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≫NO MORE HEROS 2 DEATHPARATE STRAGULLE(ノーモア★ヒーローズ2 デスパレート・ストラグル)
■発売元 マーベラスエンターテインメント(現:マーベラス)
■開発元 グラスホッパー・マニファクチャ
■ジャンル 殺し屋アクションアドベンチャー
■CERO D(17歳以上対象) ※過度の暴力、出血、犯罪、性描写あり
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 10個(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク対応、クラシックコントローラ対応
■総説明書ページ数 30ページ
■推定クリア時間 7〜8時間(エンディング目的)、20〜35時間(完全攻略目的)
かつて、全米殺し屋ランキングのトップに君臨した男、トラヴィス・タッチダウン。
あれから3年。今の彼は三十路を迎え、ランクも51位までに転落してしまっていた。

そんな彼の前にある日、兄の復讐を誓う一人の殺し屋が立ち塞がった。サンタデストロイに120年振りの雪が舞い散る中、トラヴィスは彼を倒すのだが、それはあの死闘と復讐劇の開幕を告げるものに過ぎなかった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆作業的な要素を取り除き、アクションゲームとしてのテンポの良さに重きを置いたゲームデザイン
◆作業的要素を撤廃した事で、よりスピーディに展開するようになったゲーム本編
◆二刀流追加で、より攻撃の幅が広がった『ビーム・カタナ』による斬撃アクション
◆Wiiリモコン&ヌンチャクならではのレスポンスの良さ、違和感の無い割り当てが光る、前作譲りの快適な操作性
◆往年の名作をモチーフとしたパロディと異様に凝った作り込みが異彩を放つ、8bitスタイルのアルバイト専用ミニゲーム
◆トラヴィスとは異なるアクションと操作の楽しさに秀でた、二人の新しい操作キャラクター
◆元のイラストの雰囲気がより強調され、大幅にクオリティが底上げされたグラフィック
◆ボーカル付きの曲増加など、よりお洒落な雰囲気が強化された音楽
◆相変わらず、正統派から珍妙なものまでバリエーション豊かなランカー戦
◆ランカー撃破時に大きく表示される『死亡』の文字など、おバカでスタイリッシュなノリが強化されたエフェクト演出
◆システム、演出、音楽、難易度設定とツッコミどころ満載のおまけシューティングゲーム『ピザールジェリー5』
◆あまりにも酷い(※褒めてます)説明書の表紙(真相は自分の目でお確かめを)

--- Bad Point ---
◆雑魚敵との戦闘が中心になり、素っ気無くなってしまったランカー戦の道中パート
◆前作以上に融通が効かないカメラワーク(特にミリオンガンマン戦でこの問題が表面化する)
◆一部、システム上の問題で難易度が必要以上に上がってしまっているランカー戦の存在(具体的には先に挙げたミリオンガンマン、竜二との戦闘)
◆ストーリーの進行に応じた交代方式で自由度が無く、一人に至っては僅かしか出番が無いなど、作りの荒さと出し惜しみっぷりが垣間見える二人の操作キャラクター
◆復讐劇故の淡々とした展開とランカー達の絡みの薄さが残念なストーリー
◆ストーリーとの絡みの薄さもあり、イマイチ存在感に欠けるランカー達
◆テンポ重視で短くなった挙句、充実感も薄れたボリューム(やり込み要素もイマイチ)
◆1プレイの時間が長く、テンポの悪さが如何ともし難いアルバイト専用ミニゲーム
◆操作のぎこちなさ、時間の長さがタマにキズなトレーニング専用ミニゲーム
◆必然性を感じないクラシックコントローラへの対応
▼Review ≪Last Update : 7/28/2013≫
男同士の戦いに言葉は要らない。

…でも、彼は何者だったんでしょう。


Wiiリモコンとヌンチャクの特性を活かした爽快な斬撃アクション、日常と非日常を交えた奇抜なゲームデザインとストーリーで国内外で話題を呼んだ怪作、『NO MORE HEROS(ノーモア★ヒーローズ)』の続編。前作同様、開発はグラスホッパー・マニファクチュア。エグゼクティブディレクター、シナリオは同社CEOである、須田剛一氏が担当。

快適さを追求した余り、前作の魅力まで削ぎ落としてしまった残念な続編だ。

ゲーム内容は前作と同じ。三人称視点で展開する3Dアクションアドベンチャーで、冴えないオタクの殺し屋、トラヴィス・タッチダウンを操作し、『全米殺し屋ランキング』の頂点を目指すというものである。システム周りも『ビーム・カタナ』による斬撃アクション、Wiiリモコンとヌンチャクを使った独自の操作性などは前作より継承。一方で、本編の構成は大幅に変更。基本的な内容こそ、全米殺し屋ランキングの1位を目指す為、各順位に君臨する『ランカー』達との戦い(ランキング戦)に挑むと、前作と一緒なのだが、この一連の流れが新しくなっている。
まず第一に参加する為の資金を払う必要が無くなった。無料で参加できるようになったのだ。一応、お金のアイテムはあるほか、それを溜めるのに最適な『アルバイト』のミニゲームも前作同様に用意されているのだが、今回の使い道は装備品及びトラヴィス自身の強化のみに絞られ、それ以外での使い道は無くなっている。これにより、何度もアルバイトを繰り返し、お金を溜めていくという作業感が大幅に緩和。テンポ良く、本編を進めて行けるようになった。
更に第二として、前作にあった『サンタデストロイの街』が消滅。…と言っても、某ラクーンシティみたいに丸ごと無くなった訳ではない。街を歩くパートそのものが無くなった。歩けるのはモーテルのトラヴィスの部屋だけになり、街にある施設はモーテルから出た後に表示されるメニューから選択し、移動する仕組みへと改められたのである。いわば、前作の街とモーテルの仕様が逆になった格好だ。同様にランキング戦やアルバイトなども全て、メニューから選ぶ事で、即座に目的地へと移動する仕組みに改められている。その為、前作のようにバイクで街中を駆け巡る事はできない。広大な街中を自由に動き回れる点に魅入られた方にとっては残念な変更だが、このような簡易的な作りにした事で、ゲームテンポは大幅に向上。長い道のりを辿る必要もなく、ランキング戦に集中できる作りになった。
このように今作はアクションアドベンチャーの色を徹底して薄くする処置が施されている。それ故にか、今回は一本道のアクションゲームとしての色が濃く、順番にステージをクリアしていく、何処となく古き良きアクションゲームを髣髴とさせるゲームデザインを特徴としている。一応、トラヴィスの強化、装備品の変更と言ったそれらしい要素もあるにはあるのだが、メニューを選んで進めていくその性質上、手応えは薄め。前作のアクションアドベンチャーらしさを再び求めるプレイヤーにとっては、かなり賛否の分かれる内容になっている。
また、アルバイトやトラヴィスのアクションと言った部分にも大きな変更が加えられている。『アルバイト』に関しては、既に解説済みのお金の使い道以外にも一つ、大きな変更点がある。それは、全てのゲームが8bitのファミコンゲーム風になったこと。約54色のドット絵で描かれた、『レトロゲーム』になってしまっているのだ。前作の『芝刈り』、『猫探し』と言った見た目の珍妙さ、Wiiリモコンのモーションセンサーを活かした操作性が特徴のゲームは一つもなし。全てがボタン操作で行うファミコン風のゲームと、独自色の薄れたラインナップになっている。とは言え、ゲームの方は『マッ●ラ●ダー』っぽいレースゲーム、『ボ●バーマン』に近い画面構成が特徴のアクションゲームなど、(いい意味で)イカれたノリはそのまま。何気にゲーム単体のボリュームも充実しており、意外とやり込み甲斐抜群なのも見逃せないところだ。
ちなみに、トレーニング用ミニゲームもファミコン風になっている。これも操作がボタン限定であるなど、独自色が薄れてはいるが見た目のインパクトは十分。別世界にも程がある構図には、思わずニヤついてしまうかもしれない。
後者のアクションも、基本は前作と一緒だが、新たに『二刀流』が選べるようになって攻撃バリエーションが増え、より多彩な戦術を駆使できるようになっている。そして更なる新要素として、今作ではトラヴィス以外のプレイヤーキャラクターで前作に登場したシノブ、ヘンリーの二人の操作も可能に。とは言え、ストーリーの流れに応じて切り替わる仕組みな為、自由に選択可能という訳ではない。なので縛りが強いのだが、その分、共にトラヴィスでは体験できない爽快なアクションが楽しめるキャラクターに完成されている。また、彼ら専用のランカー戦もあるほか、中には突飛な面子も居たりするなど、随所にプレイヤーの笑いを誘う試みが施されている点も必見だ。これは、トラヴィスの方のランカー戦にも言える事だが。
他にも、アクション周りではビームカタナの切り替えが可能になったと言った細かな変更点がある。また、幾つかのランキング戦を攻略する事で登場する『復讐ミッション』なるサブシナリオ的なものが追加されるなど、一本道の色が濃くなった本編を補う要素もあり、前作とは異なるアクションゲームとしての展開の変化を描いている点も見逃せない。
全体的に前作で冗長と感じ易い部分を削ぎ落とした続編と言った具合で、アクションアドベンチャー的な密度は薄くなってしまったが、その分、テンポの向上など、気持ちよさに対するこだわりが炸裂した内容に仕上げられている。ある意味、前作のアクション部分を突き詰めたかのような作り。潔さとスピード感が際立ったノーモアヒーローズとなっている。

しかし、アクション部分に特化した事が、逆にノーモアヒーローズというゲームをより薄味なものへと変貌させてしまった。それこそが今作最大の欠点。テンポを重視し過ぎた結果、今作は前作のような濃いゲーム体験が味わえない内容になってしまったのである。
サンタデストロイの街を歩くパート、資金集めを取り除いた判断自体は決して悪いものではない。実際、これらが取り除かれたおかげで本編最大の盛り上がり所、ランキング戦を集中的に楽しめるようになった。資金稼ぎが面倒臭い、街が広くて探索に時間がかかると言った点は前作の欠点でもあったので、それを改善する事自体は大きな評価に値する部分だ。
だが、取り除くという事自体が拙かった。そのようにした事で、ゲーム全体に同じ事を繰り返しで遊ぶという単調さが際立ち、味気なさが一層濃くなってしまったのである。 その為、今回は本編の展開に淡々とした予定調和的なイメージが強まっただけでなく、欠点はあれど、他に無い個性を出していた要素が無くなった事で、普通の一本道のアクションゲームとしての作りが際立ってしまっている。しかも、これだけならまだしも、今作は道中の構成まで素っ気無い。前作は途中でミニゲームが挟まれたり、姿の見えない謎の敵を追跡するなど、色々と小ネタが仕込まれており、プレイヤーを飽きさせない構成になっていたのだが、今回はひたすら雑魚敵を倒しまくるだけ。意表を付く展開も何も無い、面白味皆無の構成になってしまっているのである。一応、とあるランカー戦の道中は突飛な構成になっていたりもするのだが、それもごく一部だけという始末。色々楽しませてくれた前作の道中を知るプレイヤーにしてみれば、手抜きと見られても仕方が無い酷い仕上がりになっている。操作キャラクターを変更しての展開など、全く工夫が成されていない訳ではないのだが、それにしてもこの味気なさは酷いと言わざるを得ない。只でさえ、本編が淡々とした展開になってしまっているだけに尚更だ。アルバイトなどによる資金稼ぎの必要がなくなり、起伏を付ける部分がランカー戦の道中に限定された以上、そこにこだわるのが普通であるだろうに、何故、やらなかったのか。本当、前作の出来の素晴らしさを知る人間からしてみれば、謎としか言い様がない。基本がこういう感じな為、中盤以降になると段々と飽きが出始めるのも、アクションゲームとしては致命的だ。前作のノリを継承していれば、ここまで問題のある構成には成らずに済んでいたのに、どうしてこうなってしまったのか?それほどまでに今回のレベルデザインの完成度の低さは、悪い意味で群を抜いたものになってしまっている。
前作で多くのプレイヤーに強烈な印象を植え付けたランカー達にしても、今回はイマイチ。というのも、相手ランカー単体の個性が弱い上、前作のようにストーリー本編に強く関連してこない捨て駒ランカーが多い為、存在感が薄い。戦闘自体も巨大ロボット同士で、ナントカサーカスな放物線が描かれまくる戦闘、バイクに搭乗した状態での対決など、非常にユニークなものもあるのだが、残る大半は普通の真剣勝負でワンパターン気味。次はどんな戦闘なのだろうというプレイヤーの期待を悉く裏切る面子となってしまっている。ランカーの中にはストーリーの描写次第では印象に残るキャラクターになっていた者も居るだけに、この浅い描写と戦闘における個性付けの味気なさは勿体無い。逆にそういう捨て駒だらけというのが、復讐をテーマとした今作のストーリーらしいとも言えるのだが、結果的にそのらしさ以上に面白味のなさが上回ってしまっているのだからフォローしようにも難しい。
更にシノブ、ヘンリーの二人にしても操作できるのは一部のランカー戦限定で、全編に渡って使えたり、或いはフリープレイでクリア済みのランカー戦を彼らで挑むという事もできないので、宝の持ち腐れ感が激しい。特にヘンリーに至っては、操作できる場面がビックリするほど少ないのもあり、完全に空気。もっと活躍させても良かったのではないだろうか?
他にアルバイトのゲームにしてもフィールドを歩き回る必要もなく、直にプレイできるようになったのは良い改善点ではあるが、肝心のゲーム自体が長めで、稼ぎという本来の目的との相性の悪さを発揮してしまっている。一つ一つのゲームの作りは非常に凝っているのだが、どうにも力の加減を入れ違えた感が強いのが気になるところだ。
アクションゲームとしてのテンポを追求する姿勢は評価できるが、その為に奥行きを加える部分まで削るのはさすがに褒められたものではない。街を削除するのは良いとして、ランカー戦の道中はもっとこだわった作りにして良かったのではないだろうか。レベルデザインの面白さは前作の大きな見所にして、特に光っていた部分であっただけに、それを一切引き継がず、単調な作りに変えてしまったのは残念な限りだ。まさに全てにおいて、削る加減を間違えた続編とはこの事か。快適性は確かに増したのに、逆にゲーム的な魅力は低下。世にも珍しい劣化を遂げた内容になってしまっている。

操作性に関しても、基本は前作準拠で良好なのだが、今回から新たに追加されたクラシックコントローラによる操作の存在意義自体が分からない。基本のヌンチャク&リモコン操作が非常に良い出来なのに、無理に対応させなくても良かったのではないだろうか?
難易度も前作少し引き上げられているが、倒し方が厄介なランカーが少し増えているのが少し引っ掛かる。
ボリュームも前作よりも少なくなり、エンディングを目指すだけならたったの10時間弱で攻略可能。テンポを重視した弊害が現れている。しかも、レベルデザインの甘さもあって充実感もいま一つ。やり込み要素周りも作業感が強くなっている為、イマイチ極める気力が湧き難い仕上がりになってしまっているのが残念でならない。
対し、グラフィックは前作よりも綺麗に。特にキャラクターモデル周りにおいて、その進化ぶりを実感する事ができる。また、音楽は前作以上に印象深い楽曲が盛り沢山。特にボーカル付きの曲の出来は絶品の一言。これの為だけでも今作をプレイする価値はあると言ってもいいほどだ。また、本編とは別に用意されたおまけシューティングゲーム『ピザールジェリー5』の音楽も要注目。ごく僅かではあるが、あの歌姫がしれっと登場します。

演出周りも前作に負けず劣らずに派手でスタイリッシュ。それでいて、少しおバカ。特にランカーを倒した後の「死亡」の文字演出は必見。また、エンディングにおける、80年代な雰囲気満点の展開も同じく必見だ。
一方、ストーリーは復讐劇故に展開が淡々としているほか、ランカーとのやり取りが少ないのもあり、印象に残り難い内容になってしまっている。前作のぶっ飛んだ展開と台詞回しに魅了された方にとって、かなり刺激に欠ける内容となので、過度な期待はしない方が良いだろう。
ビームカタナによるアクションは爽快だし、作業的な要素を取っ払った本編の展開はスピーディでテンポが良く、サクサク進めていけるのが気持ち良い。しかし、密度とインパクトに関しては非常に薄く、(個人差はあるが)最後までプレイしても何も印象の残らない内容になってしまっているのが何とももどかしい。前作の荒削りながらもインパクト抜群の内容に魅了された方ならば、間違いなく奈落の底に落とされるかのようなショックを受けること請け合いの今作。
駄作ではないが、あまりお薦めできない一品である。お薦め度合いで言えば、前作が勝る。こちらは後付けエピソードを語った作品として、気になるのならプレイする程度に抑えておいた方がいいかもしれない。
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