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≫METROID Other M(メトロイド アザーエム)
■発売元 任天堂
■開発元 Team NINJA(コーエーテクモゲームス)
■ジャンル アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力描写あり
■定価 6800円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 二層ディスク
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、30〜40時間(完全攻略目的)
惑星ゼーベス消滅から数ヵ月後。スターシップで航行中だったフリーのバウンティハンター(賞金稼ぎ)、サムス・アランは、あるシグナルを偶然にもキャッチ。
そのシグナルは通称、『Baby's Cry(ベイビーズクライ)』と呼ばれる救難信号だった。
辺境宙域が発信源だと突き止めたサムスは、最初からそう決められていたかのようにシップの進路を変更する。

そこで彼女を待ち受けているものとは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆歴代の2Dアクションに3D要素を取り入れた、懐かしくて新しいゲームデザイン
◆ファミコンのゲームを髣髴とさせる単純明快さと動きの多彩さで魅せる操作性
◆レスポンスが良く、動かす楽しさと繰り出す爽快感に秀でたサムスのアクション
◆十字キーを素早く2回入力するだけで良い単純さとスタイリッシュな動きが印象的な回避アクション『センスムーブ』
◆同じく操作の単純明快さとスタイリッシュな動きが印象深い攻撃アクション『オーバーブラスト』と『リーサルストライク』
◆派手なアクションとカット割りで魅せる、迫力満点・緊張感満点のボス戦
◆Wiiとしては最高クラスとも言える美麗で迫力満点のグラフィック
◆スピード感溢れるゲーム展開を演出する、早過ぎるロード時間(待ち時間ほぼ無し)
◆ゲームとのミスマッチを生じさせない挿入タイミング、CGの統一化など、こだわりの作り込みが施されたムービーデモ
◆素早いロード時間とムービーデモにおける工夫の数々がもたらした、ゲームパートとムービーパートの自然な融合
◆少しのミスが命取りになる、辛口でやり応えのある難易度設定
◆長過ぎず短過ぎず、それでいてクリア後はやり込み盛り沢山の適切な総計ボリューム
◆ジャングル、溶岩地帯、雪原などメトロイドシリーズらしい多彩なエリアロケーション
◆アートワーク鑑賞、ムービー鑑賞など充実した特典要素

--- Bad Point ---
◆ストーリー主導による完全一本道構成(自由度皆無で探索要素も薄い)
◆強制系イベントのウザさ(サーチングビューによる対象物探し、移動が強制的に遅くなるエリア。いずれも楽しくない)
◆サーチングビューにしないと撃てない為、使い勝手が悪過ぎるミサイル攻撃
◆誰でも遊べる事を売りにしながら本編は難所だらけと、矛盾に満ちた難易度設定
◆全く使えない緊急回復システム(体力が30以下になると解禁されるという条件が高い難易度設定とミスマッチしてしまっており、システムの存在意義を意味ないものにしてしまっている)
◆環境音主体で全く印象に残らない音楽
◆内容が濃そうで意外と濃くない、印象の薄いストーリー
◆理不尽で不親切なクイックタイムイベント(ガイド表示がなく、初見殺しになっている)
▼Review ≪Last Update : 2/5/2012≫
”ファミコン”という言葉に隠された大きな罠。

あの時代のゲームの難易度はどういうものでした…?


任天堂としては異質のダークな世界観、マップ探索主体の奥深い内容で好評を博したメトロイドシリーズの最新作。『NINJA GAIDEN(ニンジャガイデン)』シリーズなど、ハードコアなアクションゲームを手掛けてきたテクモ(現:コーエーテクモゲームス)の技術者集団『Team NINJA(チームニンジャ)』とのコラボレーションによって誕生した作品でもある。

リモコン一本で本格アクション。
しかし、メトロイドとしては違和感のある部分が多い佳作だ。

ゲーム内容はシリーズ伝統のフィールド探索を主としたアクションゲーム。主人公のサムス・アランを操作し、本編の舞台となる『ボトルシップ』内のエリアを探索し、時には敵との戦闘を乗り越えながらストーリーを進めていくというものだ。
グラフィックはゲームキューブ、Wiiで発売されたメトロイドプライムシリーズと同様に3DCGで描かれたものを起用。しかし、プライムとは異なり、3DCGでも基本のゲーム性は横スクロールタイプ。視点構成も一人称ではなく、プレイヤーキャラクターが表示された三人称を起用している。要はファミコンディスクシステムの初代『メトロイド』などの横スクロール型メトロイドシリーズと同じ。シリーズの系譜に連なる、正当進化系と言うべき作りになっている。3DCGを活かす目的で新たに手前や奥に進む奥行きの概念も盛り込まれているが、基本が2Dなのでそれほど細かい操作は求められない。なので、初代『メトロイド』などのシリーズとほぼ同じ感覚で遊ぶ事ができる。プライムシリーズの主観視点に慣れなかった方にとっては、まさに理想の進化を遂げたメトロイドと言った感じだ。ゲーム性が2Dという事でアクション自体の敷居も低く、取っ付き易さも上々。その為、シリーズ初挑戦の方も気軽に触れる設計となっている。
また、基本システムはシリーズ第四作目の『メトロイドフュージョン』を踏襲。いわゆるストーリー主導型で、司令の指示を受けながら目的地を目指し、マップを探索していくのを基本としている。その為、自由度は低め。更に今作はこの路線をより露骨に出す為か、マップも一本道のカラーを強調しており、予め決められたルートを真っ直ぐ進む場面が多い。
これにより、探索のゲーム性に苦手意識があった方でも、その魅力が味わえるようになったほか、全体のテンポが大幅に向上。しかしその反面、マップを歩き回る楽しさは薄れ、「メトロイドと言えば探索」と思うプレイヤーにとっては強い違和感を抱かせるゲームデザインとなってしまっている。元々、『メトロイドフュージョン』のシステムを踏襲しているほか、ストーリー的にもフュージョンの前日談なので、こうなる理由は本編で腑に落ちる説明が成されている。だが、広大なマップを歩き回る楽しさを求めている方には正直、肩透かしを喰らう作りなのは否めない。ゲーム性は伝統の2Dであれど、その中身は結構、異端な仕上がりだ。
加えて今作は操作性とアクションも異端。操作は何と、Wiiリモコン一本だけで行う、驚きの簡単設計となっている。ファミコンのアクションゲームとほとんと同じ操作で楽しめてしまうのである。それでいて、アクションがやたら多彩。敵の攻撃を華麗且つ確実に回避する『センスムーブ』、敵に大ダメージを叩き込む『オーバーブラスト』、気絶した敵に止めの一撃を加える『リーサルストライク』など、それまでのメトロイドには無かったスタイリッシュなアクションが繰り出せる。しかも、これらのアクションは全て十字キー、或いは十字キーと1ボタンの組み合わせだけで発動する仕様。何か特別な操作が求められるイメージがありながら、少しだけボタンを押せば直に各アクションが出せてしまうのだ。スタイリッシュなアクション自体、メトロイドとしては異例なのに、それがファミコン的な操作で出せてしまうのは実に衝撃的。無論、パワーアップで習得されるアクションの数々も、そのほとんどがワンボタンの簡単操作で出せるこだわりっぷりだ。何かと多彩なアクションを盛り込むに当たり、操作を複雑にしがちな風潮で、徹底してファミコン操作にこだわったこの作りは実に衝撃的。各種アクションもメトロイドらしからぬスタイリッシュな動きは見ているだけでも楽しく、シリーズファンも新鮮な手応えと爽快感が堪能できる。他にもリモコンを縦持ちにする事で、プライムシリーズのような主観視点になり、画面内を調べる『サーチングビュー』に切り替わるなど、ユニークなアクションが収録されている。
このように基本的なゲーム性自体は、初代からの系譜に連なる伝統の2D。しかし、露骨なまでにストーリー主導型であったり、アクションもスタイリッシュと今風。だけども操作はファミコンのゲームの如く単純明快で、何処と無く古い。
まさに最新技術を使ったファミコンゲームとはこの事。シンプルに遊べる事の楽しさと、次世代のアクションの楽しさの双方を兼ね備えた、非常に野心的な試みが満載の内容なのである。メトロイドとしても総じて意欲的且つ、挑戦的な新要素が満載。プライムとは別の方向性を目指した、新世代型メトロイドとも言うべき仕上がりとなっている。

そして今作最大の魅力は、Wiiリモコン一本で豊富なアクションを手軽に繰り出せる挑戦的な操作性に尽きる。そもそも十字キーと二つのボタンという限られた操作で、スタイリッシュなアクションを簡単に、それでいて気持ちよく繰り出せるように仕上げられた作りが実に衝撃的。あらゆるボタンを使わせようとする昨今のアクションゲームに真っ向から逆らうその設計からは、簡単操作でも本格的で気持ち良いアクションは作れるんだ、という熱い思いが伝わってくる。
特に攻撃、回避アクションの設計と調整には思わず舌を巻く。今作は最初に解説したようにアクションゲームとしては2Dだが、奥行きの概念がある。その為、360度動き回れるフィールドも存在し、そこで敵と戦う場面も幾つかある。そういうフィールドでの戦闘となると、こう意識してしまうはずだ。敵に狙いを定めたり、回避時にはどちらに動くかを慎重に考えなければならない、と。ところが、今作ではそれを一切考えなくて良い。というのも、自動で行ってくれる。攻撃ならば近い敵に勝手に狙いを合わせてくれたり、回避ならば十字キー二回押し(連打)で発動する『センスムーブ』を発動すれば方向に関係なく、勝手に回避してくれるのだ。その為、直感の赴くまま、敵との戦闘に集中できるのである。どちらのアクションも、反射神経とセンスが求められそうに見えて、実は直感でどうにかなる驚きの調整。シンプルに各アクションの楽しさを感じ取って欲しいと言っているかの如き細かな配慮には、スタッフのアクションゲームに対する強い思い入れと愛が伝わってくる。それらの配慮により、奥行きがありながら2Dのゲーム性をきちんと確立しているのも見事。その辺も、実は3Dのゲームってこんなに楽しいという思いを伝えたいスタッフの努力が伝わってくる次第だ。
『センスムーブ』を始めとする、スタイリッシュなアクションがもたらす爽快な手応えもまた、キャラクターが動く面白さ、気持ちよさを色んな人に感じてもらいたいというこだわりが発揮されている。いずれも十字キー、或いは十字キーとボタンの組み合わせで簡単に繰り出せるのも秀逸。更に位置関係などを気にせずアクションに浸れるので爽快感も抜群だ。動かす度に派手な反応が返ってくるその楽しさは、アクションゲームが好きな方ならツボになること請け合い。ボタンの少ないコントローラでも、ド派手なアクションは作れると見せ付けるこのシステムは、体験する価値十分ありだ。
しかし、操作性とアクションがこれほど魅力的でありながら、難易度設定を大きく間違えている事に関してはとても擁護できない。実を言うと今作はメトロイド史上、1,2を争う難しさ。全体的に敵の攻撃が苛烈で、先の『センスムーブ』を使わないとまともに戦うのも厳しい調整が成されている。その為、のんびりプレイしていると瞬く間に殺される事も。2Dのゲーム性で、操作は基本十字キーと2ボタンと、全体的に敷居は低いのにも関わらず、バランスは何故かそれに著しく反したものになってしまっているのだ。加えて今作、何と敵を倒しても体力回復アイテムが出ない。あろう事か、今回はセーブルームでしか行えないのである。その為、迂闊にダメージを喰らう事も許されず。おまけに一発のダメージもやたら大きく、必要以上に喰らい過ぎると致命傷にもなりかねないほどだ。幸いにして、大抵の攻撃はセンスムーブで防げるが、だとしてもこれは褒められたものではない。操作とゲーム性で敷居の低さを演出しながら、本編はプレイヤーを殺しにかかる調整にするというのはあまりに矛盾し過ぎでないだろうか。念の為、こういう簡単操作でも難しいファミコンのアクションゲームは幾つかあるので、別に難しくする事が悪いという訳ではない。だが、誰でも遊べる事を売りにしてこの調整は無いだろう。
申し訳ないが、この調整を行った為に今作は失敗していると言わざるを得ない。また、メトロイドとしても、ストーリー前提のゲームデザインの自己主張が激し過ぎるのも褒められない。特にそのストーリーの都合で強制的に移動を遅くさせられるシーン、同じく強制的にサーチングビューに切り替わり、対象物を見つけるシーンの二つは面白くないし、要らないにも程がある。しかも、いずれもアクションゲームの面白さを損ねているのだから多いに問題ありだ。
ストーリー前提のゲームデザインを成してた『メトロイドフュージョン』も、窮屈な所はあったが、まだ探索の魅力は活きていたし、強制的なシーンも上手く遊びに繋げていた。しかし、今作は必要以上にストーリーを描く事にこだわり過ぎた。それが結果的にゲームとしての窮屈さを高めているのは残念な限りだ。
操作性とアクションの完成度は総じて高い。サーチングビューでないとミサイルが撃てないなど、不便な点もありはするが、リモコン一本で快適で本格的なアクションを気持ちよく楽しめるように仕立て上げた手腕は評価に値する。
だが、難易度調整とゲームデザインを誤り、それらが結果的に魅力を大幅に損ねてしまっているのは本当に残念な話だ。探索の窮屈さはまだしも、せめて難易度調整ぐらいは甘えられなかったのだろうか。基本となるアクションやゲーム性がよく出来ているだけに勿体無い限りである。

ストーリーもイマイチと言わざるを得ない。正直、語ろうと思っても何も頭に浮かんでくらい印象に残らない。一応、シリーズで初めてサムスが音声付きで喋るほか、彼女の過去が明かされるなど見所もあるのだが、そこにしても過去作との露骨な矛盾があり、突っ込み所満載。終盤の展開に至っては脱力モノも良い所である。所々に盛り上げられそうな要素は揃っていたのに、それが全く活かされてなかったのは何故なのか。いずれにせよ、ほぼ空気も同然になっているのは何とも言い難い限りである。今作のストーリーを描いた坂本賀勇氏は、『メトロイドフュージョン』で非常に印象深いストーリーを書いていたのに、何があったのか。
その他、ボリュームに関しては長過ぎず短過ぎずの丁度良い量。シリーズで初めてクリア後のマップが用意されているなど、ユニークなやり込み要素も取り入れられているので、遊び甲斐はある。ロードもほとんど無し。セーブも迅速に行われるので、ゲームテンポの良さに関しては、シリーズの中でも随一と言えるだろう。
グラフィックもWiiとは思えないほど質が高い。対照的に音楽は環境音に徹してしまっていて、全く印象に残らないものになってしまっている。また、メトロイドシリーズと言ったら、アイテムを手に入れた際に流れるあの音楽(ジングル)だが、何と今作にはない。無音なのである。その為、アイテムを手に入れた感動もこれまでのシリーズ以上に弱い。ストーリー設定の都合によるのかもしれないが、これはシリーズファンにとっては許し難い要素と言っても不思議ではないだろう。

演出周りもシリーズお馴染みのアイテム入手時のジングルがストーリー設定の都合で排除され、劣化してしまっている。しかしその分、アクション全般はより派手なものになり、見るだけでも楽しい物になっている。更に通常のゲームパートからプリレンダのムービーへとスムーズに切り替わる演出はなかなかの迫力。グラフィックの質もあえてゲームと同じに合わせるなど、細かい気配りが成されている所にも驚きだ。
それだけにゲーム面での粗が多いのは残念。純粋にアクションゲームとしての出来は水準以上。取っ付き易い操作性に簡単操作で繰り出せるスタイリッシュなアクションなど、侮り難き魅力が満載の内容に仕上げられている。
だが、難易度設定を始めとする褒められない欠点が存在する為、安易にお薦めできる作品ではない。シリーズ初心者も遊べるほど敷居は低いものの、どちらかというとアクションゲーム好き向け。リモコン一本で遊べるアクションゲームを求めている方にお薦めの一本だ。メトロイドシリーズが好きな方は興味があれば、と言った程度。かなり異色の内容なので、やるならば探索型アクションとしてのメトロイドを求めない気持ちで挑みましょう。きっと予想以上に楽しめるはず。
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