≫THE LAST STORY(ラストストーリー)
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■発売元 |
任天堂 |
■開発元 |
ミストウォーカー、AQインタラクティブ(現:マーベラス) |
■ジャンル |
ロールプレイング |
■CERO |
B(12歳以上対象) ※暴力、犯罪、セクシャル描写あり |
■定価 |
6800円(税込) |
■公式サイト |
≫こちら ※音が鳴ります |
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▼Information
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■プレイ人数 |
1〜6人 |
■セーブデータ数 |
16個(使用ブロック数:11、SDカードへのコピー不可) |
■その他 |
ヌンチャク対応、クラシックコントローラ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応、両面ジャケット仕様 |
■総説明書ページ数 |
40ページ |
■推定クリア時間 |
22〜25時間(エンディング目的)、40〜50時間(完全攻略目的) |
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戦乱と大地の荒廃に蝕まれる帝国本土をよそに、繁栄を謳歌する島『ルリ島』。
傭兵である青年エルザは、兄貴分クォークが率いる傭兵団と共に新たな仕事を求め、この島へとやってきた。
新たな雇い主は、島の領主、アルガナン伯爵。伯爵の期待に応えられれば、傭兵家業を脱し、憧れである騎士への出世も夢では無い。安定した生活に憧れるエルザにとって、今回の仕事はまたとないチャンスだった。
そんな中、島での最初の任務で訪れた洞窟で、エルザは謎の力を手に入れる…。
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▼Points Check
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--- Good Point ---
◆アクションゲームスタイルながら、仲間との連携や行動の指示など、多彩な戦略が求められてくる斬新な戦闘システム
◆敵をおびき寄せて一網打尽にする、単純ながらも戦略性に富んだ主人公のエルザ専用の特技『ギャザリング』
◆仲間との共闘感を全面に推し出した戦闘バランス(システムの良さを最大限に活かした調整が施されている)
◆緊急回避、TPS風味の射撃など、随所に盛り込まれたRPGらしからぬ行動要素の数々
◆臨場感と緊迫感を演出する要素として、見事に機能しているフルボイスによるリアルタイム方式の会話
◆打撃中心、魔法主体など、長所と短所が明確な設定が異彩を放つ仲間キャラクター達
◆探索以上に敵との戦闘に重きを置いた、アクションゲーム風味のレベルデザイン
◆非常に広大で、生活模様から細部の背景に至るまで丁寧に作り込まれた『ルリの街』
◆見た目が変わるだけでなく、カラーリングまで細かく設定できる、カスタマイズの楽しさに秀でた装備システム
◆RPGとしては異例のオンラインマルチプレイモード(強敵を討伐する協力プレイに対戦が楽しめる)
◆やや短めだが、それなりの充実感と密度に富んだ総計ボリューム(寄り道要素も豊富)
◆ファンタジーの王道を地で行く構成と専門用語を乱用しない分かり易さが秀逸なシナリオ
◆アクションスタイルながら、複雑な操作はほとんど求められない、取っ付き易い操作性
◆Wiiのハード性能をフル活用した美麗なグラフィック(背景、人物まで非常に質が高い)
◆雰囲気重視だが、メインテーマに戦闘曲など印象深い楽曲も揃った音楽
◆派手な魔法エフェクトに美麗なグラフィックを活かしたムービーデモなど、凝った作り込みが光る演出全般
--- Bad Point ---
◆ストーリー主導で、自由にフィールドを歩き回る冒険の楽しさは皆無に等しい本編の構成(その辺のものを求めるプレイヤーなら間違いなく否定的な感想を抱く)
◆小さいものから長いものまで、少し量が多過ぎる感が否めないムービーデモ
◆ストーリーに縛られる展開が多い所為で、ゆっくり歩き回る機会に恵まれないルリの街
◆王道で分かり易いとは言え、ご都合主義な展開が多過ぎる感も否めないシナリオ(また、主人公とヒロインのイチャイチャぶりも人によっては鼻に付くかもしれない)
◆戦闘主体で謎解きはほぼ無い、寂しい構成のダンジョン(ただ、戦闘バリエーションで物足りなさはカバーしている)
◆裏を返せば、ゆっくりやり取りを楽しむ余裕がないリアルタイム方式の会話
◆クラシックコントローラのみ対応のカメラ操作(リモコン&ヌンチャク操作だとできない為、視点調整で悩まされる)
◆レーダー機能非搭載(敵や味方の位置を目視で確認しなければならない為、少し不便)
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▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
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引き付けた後、背後から叩き潰す。
それが『ギャザリング』でございます。
ファイナルファンタジーシリーズ生みの親として知られる、元スクウェア(現:スクウェア・エニックス)出身のクリエイター・坂口博信氏率いるミストウォーカーと任天堂とのコラボレーションによって誕生した、完全新作のロールプレイングゲーム。一部、システムの開発はAQインタラクティブ(現:マーベラス)が担当した。
これはロールプレイングゲームなのか、アクションゲームなのか。
独特過ぎるゲームデザインが異彩を放つ、Wii屈指の怪作だ。
ゲーム内容は3D視点で展開する、シナリオクリア型ロールプレイングゲーム。主人公のエルザとその仲間達を操作し、ダンジョンの探索、敵との戦闘と言った多彩なイベントを乗り越えていくというものである。
本編は『Chapter』単位で区切られたシナリオを追う形で展開。シナリオは一本道構成で、基本的にその流れに沿って登場するダンジョンマップの探索、イベントを攻略していく仕組みになっている。その為、自由度は低め。一応、拠点となる広大な街のマップはあるのだが、それ以外に自由に動き回れる全体フィールドマップはほぼ皆無。RPGの魅力の一つでもある、広い世界を調べ尽くす遊びはほとんど楽しめない作りになっている。それでいて、唯一の自由に歩き回れる街マップも、シナリオの都合で探索できなくなってしまう事があったりするほどだ。シナリオに縛られず、気の赴くまま舞台となる世界を堪能したいプレイヤーにとって、今作が如何に不向きな内容なのかはもはや言うまでもなく。逆に言えば、行き先が分からなくなって迷う事もなく、サクサクと進めていけるので、RPG初心者には優しい設計だ。ただ、それでも露骨なほどの窮屈さがあるのは否めず。まるで、昔の一本道構成のアクションゲームを髣髴とさせるかのような、独特且つ、違和感が満ち溢れたゲームデザインとなっている。
そのゲームデザインは、ダンジョンの構成、展開にも如実に現れている。謎解き以上に敵との戦闘が全体の7〜8割ほどを占めていたり、会話イベントもシナリオ上、重要なもの以外はリアルタイムのフルボイス演出で展開するなど、もはやアクションゲームと錯覚しても全然おかしくない作りとなっている。だが、最もその色が現れている部分にして、今作最大の特徴とも言えるのがバトルシステムである。
簡潔に言えば、アクションバトル。専用の戦闘画面に切り替わらず、フィールドマップ上でリアルタイムで展開するシステムとなっている。基本的に敵は集団でダンジョン内の個別の部屋(広間)に待機。その部屋の中に足を踏み入れると、瞬時に戦闘が始まるという仕組みとなっている。セガの『ファンタシースターオンライン』シリーズと同じと言うと、ゲームに詳しい方ならばピンと来るかもしれない。
戦闘は主人公のエルザの脇を固める仲間達の共闘方式で展開。プレイヤーが操作するのはエルザだけで、他の仲間達はAIによるオート操作で行動する。但し、行動自体は『コマンドモード』を使う事で、こちら側からある程度、指示を送る事もできる。だが、この『コマンドモード』は使用制限付き。下手に使うと、後々窮地に陥ってしまう事もあるので、どの状況で指示を送るかと言ったタイミングが求められてくるようになっている。まさにリアルタイム方式ならではの緊張感。終始、気の抜けない戦いを存分に満喫できる設計が施されている。
また、指示以外に戦局を変化させる要素として『ギャザリング』なるものが存在。これはエルザだけが持つ特殊能力で、発動させる事により、敵の注意をエルザの方に引き付け、隊列や陣形を崩す事ができるという優れものである。物量で勝る敵の集団を相手にする時にその効果を発揮し、不利な状況を一転させる活躍を見せてくれる。更に今作では、魔法発動の際、『詠唱時間』なるものが発生し、これが経過する事で初めて発動に至る仕組みとなっているのだが、この時間自体もギャザリングを使って大幅短縮する事が可能。急いで回復を行いたい時、敵が密集している状態で攻撃を仕掛けたい時などに使えば、状況を一変させる事もできてしまうのだ。まさに万能な特殊能力。しかし、敵の注意を一点引き受けるという事で、自身が大きな危険に晒されるデメリットがあり、必ずしもそうとは言えないのがミソ。引き付け方を間違えれば、逆に自分が追い込まれかねないので、使うタイミングには慎重を要する。また、発動すれば簡単に敵の集団を引き付けられる訳でもなく、下手に動き回ると注意が外れてしまうなど、ある程度、戦局を見極める目も求められてくる。状況を良く見て、ここというタイミングで発動させ、一気に叩く。ある程度のコツは要るが、上手に敵の注意を引き付け、一網打尽にできた時の快感は格別。また、集団戦という下手すれば長期戦に陥ってしまう戦闘を早期決着させる解決策としてもしっかり機能しているのも見事だ。少し癖はあるが、リスクとリターンの概念を絶妙に反映させたその作りは実に魅力的。引き付けるというシンプルな技でありながら、戦闘の奥深さを存分に演出する要素として完成されている。
この他、エルザをサポートする仲間達も打撃中心、魔法主体など、長所と短所が明確に分かれているほか、行動パターンも違うので、常に目が離せない存在感があるのが印象的。戦闘の舞台となるフィールドにも、不意打ちを仕掛けられるポイント、巻き添えによるダメージを与えられる腐蝕した建造物など、戦略性と行動の幅を広げる要素が詰め込まれており、一筋縄では行かない展開を演出する。更にボウガンを構えて遠くの敵を狙い撃ちする、サードパーソンシューティング(TPS)を錯覚させる場面もあるなど、プレイヤーに想定外の衝撃を提供してくれる。
このように本当にこれはRPGなのかと、疑問符が浮かぶ部分が盛り沢山。一応、経験値による成長要素、装備切り替えなどのシステムもあるが、全体の手応えはもはや、アクションゲームのような何か。全く新しいRPG、意欲作という表現がこれほど似合うものも他にあるまいと言っても過言ではないほど、唯一無二の独自性を持った内容に仕上げられている。
例によって今作の魅力は、このロールプレイグゲームなのか、アクションゲームなのかあやふや
な独特過ぎるゲームデザインである。特に先の通りだが、バトルシステムに関してこの傾向が顕著。プレイ感覚は完全にアクションゲームのそれで、同じ任天堂のゲームで例えるなら、3Dの方のゼルダの伝説に共闘要素を足したかのような作りになっている。実際、剣を使って戦う所やボウガンで遠距離から敵を攻撃をする辺りは、露骨なまでに3Dのゼルダだ。
ただ、今作は紛いなりにもRPGであり、同時に共闘要素の濃さを前面に推し出したバランス調整が図られているのが、この戦闘システムにおける最大の特色。基本的に雑魚敵にせよ、ボスにせよ、他の仲間と連携して戦わないと対処できない程度の物量、耐久力に設定されているので、下手に自分自身(エルザ)にだけ意識を集中してプレイしていると、戦況が一気に不利になって追い込まれるのである。なので、それぞれの体力などのステータス状況、行動内容などを考慮した上での柔軟な立ち回りが求められてくる。別の仲間が敵の集団に袋叩きにされていたら『ギャザリング』で誘き出す、敵が集団で溜まり易い傾向がある場合は魔法を使う仲間に広範囲の魔法発動の指示を飛ばすと言った具合に周囲の状況を読む戦術が試されてくるのだ。
無論、仲間がそれなりに育っていたりする時は下手に指示を飛ばさずとも勝ててしまう事もあるが、ボスとの戦いはどんなに育っていたとしても、そう易々とはいかない難易度に設定されているので、気が抜けない。まさに共闘というテーマを前面に推し出した作りとなっている。何とも忙しそうな感じだが、それ故に戦闘時の仲間と一緒に戦っているという手応えと雰囲気は抜群。リアルタイムで交わされるボイス演出とも相まって、自分自身が彼らと一緒に戦っているという確かな手応えを堪能できるものに仕上げられている。
また、そういう共闘感が高いからこそ、道中で挿入される単独での戦闘の心細さ、緊張感は格別。展開の意外性を狙ってか、本編にはそう言った戦闘が幾つかあるのだが、何の支援も得られないが故に孤独感がもの凄く、改めて仲間の存在の重さというものを痛感させられる内容になっているのだ。実際に難易度もそこそこ高く、僅かな隙を付かれるとピンチに陥る事もしばしば。こう言った共闘感の強さを逆手に取る、(良い意味で)意地悪な展開も適度に用意されており、プレイヤーに適度な刺激と衝撃を与える作り込みも徹底されている。
敵やボスも、共闘感を効果的に演出する面子が盛り沢山。集団で束になって襲い掛かってくる者はさることながら、仲間と連携攻撃をテンポ良く仕掛けないと隙を露出しない者も居るなど、しつこい位に仲間と戦う必然性を訴えかけてくる。
こうした仲間の存在感に対するこだわりの数々には、従来のコマンド選択型、ターン制の戦闘システムでは表現的に困難だった「仲間がそこに居て、一緒に戦っている」というものを具現化させようとする強い意気込みを実感させられる。自分以外のキャラクターの操作をAIが担当するシステム、リアルタイム方式自体はそんなに真新しいものでは無いが、『ギャザリング』による誘き出し、敵の個性、指示システム、リアルタイム会話等はまさに仲間の存在を際立たせる要素として機能しており、一人で戦っている感覚がほぼ無いというのは何気に驚くべき所である。それでいて、自分の周囲で懸命に動き回るが故、そこにいる仲間は棒立ちの人形でもなく、血の通った人間であるという確かな存在感をも醸し出している。
共闘方式故に一つ一つの戦闘は非常に忙しく、慣れない頃は本当に何が起こっているのか、混乱してしまうところもある。『ギャザリング』にしても誘き出しには少々癖があり、意図しない敵が来てしまうなんて事も時々ある為、ちょっと取っ付き難い一面があるのがタマにキズだ。とは言え、それらのシステムや忙しさが醸し出す共闘感は従来のコマンド選択型などのシステムでは到底実現不可能な凄味が満ち溢れており、全く新しいRPG体験をプレイヤーに提供する。まさに仲間の存在を凄く身近に感じるRPGと言ったところか。ゲームデザイン的にはアクションゲームとしての手応えと色が強く、RPGというには際どいところがあるのだが、一緒になって強敵に挑んだり、戦術を練ったりする過程はRPGそのもの。賛否の分かれる所もあるが、間違いなく新しいRPGと言えるだけの独自性と魅力、面白さを持った内容に仕上げられている。
とは言え、ストーリー主導の一本道構成は縛りが非常に強く、RPGもう一つの醍醐味、フィールドを自由に探索する面白さに欠けている点は如何ともし難い。ダンジョンマップも構成が単調で、単に駆け抜けるだけの場所と化しているのが惨い。戦闘に特化した感じなので、そこが疎かになるのは致し方が無いと言えば致し方が無いのかもしれないが、少しは複雑な探索が求められるマップも用意して欲しかったところだ。
また、ボリュームもストーリー主導故にか、少々短め。それでも大体、エンディングまで30時間ほどはあるのだが、これもRPGとしての密度を求める方ほど強い不満を感じるかもしれない。なお、アイテム収集や闘技場など、やり込み要素周りは充実。また、RPGにしては珍しくオンライン対戦&協力プレイも実装されているのも見逃せないところだ。
その他、操作性も概ね問題なし。難易度も経験値稼ぎポイントが道中に用意されている為、そこまで極端に難しい訳でもなく、適度に歯応えのあるバランスでまとめられている。
グラフィックも背景描写からキャラクターモデルまで、非常に質が高い。ただ、遠景がボケてしまうなど、ハード制約による限界がチラホラ見受けられるのはちょっと残念なところではある。
音楽も雰囲気重視の曲が主体。ただ、メインテーマなど、印象深い楽曲も幾つか。演出周りもエフェクトからムービーのカット割りまで、とにかく派手の一言。如何にも坂口氏の作品らしいこだわりが炸裂している。
ストーリーも王道のファンタジーと言った内容で、そつなくまとまっている。ただ、ご都合主義が多い所やエルザとヒロインのカナンとのイチャイチャぶりは難ありだ。キャラクターに関しては個性的な面子が多く、特にユーリス、トリスタ将軍の二人は必見。各キャラクターを演じる声優陣も宮野真守、折笠富美子、豊口めぐみ、下野紘、能登麻美子、石田彰など、若い層から支持を得ている方々が多数参加しているのが、任天堂のゲームらしからぬ感じが出ていて面白い。
RPGとしての自由度は皆無な為、正統派の内容を求める方にとっては正直な所、大ハズレとなりかねない極端な部分を持っている。しかし、新しいRPGとしては間違いなく言い切れる内容で、共闘感を推し出した戦闘システムとバランス、ストーリー主導のアクションゲームっぽい本編構成など、意欲的且つユニークな要素が取り揃えられた作品に完成されている。はっきり言ってかなり賛否が分かれやすい。しかし、その出来栄えは結構侮れないものがある今作。
少し風変わりなRPGを求めるユーザーならば是非、プレイしてみて頂きたいWii屈指の大作にして怪作である。従来のRPGが好きという方も、変り種という意識を持って挑めば意外と楽しめるかもしれない。とにかく、システム(特に戦闘システム)からストーリーまで極端な面の強い作品なので、その点だけはご注意を。
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