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≫チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮
■発売元 スクウェア・エニックス
■発売元 ハ・ン・ド
■ジャンル ダンジョンRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 6800円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人(※オンラインプレイ時:1〜2人)
■セーブデータ数 3つ(※3ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー不可
■その他 クラシックコントローラ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 52ページ
■推定クリア時間 20〜25時間(エンディング目的)、50〜70時間(完全攻略目的)
トレジャーハンターのチョコボとシドはある日、不思議な町へ迷い込む。
そこは「忘れる事によって幸せになれる」と信じられている『時忘れの街』。時計塔の鐘が鳴り響く度、人々は悲しい思い出や争いの気持ち、時には自分自身の名前さえも忘れてしまう。

そんな街に現れた謎の男の子、ラファエロ。
彼は記憶の迷宮を作り出し、人々は記憶を取り戻していく。
そして、この街に隠された大いなる秘密が蘇ろうとしていた…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆レベル継続制、丁寧なチュートリアルと優秀なヒント機能など、不思議のダンジョンシリーズ初心者にも親し易いものに完成された基本システム(ゲームデザイン)
◆不思議のダンジョンシリーズ伝統のターン方式による取っ付き易い戦闘システム
◆ダンジョンに応じて能力を切り替える戦略性と極め甲斐の深さが秀逸なFFシリーズ伝統のジョブチェンジシステム
◆上級者向けのシビアな難易度設定と特殊なギミックが秀逸な『制限付きダンジョン』
◆書類を整理する感じで行うソート機能が気持ちよく、意外と違和感のないものに仕上げられたリモコン横持ち操作(クラシックコントローラの操作も良好)
◆単品でも十分勝負できるゲーム性と奥深さを兼ね備えたミニゲーム『ポップアップデュエル』
◆作りは親しみ易いが、甘い蜜は決して吸わせぬ歯応えのある調整が見事なゲームバランス
◆多彩で独特のアイディアに満ち溢れたダンジョン構成とそのロケーション
◆エンディングまで20時間ほど、クリア後の隠しダンジョンも収録とやり応え満点の総計ボリューム
◆可愛らしくて何処となく幻想的な作風が印象的なグラフィック
◆女性プレイヤーの心を射止める、可愛らし過ぎるにも程があるチョコボのアニメーション
◆各ダンジョンの探索やボスとの戦い、イベントを大いに盛り上げる素晴らしい音楽
◆徐々に謎が明かされていく、興味深い構成でまとめられたストーリー

--- Bad Point ---
◆ストーリーの盛り上げに水を刺す、一部キャラクターの声の演技(特にシロマとラファエロ)
◆フルボイスデモの会話で度々発生する、不自然な読み込み
◆やや冗長なロード時間(特にダンジョン突入後のロードが長い)
◆不思議のダンジョン伝統のアクション、ダッシュ操作の未実装(一応、オプションで『はやい』が代用にはなる)
◆攻撃時のモーションが冗長で、少しもっさりとしている戦闘テンポ
◆ジョブの一つ『学者』の飛び抜けた性能(アビリティが便利なものばかりで使い勝手が良過ぎ)
◆ゲームオーバー時のアドバイスメッセージのバリエーションの少なさ
◆オチの強引さだけはとても褒められないストーリー
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
棒読みよりワザとらしい演技の方が苦手。

そんな筆者です。


ファイナルファンタジー(FF)シリーズのマスコットキャラクター、チョコボが主人公を務めるダンジョンRPG『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズの最新作。ニンテンドーDSで発売された『チョコボと魔法の絵本』を手掛けたハ・ン・ドとスクウェア・エニックスとの共同開発によって製作された作品でもある。

親しみ易さを強く意識したゲームデザインとバランス調整が光る良作だ。

ゲーム内容はダンジョン攻略に特化したロールプレイングゲーム。一度でも敵にやられると所持品を失った状態でスタート地点まで戻されるほか、潜る度に地形が変化する特徴を持つ『不思議のダンジョン』の階層を攻略し、ストーリーを進めていくというものである。
ゲームシステムは本家『不思議のダンジョン』シリーズを踏襲。プレイヤーが一歩行動すると敵も一歩行動する同一ターン制など、本家シリーズで完成されたシステムを起用している。過去にプレイステーションで発売された『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズでは、『ターンアクティブタイムバトル(TATB)』という、FFシリーズでお馴染みの戦闘システムとターン制を組み合わせた独自のシステムを起用していたが、今作は一転して本家と同様のシンプルなターン制を起用。本家シリーズと同じ間隔で遊べる作りになっている。
また、コアな不思議のダンジョン経験者には物議を醸す要素だが、レベル継続制を起用。仮にダンジョン内で倒れてもプレイヤーのレベルが継続される為、不思議のダンジョン初心者には優しい作りとなっている。所持品のリセットにしても、装備状態の武器は対象外として無くならない仕様。この辺は過去の『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズを踏襲している。なお、継続制は本編ストーリーで辿る事になるダンジョンがそうである一方で、寄り道として用意されているダンジョンの中には従来のレベル1からスタートするものも用意。基本は初心者とストーリー性を強く意識したゲームデザインとしているが、ちゃんとコアなプレイヤーもフォロー。あらゆるプレイヤーに対応した仕上がりになっている。
また、今作独自の要素も幾つか。代表的なものとして、性質の異なる二つのダンジョン、ジョブチェンジシステムの二つが挙げられる。前者はその名の通り、今作では二種類のダンジョンがあり、本編ではそれらを交互に攻略しながら展開していくようになっている。一つは『記憶のダンジョン』。本編の舞台となる『時忘れの街』に住む人達、一人一人の記憶の中を舞台とした短めのダンジョンだ。このダンジョンは最終的に『記憶の欠片』と呼ばれるアイテムを入手する事でクリアとなる。しかし、ダンジョンによっては視界が限られているなどの制限があり、一筋縄では行かぬ構成となっている。また、これらのダンジョンを攻略しないとお店で買い物ができないなど、冒険の障害にもなるという悩ましい事柄も。自由に行動できない作り故に賛否を分ける所もあるが、さながら、詰め将棋に近いその手応えは実に魅力的。過去のシリーズをプレイして来た方も、新鮮な体験が堪能できるダンジョンとなっている。
もう一つの『クリスタルのダンジョン』は通常タイプのダンジョン。最下層で待ち受けるボスを倒すのが主な目的となる。全体的にかなり長めの構成だが、中間地点が設けられているので、 じっくり進めれば確実に最下層へと辿り着ける難易度設定。シリーズ初心者も安心して楽しめる設計となっている。また、特殊なトラップを設けていたり、強力な敵が登場したりなどの個性付けは万全。初心者も楽しめる設計と言いつつも、難易度は決して生温くあらず。安易に突撃したりすればボコボコにされるなど、ちゃんとした戦略が求められてくる調整となっている。全体的に記憶のダンジョンと比べるとインパクトは劣るが、歯応え、ボリューム共に結構なもの。こちらも一筋縄では行かないダンジョンに仕上げられている。
そして、これらのダンジョン攻略の際に役立つシステムとして『ジョブチェンジ』がある。FFシリーズではお馴染みの職業変更システムで、ジョブを切り替える事で、そのジョブが持つ特殊能力『アビリティ』が使えるようになるというものだ。ジョブはダンジョンの入口、中間地点にて切り替える事ができ、ゲームが進むとその数も増えていく。切り替えられるジョブは全部で10種類以上で、攻撃力重視や回復重視など、様々なものが用意されている。これらのジョブは各ダンジョン攻略のカギにもなってくる為、場所に応じて変更する事も本編では求められてくる。そんなダンジョンごとに性能を切り替える過程もまた、従来の不思議のダンジョンシリーズにはない戦略性と奥深さが満載。更にジョブは使い込めば使い込むほど能力が向上していくなど、やり込み意欲を刺激する要素が実装されているのも見逃せないところだ。システム自体はFFではお馴染みのもので真新しさは薄いが、それが不思議のダンジョンに輸入された事で、ゲーム性に如何なる変化を及ぼしたのか。その出来栄えはFFシリーズファンも必見だ。
このように初心者にも門戸を広げつつ、FFシリーズお馴染みのシステムや露骨な個性付けを施したダンジョンを収録するなど、意欲的な新要素と試みが満載。従来の不思議のダンジョンシリーズ以上に敷居が低く、シビアさも薄めな作りとは言え、確かなやり応えと新鮮な体験を提供してくれる、非常に魅力溢れる内容に仕上げられている。チョコボの可愛らしい見た目に侮る事無かれ。その中身は結構、本格的な作りだ。

そして今作の魅力は、親しみ易さを強く意識したゲームデザインとバランスに集約される。
ゲームデザインは特に不思議のダンジョンシリーズ初心者に対する、徹底した配慮が印象的。『ダンジョンヒーローX』なるキャラクターによる操作及びテクニック解説、ダンジョン内でミスする度に伝えられるヒロイン、シロマからのヒントなど、今作が「ルールの分かり難いゲーム」である事を意識させまいとする工夫がそこかしこに詰め込まれている。メインとなるダンジョン探索の部分も、ストーリー上避けて通れない『記憶のダンジョン』は厳しい制限を設けないものを中心にセット。『クリスタルのダンジョン』も、中間地点を設けて一区切りを付けるようにし、探索の敷居を下げるなど、遊び易さを何よりも重視したレベルデザインを徹底しようとする作り込みが炸裂している。システム周りもまた、戦闘は本家不思議のダンジョンシリーズと同じ、シンプルなターン制を起用したりと、複雑さを無くそうとする意識が表れている。元々、不思議のダンジョンシリーズ自体が特殊なRPGで、ゲームデザインやバランス調整の面で独特のシビアさを持っており、それが多くのプレイヤー達を魅了してきた。しかし、そのシビアさ故に人を選ぶ側面もあるほか、初めてのプレイヤーには取っ付き難い所もあったのも事実。そんなプレイヤーにもこのシリーズの魅力を知ってもらう名目の下、世に送り出されたタイトルの一つが今作『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズだった。ただ、そのチョコボ自体も本家と比較すれば敷居が低いとは言え、システムに若干の複雑さがあり、少し取っ付き難いところもあった。システム解説の所で挙げたが、TATBはその象徴と言えるだろう。
それに対し今作は、TATBのような癖のあるシステムを極力廃し、多くのプレイヤーに不思議のダンジョンの面白さを知ってもらう為と考えてか、概要把握にそれほどの時間を要さないシステム作りを行い、一部は本家シリーズを踏襲した。それ為、チョコボならではのゲーム性や手応えは大分薄れてしまったが、唯一無二のシステム以上に分かり易さを優先した結果、これまで以上に初心者プレイヤーへの門戸を広げる事に成功している。無論、ジョブチェンジや二つのダンジョンなど、独自の特徴もあるが、それにも根底には「分かり易さ」があり、誰もが親しめるものとして完成されている。折角、独自の要素があったのにそれを捨てるだなんてと言いたくなる所もあるが、初心者にも安心して楽しんでもらう為、このような施策に打って出たスタッフの努力は大きな評価に値するものと言っても良いだろう。この配慮の恩恵もあり、今作はシリーズの入門編としては申し分のない内容として完成されている。チョコボの可愛らしさと取っ付き易さが絶妙に絡み合ったその仕上がりぶりは、秀逸の一言に尽きる。
そのように初心者を意識した配慮を行いつつ、ゲームバランスの面では決して甘い蜜を吸わせないとする容赦の無さも見事。レベル継続制などのシビアさを緩和する配慮が施されているものの、ダンジョンの難易度は全く生温くされてない。結構、歯応えのある調整になっているのだ。特に安易な力押しが通用しなく作られているのは秀逸。初心者向けだから、システムは全て把握しなくても良いと思ったら大間違い。理解しようとしない者には相応の罰が下る設計になっており、意外と容赦ない調整となっている。ただ、運要素による事故は起きぬよう、脱出システムを設けたり、先の中間地点などの配慮は充実しているので、理不尽なほど難しい訳ではないというのがミソ。容赦ないが、筋道を立ててプレイすれば難なくクリア可能な調整となっているので、基本的に初心者にも取っ付き易いバランスとなっている。手強いけど遊び易い、その辺もまたシリーズの魅力を多くの方に知ってもらおうとする為の配慮の表れ。それでいて、上級者にも満足感が得られる為にフォローを施すなど、抜け目のない作り込みには頭が下がる。過剰な温さを追求せず、適切な難易度を設定する姿勢には、改めてスタッフの志の高さを痛感させられるばかりだ。
システムの個性以上に分かり易さを重視し、初心者にも門戸を広げる。一方で、難易度周りは生温くせず、確かな歯応えを感じてもらうようにするという抜け目の無さ。こんなにも「遊び易くて歯応えがある」が似合う不思議のダンジョン作品も珍しいと言っても良いだろう。それほどまでに今作はシステムから難易度設定に至るまで、バランス加減が絶妙。初心者から上級者まで、あらゆるプレイヤーをフォローした作品として完成されているのである。まさに、本家を含めてもシリーズ屈指の遊び易さを誇る作品と言っても不思議ではない。

また、操作性も優秀。リモコン横持ち、クラシックコントローラの二つに対応しているのだが、いずれも違和感が無い仕上がりで、自然にチョコボを動かす楽しさに浸れる。特にリモコン横持ちは、モーションセンサーによるメニュー画面のアイテム整理機能が地味に楽しい。無理矢理なセンサー使用なのだが、これが意外にも気持ち良い。さながら、書類を整えるに近いその地味な気持ち良さは一度でも良いので、体験してみる価値がある。 ボリュームもメインストーリーは20〜25時間ほど、クリア後にもおまけのダンジョンが用意されているなど、やり込み甲斐抜群。また、本編以外にミニゲームも用意されているのだが、これが本編を喰うほどに面白い!中でもルール周りも含め、単品でも勝負できるほどの面白さと中毒性に秀でている上、Wi-Fi対戦まで可能な『ポップアップデュエル』はプレイする価値、大いにありだ。 グラフィックも総じてレベルが高い。特にプレイヤーキャラであるチョコボは、殺人的と言っても良いほど可愛らしく描かれていて、見る者の心を鷲掴みにする魅力に満ち溢れている。特に釣りやブランコに乗った際に見せる仕草は、女性プレイヤーならば魂を奪われるほどの衝撃を受けるかもしれない。
音楽も素晴らしい出来で、各ダンジョン探索や戦闘を大いに盛り上げる。過去のFFシリーズのアレンジ曲も充実しており、中でもラスボス戦の曲はFFファンも必聴の価値アリだ。

ストーリーも全体的にソツのない出来。しかし、演出に関してはイベントにおけるボイスに難あり。台詞を喋る度に非常に短いロードが生じ、会話に不自然な間が生まれ、何処となく不自然なものになってしまっている。色々技術的に模索した名残もあるのだが、それにしてもこれはちょっと擁護できない。また、ボイスは演じる声優陣にも難アリ。特にヒロインのシロマはあまりに演技がワザとらし過ぎて正直、気持ち悪い。また、キーキャラクターであるラファエロに至っては棒読みという酷さ。他の声優陣は無難に演じているというのに、この二人だけが突出して浮いてしまっているのがもどかしい。ラファエロは棒読みとは言え、抑えた所があるので微かに許せるところはあるが、シロマはどうにかなかったのか。特に後半は彼女の出番が増えるのもあって苦痛でしかない。他にもロードが少し長かったり、戦闘時のアニメーションが少しもっさりしているなど、惜しい所は散見される。
ただ、全体的な完成度は高い。初心者から上級者まで幅広くフォローしたゲームバランスに徹底した救済処置とアドバイスの数々など、不思議のダンジョン入門編としては申し分のない出来となっている。演出周りには賛否が分かれる所があるが、丁寧な作り込みとほのぼのとした世界観で魅せる今作。チョコボシリーズをやり込んだプレイヤーは勿論の事、初心者にも自信を持ってお薦めできる良作だ。不思議のダンジョンとはどういうゲームなのか、それを体験するに当たってこれほど打って付けのタイトルはない。是非、機会があったらお試しあれ。
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