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≫王様物語
■発売元 マーベラスエンターテインメント(現:マーベラス)
■開発元 Cing、タウンファクトリー
■ジャンル 王国ワラワラRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 5つ(※2ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク専用
■総説明書ページ数 23ページ
■推定クリア時間 18〜19時間(エンディング目的)、40〜50時間(完全攻略目的)
昔々、ある所に一人ぼっちの臆病な少年コロボがいた。
ある朝、コロボは家に侵入して来たイタズラネズミを追いかける内、不思議な森へと迷い込んでしまう。そして真っ暗な森の中で彼は光り輝く王冠を発見する。
そしてその王冠を被ったその日から…彼は立派な王様になってしまった。

人間も動物も、どいつもこいつも彼の家来。
一人ぼっちだった少年は、一人ぼっちじゃなくなってしまったのだった…?

果てさて、王様となってしまった彼にはどんな運命が待ち受けているのか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆王国運営シミュレーションとアクションRPGの要素を織り交ぜた、独特のゲームシステム
◆突撃、撤退の二つの命令を部下の親衛隊に下すだけで行える、シンプルな戦闘システム
◆国民からの苦情解決など、如何にも王様っぽい内容の依頼が盛り沢山の『クエスト』
◆まるで玩具箱を引っくり返したかのような荒唐無稽な地形で彩られたフィールドマップ
◆王国発展と同時に進化していくのが面白いサポート機能(親衛隊集合システムなど)
◆個性的極まりないボス戦(一体一体、戦闘内容が違ったりと、差別化も凄まじい)
◆兵士、木こり、コックなど個性豊かなジョブ(職に就いてない『のんきな大人』など、所々に生々しさ漂うジョブも…)
◆ユルさ全開ながら、最後の最後で予想だにしない展開が繰り広げられるストーリー
◆センサー操作も無く、気軽にキャラを動かせる楽しみに秀でた操作性
◆見た目の緩さに反して、なかなかやり甲斐のあるゲームバランス(歯応え満点)
◆まるでクレヨンや色鉛筆で塗ったような、独特の色使いが印象的なグラフィック
◆独特の世界観と絶妙にマッチした、クラシックアレンジ主体の音楽
◆ブラックジョーク満載のセンス溢れる台詞回し
◆独特の色鉛筆(クレヨン)風のグラフィックと共に展開する、独特のムービーデモ

--- Bad Point ---
◆あっさりし過ぎなチュートリアル(特にジョブの能力解説周りがあまりに質素)
◆やり甲斐はあるが、ゲームが得意でない人には厳し過ぎるゲームバランス
◆意味を成してない難易度選択機能(一番簡単なイージーでさえ難しい)
◆倒し方のヒントや戦闘内容の解説も無くスタートするボス戦
◆コントロールスティックで行うというのもあって、細かい狙いを定めるのが困難な照準操作(これはWiiリモコンのポインターを使った方が快適になったのでは…?)
◆あまり自由が効かないカメラ操作
◆小さくて見え難い国民とコロボの体力ゲージ(気が付いたらやられてた…なんて事も)
◆あまりに素っ気無いエンディング(あの結末は…)
◆悪く言ってしまえばオリジナリティ皆無の戦闘システム(ピクミンそのまんま)
▼Review ≪Last Update : 7/4/2010≫
世界で一番偉いのは、一体誰なのか…?

その答えが本作で明かされる…かどうかは分からない。


マーベラスエンターテインメント、シング、タウンファクトリーの三社のコラボレーションで誕生した、完全新作のロールプレイングゲーム。2008年発売予定だったが、様々な紆余曲折を経て、2009年秋に発売された曰く付きな一本でもある。

世界征服が目的の独自のゲーム性と個性的なボス戦が光る、隠れた傑作だ。

「王国ワラワラRPG」を謳っているが、実質的な内容はアクションRPG。プレイヤーは小さな王国の王様となった主人公・コロボを操作し、王様直属の親衛隊を結成。王国内の発展と領土の拡大を目指していくというものだ。
ゲームは主に『クエスト』と呼ばれるミッションをこなしながら進行。領土拡大の為に親衛隊と共に他国へ乗り込んだり、自国内で起きる事件や国民の悩み事を解決したりなど、如何にも王様らしい(?)行いをしていく。それらの他にも、国家予算を確保する為に宝探しにまい進したり、町を発展させる為に施設を建てると言った経営シミュレーション的な事も求められてきたりと、至れり尽くせり。何から何まで、国の代表として頑張らなければならない、まさに人の上に立つ者の辛さを堪能できる、妙なリアリティに富んだ構成となっている。こんな具合に色んな事を行っていく内容である故、敷居が高そうと感じてしまうかもしれないが、ゲームの仕組み自体は至って単純。基本的に領土拡大、悩み事解決にしろ、アクションゲームとRPGのノリでやれるので、そんなややこしくはない。経営にしてもこれまたRPGのノリで楽しめるので、複雑さは皆無だ。人の上に立つ者の辛さは、あくまでも雰囲気。ゲーム自体もそれに沿ってややこしくするみたいな、意地悪なゲームデザインは成されてないので、全体的には気持ちよくプレイできる、簡略化された作りとなっている。
また簡略化されてるのは、クエストや経営周りだけに留まらず。プレイヤーが本編で率いていく事になる親衛隊の編成にしても、そんな遊び易さへのこだわりが炸裂した、取っ付き易いものに仕上げられている。そもそも、その仕組み自体が驚くほど簡単。王国内で歩いている国民をスカウトするだけ。それを行うだけで、直に国民が親衛隊としてプレイヤーの後を付いて来るようになる。更にスカウトのやり方自体も簡単で、親衛隊にしたい国民に狙いを定め、Bボタンを押すだけ。話しかけて説得するとか、そんなややこしい手間をかける必要も無く、それをやるだけで親衛隊にできてしまう。お前、後先考えずに入っちゃって良いのかよと、逆に突っ込みたくなるほど。何とも無茶苦茶さ溢れる仕様だが、それほどまでに簡単なものとなっている。そもそもこのシステム自体、ゲーム好きなら既視感を覚えると思うが、かの任天堂の名作『ピクミン』のオマージュ。あれと同様に今作も、ピクミンを引っ張り出すに倣って国民にスカウトするだけで、簡単に仲間にできてしまうのだ。更に今作、当然のように敵との戦闘もあるのだが、その攻撃システムにしてもピクミンと一緒。敵に狙いを定め、Aボタンを押して国民を突撃させるだけ。もう、そのまんまなのである。そして、例によって戦闘は物量がものを言う。ピクミン好きならば、そのあまりにそっくり過ぎる戦略性に苦笑いしてしまうかもしれない。
ただ、当然のように全てがそのままという訳ではない。
親衛隊となる国民には『ジョブ』なるクラスが設けられていて、それによって得意分野が異なったり、攻撃手段が違ったりなど、敵の種別などの状況に応じて編成を変えたりする戦略が求められてくる。また、戦闘を専門としないジョブもいたりなど、戦闘要員ばかりじゃないというのもミソだ。また、ジョブは資金がある限りなら自由に切り替える(転職させる)事が可能。切り替え方もマップ上の『職場』に狙いを定めて国民を突撃させるだけと簡単で、編成と同様に煩わしさ皆無の親切設計となっている。更に国を発展させればさせるほど強力なジョブへの転職も可能となり、より強い親衛隊の編成もできるようになっていくRPG的な楽しみがあるのも大きな見所である。
確かに作りは見たまんま、ピクミンである。だが、先のようにRPG的な要素に富んでおり、成長(発展)の喜び、戦略を練る楽しさがあるのが大きな売り。ピクミンのシステムにRPG要素を取り入れるとどうなるか、その疑問に答えたとも言えるこのシステムは、ピクミン好きは勿論の事、RPG好きならば必見の代物だと言っても良いだろう。
こんな具合に非常に盛り沢山の要素が詰め込まれた今作だが、どのシステムにしても徹底して簡略化させるこだわりが炸裂しており、遊び易さは抜群。全体的にごちゃ混ぜな内容であるが、それに割り合わぬほど仕組みは単純。そして、人の上に立つ者の辛さを大いに堪能できる、不思議な手応えに富んだゲームに仕上げられている。

そんな今作の魅力は、ゲーム本編の主な目的たる領土拡大と王国発展の楽しさ、それに尽きる。
とにかく、最初は凄く小さく、そして貧乏臭さ満点だった王国が、ゲームを進めるに連れ、徐々に大きくなっていく過程は、単に見ているだけでも楽しい。それまで僅かしかいなかった国民が増えたり、街が賑やかになったりする様には、如何にも自身が人の上に立つ者として頑張ってるという確かな手応えを感じ取る事ができる。また、王国が発展するに従い、システム周りが便利になっていく過程も絶妙。『お立ち台』というのを造れば、街に出向く必要なく親衛隊の国民を呼び出す事ができるようになったり、『大砲』を建造すれば遠い場所への瞬時の移動が可能になったりと、国の発展がシステムそのものにも影響を及ぼしてくる過程は地味ながら鳥肌モノである。プレイヤーに対し、国が如何に発展しているかを伝えてくれる、実に秀逸なレベルデザインと言っても良いだろう。まさに今作ならでは、唯一無二のゲーム性を演出している。
発展の楽しさだけでなく、領土拡大の為、マップを探索していく面白さもかなりのもの。マップのロケーションが非常に個性的且つ多彩で、進める度に新たな発見があって楽しい。そして、プレイヤーが領土拡大の為に侵略する7つの王国もこれまた無駄に個性的。お花見ムードの国、お菓子だらけの国、そしてガラクタだらけの国など、まるでおもちゃ箱を引っくり返したかのようなその荒唐無稽な世界観は、プレイヤーを全く飽きさせない。
そんなマップ上でプレイヤーの行く手を阻む雑魚敵達も可愛く、そして何処かおかしい奴らばかり。だが、それ以上の存在感を発揮しているのが、7つの王国を仕切る『王ボス』達。これがまた、無駄に濃い。へべれけな中年親父、メタボな西洋男性、引きこもりの詩人(?)などと、お前ら本当に王様かよ、と突っ込みたくなる強烈な面子ばかりとなっている。そして、この王ボス達との戦闘が大変面白い。それが王国の発展と領土拡大に次ぐ、今作第二の魅力。凄く多種多様なボス戦が楽しめるのである。ガチの一騎打ちは勿論の事、ピンボール勝負、クイズバトル、競争と…奇想天外なものが盛り沢山で、各戦闘ごとに違うゲームで遊べると言っても不思議で無いほど、強烈なインパクトに富んだものとなっている。ある意味、ボス戦そのものが「一つのステージ」と扱われてる感じ。さながらPS2の『ワンダと巨像』を髣髴させるかのような、徹底した作り込みが成されているのである。
各ボスにダメージを与える過程もアイディアに富んでいる。ボス本体に親衛隊を突撃させるのみならず、クイズに解答する、潜り込んだ場所を引き当てる、更にはプライドを傷つけさせる(?)など、その多彩なバリエーションの数々にはよく、こんな事を考え付いたなと感心させられる。ジョブの編成が問われるバランスにしても、システムを有効活用しようとするこだわりが発揮されており、独特の戦略性と手応えを演出している辺りにも、作り込みの深さを痛感させられる。各ボス戦の開始前や撃破後に展開されるムービーも、そのボスならではの味や魅力を存分に引き出した、見応え満点&爆笑必至のものに仕上げられているなど、そう言った部分でも独自性を演出しようとする姿勢には、そこまでやるか、と感服する次第である。本当、あらゆる意味でこんなにもボス戦に無駄にこだわったゲームというのも、珍しいと言っても良いだろう。
ただ、作りの素晴らしさに反し、あまりに戦闘が個性的過ぎる故に何をしたら良いのか分かり難い事、そして戦い方のヒントなどのフォローがほとんど用意されて無い点は残念。個性的と言っても、それは裏を返せばゲームの常識がほとんど通用し難いという事でもある。通用し難いからこそ、その辺へのフォローは万全にして然るべきな訳である。だが残念ながら、今作はそこの配慮が致命的に甘い。昔のゲーム宜しく「死んで覚えろ」な事にされてしまってるのは、幾ら何でも理不尽過ぎである。分かり難い戦闘ならそれなりに配慮を用意して然るべきなのに何故、それができなかったのか。これで誰もが理解してくれると、判断しての事だったのか。仮にそうだったとしたら、理解が甘過ぎるとしか言い様が無い。本当、ここに関しては万全の対策を施して頂きたかったところである。折角、一つ一つの戦闘が良く出来ているのに勿体無い。
とは言え、そんな欠点を含んでも領土拡大と王国発展、そしてボス戦の面白さは鉄板。国の成長を実感できるレベルデザイン、戦闘そのものが一つのゲームと言っても不思議で無いボス戦は、他では味わえぬ強烈な個性と手応えに富んでいる。人の上に立つ者だからこその快感、そして苦労も十分に堪能できるその要素群は、まさに今作の代名詞的存在と言っても過言じゃ無いだろう。丁寧な作り込みには改めて、職人技を痛感させられる次第だ。

その他、操作性も良好。モーションセンサーを活かした煩わしい操作も無く、従来ゲームのノリでキャラクターのアクションなどを軽快に行う事ができる。ただ、敵に狙いを定めるターゲット指定の操作は少々難あり。コントロールスティックで調整するのもあってか、狙いを定め難い。ここはリモコンのポインター操作を起用した方が、遥かに快適だったのではないだろうか。無理矢理なセンサー起用をしない姿勢は好感が持てるが、そこだけは素直に起用すべきだった気がする。
また、バランス周りも難易度選択機能が搭載されているとは言え、先のボス戦も含め、一番低い難易度でも手強いのがきつい。とは言え、全体的にはまとまっており、確かな手応えが堪能できる、昔ながらのゲームらしさ溢れる仕上がりになっているのはなかなか魅力的である。
グラフィックも非常に綺麗。まるでクレヨンか色鉛筆で塗ったかのような独特の色彩は目を見張るものがある。特にムービーの演出は必見だ。音楽も全体的にクラシックのアレンジ曲が中心だが、世界観に絶妙にマッチしており、独特の暖かみを醸し出しているのが印象深い。ストーリーも登場人物の性格付け、台詞回しなどに独自のブラックジョークやギャグが炸裂していて、楽しませてくれる。特に王ボス周りの台詞は要チェックだ。

その他、本編ではロードも皆無に等しく、ゲームテンポは大変良好。更に全体のボリュームもなかなかのもの。寄り道要素もサブクエストやシナリオ分岐など、やり込み要素も充実しており、極め甲斐も満点だ。
ボス戦やチュートリアル、そして説明書の内容などにおける分かり難さと配慮の乏しさが非常に勿体無いのが残念だが、ゲーム全体の出来はなかなか。複雑そうでありながら至ってシンプルなゲームシステム、個性豊かなボス戦、そしてヘンテコな世界観と、まさに唯一無二の魅力とゲーム性に秀でたこの『王様物語』。難易度が高めでシステムに少し癖があるので、万人にはお薦めできない。しかしゲームが得意なプレイヤー、ピクミンのような戦略的な要素を含んだアクションゲームが好きな方なら是非、プレイしてみて頂きたい隠れた傑作だ。
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