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≫ディズニー エピックミッキー 〜ミッキーマウスと魔法の筆〜
■販売元 任天堂(発売元:ディズニー・インタラクティブ・スタジオ)
■開発元 Junction Point Studios
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク対応
■総説明書ページ数 10ページ
■推定クリア時間 15〜20時間(エンディング目的)、40〜65時間(完全攻略目的)
ある日の夜、もう一つの世界に暮らす魔法使いイェン・シッドが『魔法の筆』を用い、『ウェイストランド』と呼ばれる忘れられた住民が暮らす世界を作っていた。
だが、鏡の中より現れたミッキーマウスが、イェン・シッドが離れている間に好奇心から『魔法の筆』を使い、インクの魔物『シャドー・ブロット』を生み出してしまった。突然の事態にミッキーはその場から逃げ出すが、ブロットは『ウェイストランド』に襲来。混乱を引き起こしてしまう。

それから月日が経ち、ミッキーは世界の誰もが認める大スターになっていた。
だがそんなある日、いつものようにベッドで寝ていた彼の前にブロットが出現。
ミッキーを『ウェイストアイランド』へと連れ去ってしまう。

かつて、自分が生み出した怪物により、異世界へとやって来たミッキー。
その前には、凄惨なまでに荒廃した世界が広がっていた…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆地形、建造物を蘇らせたり、消し去ったりする、創造と破壊をテーマとした探索要素が光る、魔法の筆による絵の具アクション『ペイント&イレーサー』
◆世間のディズニー作品との一線を画す、暗くおどろおどろしい世界観と敵キャラクター達
◆世間のイメージと異なるディズニー世界を冒険できる楽しさ、ペイント&イレーサーを巧みに生かしたギミックなど、数多くの見所が詰め込まれたフィールド構成
◆往年のミッキー作品を題材にした地形で構成された、マニア必見の横スクロールエリア
◆二つの絵の具を使うかでその後の展開が変化する、アクションと直結した分岐要素
◆リモコンを筆に見立てた感じで動かせる自然且つ、直感的な作りが光る操作性
◆ミッキーの義兄に当たる『しあわせウサギのオズワルド』との実に90年ぶりの共演が描かれた、ディズニーファン必見の見所満載のストーリー
◆最初期に作られたオズワルドのアニメを始めとする、豪華且つ、ディズニーマニアにはたまらない特典要素の数々
◆選択次第で変化するエンディング、膨大な寄り道要素と、やり込み甲斐十分の総計ボリューム
◆荒れ果てた夢の世界というコンセプトを全面に推し出された、センス溢れるグラフィック
◆世界観とマッチした、不気味さと重厚なテイストが混ぜ合わさった独特の音楽
◆独自の色彩センスとエフェクトが異彩を放つ、個性的な演出(デモシーンの完成度も高い)

--- Bad Point ---
◆視点位置が悪い上、妙に回転する融通の利かなさが残念過ぎるカメラワーク(国内版では調整が入っているとの事だが、全くそのような形跡が無い)
◆リモコンの十字キーで視点位置を変更する、ぎこちない手応えが不快なカメラ操作
◆カメラワークの所為による、距離感が掴み難い場面の多さ
◆分岐検証のやり難さを冗長する、厄介極まりないオートセーブシステム
◆基本、お使いクエスト主体で進む上、展開もワンパターンで退屈なレベルデザイン
◆倒し方がワンパターンな所為で、後半にかけて徐々に退屈なものになって行く敵との戦闘
◆本編の展開にアクセントを与えるボス戦の異様な少なさ
◆ボイスが無い上、台詞の字幕が早く切り替わる為、やや内容を追い難いストーリーデモ
◆非常に退屈で、盛り上がりに欠ける最終決戦
▼Review ≪Last Update : 10/27/2013≫
忘れ去られたウサギと有名になり過ぎたネズミ。

運命の出会いの時が訪れる…。


ウォルト・ディズニー・カンパニーの看板キャラクターにして、世界的に有名なネズミであるミッキーマウスを主人公とした、完全新作のアクションアドベンチャーゲーム。開発は『Theif』、『Deus Ex』と言った名作を手掛けたゲームデザイナー、ウォーレン・スペクター氏が設立したJunction Point Studios。日本語版ローカライズは任天堂が担当した。

異質な暗い世界観とビジュアル、ディズニーマニア必見のネタの数々が異彩を放つ、センス溢れる意欲作だ。

ゲーム内容は3D視点で展開するアクションアドベンチャーゲーム。主人公のミッキーマウスを操作し、ディズニー作品の忘れ去られた仲間達が住む世界『ウェイストランド』の各地を駆け巡りながら、課せられるクエストやイベントを攻略し、ストーリーを進めていくというものだ。
本編の流れは一本道。基本的にはストーリーに関連した『クエスト』を攻略していく形で展開するのだが、その手のクエストは全て強制方式で、プレイヤーの好きな順から、という自由なプレイがやり難いゲームデザインになっている。
フィールド構成も少し独特。一本道で進行していく都合上、寄り道が少ないだけでなく、何処と無く2Dのアクションゲームを思わせるものに仕上げられている。一応、街と言った拠点的なエリアもあるのだが、使えるようになるのは序盤の終わりの方な上、凝ったサブイベントが繰り広げられる訳でもないので、密度は薄め。まさにメインはストーリーです、と主張するかのようなコンセプトで作られている。しかも、今作では『ウェイストランド』各地にあるエリアを順に攻略していくのだが、そのエリアへの通過点として本物の2Dアクションのステージまで用意。それを突破しなければ目的のエリアまで到達できない仕組みにもなっているのだ。それなりにギミックも仕掛けられているとは言え、遊びの感覚は2Dのノリ。ストーリーを強く描くというコンセプトを活かす目的でなのか、結構思い切ったものに仕上げられている。
ただ、システム、アクション周りもしっかりと作られている。特に注目なのが、サブタイトルにもなっている『魔法の筆』を使ったミッキーの攻撃アクションだ。今作ではその筆で『ペイント』と『イレーサー』となる二種類の絵の具を発射し、迫り来る敵達と戦ったり、立ち塞がる謎を解いていくという、少し変わったアクションが楽しめるようになっている。
各絵の具について説明すると、まず前者『ペイント』は消えていたものを描き、元に戻す能力を持った絵の具。大きな穴を塞いで足場を作ったり、歯車を復活させて装置を起動させたりなど、主に進路確保の面で活躍する。対し、もう一つの『イレーサー』はその逆を行く、存在するものを消し去る能力を持った絵の具。ミッキーの力では到底開ける事なんて不可能な大きな扉を消して進路を確保したり、邪魔な仕掛けを消して脅威を取り除いたりなど、主に探索や脅威の排除と言った場面で活躍する絵の具になっている。基本的にはこの二つを状況に応じて使い分け、地形を上手く乗り越えながらクエストの遂行を目指していく。更に地形だけでなく、先の通りだがこれらの絵の具は戦闘でも活躍。その能力も別々で、ペイントは大量に浴びせる事でその敵を味方にする効果を、イレーサーは文字通りに敵を無き者にする効果を持っている。効果の面から、敵を完全に仕留めるイレーサーに軍配が上がる感じだが、それでも消すには結構な量を浴びせなければならず、絵の具はどちらも有限なので、下手に撃ち過ぎれば空っぽになってしまう。更に敵の中にはイレーサーで装甲を消さないと一連の攻撃が通用しないなど、特殊なタイプも居る為、ペイントに偏って使うとか、そんな一方的なやり方も少しやり難い。そんな戦術面でも他のアクションゲームとは少々、異なる味わいを醸し出しているのもこの要素の大きな特徴だ。仕組み自体はシンプル。若干、何処かで見た既視感もあるが、物を蘇らせたり、消し去ったりなど、まるで自らが創造主にでもなったかのようなアクションを楽しめるのは実に魅力的。プレイヤー自身の悪戯心を刺激する体験が味わえる要素に仕上げられている。
更に面白いのがこの二つの絵の具、ストーリーにまで影響を与えるという事。実は今作はマルチエンディング制を採用しており、二つの絵の具の内、どちらかを使うかを問う分岐イベント、ギミックが随所に仕掛けられているのだ。一応、どの選択を取っても最後のエリアまでは進めるので、そこまで極端では無いのだが、それぞれの絵の具を善と悪に見なした設定、自然に分岐が入り込んでくる演出等、独自のセンスが炸裂している。そんな具合にゲーム面を演出する要素で終わらせてないのもこのアクションの魅力。実は結構、こだわり満載なのである。
その他、アクション周りではリモコンを振って発動するスピンアタック、特定の敵を注視するロックオンなど、任天堂のゲームのオマージュが随所に盛り込まれているのも面白い。悪く言うと既視感が強いのだが、そこもペイントとイレーサーの二つで独自性を出すなど、単なる物真似で終わらせてないのはさすがだ。
一本道故、自由度が低いのと、露骨な良い所取りはあるが、ゲーム面だけでなくストーリーにまで影響を与える『ペイント』と『イレーサー』など、大胆な作り込みが炸裂したゲームデザインは何処と無く作家的な味わいが満載。一部アクションの存在で既視感があり、それ故にB級風な匂い強いが、他に無い味わいとセンスが炸裂。今時珍しくなった、作品の個性を強く押し出した作風と世界観作りが異彩を放つゲームに仕上げられている。

それ故、今作の魅力は世界観作りとフィールドの構成に集約される。今更何を言っているんだという感じだが、今作は世界的に有名なネズミにして、ディズニーの看板キャラクターでもあるミッキーマウスが主人公のゲームだ。ミッキーマウスとディズニー。この二つから連想されるものと言えば、多くの人が明るくて夢のある世界観をイメージするかと思う。いわゆる万人向けの世界観。老若男女、誰もが抵抗無く親しめる作風がミッキーマウス、そしてディズニーに関連した全ての作品における共通項として、広く世に浸透している。
だが、今作の世界観は世間一般で知られるミッキーマウス、ディズニーのものではない。世間のイメージとは真逆も真逆。空は真っ暗、池や川は毒々しい緑色の液体で溢れ返ってる、遊園地はオンボロ、時にはナイフやハサミと言った凶器を搭載した殺人マシーンが行く手を阻むなどと、夢の世界どころか悪夢の世界そのものと良いほど、陰鬱な世界観になっている。ディズニーランドの雰囲気など、微塵も無いものになっているのだ。
そして、そんな世界をミッキーを通して体験できるのが今作の醍醐味でもある。実際に世間のディズニーのイメージを持って今作をプレイした時の衝撃は計り知れない。特に先も挙げた緑色の液体(実はイレーサーの絵の具)で汚染された池や川、殺人マシーンのインパクトはかなりのものだ。池や川は見た目の毒々しさが物語るように一度でも入ってしまったら問答無用でダメージ。泳ぐ事など自殺行為も同然だ。殺人マシーンに至っては可愛らしさなんて微塵も無い。凶器はリアルだし、ミッキーの位置を探るカメラは人間の目玉を模した非常にグロテスクなデザイン。ディズニーランドのイメージを強く持った子供が見れば、トラウマになること間違いなしと言っても良い位。正直、制作者はディズニーを汚したいのか、と疑いの目で見てしまうほど、あまりにも刺激の強いものに仕上げられている。
ただ、そんなディズニー作品とは真逆の路線を突き詰めた世界を走り回るのはとても新鮮。明るい世界というお約束を外した、未体験のディズニーワールドを駆け巡る事ができるというだけでも、熱心なディズニーファンにとっては見逃せないフィーチャーだ。また陰鬱さにしても、ディズニーの世界観を不当に汚すものにはなってない。ミッキーを始め、キャラクターの可愛らしさはそのままだし、何よりもストーリーがよく出来ている。過去のミッキー映画に登場しながら、完全に忘れ去られてしまったキャラクター達が住まう『ウェイストアイランド』にやってきてしまったミッキーが、元の世界に戻る為に奮闘するという至って王道のものなのだが、大昔、ミッキーに成り代わる形で世から忘れ去られた伝説のディズニーキャラクター『オズワルド』との出会いと衝突など、魅力的且つ興味深い展開が沢山盛り込まれた内容にまとめられているのだ。中でもオズワルドとの共演は、ディズニーマニアにとっては必見どころでは済まされないだろう。もしかしたらミッキーの代わりに有名になってたかもしれないキャラクターが当の本人と絡み、どんな物語を紡ぐのか。その様子は製品版にてご覧になって頂きたい。きっと今作の陰鬱な世界観に対する嫌悪感も抱かなくなるだろう。見た目からして制作者の陰湿さを抱かせるが、その実はディズニーに対する敬意と愛が惜しみなく込められた作り。なかなか魅力的な内容なのだ。
フィールドの構成も、その陰鬱なビジュアルが嫌でもプレイヤーの関心を刺激する。単に見た目だけでなく、レベルデザインも抜かりは無く、ペイントとイレーサーのアクションを応用したギミックの配置、戦闘イベントなど、今作ならではのゲーム体験をプレイヤーに提供してくれる。2Dアクションもジャンプアクションだけを楽しむ、あまりにもシンプルな構成だが、適度にトリッキーな地形、そして過去のミッキー映画をモチーフとした世界観のインパクトは絶大。中でも映画の再現度はかなりのもので、ディズニーマニアも唸るほどの衝撃を受けるだろう。
だが如何せん、肝心の『クエスト』が行ったり来たりのお使いイベントばかりなのはあまりにも致命的。敵との戦闘にも広がりが無く、大抵の敵がペイントかイレーサーを当てて倒すか、弱点を露出させてスピンアタックを決めるかの三パターンに終始してしまっているのもきつい。それ故に中盤以降、どんどん退屈さが増していくのは残念でならない。逆に言えば、それだけ今作は世界観やストーリー方面の作り込みにパワーを注いでいる事でもあるが。実際にそこを楽しむ点に関しては申し分なく、その鮮烈なるビジュアルと魅力満載のストーリーで十分な満足感を得る事ができる。だが、アクションゲームとしては厳しく、最後までプレイするのに相当な根気が必要とされるのは素直に褒められない所だ。
そういう意味でもまさに今作はユーザーはディズニーファン、それも結構ディープなクチ向けと言ったところ。世界観もそうだが、結構万人には受け難い作りになってしまっているのだ。正直、従来の世界観もそうだが、アクションアドベンチャーとして期待して買うのも危ないだろう。それ位、今作は尖った作品なのである。

その他、操作性にしてもキー配置は全体的には違和感なくまとまってはいるのだが、カメラの操作を十字キーで行うなど、少々ぎこちない点が散見される。そのカメラ自体も視点調整等はお世辞にも良いとは言えず、妙にグルグル回る上、融通の効かない部分が多い故に酔い易くなってしまっているのは3Dアクションゲームとしては落第点と言わざるを得ない。これでも日本版は海外版以上に修正したというが、全くその形跡がないのはどういう事なのか。
難易度にしても基本こそ優し過ぎず、難し過ぎずの丁度いいバランスなのだが、カメラとレベルデザインの問題により、モチベーションが殺がれ易い仕上がりになってしまっている。ボリュームも結構あるのだが、お使いイベントの多さもあって非常にダレ易い。ストーリー分岐など、周回のやり込みも充実しているのだが、オートセーブ式な為にルート検証がやり難くなってしまっており、やり込み派のプレイヤーには容認し難いものになってしまっているのが厳しい。何故、そうも窮屈にしてしまったのか。この辺りの融通の利かなさも褒められたものではない。
対し、グラフィックの方の出来栄えは非常に良い。Wiiの中では上位に来る美しさと言っても良いだろう。特に色使いは日本製のゲームでは真似できない上手さとセンスが炸裂。解像度の低さをも突き飛ばす、その完成度の高さは必見だ。
音楽も全体的に雰囲気重視で地味だが、世界観との親和性は抜群。また、不気味な感じの曲の数々には何処と無く、レア社のゲームを髣髴とさせる懐かしさがある。そういう意味でもレア社のゲームが好きだった方は必見と言えるだろう。

演出全般もグラフィック同様にセンスの塊とも言うべき、クオリティの高いものに仕上げられている。また、アニメのムービーが挿入されるなど、ストーリーを盛り上げる為の工夫も万全。そのアニメムービーでのキャラクターデザインは可愛らしさ抜群の仕上がり。特にミッキーとオズワルドの描写は破壊力抜群なので必見だ。
他に今作は特典も豪華で、昔に制作されたオズワルドのアニメがフルで入っていたりなど、ディズニーマニアには見逃せないフィーチャーが満載。特にオズワルドのアニメは世界的にも稀少なものなので、マニア問わずにファンも見ておく価値はあると言っても良いだろう。問題はそこに辿り着く為、退屈な展開を強いられる事なのだが。
一応、アクションアドベンチャーとして最低限、抑えるべきところは抑えている。ペイントとイレーサーによるアクションの楽しさ、独自性の高さもなかなかだ。だが、カメラワークの問題に退屈なレベルデザインなど、大きな欠点が多い為、全体的にアクションアドベンチャーとしては凄まじくB級感の漂う作りになっている感は否めない。逆に雰囲気ゲーとしては抜群で、他のディズニー作品では到底味わえないものを見せてくれる今作。正直、万人には薦められないが、ディズニーマニアを謳う人なら要プレイの意欲作だ。但し、繰り返しになるがゲームとしては癖が強め。難易度も少々陰湿なので、プレイする際はその辺の覚悟を決めた上で挑む事を強く推奨する。軽い気持ちでは挑まぬように。
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