート周りに関しては不備が目立つ。一応、操作解説などのチュートリアルなどはあるのだが、そのテキストの文字サイズが異様に小さくて読み難い。更にメインのストーリーを始めると、リセットしない限り二度とメインメニューに戻れなくなるのも不親切だ。前者は「ボタンを押してください」のメッセージテキストと同じサイズ、後者は普通に導入すべきものなのに、何故徹底されなかったのか。正直、この辺は怠慢と言わざるを得ない。

その他、クリアしてもエンディングが異様にしょぼかったり、ストーリーがあって無いようなものなど、雑なところも目立つ。まあ、後者はそもそも別に無くても良いレベルなので、それほど深刻な欠点では無いのだが。それでも、主人公の設定とかに「滑っている」感じが露骨に表れているのには苦笑せざるを得ない。
ゲーム自体も簡単とは言え、癖が強いのでかなり人を選ぶ。ただ、ありそうで無かった操作性と癖の強さに反した敷居の低さ、上達の結果が露骨に表れるバランスなど、純粋にアクションゲームとしては及第点の出来を誇る。イライラ棒チックではあるが、それとは全く異なる味付けが成された今作。
万人にお薦めできるゲームではない。しかし、アクションゲームが好きなプレイヤーならチャレンジして欲しい硬派な迷作だ。不自由な操作をモノにする快感を是非。
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