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≫オプーナ
■発売元 コーエー(現:コーエーテクモゲームス)
■開発元 アルテピアッツァ、ベイシスケイプ(音楽)
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 8つ(※3ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク対応、クラシックコントローラ対応
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 18〜23時間(エンディング目的)、40〜60時間(完全攻略目的)
宇宙の治安を守る勇士『コスモガード』の子供・オプーナ。
彼の一家はつい最近、ティティア星で一番のコスモガード『スターティアン』に選ばれ、そのお祝いを兼ねて家族で『ランドロール星』への旅行にやってきた。
だが、その途中で不慮の事故にあい、旅の目的地でもある『ランドロール星』に不時着。そこから帰れなくなってしまう。更に弟・コプーナと妹・ポリーナとは生き別れ、両親は瀕死の重傷を負って治療中と不運が重なる。
ひとりぼっちとなってしまったオプーナは、離れ離れになった弟妹を探し出す為、ランドロール星の住人としての生活、星の各地を巡る冒険を始めることにする。
果たして、彼は無事に家族と共に故郷の『ティティア星』へと帰れるのだろうか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆住民として生活ながら冒険していく、独自のスタイルが光るゲーム展開
◆玩具のパチンコに似た操作感とテンポの良さが光る、アクティブボンボンバトル
◆ヌンチャクのみの片手操作と通常コントローラによる操作と、多種多様なスタイルが用意された懐の広い操作性
◆世界観設定を効果的に活かした仕掛けの配置が光る、巧のマップ構成
◆分かり易い項目分けが成された、片手操作を意識したウィンドウメニュー
◆豊富なセーブポイント、丁寧なチュートリアル等、充実した救済処置の数々
◆高原から神々しい神殿など、冒険心をくすぐる多彩なマップロケーションの数々
◆ライセンス制覇からトモダチ集めまで、充実したサブイベント群
◆程好く温く、それでいてバトルの戦略性もきちんとした適切なゲームバランス
◆幾何学模様などの突出したデザインセンスが光る、珠玉のグラフィック
◆独自のセンスが炸裂した登場キャラクター全般のデザイン
◆ゲーム展開とマップの雰囲気を大いに盛り上げる、名曲揃いの音楽
◆王道ながらもテキストに含まれた毒気が秀逸なシナリオ
◆デモシーンを始め、昔ながらのRPGらしい質素さが逆に新鮮な演出
◆謎の少女アニメなど、無駄に気合いの入った作りのおまけ要素『ネットTV』

--- Bad Point ---
◆癖のあるカメラワーク(キャラの身長差の影響で少し酔い易い)
◆独特なだけに、人によってかなり好みが分かれるキャラクターデザイン
◆意地悪でシナリオの展開に水を刺す、ラストマップ突入条件(キング・オブ・シーと呼ばれる、本編シナリオでは手に入れる機会の無いライセンスがないと入れない…。)
◆広くて少し迷い易い、ドーム内のマップ構成
◆演出も含めて、あまりに質素なエンディング(もう少し頑張っても…)
◆アイテムでOFFに出来るとは言え、高めな感も否めないエンカウント率
▼Review ≪Last Update : 7/5/2009≫
ドームに秩序があり、外に無法が蔓延する

そこが美しく、それでいて汚い。


独特なデザインで描かれたキャラクターが主人公のコーエー久々のオリジナルRPG。開発はPS2版『ドラゴンクエストV』等を手掛けたアルテピアッツァ。音楽は『タクティクスオウガ』、『ファイナルファンタジータクティクス』の作曲で有名な崎元仁氏率いる、ベイシスケイプが担当。

美しいけど何処か汚い、独自の雰囲気が光る秀作RPGだ。

ゲーム内容は3D視点で展開する、オーソドックスなイベントクリア型ロールプレイングゲーム(RPG)。ティティア星人の主人公『オプーナ』とその兄弟達を操り、舞台となる『ランドロール星』の各地で起きる事件などのイベントを攻略していくというものだ。いわゆる、古き良き時代のRPG、スーパーファミコン時代に出ていたRPGを髣髴とさせる内容で、何処と無く懐かしい雰囲気に富んでいるのが特徴。その頃の作品が好きだったユーザーには「安心感」を、そしてその頃の作品を知らないユーザーには新鮮な手応えを提供してくれる、ニクさ満点の作りとなっている。
勿論、単に懐かしいだけではない。随所にて仕込まれた、RPGとしては『異端』とも言えるゲームシステムの数々も今作の大きな特徴である。代表的なものが『親指らくらくプレイ』、『アクティブボンボンバトル』の二つ。前者はその名が示す通りだが、実は今作、ヌンチャクだけの片手操作で遊べる作りとなっている。厳密に言うと、親指だけで楽しめる訳ではないのだが、基本的に左手操作だけで、マップの移動から戦闘、パーティ管理まで行えてしまう。まさにRPGとしては前代未聞と言っても何ら不思議でない、斬新な手応えを堪能する事ができる。しかも、片手操作という事から、メニュー操作周りで煩わしい操作を要されそうなイメージを抱きがちだが、そこも操作し易くする為にメニューは各項目を分割化させるなど、簡略化させる工夫を徹底。イメージとは裏腹の快適な操作感を実現している。また、ヌンチャクだけという事で、扱うボタンは僅かに2つだけというシンプルさも特筆モノ。ファミコン時代のRPGを髣髴とさせるその分かり易さには、オールドユーザーなら懐かしい記憶が再臨すること、間違いなしだ。
更にビックリなのが片手操作は嫌だな…というユーザーの為、ヌンチャク&リモコン操作にクラシックコントローラ操作も用意していること。通常のスタイルで楽しみたいという方の為の対処もバッチリなのである。この「あくまでも片手操作は一つの選択肢である」とも言うべき配慮には、無理矢理なWiiらしさを出そうとしない姿勢が無く、純粋にゲームを遊んで頂きたいという熱意が滲み出ていて秀逸だ。こんなユーザーの気持ちを真に理解した工夫が成されてるのも、この操作体系において見逃せないところだ。
そして、それらの操作でプレイする後者、『アクティブボンボンバトル』なる戦闘システムも斬新な作り。アクティブの名が示す通り、リアルタイムで展開する内容なのだが、面白いのが「スティック操作で主人公、オプーナ達の頭や足にある『ボンボン』と呼ばれる球体を飛ばして攻撃する」こと。従来のコマンド選択型でなく、スティック操作で球を飛ばして敵を攻撃するという、奇抜極まりない仕組みとなっているのである。例えると、玩具のパチンコのように弾を飛ばし、敵を攻撃する感じ。スティックで飛ばす際の力や方向を調整し、放して飛ばす、…そんな玩具のパチンコの飛ばし合いみたいな、不思議なバトルが今作では繰り広げられていくのだ。コマンド選択型では味わえない、「自分で力加減を調整して、敵に攻撃していく」その手応えは新鮮味満点。加えてリアルタイム方式の為、敵はこちらが攻撃準備をしているのなどお構いなく、攻撃を行ってくる為、緊張感もあり、アクションゲームを髣髴とさせる「焦りのスリル」に富んでいるのもなかなか面白い。
そして何より、このシステムで光るのが戦略性の深さ。単に敵に攻撃にボンボンを当てて倒すだけでなく、時には素早い敵の攻撃を防ぐ為、あえて力加減を弱めて先制攻撃を仕掛け、敵の行動をキャンセルさせたり、沢山の敵との戦いでは、投げる方向を少し変えて他の敵を巻き込んでダメージを与えるなど、投げ方次第で色々な戦い方ができて熱い。また、今作の戦闘はラスボスも含めて全てに制限時間が定められており、全ての戦闘において「如何に効率よく、敵を倒すか」が求められてくるのも、戦略を考える面白さがあって秀逸だ。最速撃破を狙ったり、手馴れたプレイヤーならやり込んでみるとか、やればやるほど深みが伝わってくる作りになっているのも流石と言わざるを得ない。このシステムが如何に作り込まれているか、遊べば遊ぶほどそれを実感できる。
また、制限時間制故に、戦闘が冗長化しないのも大きな強み。ボス戦も含め、平均3〜5分程度の設定となので、例え勝っても負けても、その辺りの時間には必ず決着が着くようになってるのも、忙しくて長時間プレイができないユーザーには大変有り難い配慮だ。最近のRPGは、決まって冗長化する戦闘を含む傾向にあるだけに、これは地味に嬉しい。こんなテンポに対する配慮からも、このシステムが如何に計算されて作り込まれてるかをうかがい知れるだろう。
このように今作、RPGとしての基本は昔ながらの懐かしいスタイルを踏襲しつつ、所々に斬新な要素を搭載。新しくて懐かしい、そんな言葉がよく似合う内容に仕上げられている。

そんな今作の最大の見所は、実はシナリオを含めた世界観全般であったりする。先に紹介した片手操作、アクティブボンボンバトルのシステムもかなり魅力的なのだが、それ以上に世界観に対する作り込みが素晴らしい。
厳密に言うと、マップデザイン全般。舞台となる『ランドロール星』は人々が生活する『ドーム』と、ダークローグが生息する『ドーム外』で構成されているのだが、この2つのマップの棲み分けが見事で、『ドーム』は安全な場所という事でセーブポイントが豊富にある反面、『ドーム外』は危険な場所という事で、セーブポイントがほとんど無い具合にしっかりと個々の設定を反映した作りでまとめられているのである。
マップの雰囲気も『ドーム』は人々が生活している、『ドーム外』はダークローグ達が生活しているという『生活感』が尊重されているのも秀逸。「二つは全く違う世界であり、そこには異なる空気がある」、それを可能な限り見せる為のこだわりまでもが炸裂しているのだ。
そして、その生活感を演出する為に見せるシナリオも上手い。基本的には、主人公達の両親を救う為、人助けをしたりしながら冒険を繰り広げていく、至って王道の内容なのだが、メインの登場人物からドームの住民達も含め、台詞回し等に毒気が込められていて、それが舞台となる世界の生活感を生々しく演出する。特に見事なのが、ドーム内で生活する人達とドーム外で生活する人達との対比で、言葉遣いなどに裕福な暮らしをする人達と貧しい暮らしをする人達が色濃く現れており、地味にドキッとされる。しかも、その人達の生活をプレイヤー自身は改善させることもできず、やれることは人助け程度。それもまた、地味に涙を誘う。一見、平和そうなのに、所々に荒れた世界があり、それが変わる事無く、続いていく惨たらしさ。世界を救うのが目的のゲームでは味わえないその「後味の悪さ」には、不思議な感覚を覚えるだろう…。
それらの設定が活きた、ゲーム展開の仕組みも見逃せない。『ランドロールガード』と呼ばれる職業になって、仕事を受けたり、時には販売員などのアルバイトをしたりする、いわゆる『お使いスタイル』なのだが、元々の世界設定とドームの雰囲気が「そういうもの」と自然に決め付けているのもあり、どのイベントにもほとんど、「無理矢理」なところがない。勿論、中には面倒臭いイベントもあり、ストレスを覚える事とかもあったりするのだが、世界設定の効力もあり、さほど致命的なものになってないのがお見事。あくまでもそれが普通と見せかける、そのゲームデザインはまさに職人技。シナリオの設定を効果的にゲームに反映させるその技は、流石『ドラゴンクエスト』の制作に携わったことのあるメーカーだけにあると言ったところだ。普通なら面倒臭いことと感じ取られ易いものを、自然なものにまとめ上げた力には本当、驚かされる。
どのパートも、基本的にはゲームとは関連のない所だから、どうだって良いではないかとか思ったかもしれない。しかし、あえてゲームと世界観を別々にさせない、どっちも同じ立ち位置にあるかのようにセットするそのテクニックは、大きな評価に値するものである。それに、こういう世界観の設定というのはRPGのジャンルにおいてはゲームでは基本的なことのはず。ゲームはゲーム、シナリオはシナリオと分離させず、重なり合わせた構成こそ、RPGの本来の姿だったはずだ。今作はそんな構成が非常に上手くできている。シナリオはゲームを盛り立て、そしてゲームがシナリオを盛り上げてくれる。RPGとして本来、在るべき姿を今作は維持しているのだ。
最近のRPGは何かと、どちらか片方が重視される傾向にあるだけに、このような基本的なバランス感覚が保たれてるゲームというのも珍しい。最近のに馴れたユーザーは感じ取れるか難しいが、昔からRPGをプレイしているユーザーならば、如何に今作が、RPGとして高い完成度を保つ作品なのか、実際に遊んでみれば、痛いほど実感できるだろう。

その他、プレイ中に訪れる事になるマップのロケーションもバラエティー豊か。美しい高原から海に囲まれた巨大企業、神々しい神殿、そして怪しい地下遺跡など、その奇想天外な地形の数々はプレイヤーの冒険心をくすぐる。
それらのマップを彩るグラフィックも非常に素晴らしく、画質の高さでなく、デザインの美しさを重視した作りとなっているところに、センスの高さが出ている。特に終盤に訪れる、美しい幾何学模様で構築された、湖の下の遺跡は必見だ。
そして、それらの地形の雰囲気を盛り上げる音楽も名曲揃い。しかも作曲&プロデュースは『タクティクスオウガ』や『ファイナルファンタジーXII』等で知られる、崎元仁氏(その他、岩田氏、並木氏などの方々も担当)。業界では名の知れた実力派が手掛けているだけに、そのクオリティの高さは保障済みだ。また、崎元氏と言えば、オーケストラテイストの曲に定評がある人物だが、今作はSFテイストの曲が中心と、それまでとは180度異なる作風で仕上げられている。それまでの氏のテイストとは異なる楽曲の数々、ファンならずともこれは要チェックの価値アリだ。
チュートリアル、通販方式のアイテム購入システム、移動速度の速さなど快適性の面も非常に良い出来栄え。エンカウント率も基本高めながら、通販で『ハイドミスト』と呼ばれるエンカウントをOFFにするアイテムが安価で購入できるようになってるので、そこまでストレスにならない。ただ、カメラワークは少し独特で、やや酔い易い仕上がりになってしまってるのが残念。こまめに止まりながらカメラを回転させれば酔いは抑えられるが、もう少し最適なアングルは用意出来なかったのか。ここはもう少し、調整に時間を割いて頂きたかったところである。

またやり込みもトモダチ集め、ライセンス制覇など、豊富にあるのだが、その内に絶対にクリアしなければストーリーが進行しないものがある(キングオブシーのライセンス獲得イベント)など、やや不親切な所があるのがタマにキズ。デザインも背景は素晴らしいが、オプーナを始め、キャラ周りはかなり癖のある作りで、そこで好みが分かれるのも惜しいところだ。実際、結構のほほんとしていて、見ていると癒されるんですけど(笑)。
そんな惜しいところもあるが、ゲーム自体の出来は上質。昔ながらのRPGらしさと斬新なシステムが融合した、意欲作というに相応しい仕上がりとなっている。美しくも汚い世界観も大変素敵で、パッケージのコピーの通り、愛とか、勇気とか、感動とか、忘れたものを思い出させてくれる、この『オプーナ』。Wiiユーザーならば是非、遊んでみて頂きたい傑作RPGだ。昨今の大作系RPGでは決して味わえない、懐かしい味がここにある。お薦めです。
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