≫スーパーペーパーマリオ
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■発売元 |
任天堂 |
■開発元 |
インテリジェントシステムズ |
■ジャンル |
アクションアドベンチャー |
■CERO |
A(全年齢対象) |
■定価 |
5800円(税込) |
■公式サイト |
≫こちら |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1人 |
■セーブデータ数 |
4つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可) |
■総説明書ページ数 |
36ページ |
■推定クリア時間 |
14〜17時間(エンディング目的)、30〜40時間(完全攻略目的) |
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またもピーチ姫がさらわれた!
どう考えても、これはクッパの仕業!
キノピオからその知らせを聞いたマリオとルイージは、足早にクッパ城へと向かう。しかし城へ着いてみると、クッパは今まさにピーチ姫を誘拐しに行こうと準備をしている所だった。
では一体、誰がピーチ姫をさらったのか…?
そう考えている最中、突如として『ノワール伯爵』なる怪しげな男が一行の前に現れる。
一体これから、何が始まるのか…!?
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆2Dのマリオシリーズをそのままアクションアドベンチャーへと落とし込んだ、独特且つセンス溢れるゲームデザイン
◆2Dの視点を3Dへと変える、発想からして衝撃的な新システム『次元ワザ』
◆2Dから3Dへの変化をシュールに描いた、センス炸裂の凝ったグラフィック
◆アクションアドベンチャー初心者にも優しい、ネタ的に良い意味で乏しい謎解き要素
◆状況に応じて使い分け、謎解きやイベントを突破していく、戦略的な面白さと協力する楽しさを演出した『仲間キャラ』
◆対象物のサーチに物投げなど、個性豊かな特技を持った妖精の仲間キャラ『フェアリン』
◆「異次元の世界」らしい、シュールな地形配置が見る者に衝撃を与えるマップ構成
◆適度に温くて適度に難しい、絶妙なさじ加減が秀逸なゲームバランス
◆マリオらしからぬ重くて切ないシナリオ(終盤からエンディングにかけての展開は絶品!)
◆隠しマップにカード収集など、地味でありながらも結構充実した総計ボリューム
◆シリーズ伝統の紙っぽさと異次元の歪さを巧みに織り交ぜた、美麗なデモシーンの演出
◆ドン引き必至の廃人系オタクキャラ・カメレゴン(その台詞からしてマリオらしさゼロ!)
--- Bad Point ---
◆悪い意味でネタに乏しく、コアユーザーには物足りない難易度の謎解き(次元ワザを使って解く謎解きもワンパターン且つアッサリとしていて、発展性に乏しい)
◆Wiiのボタン数の少なさが悪い意味で反映された操作性(仲間キャラの変更など、かなり煩わしいものになっている)
◆単純作業を要求されるイベントの無駄な多さ(面白くないものをこんなに用意しても…)
◆相変わらず冗長で、ボタンカットもできないデモシーン
◆ほとんど空気でしかない音楽(前作と同じく、印象に残る曲は非常に少ない)
◆次のワールドを開く為に必至の作業で、地味に面倒臭い『ピュアハートのストーン設置』
◆構造的にいびつで全体像を覚えるのが難しい、エントランスマップ『ハザマタウン』
◆もはや暇人向けのやり込み要素『100人斬り』
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▼Review ≪Last Update : 11/8/2008≫
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彼女はもう…いない、もう…!
そして訪れる、愛の奇跡。
2Dと3Dを融合した紙っぽいグラフィックで話題を呼んだ『ペーパーマリオ』シリーズ最新作。当初はゲームキューブ用ソフトとして2006年夏に発売が予定されていたのだが、既にゲームキューブ市場が縮小し始めてたのを受けてか、Wiiで発売される事となった。開発はこれまでと同じくインテリジェントシステムズが担当。
画期的な発想が異彩を放つ、ペーパーマリオシリーズ久々の傑作である。
ゲーム内容は、アクション要素の強いRPGであったそれまでのシリーズから一転。横スクロールのステージクリア方式で展開する『ゼルダの伝説』とは違ったタイプのアクションアドベンチャーゲームとなっている。スクリーンショットを見る限りでは「2Dマリオ復活!」とも言うべき、昔懐かしい香り漂うものになっているが、肝心のゲーム性は全くの別物。アクションアドベンチャーと釘打っているだけの謎解き多し、イベント多しの入り組んだものになっている。
だから「いつもの2Dマリオだ!」と事前知識なしで挑んだら、痛い目に遭うのは必至。そういう意味では、普段ゲームを遊ばない人ほど罠にかかりやすい、危ないゲームであるとも言える。しかし、「危ないゲーム」だからと言って肝心のゲーム自体が決して面白くないという訳ではあらず。確かに2Dマリオとは完全な別物ではあるが、これはこれでとても味わいのあるものに作り上げられている。
まず、その売りの一つがステージクリア方式による明確な進行システム。アクションアドベンチャーと言うと、ゲーム好きの方ならば『ゼルダの伝説』シリーズみたいにRPGのようなフィールドがあって自由度が高い、『ダンジョン』と呼ばれる場所で黙々と謎解きをしていく、そんな内容を髣髴とさせるかもしれないが、今作にはRPGのような広いフィールドも謎解きばかりのダンジョンというのは全くあらず。
今作はアクションゲームのようにキャラクターを動かし、舞台となるステージをひたすら前へ前へと進んでゴールを目指していく、取っ付き易くて仕組みも分かり易い進行システムを起用しており、アクションアドベンチャーは初めてだという方も直に親しめる作りとなっている。更にアクションアドベンチャーの肝とも言える『謎解き』もマップ内を動き回って通路を見つける、特定のイベントをこなすと言ったものが中心で、凝りに凝ったパズルなどと言った難しい謎解きも皆無。かと言って全く苦戦しないほど簡単な訳ではなく、真剣にフィールドマップ内の怪しい所を見回す観察眼も問われてくるなど、難所もチラホラ。ネタとしては簡単ではあるけど、バランス調整は絶妙という任天堂らしい味付けが成された作りとなっている。
そしてゲーム展開を更に盛り上げる要素として『仲間キャラ』。今作でプレイヤーが操るのはマリオだけでなく、ゲームが進むとピーチ姫、更にはシリーズお馴染みの宿敵クッパまでもが操作キャラとして参戦。彼らの特殊能力を駆使して難所を突破する、戦略的な面白さ溢れる遊びも堪能できるようになっているのだ。更に各キャラが持つ能力も、ピーチ姫はパラソルを使った滑空ができるなど全体的に移動面に優れ、クッパは攻撃力が高く、主にボス戦などと言った戦闘において活躍すると言った明確な個性付けが成されており、それぞれが違った魅力を醸し出している。
また作中では分散イベント(離れ離れになってしまうイベント)もあり、改めて仲間がいなくなる事の非力さを痛感させてくれるなど、ストーリーの面においても密接にその魅力を活かし切っているのも、ベタではあるが上手い見せ方。遊びの面からストーリーの面まで、よく考えて作り込まれている事を痛感させられるだろう。
ただ、アクションアドベンチャーというワリに自由度が低いのは好みが分かれるかもしれない。実質、一本道…フィールドみたいなマップは、各ワールドへの入口が用意された『ハザマタウン』と呼ばれるところのみなので、自由に壮大なフィールドを歩き回りたい気持ちがある方にとって、今作を触ると正直、不快な手応えを感じ取ってしまうかもしれない。
しかし、逆に自由に動き回れるフィールドがあったら、逆にこの分かり易さとテンポの良さはまず無かっただろう。ゲームとしても堅苦しくなってたかもしれない。何より、自由に動き回れるフィールドとかがあったら、何の為の『スーパー(ペーパー)マリオ』か分からない。『スーパーマリオ』の名を語る以上、2Dアクションのような縛りがあってこそ本物。その点を考慮すれば、今作のシステムはまさに理に適ったゲームデザインが成されたものだと、感じ取れるようになるだろう。
それほどまでに今作は、アクションアドベンチャーでありながら2Dのマリオらしさが健在。見た目はフェイクだけど、マリオはそのまま、「2Dアクションのマリオを題材にした」アクションアドベンチャーゲームに仕上がっている。
勿論、ただバランスの取れた作りという訳ではない。今作独自の新要素もまた、今作を傑作と裏付けるだけの説得力を備えている。その独自の新要素こそが先のシステム以上のセールスポイント『次元ワザ』だ。
前述では語らなかったが、メインキャラであるマリオ、彼にはそのように呼ばれる技が特殊な能力として備え付けられている。その効果というと、2D視点から3D視点への緊急変換。2Dに見えている世界を3Dの世界にしてしまう、インド人もビックリな仰天技を今作のマリオは魅せてくれるのである。2Dが急に3Dに変わる…その発想からして既にシュールだが、実際の光景は更にシュール。2Dではまともなに見えたキャラが、3Dになった途端にペラペラなキャラになってしまったり、2Dで見ていた時には見えなかった通路が現れたりと、誰もが見たことすらないような不思議極まりない現象の数々が画面いっぱいに繰り広げられる。そんな普通じゃない現象の数々が次々とプレイヤーに襲い掛かっていくのだから、衝撃も止まず知らず。まさに「初体験」とも言うべき、新しい衝撃を味わえる、実に刺激的なものに仕上げられている。
勿論、ただ見せるだけではない。ゲームの面においてもこの視点切り替えを活かした仕掛けや謎解きが豊富に仕込まれており、「このゲームでなければ味わえない面白さ」という高いオリジナリティが発揮されている。特に作中、頻繁に出てくる「視点変更で現れる隠し通路」はネタとしては地味ではあるが、プレイヤーの物の見方を逆手に取ったトリックに終始してて秀逸。また一見、避けれそうにない攻撃を視点変更で回避したり、また大きな敵を視点変更でペラペラにし、素通りすると言ったところも、このゲームならではの味わいを演出していて面白い。普通の2Dアクションゲームでは出来なかったその万能振りには思わず、悔やみすら感じてしまうだろう。
ただ、ちょっと残念なのが結局、この次元ワザは「見せる」に終始してしまってること。謎解きのネタも基本的に「視点を切り替えれば大体解ける」と言った簡単なものが中心、切り替えが無くてもOKなネタが占める構成となってしまっていて、発展があまり成されてない。
マリオだけがこのワザを使えるのも、他のキャラとの使用頻度の劇的な温度差を開いていて、切り替え要素の個性を殺してしまっているのも厳しい。逆にそれを調整すれば次元ワザの個性が目立たなくなってしまうだけに、これを推すのならせめてこれは省くべきだったのでは…と、システム構築上の欠点が露わにされてしまっているのも残念な限りである。
とは言え、この次元ワザの発想自体はアイディア賞もの。荒削りであれど、他にはない衝撃と面白さに富んだものに出来上がってるので、触ってみる価値は十分にありだ。
改めて、一方的な見方をしている事の拙さというものをまざまざと思い知らされるだろう。
その他、異次元の世界っぽさ溢れるマップ構成に世界観もスタッフ独自のセンスが炸裂していて見ているだけでも楽しい。各マップを彩るグラフィックも、基本は前作の『ペーパーマリオRPG』と同じ作風で真新しさは無いのだが、全てが黒で覆われた世界やドット全開のカクカクとした木々など、これまでとは一味違った味わいに富んでいて見応えがある。
そして今作はマリオとしては異質、ストーリーが大変素晴らしい。基本はさらわれたピーチ姫を助け、世界を危機から救う王道のストーリーとなっているのだが、その裏で「愛」にまつわる悲しい物語が描かれており、大人でも鑑賞に堪え得る魅力溢れる内容に仕上げられている。前作のあの雑な出来は一体何処へ?とビックリしてしまうほどの進化っぷりだ。特に終盤からエンディングにかけての展開は衝撃的。マリオとは思えぬほどあまりに切な過ぎるその展開には、誰もが涙腺を刺激させられてしまうだろう。
正直、このストーリー見たさに今作を遊んでも決して損はない。前作譲りのマリオらしからぬ過激で爆笑必至のネタ(特にオタクのカメレゴンは強烈)も満載なので、前作のあのノリが好きだったファンの方も要チェックである。
しかし、折角ストーリーやグラフィックは悪くは無いのに残念ながら肝心の音楽はいま一つ。曲調が複雑で、ゲームミュージックとは言い難いものが大半を占めてしまっているのがもどかしい。ラスボス戦など、それなりに良い曲もありはするが…どうせならもっと、ゲーム音楽らしい印象深い曲を中心にした構成にして頂きたかったところである。
また、Wiiにして負の作用を及ぼしてしまっている操作性の悪さも辛い。キャラクターのチェンジや特殊なアクションが可能となる『フェアリン』のチェンジなど、いちいちメニュー画面を開かねばならないので逆に煩わしい。前作や前々作のようにチェンジメニューにすぐ切り替わるショートカットボタンがあれば違ったのだが、どうしてそれを今回は廃止したのか。これは何が何でも受け継いでもらいたかった。
また、冗長でカット不可能なデモに単純作業を要されるイベントの多さも辛い。特に後者はいずれもゲームとして面白いと思えるものが皆無で、こんなのを入れるのなら次元ワザを磨きこめ!…と言いたくなるような様になってしまっているのがあまりに痛い。
前者の冗長なデモも前作で、あれほど問題だったのに改善されてなくて残念だ。ただ、今回は難易度が低めに設定されてるのもあり、余程の事が無い限りゲームオーバーになることがなくなったのを考慮すれば、少しは改善されたとも言えるのかもしれない。それでも、快適に遊びたいユーザーに対する配慮が成されてないのは純粋に見てマイナスである。もっとプレイヤー視点に立ったシステム構築を心掛けて頂きたいものである。
やり込み要素も作業的で味気ないなど、他にもチラホラと欠点はあるが完成度自体は素直に傑作レベル。色々と毒が強く、性質の悪くてつまらないネタばかりだった前作とは違い、今回は素直に大人にも子供にも楽しめる良質なゲームに仕上げられている。また次元ワザと言った新しいネタに感動的なストーリーも強烈。色々と粗はあれど、全体的に「ここでしか味わえない」、高い独自色が炸裂しているこの『スーパーペーパーマリオ』。マリオファンは勿論、Wiiを持っているユーザーも一度は遊んでみる価値のある意欲作である。たまには、ちょっと違ったタイプのマリオもやってみませんか?
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