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≫タクトオブマジック
■発売元 任天堂
■開発元 タイトー
■ジャンル 魔法アクションストラテジー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人(※オンラインプレイ時:1〜2人)
■セーブデータ数 3つ(※14ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー不可
■その他 ヌンチャク専用、WiiConnect24対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 48ページ
■推定クリア時間 16〜18時間(エンディング目的)、50〜70時間(完全攻略目的)
1000年の間に渡り世界を統率していた『エンタール王国』は、国王の暗殺を機に瓦解し、新たに『神聖エンタール帝国』が樹立。大陸の全土に渡り、その支配を広めていた。
だが、その支配は国の隅々にまでは及ばず、一部地域は平和な日々を過ごしていた。

主人公の少年、オーヴィルが住む地域も、そんな帝国の支配が及んでいない片田舎。
彼は幼馴染の少女『シャーロット』と共に二人の友人が住むベーダ村を訪れようとしていた。丁度その日は、オーヴィル17歳の誕生日でもあり、その事を祝って、友人達が村で誕生会を催してくれたのだ。

しかし、二人が村へと到着すると、そこには思いがけない光景が広がっていた。

そしてこの村での出来事が、オーヴィルを運命の渦へと巻き込んでいく…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆リアルタイムストラテジーとアクションRPGを混ぜ合わせた、独特のゲームシステム
◆ABボタンで掴んで離すだけと、簡単で取っ付き易いユニットそれぞれへの指示手順
◆実際に魔法陣を一筆描きして魔法攻撃を行うユニークな発想が光る、ルーンシステム
◆形がシンプルで覚え易い、各種魔法のルーン(反応精度もそこそこ)
◆4つと少なめだが、その分、覚え易い各種ルーンの属性(更に他のルーンと重ね合わせを行う事によって、全部で100を超える多彩な魔法が放てるのも魅力的)
◆リモコンのポインタとヌンチャク側の特性を活かした、違和感の無い快適な操作性
◆全100強ものマップを攻略していく、ボリューム満点の『ストーリーモード』
◆長くても最大15分以内と、コンパクトなボリュームでまとめられた各マップ
◆敵全滅からボスの撃破、合流までバリエーション豊かなマップごとのミッション(目的)
◆嫌らし過ぎず、簡単過ぎずの絶妙な調整が成されたマップごとの敵配置と仕掛けの配置
◆適度に温くもあり歯応えもある、その丁度良さが見事なゲームバランス
◆順序立って少しずつ要素をオープンしていくチュートリアルにリトライの度に増えるヒント、オートセーブなど、丁寧且つ親切なサポート機能
◆スコアアタックにメダル集めと、無駄に多いやり込み要素(マップも多いので尚更)
◆地味ながらエフェクト絡みはそこそこ凝った仕上がりのグラフィック
◆ファンタジーの世界観にマッチした、オーケストラ調の荘厳な音楽
◆質感溢れる気持ちよ過ぎる効果音(特にボス撃破時の音の気持ちよさは格別)
◆王道のファンタジーながら、タイトー独自の陰鬱さが発揮されたシナリオ(特に闇ルート)

--- Bad Point ---
◆何故か、ヌンチャク振り上げが初期設定とされた魔法陣呼び出し操作(これはオプションで絶対にZボタンに設定し直すべき。振り上げ操作だとまともに遊べない
◆丁寧過ぎる故に長くてイライラするチュートリアル(しかも省略不可)
◆イマイチ感度の悪い、風のルーンなどで広範囲攻撃をする時に行うリモコンを捻る操作
◆土のルーンの認識精度の甘さ(他のルーンは問題なく認識するのだが…)
◆親切だが発生頻度が多過ぎる感も否めないオートセーブ(しかも地味に長い)
▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
この世界に正しい未来など無い。

それを知った時、貴方は絶望する…。


2006年1月12日にニンテンドーDSでリリースされ、独自の操作性と魔法陣を自分で描くシステムで評価された秀作『ロストマジック』の実質的な続編にして、世界観を一新した新作。開発は『ロストマジック』と同様にタイトーが手掛けた。

地味だけど、やり込み甲斐抜群の傑作RTSだ。

『魔法アクションストラテジー』と称しているが、実際の内容はリアルタイムストラテジー(RTS)。主人公のオーヴィル、部隊に所属する『ガーディアン』の仲間達にリアルタイムで命令を下し、敵軍を撃破しながらマップを攻略していくものである。操作はリモコンとヌンチャクの両方を扱うスタイル。基本的にリモコンで画面上のポイントカーソルを動かし、そのカーソルでユニットに移動や攻撃と言った命令を与えていく。命令の与え方は非常にシンプル。AボタンとBボタンの同時押しで対象となるユニットを掴み、移動する場合はここまで進ませたい位置までカーソルを動かし、ボタンを離すだけ。敵に攻撃する場合は、敵のアイコンにカーソルを合わせ、ボタンを離せば良い。たったそれだけで、移動や攻撃と言った命令を下すことができる。待機、撤退と言った他の命令も、基本的にユニットを掴み、カーソルで待たせたい、或いは逃がしたいと思う場所でボタンを離せば良いだけ。世間一般のRTSは、与える命令の系統がワリと豊富にあるが、今作は必要最低限に絞られているので、ゲーム自体の敷居は低め。RTSは初めて、という方でも親しみ易い作りとなっている。
また、他のRTSと一線を欠く、特徴的なシステムも詰め込まれている。それは主人公ユニットの攻撃システム。何と、プレイヤー自ら『魔法陣』を画面上に描いて行う。攻撃指示を与えれば自動でその動作をしてくれる『ガーディアン』と異なり、主人公は自らその操作を行わないと、攻撃行動を取ってくれないのである。
つまり、主人公だけはRTSのシステムに則って無い。アクションゲームのシステムに則った仕様とされているのだ。仲間の攻撃は自動なのに、主人公だけは手動。それ故にゲーム自体の手応えも、RTSらしさとアクションゲームらしさが混在した、大変奇抜なものとなっている。アクションっぽさがある為、本編の忙しさも相当なもの。ユニットの指示に自らの攻撃まで行わねばならぬので、手と頭が休む暇も少ない。状況に応じて指示を変えていく従来型RTSとは違う、自分自身も積極介入しなければならぬその作りは、さすがアクションストラテジーを名乗るだけにある。これだけでも、今作のRTSとしての作りが如何に異質かは伝わるかと思う。
また、魔法陣を描く操作も独特。ヌンチャクを立てるか、Zボタンを押すと表示される魔法陣に、リモコンで特定のルーン(形)を一筆書きする、Wiiならではの操作性を活かしたものとなっている。ルーンの形も簡単なものが中心で、RTSのテンポを優先した気配りが徹底されているのが見事。判定の精度も大らかで、適当な形でもきちんと認識してくれるなど、魔法陣を描く爽快感を重視した調整が図られているのも快適だ。魔法自体もバリエーション豊か。単に魔法陣を一回描くだけに留まらず、二種類以上の魔法陣と組み合わせて発動するものがあったりと、多彩な攻撃が可能だ。属性も基本的に「火・水・風・地」の4種類に限られており、それぞれ特徴と効果が一目で分かる工夫が成されてるのも秀逸。本編の忙しさはかなりのものだが、システムは分かり易さを徹底しようとするこだわりが発揮されている。最初は風のみで後から属性が順次追加、アクションが増えて行く構成も、RTSは初めてという方に対して親切な作りで好感が持てるところだ。
全体としてシンプルだけど、魔法陣の攻撃(ルーン詠唱)や主人公の概念など、独自の工夫と忙しさを煽る演出が充実。RTSとしては抜群に遊び易く、しかし新しくもあって忙しいという、実にユニークな内容に仕上げられている。

そして、そのRTSとしての革新的な試みの数々こそ今作の大きな売り。
主に最大の特徴たる魔法陣にルーンを描くシステム。これがまた、RTSとして異質な「素早く準備して敵を一網打尽にする」、リスクとリターンの概念が露骨に表れた作りとされているのが実に面白い。主人公で攻撃するにしても直に行えない、準備する隙を作らなければいけないそのリスクのでかさが、プレイヤーに対して心地良い緊張感と焦りを与えてくれる。また、仲間のガーディアンとの混戦で、ピンチ時の支援行動(回復など)を取る際、やはり例によって準備の必要があるのも、無駄にヒヤヒヤさせられて面白い。仮に魔法陣の描き方に成功すればピンチ脱出、しかし間違えてしまったら味方離脱で戦力低下と、プレイヤー自身が慎重さが試されるかのようなその結果の現れ方は、如何にもアクションゲームっぽいところがあり、RTSとしては新鮮な味わいがある。主人公自体がプレイヤーの分身だからこそ、そして手間のかかるユニットだからこそ生まれたそれらは、まさにこのシステムなくして実現不可なものだったと言うに相応しい。神の視点でプレイするのとは違う、自ら直接介入するからこそのこの露骨さは、まさにRTSとしては実に革新的なゲームデザイン、バランス調整である。ある意味、Wiiだからこそ実現できたものと言ってもおかしくないだろう。
また、ゲーム自体の敷居が低いのも特筆に値する。指示の分かり易さ、ユニット別の露骨な特徴と、新しい一面を感じ取れ易く徹底したその作り込みは、先の魅力を引き立てるものとして、見事な存在感を確立している。この辺のコンセプトを際立たせる上手さは、如何にもタイトーらしい。それに今回は任天堂の手も加わり、余計にその魅力が引き立てられているのだから半端で無い。まさに鬼に金棒である。
ゲームデザイン、バランスだけに留まらず、ゲームとしての遊び甲斐の深さも見逃せない。本編に当たる『ストーリーモード』のマップは50面以上、クリア後にもスペシャルマップを50面以上用意、全部で100面も収録されているという贅沢振りで満足度が半端無い。それ以外に特別なチャレンジがあったり、メダル集め、スコアアタックと、やり込み要素が充実しているのでたまらない。遊び込む度に深くなっていくその面白さは、熟練のゲーマーも舌を巻くほどだ。
それでいて、マップがコンパクトな作りなのも見事。基本的に1マップのクリアは最速で十数秒、最低で15分と短めの作りにされており、直に始められて止められる手軽さが際立っている。満足度も短いからと言って薄くなく、素早くクリアするなりの奥深さ、やり甲斐の深さがあって絶妙だ。ゲーマー向けの一面もあり、忙しい人にも適した一面もあるその幅広さは、如何にもWiiらしい。こんな手軽さと奥深さを両立したWiiのゲームと言えば、同じく任天堂のスーパーマリオギャラクシーやアトラスのカドゥケウスシリーズがあるが、今作はそれらに引けを取らぬどころか、それ以上の深みがある。
遊ぶ度に広がっていく深さと人を選ばない敷居の低さ。システムとしての新しさ。Wiiらしい特異さとゲームとしての面白さの二つを両立した今作は、確実にその代表作の一つとしてカテゴライズされる資格があると言っても良い。むしろ、これで資格なしと言ったら「あり得ない」と言えるほど。遊び易くて新しいRTSとして演出しつつ、ゲームとしての遊び応えのあるものに仕上げられた今作は、まさにWiiを代表する秀作と言っても良いだろう。それほど新しく、そして奥が深い内容に仕上げられているのだ。お門違いだが、スーパーマリオギャラクシーに匹敵すると言ってもおかしくない。
ただ、ゲーム自体が秀逸な出来を誇るのに対し、操作性に難があるのは痛い。厳密には魔法陣を出す操作で、これが何故か初期設定で「ヌンチャクを縦に持ち上げる」という謎の設定にされている。言うまでもなく、この操作の煩わしさは相当なもので、上げたと思ったら消えたりと、地味にストレスの溜まる仕上がりとなっている。一方で、別設定で用意されたZボタンを押したままで出す操作は快適で、そんな事故は一切起きない出来の高さ。正直、これは完璧な設定ミスだ。普通にZボタンが快適なのに、何で不快な方を初期設定にしたのか。これはZボタンに絞るべきだった。ゲームが魅力的なのにこんな地味なところで致命的な汚点を残してしまってるのは勿体無い。間違いなくこの初期設定を考案したであろう任天堂、いい加減にしろだ。こんな素晴らしいゲームでも、悪癖を出すか。

その他、救済処置のチュートリアルも丁寧なのだが、逆に丁寧過ぎてウザい。練習なのに専用ステージや課題をしなければならないなど、本編を直に遊びたい欲をそがれる。また、省略(スキップ)できないのも陰湿だ。ここもちょっと、任天堂の悪癖が現れてしまってる。2周目をプレイする時は飛ばせるなど、それぐらいしても良かったのではないだろうか。親切過ぎも考えモノである。逆に難易度などのバランス周りは絶妙。難し過ぎず、優し過ぎずの適切な調整が成されている。マップごとのデザインも練られており、RTSならではの戦略を考える楽しさが表現されているのが見事だ。
グラフィックもそこそこ。3Dモデルなどは平均的だが、魔法を始めとするエフェクト周りはなかなか気合いの入った仕上がりとなっている。音楽も結構な出来栄え。ファンタジーの世界観にマッチした、オーケストラ風の曲の数々はプレイを大いに盛り上げる。タイトーのZUNTATA作曲故に曲の出来も結構なもので、メインテーマ曲は実にしびれる。
そして何気にシナリオも侮れない。基本的に王道のファンタジーなのだが、終盤に分岐があり、その時に選んだルートによって内容がガラリと変化する。特にルートの一つ、闇ルートはタイトーらしいどす黒さ(陰鬱さ)が炸裂。実はもう一つの光ルートは、ベストエンドじゃなかったと明かされるその内容には、誰もが永遠に振り払うことのできぬもどかしさを覚えるだろう。王道だからこそできた、その展開は是非とも要チェックだ。

他にもWi-Fiコネクションによる対戦プレイ、快適なインターフェースなど、魅力は尽きない。操作の初期設定の問題があるので、そこには要注意して頂きたいが、ゲーム自体の完成度は繰り返しになってしまうが最高クラス。アクションゲームチックな忙しさと緊張感、RTSとしての敷居の低さ、遊び易さと何処をとっても素晴らしい出来を誇っている。
何故だが、発売当時には任天堂が積極的にプロモーションを行わず、その為に存在すら世間に認知されずに埋もれた今作だが、はっきり言って埋もれたままにしておいては絶対ならぬ一本である。数あるWiiのゲームの中でも突出したゲーム性の深さと敷居の低さを誇る、この『タクトオブマジック』。これはWiiを持ってるユーザーならば絶対に遊ぶべき名作だ。特に純粋なゲームを求めてるWiiユーザーにこそ遊んで頂きたい。この深さと遊び応えは、ゲームを遊びたいという欲求に大いに答えてくれる。是非、プレイすべし。お薦めです。
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