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≫MAD WORLD(マッドワールド)
■発売元 スパイク
■開発元 プラチナゲームズ
■ジャンル アクション
■CERO Z(18歳以上のみ対象)※過度の暴力、出血描写などあり
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 4つ(※2ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク専用
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 6〜7時間(エンディング目的)、15〜20時間(完全攻略目的)
巨大都市ヴァラガン・シティ中心に位置するジェファーソン島。
ある日、この島と年を繋ぐ橋や高速道路、鉄道などが一斉に爆破される事件が発生。河口に浮かぶこの島は爆破によってライフラインの全てを失い、外界から完全に遮断される格好となった。

政府は非常事態を宣言し、この事件をテロと認定。
市民の救出とテロリストの捕獲する為、軍を派遣するが各所で痛烈な反撃を受ける。
自らを『デスウォッチ』と名乗るテロリストは、クリスマスまでの5日間、島を占拠し、その間、市民の脱出及び市民以外の人間が島へ接近する事を禁ずると宣言。また核兵器を始めとする大量破壊兵器の保有も告げ、ルールを破った際、即時にそれらを扱うとも宣言した。
一方、ジェファーソン島では残された市民に対し、ゲームの開始が告げられた。それは命を賭けたサバイバルゲーム。隣人が殺し合い、最後にその頂点に立った者に莫大な報奨金が支払われる史上最凶のエンターテインメントショーの開幕だった。主催者たるテロリストはショーを盛り上げる為、開幕と同時に島全体に死のウィルスを散布。島は恐怖の悲鳴を挙げながら逃げ惑う市民と殺人鬼『キルシーカー』の群れで混乱状態に陥る。

そして三日後の深夜。
混迷を極めたジェファーソン島に一人の男が姿を現す。男の名はジャック。鈍い輝きを放つチェーンソウを装着した彼は、鋭い眼差しを周囲に向け、ゆっくりと街に足を踏み入れた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆敵をなるべく派手に殺して高得点を稼いでいく、不謹慎であまりに刺激的なゲームシステム(基本はステージクリア型と作り自体はシンプルで取っ付き易い)
◆過激を通り越しておバカの域すら達してる、殺害アクションことフィニッシュアクション
◆基本はスコア稼ぎ主体ながら、レースやベルトスクロール型などユニークな味付けが成されてるステージ
◆Wiiならではのモーションセンサーを適度に活かした、肉体的に熱過ぎる操作性
◆リモコンを何も考えず振りまくる面白さが満載のクイック・タイム・イベント
◆多種多様な攻撃パターンと肉体的に熱いQTEで魅せに魅せるボス戦
◆ハード過ぎる世界観に反して、意外と温めに調整されたゲームバランス
◆敵をあり得ない方法で殺害する遊び(?)が満載のミニゲーム『ブラッドバスチャレンジ』
◆特定のアクションを決めると画面が切り替わるなど、凝った作り込みの成された演出
◆白と黒を基調とした、他に類を見ない独自のセンスが炸裂したグラフィック
◆漫画っぽい作りで、良い意味でリアルさに欠ける残虐描写(意外に気持ち悪くない)
◆白黒のグラフィックと各ステージの展開にマッチした、ボーカル曲主体の音楽
◆確かな手応えと動かす楽しさを引き立てる質感満点の効果音(チェーンソウで攻撃を行った際、リモコンのスピーカーからそのエンジン音が鳴り響くと言ったこだわりも)
◆粋な台詞回し、映画的な展開が光るシナリオ(オウガシリーズの松野泰巳氏が執筆)
◆コミック風のカット割りが印象的なムービーデモ
◆ブラックバロン様

--- Bad Point ---
◆スコア稼ぎ主体ゆえ、作業的な展開に陥り易いゲームシステム
◆自由度が低く、キーアサインに難のあるカメラ操作(Cボタンによる後方視点調整機能しか搭載されてない)
◆Cボタン長押しの操作が煩わしいロックオンシステム
◆一部、狭過ぎて作業感バリバリなステージの存在(特に中華風ステージ)
◆死神の敵が登場するステージの異様な難しさ
◆見た目は独特だが、見難さもも否めないグラフィック(特にムービーの字幕がその弊害をモロに受けている)
◆控え目の総計ボリューム(やり込み要素も乏しい)
◆面白いけど、勢い余るとヌンチャクを引き抜く欠点も併せ持つクイック・タイム・イベント
▼Review ≪Last Update : 8/22/2010≫
「Ladies and Gentlemen、It's Show Time!」

ベイビー、史上最悪のショーの幕開けだ!


海外で先行発売され、凄惨極まりない残虐描写から、国内での販売は絶望的だと思われた、プラチナゲームズ開発の新作3Dアクションゲーム。海外ではセガが販売を担当したが、国内版の販売はスパイクが担当。

あまりに不謹慎、しかし爽快感抜群の怪作アクションゲームだ。

ゲーム内容は、3D視点で展開するステージクリア型アクションゲーム。プレイヤーは主人公のジャックを操り、襲いかかる敵達をあらゆる手段を用いて華麗且つ、過激に殺害。スコアを稼ぎ、ステージ内のランカー(ボス)に挑戦していき、最悪のエンターテインメントショー『デス・ウォッチ』の頂点を目指すというものである。
簡潔にまとめると、スコア稼ぎ主体のアクションゲームと言ったところだ。スコア稼ぎ主体という事で、何処となく作業的な雰囲気が漂うが、それについては否定しない。実際に本編は、本当にコツコツ敵を倒して得点を稼ぐ事に終始する。冒険する面白さとかは皆無なので、その辺に期待してプレイすると、出鼻をくじかれるのは必至である。ただ、そんなスコア稼ぎ主体でありながら、展開が単調にならぬよう、色々と工夫はされている。主にステージ構成だが、各ステージには目標得点というものが複数設定されており、その得点に到達するに応じ、ステージ内のギミックが開放。新たな敵が現れたり、ミニゲームができるようになったりなどの変化が起きていくようになっている。基本的に各ステージの3Dフィールドはそれほど広くなく、意外と早く全区域を周れてしまうのだが、そんな具合にイベントが豊富なので、不思議とパターン化し難い。
また、ステージの種類もただの3Dフィールドばかりであらず。バイクに跨って高速道路を走りながら進むレースゲーム風ステージあり、ベルトスクロール型アクションゲームを思わせるステージありと、個性的なものが用意されている。全体の比率としては、3Dフィールドの方が多いが、そちらの方もステージごとに異なるイベントや仕掛けがきちんと張り巡らされているなど、作り込みはバッチリ。各ステージの最終目標得点に到達すると現れるボス達もユニークな面子ばかりで、プレイヤーを大いに翻弄させる。そんな具合に地味さを払拭しようとする工夫が充実。ゲーム性自体は正直、地味ではあるが、そんなに苦にならず稼ぎに没頭できる、なかなか秀逸なレベルデザインが図られている。そして極め付け…スコアを稼ぐ方法(アクション)にしても、そんなゲーム性に華を咲かせてくれる。というか、高得点を叩き出せる条件というのがあまりに過激。敵を残酷に殺害する…というものなのである。その殺害法というのがまた、尋常でない。道路標識を刺したり、体が砕け散るほど地面に何度も叩き付けたりと…ドン引きするようなものばかり。そんな風に敵を殺せば、…通常のパンチ攻撃などで敵を倒した時以上の高得点が得られるのだ。こんな事を言うのもアレだが、狂ってるとしか言い様がない。だが、今作ではそんな風に敵を殺していかねばならぬのだ…。
しかも殺害法はこれ以外にステージ上の仕掛けを使ったものまである。それもまた電車に轢かせるとか、暖炉やピラニアの水槽に放り込むなど、常軌を逸したものばかり。言うまでもなく、そんな方法で殺害された敵は無残な散り様を見せる。そのあまりにもやり過ぎな死に様は、幾らゲームとは言え可愛そうだろと…人によっては同情の念を抱いてしまうかもしれない。だが、困った事に(?)この無駄に多彩で過激な殺害方法が、スコア稼ぎを盛り上げる。目前の敵をどう過激に殺すか、それを頭の中で組み立て、イメージ通りの殺害ができた時は不謹慎ではあるが、結構、爽快感がある。また、仕掛けを使った殺害方法にしてもステージごとに異なる為、このステージではどんな殺害ができるのかという楽しみに満ちているのも、ちょっとした売り。そのステージならではの魅力を最大限に推し出した、各種トラップの数々は、主たるスコア稼ぎだけでなく各ステージごとの展開を大いに盛り上げてくれる。不謹慎過ぎるのは否定のしようが無い。しかし、こう言った殺害方法が無かったとしたら、今作のゲーム性は極めて地味なものとなり、アクションゲームとしてもいまひとつなものになってたのは事実。スコア稼ぎという作業的な遊びを如何に楽しく、そして盛り上がるものにするか。今作が提示している多彩な殺害方法の数々は、その課題に対する答えと言っても過言では無いだろう。
そんな具合にスコア稼ぎ主体とは言え、ステージ構成から敵の倒し方まで、地味になりがちなゲーム性を盛り上げる工夫が充実。シンプルながらも、他に無い刺激的な味わいと不謹慎さに秀でたアクションゲームとなっている。

そして、そんな今作最大の魅力が、先にも紹介した『フィニッシュアクション』の数々だ。敵を徹底的に痛めつけた後に仕留めるアクションは不謹慎ではあるが、なかなか爽快感があり、且つ見ているだけでも楽しい。
特に殺害方法の多彩さはよく、こんなの考え付いたよなと色んな意味で感心させられる次第だ。道路標識を突き刺したり、地面に叩き付けたりなど、もう発想からして常軌を逸し過ぎてる。そして、良い意味で嘘っぽい。実写の映画であれば、そんな無茶苦茶な死に様など描けるはずがない、それ以上に鑑賞に耐えられんだろ、と言わんばかりの仰々しい敵のリアクションの数々は、まさにゲームという虚構の世界が舞台だからこそ実現したという独特の迫力に秀でている。
また、残酷な表現が多い内容でありながら、グラフィック全般に嫌悪感がほとんどないのも見逃せないところだ。というのも、今作は白と黒を基調とした珍しい描写となっており、人物に背景まで全てが白黒で描かれているのである(但し、出血描写だけには赤や緑等の色が使われている)。基本的に白黒である故、味方から敵も含めた人物の3Dモデルはそんなリアルでなく、漫画っぽさが強め。それに本編では敵の胴体が真っ二つになるゴア表現も沢山あるのだが、その断面図にしても単に赤いだけとシンプルに描かれているので、意外に気持ち悪さは薄い。それでも、本編では容赦なく血が飛び散るので、その辺の描写に耐性が無い人には辛いものがあるが、ゴア表現が沢山あるに関わらず、気持ち悪さがほとんどないのは地味ながら凄いの一言だ。それに人物が漫画っぽいので、その手の描写全般がリアルじゃないのも秀逸。これが仮に内臓まで克明に描いたリアルなグラフィックであったら、プレイ中に感じる嫌悪感は尋常でないレベルに達していただろう。過激な描写の多いゲームではあるが、プレイヤーに嫌悪感だけは与えないように。より精密なグラフィック描写が可能となった昨今、あえてリアルさを追求せず、プレイヤー第一の見易さを優先したスタッフの姿勢には、拍手を送りたいところだ。リアルにすればするほど派手になるという残酷描写の進化過程に、今作は一石を投じたと言っても良いだろう。無茶苦茶な殺害方法の数々で狂った発想を炸裂させ、ゲームプレイ面では配慮を徹底させるそのギャップも、実にユニーク。新たな表現を追及し、ゲームとしての遊び易さを忘れぬその姿勢も、スタッフのゲームに対する愛情の深さを痛感させられる次第だ。
その他、操作性も秀逸な仕上がりだ。アクションゲーム独自の動かすだけでも楽しい感触はそのままに、リモコン&ヌンチャクの操作体系を最大限に活かす工夫が炸裂している。特にフィニッシュアクションはその真骨頂。モーションセンサー独自の強み、振りまくる楽しさと直感的な操作感を余す事無く反映させている。ボス戦などにおけるQTE(クイック・タイム・イベント:ムービーと共に展開する特殊コマンド入力イベント)時の操作とかは身体的な意味も含めて熱い!主人公のジャックとまるで一体化した気分を味わえる。モーションセンサーの活かし方にしても、総じて違和感なくまとめられており、「ここはボタンにすべきだろ」と思ったりする部分が皆無なのも気持ち良い。通常アクション操作も、基本的な攻撃なども含め、自然なキーアサインとなってるのが嬉しいところだ。操作性以外でもステージのロケーション、登場する敵達のデザインや攻撃パターンも練られており、過激なゲーム展開を大いに盛り上げる。それでも一部、作業的になり易い狭いステージがあったりなど、調整不足な所もあるのだが、派手に敵を倒す気持ちよさ、嫌悪感を覚え難い残虐描写、そして違和感の無いWiiらしさを追及した操作性と、個々のクオリティの高さは折り紙付きである。
全体的にコアなゲームではあるが、それでも見た目の派手さや遊び易さを追求した姿勢は素晴らしいの一言。単に不謹慎なゲームと一蹴するのも難しい作り込みの深さは、一見の価値があると言っても不思議ではないだろう。

その他、ゲームバランスも元カプコンのスタッフが作ったアクションゲームでありながら、結構温め。変に人を選ぶ尖った所が皆無なので、気持ち良く遊べるのが嬉しい。勿論、そんな誰でもクリアできるほど温い訳でなく、後半になればそれなりに手応えのある難易度のステージが登場するなど、メリハリはきちんとしている。更にクリア後にはスペシャルな難易度も登場するので、やり込み派向けの対策もバッチリだ。全体のボリュームは正直な所、控え目なのだが、そのようなおまけ、そしてスコアアタックなどの要素は充実。結構、遊び込める内容になっている。特にクリア後の難易度の歯応えは、アクションゲーマーならば確かな満足感を得られるだろう。
また演出周りではバックに流れる音楽も良い出来。音楽は基本的にボーカル曲中心でゲームらしい曲は皆無なのだが、白黒の漫画テイスト溢れるグラフィックに見事にマッチしており、各ステージでの展開を大いに盛り上げてくれる。
ストーリーも秀逸。殺人ショーに突如参加した謎の主人公ジャックの素性、ショーの裏側でうごめく陰謀と支援者達の闇など、映画さながらの魅力的な展開が繰り広げられていく。更に今作のストーリーは、あのシミュレーションRPGの名作『タクティクスオウガ』を手掛けたゲームデザイナー・松野泰巳氏が執筆。松野氏のシナリオと言えば、『タクティクスオウガ』に象徴されるように人の業の深さ描いた展開、そして「ぼくにこの手を汚せというのか」などの松野節と呼ばれる台詞回しが特徴だが、今作は下品で粋な台詞の多い、過去の作品とは異なる作風となっている。だが、人物描写や一部登場人物の台詞にはお馴染みの松野節が炸裂。これまでと作風が違うとは言え、その台詞回しや展開の数々にはファンならばニヤリとしてしまうだろう。このシナリオを楽しむだけでも、今作はプレイする価値がある。

効果音やムービーなどの細かい部分においても、手応えを何よりも大事にする工夫、映画的な魅せ方と言ったセンスが炸裂。パンチ以外の攻撃技であるチェーンソー攻撃でも、発動時にはリモコンからそのエンジン音が発せられるなど、アクションの迫力と爽快感を引き立てるこだわりが凝らされている。
一部のステージでの作業的な展開、独特とは言え多少、見難さも否めないグラフィックなど、もう一押しな部分も散見されるが、完成度はなかなか。如何にも日本のクリエイターが作った「らしさ」に溢れた残虐描写やプレイヤーへの配慮、そして演出周りにストーリーと、細部に渡って丁寧に作り込まれたアクションゲームとなっている。白と黒を基調とした世界で展開される見た事の無い残酷で不謹慎なアクション、独特の演出と、まさに唯一無二の味わいに秀でた今作。
表現が過激ゆえ、18歳以下のプレイヤーは絶対に遊んではダメなゲームである。しかし、それ以上の年齢層でWiiを持ってる人なら是非、プレイしてみて欲しい傑作だ。この独特のアクション性は、まさにWiiでしか味わえぬ面白さと爽快感がある。不謹慎な要素も盛り沢山ではあるが…この面白さ、是非お試しあれ。
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